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第4章 少年期〜青年期 学園3学年〜卒業編
25話 酒は飲んでも飲まれるな2
しおりを挟むどうも、僕です。今、酒乱を観察している最中です。しかも大失恋してヤケ酒するタイプの・・・
(こんな時に酒乱に遭遇したくなかったなぁ・・・(*´Д`*)結婚披露宴の真っ最中だよ?)
「・・・まだ落ち着きそうにないね・・・どうする?僕が結界を維持するのは簡単だけど、このままだといい見せ物になっちゃうから、結界内を見えなくした方がいいかな?」
シベラスおじ様「そうだね、お願いできるかな?アトリー」
「あ、シベラスおじ様、やっぱり他国の高位貴族のご令嬢の醜態を晒すのはまずいですよね?」
シベラスおじ様「そうなんだよ、彼女、あぁ見えて、帝国の皇族の血筋も入ってるからさ、それが嫁の貰い先がなくなるような醜聞はなるべくなら避けたい」
「あ~、それはまた・・・分かりました。では・・・」
と、騒ぎを聞きつけてきたシベラスおじ様と軽く話して、結界に目隠し用の魔法を重ねがけすることが決定したので、すぐに作業に取り掛かることにした。
?「あ!、アトリーにいたま!!」
「マディ!!」 「お待ちになってください!マディラ様!!」
「えっ!?」
目隠しの魔法を掛けようとしたその時、僕のいる位置から結界を挟んだ斜め前の位置から、聞き慣れた可愛らしい声が聞こえた、その声の主を視界に入れた瞬間、僕は焦った。
なぜ焦ったかと言うと、その聞き慣れた可愛い声の主は、僕の母方の兄の3番目の子供、僕からすると従姉妹に当たる5歳の女児、“マディラ・マルキシオス“が僕を目掛けて斜め前から走り出していたのだ、酒乱が暴れ狂っている、結界の中を・・・
「っ!そっちを通っちゃ駄目だ!!」
「「「「!?」」」」 「お戻りください!!」 「子供が結界内に入ったぞ!!」 「危ない!!」 「きゃーっ誰か!止めて!」
走り出したマディラを見て、側に居たマディラの母親や乳母らしき人達も、顔を青ざめさせてマディラを追いかけて、結界内に入ってきていた、その光景を見た僕やソル、専属2人だけじゃなく、その事に気づいた周囲の人達も焦った様子で声をあげ、マディラを心配する。
酒乱ご令嬢「なんで、ひっくっ!私を見てくれないのよっ!!」ブンッ!
そして、タイミング悪く、酔っているご令嬢がまたお酒が入ったグラスを掴み投げ飛ばしたのだ、そのグラスはこれまた運悪く、こちらに来ようとしているマディラの方にピンポイントで飛んで行ったのだ。
「っ!!“反射・リフレクション“!!」キンッ!
ポンッ! バシャァ! ヒューッ、ガシャンッ!
酒乱ご令嬢「キャッ!!」
投げ飛ばされたグラスは回転し、中身のお酒がグラスから飛び出ていき、宙に舞うグラスとお酒は別々の軌道を描いていた。中身のお酒はマディラの頭上に降りかかりそうになり、中身のお酒がなくなって軽くなったグラスは、マディラを追ってきたネニュス叔母様と乳母の方へと勢いよく飛んでいき、このままでは結婚式のために可愛く着飾ったドレスがお酒で駄目になり、飛んできたグラスでネニュス叔母様達は怪我をしてしまうと思った僕は、咄嗟に魔法を発動してマディラと叔母様達を“反射効果“のある結界で覆った。咄嗟の判断だったがそれが上手く起動し、マディラ達は無事だったが、展開した結界の“反射“の効果でマディラに降りかかりそうだったお酒がグラスを投げ飛ばしたご令嬢本人に返って行き、見事に頭からお酒を被ってしまって、ご令嬢は驚いて小さく叫び声を上げた。幸いグラス本体はご令嬢の頭上を通り抜け斜め後ろに飛んで行き床に落ちて割れた。
「ふぅ・・・良かったマディラ達は無事だね・・・」
(ふぅ・・・良かった、中途半端な発動だったおかげで、完全にグラスまでご令嬢に跳ね返っていかなくて、グラスまで綺麗に跳ね返ってたら、今ごろご令嬢にグラスがぶつかって割れた破片で大変なことになるところだった( ´ ▽ ` )・・・)
ご令嬢の安否を確認するより先にマディラ達の安全を確認し、ほっとした後、急な魔法行使で中途半端な魔法が発動したおかげで怪我人が出なくて済んだとこに気づき、内心ヒヤヒヤしながら急いでマディラ達の所まで駆け寄ると、ネニュス叔母様はグラスが飛んできたことで驚いて走るのをやめていたマディラに追いつき、マディラを庇うように抱きしめていて、乳母はさらに2人の上から覆い被さっていた。僕は慌てて乳母に手を貸し立たせた。
「マディ、叔母様、使用人さんも大丈夫ですか!?」
ネニュス叔母様「えぇ、大丈夫です、アトリー様のおかげで、私達はどこも怪我はしてませんわ」
と、安心したような表情でゆっくりマディラを抱えながら立ち上がった。でも、ネニュス叔母様の腕の中にいるマディラは何が起こったのか分からず、少し不安そうな表情をしているように見えた。
「やぁ、マディ、少し驚いたね、でも、もう大丈夫だよ。それにしても久しぶりだね。また大きくなったかな?」
不安そうなマディラの緊張を和らげるためにいつも通りに声をかけ、優しく微笑み、頭を撫でた。
いつもならこうして頭を撫でると嬉しそうに笑顔を向けてくるのに、この時は悲しそうに俯いたままだ、一緒に駆けつけたソルや周囲の大人達が心配していると・・・
マディラ「アトリーにいたま、ごめんなさい、マディ、はしっちゃダメっていわれてたのに、アトリーにいたまとはやくあそびたくって、はしっちゃったの・・・」
(おや?グラスが飛んできたのを怖がっていたんじゃないのか?・・・それより言いつけを守れなかった事を気にしてるなんて、マディラも成長しているね・・・それにしても、このしょんぼりしている姿は可愛過ぎか!!今すぐに抱っこして頬擦りしながら慰めてあげたい!!( ゚д゚))
夜月『落ち着け・・・』
どうやらマディラは自分が大変な目に遭いそうになった事より、自分が母親に言われていた言いつけをちゃんと守れなかった事を後悔していた。
危険な目に遭いそうになった事より、言いつけを守れなかった事を心配しているのは、マルキシオス家の血筋の肝の太さなのか、それとも僕がいるから大丈夫と言った信頼感からなのかは分からないが、それでも悪い事をしたと言う認識をちゃんと持っているマディラに僕は感心した。
「ふふっ、そうか、僕と早く遊びたかったんだね。そうだね、マナーとしてダメなことはしたけど、ダメなことをしたのをちゃんと分かって謝れるマディはいい子だね。ちゃんと反省できたなら、僕からは怒ったりしないよ。だから、もうそんな悲しい顔はしないで、今度から良い子にできるってお約束してくれたら、明日、王都の街中の美味しいお菓子屋さんに連れて行ってあげるよ。どう?お約束できるかな?」
悪い事をしたとちゃんと認識して反省の色が見えたマディラに僕はそう提案してみると。
マディラ「…お菓子、アトリーにいたまとお出かけ?」
「そう、僕と明日お出かけだ」
美味しいお菓子と、僕とのお出かけに反応して、俯いていたマディラの顔が恐る恐るこっちを向く、再度お出かけを強調すると、
マディラ「!、うん!マディ、おやくそくする!こんどからちゃんといい子にする!」
パッといつもの愛らしい笑顔でそう答えて、心配していた周囲の大人達をほっとさせた。
「よし、じゃあ僕とお約束だよ♪ふふっ、やっと笑ってくれたね、マディ・・・」
(やっぱり可愛い女の子は笑顔が1番だよね!( ^∀^))
ネニュス叔母様「良いんですか?アトリー様、学園などでお忙しいでしょうに・・・」
「いえいえ、大丈夫ですよ。確かに明日は学園がありますから、お出かけは学園の終わった後になってしまうんですが、それでも良いでしょうか?」
ネニュス叔母様「えぇ、私達はこれと言って用事はないですから、いつでも構わないですわ、マディラはアトリー様と一緒に居れるだけで喜びますし、ね?マディ?」
マディラ「うん!あした、アトリーにいたまがかえってくるのをいい子でまってる♪」
「ふふっ、分かった、じゃあ授業が終わったらすぐに帰ってくるからね」
そんな感じで和んで会話をしていると・・・
「ちょっと!!そこで何和んでいるのよ!!どうしてくれるの!?これ!!私のドレスがビチャビチャじゃない!!」
と、少し酔いが覚めたのかヒステリックに罵る声がした。その声の主は今回の騒動の発端である酒乱ご令嬢だった、僕がその声に振り向くと、酒乱ご令嬢とバッチリ目が合った・・・
酒乱ご令嬢「!!、貴方!!貴方ね!?私にこんな事をしたのは!!それに、その珍しい銀髪!貴方、カイヤト様の血縁者でしょう!?貴方、私がカイヤト様の結婚に反対してるからって、嫌がらせしたわね!?このドレスは帝国の有名職人が手がけた一点物なのよ!?弁償として私とカイヤト様の結婚を要求するわ!!」
「は???ふざけてるんですか?」
目が合った途端いきなり睨め付けられて、意味不明の言いがかりをつけられた僕は、思わず表情を取り繕うことも忘れ、不快感をも隠さず苛立ちでドスの効いた低い声でそう言ってしまった。
シベラスおじ様「アトリー、ここは僕に任せて・・・ねっ?」
「・・・はい、・・・・」
僕が前に出て反論を続けようとした時、後ろにいたシベラスおじ様が僕の肩を優しく掴み、良い笑顔でそういった。
(わぁ、シベラスおじ様のあんな真っ黒な良い笑顔、久しぶりに見たWW実は結構怒ってるな?おじ様( ・∇・)・・・と、言うことは、これは今から面白いことが起きるぞぉWWW・:*+.\(( °ω° ))/.:+)
天華『また、変なテンションにスイッチが入りましたね・・・』
天華の呟きもなんのその、今から何が起こるのか分からないが面白そうなものが観れると確信した僕は、お怒りモードから傍観者モードへと早々と切り替えたのだった。
シベラスおじ様「横から失礼します。私はこの子の叔父にあたる者で、この国の国王事務補佐官の役職についております。シベラス・ノブル・デューキスと申します。今回の結婚式の新郎である、カイヤトの父方の叔父でもあります。ご令嬢、貴方は帝国貴族のダンシャンスー公爵家のお方だとお見受けしますが・・・」
酒乱ご令嬢「!!・・・え、えぇ、そうよ!私は帝国貴族のダンシャンスー公爵家の五女、レイティア・フォン・ダンシャンスーですわ!それがなんだと言うのです!?貴方のその横にいる子供が私にこんな無礼を働いたのは事実ですからね!?いくら貴方がカイヤト様の叔父上で国王の事務補佐官であっても許しはしませんよ!!」
(お?デューキス家の家名がでて少し動揺したな?それかシベラスおじ様の美貌に見惚れたか?てか、この状況で恥ずかしげもなく堂々と自分の名前を口にするとは・・・さてはまだ相当酔ってるな?このご令嬢(*´Д`*)・・・)
シベラス叔父様の巧みな誘導で、自分自身の身分と名前を大勢の野次馬の前で口にしてしまったご令嬢は、今は酔っていて冷静な判断がついてないようだが、今後この国の、いや、どうにかしたら母国のライヒスル帝国の社交界で一生笑い物になることが確定した。そんな事も気づかないまま、さらに意地を張ったように僕を許さないと叫んだ。
シベラスおじ様「へぇ、そうですか・・・・」
(あぁ、可哀想に、これでもう社交界では生きていけなくなったな・・・南無(・人・))
この時、横から見えたシベラスおじ様の顔はこれからこのターゲットのご令嬢をどう正論で叩きのめそうかと、楽しそうに目を輝かせていたのを僕はうっかり目撃してしまったので、心の中で合掌をしたのだった・・・・
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