上 下
335 / 373
第4章 少年期〜青年期 学園3学年〜卒業編

25話 酒は飲んでも飲まれるな2

しおりを挟む

 どうも、僕です。今、酒乱を観察している最中です。しかも大失恋してヤケ酒するタイプの・・・

(こんな時に酒乱に遭遇したくなかったなぁ・・・(*´Д`*)結婚披露宴の真っ最中だよ?)

「・・・まだ落ち着きそうにないね・・・どうする?僕が結界を維持するのは簡単だけど、このままだといい見せ物になっちゃうから、結界内を見えなくした方がいいかな?」

シベラスおじ様「そうだね、お願いできるかな?アトリー」

「あ、シベラスおじ様、やっぱり他国の高位貴族のご令嬢の醜態を晒すのはまずいですよね?」

シベラスおじ様「そうなんだよ、彼女、あぁ見えて、帝国の皇族の血筋も入ってるからさ、それが嫁の貰い先がなくなるような醜聞はなるべくなら避けたい」

「あ~、それはまた・・・分かりました。では・・・」

 と、騒ぎを聞きつけてきたシベラスおじ様と軽く話して、結界に目隠し用の魔法を重ねがけすることが決定したので、すぐに作業に取り掛かることにした。

?「あ!、アトリーにいたま!!」

 「マディ!!」 「お待ちになってください!マディラ様!!」

「えっ!?」

 目隠しの魔法を掛けようとしたその時、僕のいる位置から結界を挟んだ斜め前の位置から、聞き慣れた可愛らしい声が聞こえた、その声の主を視界に入れた瞬間、僕は焦った。
 なぜ焦ったかと言うと、その聞き慣れた可愛い声の主は、僕の母方の兄の3番目の子供、僕からすると従姉妹に当たる5歳の女児、“マディラ・マルキシオス“が僕を目掛けて斜め前から走り出していたのだ、酒乱が暴れ狂っている、結界の中を・・・

「っ!そっちを通っちゃ駄目だ!!」

「「「「!?」」」」 「お戻りください!!」 「子供が結界内に入ったぞ!!」 「危ない!!」 「きゃーっ誰か!止めて!」

 走り出したマディラを見て、側に居たマディラの母親や乳母らしき人達も、顔を青ざめさせてマディラを追いかけて、結界内に入ってきていた、その光景を見た僕やソル、専属2人だけじゃなく、その事に気づいた周囲の人達も焦った様子で声をあげ、マディラを心配する。

酒乱ご令嬢「なんで、ひっくっ!私を見てくれないのよっ!!」ブンッ!

 そして、タイミング悪く、酔っているご令嬢がまたお酒が入ったグラスを掴み投げ飛ばしたのだ、そのグラスはこれまた運悪く、こちらに来ようとしているマディラの方にピンポイントで飛んで行ったのだ。

「っ!!“反射・リフレクション“!!」キンッ!

 ポンッ! バシャァ! ヒューッ、ガシャンッ!

酒乱ご令嬢「キャッ!!」

 投げ飛ばされたグラスは回転し、中身のお酒がグラスから飛び出ていき、宙に舞うグラスとお酒は別々の軌道を描いていた。中身のお酒はマディラの頭上に降りかかりそうになり、中身のお酒がなくなって軽くなったグラスは、マディラを追ってきたネニュス叔母様と乳母の方へと勢いよく飛んでいき、このままでは結婚式のために可愛く着飾ったドレスがお酒で駄目になり、飛んできたグラスでネニュス叔母様達は怪我をしてしまうと思った僕は、咄嗟に魔法を発動してマディラと叔母様達を“反射効果“のある結界で覆った。咄嗟の判断だったがそれが上手く起動し、マディラ達は無事だったが、展開した結界の“反射“の効果でマディラに降りかかりそうだったお酒がグラスを投げ飛ばしたご令嬢本人に返って行き、見事に頭からお酒を被ってしまって、ご令嬢は驚いて小さく叫び声を上げた。幸いグラス本体はご令嬢の頭上を通り抜け斜め後ろに飛んで行き床に落ちて割れた。

「ふぅ・・・良かったマディラ達は無事だね・・・」

(ふぅ・・・良かった、中途半端な発動だったおかげで、完全にグラスまでご令嬢に跳ね返っていかなくて、グラスまで綺麗に跳ね返ってたら、今ごろご令嬢にグラスがぶつかって割れた破片で大変なことになるところだった( ´ ▽ ` )・・・)

 ご令嬢の安否を確認するより先にマディラ達の安全を確認し、ほっとした後、急な魔法行使で中途半端な魔法が発動したおかげで怪我人が出なくて済んだとこに気づき、内心ヒヤヒヤしながら急いでマディラ達の所まで駆け寄ると、ネニュス叔母様はグラスが飛んできたことで驚いて走るのをやめていたマディラに追いつき、マディラを庇うように抱きしめていて、乳母はさらに2人の上から覆い被さっていた。僕は慌てて乳母に手を貸し立たせた。

「マディ、叔母様、使用人さんも大丈夫ですか!?」

ネニュス叔母様「えぇ、大丈夫です、アトリー様のおかげで、私達はどこも怪我はしてませんわ」

 と、安心したような表情でゆっくりマディラを抱えながら立ち上がった。でも、ネニュス叔母様の腕の中にいるマディラは何が起こったのか分からず、少し不安そうな表情をしているように見えた。

「やぁ、マディ、少し驚いたね、でも、もう大丈夫だよ。それにしても久しぶりだね。また大きくなったかな?」

 不安そうなマディラの緊張を和らげるためにいつも通りに声をかけ、優しく微笑み、頭を撫でた。

 いつもならこうして頭を撫でると嬉しそうに笑顔を向けてくるのに、この時は悲しそうに俯いたままだ、一緒に駆けつけたソルや周囲の大人達が心配していると・・・

マディラ「アトリーにいたま、ごめんなさい、マディ、はしっちゃダメっていわれてたのに、アトリーにいたまとはやくあそびたくって、はしっちゃったの・・・」

(おや?グラスが飛んできたのを怖がっていたんじゃないのか?・・・それより言いつけを守れなかった事を気にしてるなんて、マディラも成長しているね・・・それにしても、このしょんぼりしている姿は可愛過ぎか!!今すぐに抱っこして頬擦りしながら慰めてあげたい!!( ゚д゚))

夜月『落ち着け・・・』

 どうやらマディラは自分が大変な目に遭いそうになった事より、自分が母親に言われていた言いつけをちゃんと守れなかった事を後悔していた。
 危険な目に遭いそうになった事より、言いつけを守れなかった事を心配しているのは、マルキシオス家の血筋の肝の太さなのか、それとも僕がいるから大丈夫と言った信頼感からなのかは分からないが、それでも悪い事をしたと言う認識をちゃんと持っているマディラに僕は感心した。

「ふふっ、そうか、僕と早く遊びたかったんだね。そうだね、マナーとしてダメなことはしたけど、ダメなことをしたのをちゃんと分かって謝れるマディはいい子だね。ちゃんと反省できたなら、僕からは怒ったりしないよ。だから、もうそんな悲しい顔はしないで、今度から良い子にできるってお約束してくれたら、明日、王都の街中の美味しいお菓子屋さんに連れて行ってあげるよ。どう?お約束できるかな?」

 悪い事をしたとちゃんと認識して反省の色が見えたマディラに僕はそう提案してみると。

マディラ「…お菓子、アトリーにいたまとお出かけ?」

「そう、僕と明日お出かけだ」

 美味しいお菓子と、僕とのお出かけに反応して、俯いていたマディラの顔が恐る恐るこっちを向く、再度お出かけを強調すると、

マディラ「!、うん!マディ、おやくそくする!こんどからちゃんといい子にする!」

 パッといつもの愛らしい笑顔でそう答えて、心配していた周囲の大人達をほっとさせた。

「よし、じゃあ僕とお約束だよ♪ふふっ、やっと笑ってくれたね、マディ・・・」

(やっぱり可愛い女の子は笑顔が1番だよね!( ^∀^))

ネニュス叔母様「良いんですか?アトリー様、学園などでお忙しいでしょうに・・・」

「いえいえ、大丈夫ですよ。確かに明日は学園がありますから、お出かけは学園の終わった後になってしまうんですが、それでも良いでしょうか?」

ネニュス叔母様「えぇ、私達はこれと言って用事はないですから、いつでも構わないですわ、マディラはアトリー様と一緒に居れるだけで喜びますし、ね?マディ?」

マディラ「うん!あした、アトリーにいたまがかえってくるのをいい子でまってる♪」

「ふふっ、分かった、じゃあ授業が終わったらすぐに帰ってくるからね」

 そんな感じで和んで会話をしていると・・・

「ちょっと!!そこで何和んでいるのよ!!どうしてくれるの!?これ!!私のドレスがビチャビチャじゃない!!」

 と、少し酔いが覚めたのかヒステリックに罵る声がした。その声の主は今回の騒動の発端である酒乱ご令嬢だった、僕がその声に振り向くと、酒乱ご令嬢とバッチリ目が合った・・・

酒乱ご令嬢「!!、貴方!!貴方ね!?私にこんな事をしたのは!!それに、その珍しい銀髪!貴方、カイヤト様の血縁者でしょう!?貴方、私がカイヤト様の結婚に反対してるからって、嫌がらせしたわね!?このドレスは帝国の有名職人が手がけた一点物なのよ!?弁償として私とカイヤト様の結婚を要求するわ!!」

「は???ふざけてるんですか?」

 目が合った途端いきなり睨め付けられて、意味不明の言いがかりをつけられた僕は、思わず表情を取り繕うことも忘れ、不快感をも隠さず苛立ちでドスの効いた低い声でそう言ってしまった。

シベラスおじ様「アトリー、ここは僕に任せて・・・ねっ?」

「・・・はい、・・・・」

 僕が前に出て反論を続けようとした時、後ろにいたシベラスおじ様が僕の肩を優しく掴み、良い笑顔でそういった。

(わぁ、シベラスおじ様のあんな真っ黒な良い笑顔、久しぶりに見たWW実は結構怒ってるな?おじ様( ・∇・)・・・と、言うことは、これは今から面白いことが起きるぞぉWWW・:*+.\(( °ω° ))/.:+)

天華『また、変なテンションにスイッチが入りましたね・・・』

 天華の呟きもなんのその、今から何が起こるのか分からないが面白そうなものが観れると確信した僕は、お怒りモードから傍観者モードへと早々と切り替えたのだった。

シベラスおじ様「横から失礼します。私はこの子の叔父にあたる者で、この国の国王事務補佐官の役職についております。シベラス・ノブル・デューキスと申します。今回の結婚式の新郎である、カイヤトの父方の叔父でもあります。ご令嬢、貴方は帝国貴族のダンシャンスー公爵家のお方だとお見受けしますが・・・」

酒乱ご令嬢「!!・・・え、えぇ、そうよ!私は帝国貴族のダンシャンスー公爵家の五女、レイティア・フォン・ダンシャンスーですわ!それがなんだと言うのです!?貴方のその横にいる子供が私にこんな無礼を働いたのは事実ですからね!?いくら貴方がカイヤト様の叔父上で国王の事務補佐官であっても許しはしませんよ!!」

(お?デューキス家の家名がでて少し動揺したな?それかシベラスおじ様の美貌に見惚れたか?てか、この状況で恥ずかしげもなく堂々と自分の名前を口にするとは・・・さてはまだ相当酔ってるな?このご令嬢(*´Д`*)・・・)

 シベラス叔父様の巧みな誘導で、自分自身の身分と名前を大勢の野次馬の前で口にしてしまったご令嬢は、今は酔っていて冷静な判断がついてないようだが、今後この国の、いや、どうにかしたら母国のライヒスル帝国の社交界で一生笑い物になることが確定した。そんな事も気づかないまま、さらに意地を張ったように僕を許さないと叫んだ。

シベラスおじ様「へぇ、そうですか・・・・」

(あぁ、可哀想に、これでもう社交界では生きていけなくなったな・・・南無(・人・))

 この時、横から見えたシベラスおじ様の顔はこれからこのターゲットのご令嬢をどう正論で叩きのめそうかと、楽しそうに目を輝かせていたのを僕はうっかり目撃してしまったので、心の中で合掌をしたのだった・・・・


















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
 宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...