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第4章 少年期〜青年期 学園3学年〜卒業編
17話 “強制“ではなく、“自制“
しおりを挟むどうも、こんにちは、僕です・・・・今ちょっと困惑してます・・・
「???どうしたんですか???」
僕は家族が何故泣いているか分からず、ただ首を傾げるしかなかった。
そこに今までの流れをずっと見ていた家族の専属使用人達が今の時間を確認して頷き合い、各々の主人達を僕から引き剥がし、崩れたお化粧や髪型、服装を整え始めた。どうやら結婚式の開始の時間が近いようだ。
「???何で???何で泣いてるの???危険は去ったのに???・・・僕、何か間違った?・・・ダメな事した?・・・悲しませちゃった?」
家族が皆んな涙を流している姿を見て、僕はだんだん何かいけない事をしたのではないかと不安になり、自分も泣きそうになっていると・・・
*ついでに僕の専属のオーリー達は僕の周りでワタワタしていた。家族は僕から引き剥がされながらもずっと僕を見ていて、母様に至っては僕の手を持ち離さなかった。
夜月:『アトリー、そう不安にならなくていい、彼らはアトリーの選んだ“神器“形に思うところがあって、アトリーのその言動を愛おしいと思っただけだろう』
「僕の事が愛おしい?大好きだから、泣いたの?あの形が?原因?何で?あれ変だった?」
夜月の言葉に僕は疑問符だらけの言葉を言い連ねた。
夜月:『いいや、あの形が変というわけではない、一応聞くが、何故あの形にしたのだ?』
「??ブレスレット??・・・いや、ただ単に付けやすそうだし良いかな?って」
夜月:『じゃあ、何故以前つけていた“魔力封印の魔道具“と似た意匠にしたんだ?』
「?、付与した効果が似てたから、それにあれならすぐにそう言う目的の装飾品で、誰からか送られた物ではないと示せるでしょ?もし僕に誰かが贈り物をして、それを受け取って気に入ったから使ってるって、周りの人達に勘違いしてほしくないもの、だからあれなら変な勘繰りもされないと思ったから・・・」
夜月:『そうか、では、アトリーにとって以前使用していた魔道具はどんな役割のものだった?』
「えっ?それは普通に安全装置でしょう?大きな魔力の影響を少しでも減らし、“魔力暴走“起こさせず、周囲の人達に被害を出さないための・・・それ以外に何か役割ってあった??」
夜月:『いいや、ないな。・・・じゃあ、それを踏まえて、アトリーはその魔道具をつけていた時は何か窮屈なことや不便だと思ったことはあるか?』
「ううん?何もなかったけど?そもそも、あのブレスレットが魔道具って知ったのは、“洗礼と祝福の儀“をするために王都に行く前ぐらいだったし、それまでただの装飾品だって思ってたから、これと言った不便なことはなかったよ?・・・て、言うかさ、さっきからの一問一答は何なの?何が関係あるの?」
突然始まった一問一答に素直に答えていたが、流石に何の意味があるのか分からない質問の数々に耐えきれなくなって、夜月に疑問をぶつけた。
夜月『そうだな、・・・アトリー、よく想像してみてくれ、元々あの魔道具は罪人に魔法を使わせない様にするための道具だったんだ、安全の為とは言えだ、それを可愛い我が子に長年使用する事になった家族は大変な罪悪感を覚えただろう。“我が子を罪人のように扱った“とな・・・』
「へっ!?・・・あ、・・・そう言う事・・・」(ぼ、僕はそんなに気にしてなかったんだけどなぁ(*´ー`*)・・・・でも、家族全員がそう思ってたんならさっきの反応も頷ける・・・ん?やばっ!?僕、知らず知らずの内に家族の心の罪悪感を抉ってたんじゃないか!?Σ('◉⌓◉’))
夜月の返答に自分がした事の全貌が理解できた、その事で家族が心が罪悪感に打ちひしがれていた事も理解できてしまった。そんな心内の家族に僕はなんて言う事をしてしまったんだ、と次は慌て始めるのだった・・・
夜月(まぁ、アトリーの認識はそんな所だろうとは思っていたが、親にしてみたら、我が子が無邪気に再び自分自身に制限をかけるのを見ているしかなかった事が、やるせない事この上ないだろうな。本人以外の誰もが“神力暴走“を止める事ができない事も歯がゆいはずだ。“自分の力に制限をかける“、それをアトリーは画期的な方法だと思って、嫌悪感も持たずに使用しているから更に心に来たはず・・・
そんな中で彼らに当人は自分の力に制限を設ける事になんの躊躇いないのを教えてやるだけが、今の所、唯一私にできる事だな・・・)
先程からアトリーが自分の質問に念話ではなく口頭で返事を返している事を利用して、あの一問一答を投げ掛けた夜月は、これで少しでも互いの認識のずれを理解する事ができただろうと、1人心の中でため息を吐いたのだった・・・
「父様、母様、皆んな、僕は、あのブレスレットの事を疎ましいとは思っていなかったんですよ!?だ、だから・・・・」
夜月の話で、家族の誤解を解かなければと慌てて弁明をしようとすると・・・
父様「アトリー、大丈夫だよ、先程のヤヅキ様との会話は全て聞いていたからね。アトリーが封印の魔道具に嫌悪感を持ってなかった事も、その“神器“のブレスレットの意匠にも私達を責める意図を持ってなかった事にも、ね・・・」
と、父様が優しい笑顔で僕の肩に手を置きそう言った。他の家族も笑顔で頷くのを見て、僕は、
「あっ!・・・」(ぜ、全部聞かれてたのか!?は、恥ずかしい!!\(//∇//)\)
夜月との会話を全て聞かれていた事に恥ずかしさを覚えて、再び顔を手で覆って顔の赤さを隠していると。
母様「ふふっ、あらあらまぁまぁ、そんなに恥ずかしがらないで良いのに、私達はアトリーの本心が聞けてとても嬉しかったわ。それに、“その他の事”も話してくれてありがとう、アトリー・・・」
「っ・・・むぅ・・・」(?、“その他の事”って?あれ?なんか他に言ったっけ?(・・?))
母様「ふふっ、ほらほら、アトリーもちゃんと装いを整えてもらいましょう。もうそろそろ、私達も礼拝堂に行かないといけませんからね」
「はーい」(あ、もう時間か!(°▽°)急がなきゃ!)
これまでどんな発言をしたのか忘れてしまっていたので思い出そうとしたが、母様に急かされて、その事を考えていた事もこの時に忘れてしまった・・・
*“神力暴走”になっていた時、精神が不安定で“自分が自分でなくなる事が怖い“と口走った事をすっかり忘れてしまっていたアトリー、この事でさらに家族が心配している事に気付かないのであった・・・・
色々と事が起きてバタバタしていたけど、結婚式はもうすでに始まろうとしていたので、話の続きはカイ兄様の結婚式と披露宴、全てが終わった後にする事になった。
そして、僕の乱れた服装などを綺麗に整え直して、カイ兄様の控室を出た。その時の家族の表情には先程までの罪悪感はなく、スッキリとした笑顔で礼拝堂までの廊下を歩いた。廊下を歩いて礼拝堂の正面入り口がある方を伺うと、まだ受付が終わってない招待客達がそれなりの数がいるのか、人数は分からないが賑やかに話す声が聞こえてきた。
(この雰囲気、良いよね、今からお祝い事が始まるって感じが、さっきまでの暗い雰囲気も少しは薄れるよね。・・・てか、僕、後でカイ兄様に謝らなきゃ・・・(*´-`))
ジュール『え、なんで?』
(それはだって、今日みたいな特別な日に、あんな、騒動を起こしちゃって申し訳ないって言うか(*´ー`*)・・・、少しの間っていっても、空気の悪くなるような事も言っちゃったし、しちゃったし、色々と気を使わせちゃったから・・・物凄く申し訳ないって思って・・・・(-.-;))
ジュール『アトリーのお兄ちゃんならそんなに気にしてなさそうだけどなぁ・・・』
(うーん、僕もそう思うけど、やっぱり人生の大事な晴れ舞台を前に嫌な思いをしたのは確かじゃん?それに関してはちゃんと謝りたいって言うか、凄く申し訳なくて・・・ちゃんと謝っておかないと自分の気がすまないと言うか、・・・まぁ、正直に言えば自分の自己満足的な面が強いかな・・・)
ジュール『ふーん?そうなの?」
天華『人間とはそう言うものなんですよ』(まぁ、嫌な思いをしたというか、やるせない思いですかね?それに、“祝福の加護“がついた事は喜ぶべきところではありましたが、驚きの方が大きかったでしょうしね・・・)
ジュール『そう言うもの?』
(そう言うものなの、まぁ、僕の場合は人間不信を拗らせに拗らせた過去があるから、自分の心の平穏のためにね・・・(*´ー`*))
結婚式の始まるワクワク感と先程のことでの申し訳なさが入り混じり、複雑な心境の僕はジュール達と念話をしながら、関係者用入り口から礼拝堂に入った。すると先に礼拝堂内で招待客として入っていたが、時間を持て余したのか他の招待客の席案内などのお手伝いをしていたらしきソルが、僕が来たことに気づき急いで近くにやってきた。
ソル「アトリー様、大丈夫ですか?」
と、僕を見て第一声で心配するソル。確実に“感情共感“で、僕の感情を読み取ってしまったんだろうと分かり、僕は笑顔で「大丈夫だ」と返す。
ソル「なら良いのですが・・・」
(うーん、また勝手に繋がっちゃったか・・・(*´ー`*))
春雷『大層心配なさっておいででしたよ?』
と、ソルの側についていた春雷にそう言われて、僕は少し頭を捻り考える。
(そっかぁ、でも、通常はちゃんと遮断できてるのになぁ、たまに意図してない時に勝手に繋がるんだよねぇ。それにさ、年々感情が繋がる時の距離が広がってきてない?( ̄▽ ̄)?)
夜月『そうだな、今回は結構距離があったと思うが・・・・』
そう、最初の頃は互いがかなり近い場所で視界に入っていないと“感情の共感“は起こらなかったのだが、次第に距離が伸びていき、視界に入らなくても“感情共感“が起こるようになって、今回は神殿の広い敷地内で互いの間に何重もの遮蔽物があったのにも関わらず、“感情共感“が起こり、僕の感情がソルへと伝わってしまっていた。通常は互いの感情なんて伝わらない方が良いだろうと言う事で、互いに感情を共感させないようコントロールして過ごしているのだが、今みたいにどちらかの感情が昂ると勝手に“感情共感“されて、意図ぜず互いの心境が伝わってくる事がたまに起こるのだった。(まぁ、何故か僕の感情の昂りの方がよく“感情共感“されてしまうのだがな・・・)
その“感情共感“の能力を頻繁に使用している訳でもないのに、何故か能力がどんどんと強化されて、今ではかなりの距離を空けても“感情共感“が成功している。そもそも、僕達が距離をとって過ごす事はほとんどないので、今回の事で最低でも50メートルは離れていても“感情共感“が成立することに気づいた。
そんな疑問が尽きない現象に頭を捻らせていると、ソルがイネオス達が礼拝堂についていると教えてもらい、イネオス達が座っている場所を見て小さく手を振って挨拶をして、自分達の席に座ることになった。“感情共感“はスキルという訳でもないので、詳しい発動条件や効果が分からない、これ以上考えても意味はないと割り切って、指定された席でソルと静かに座り結婚式が始まるのを持つのだった・・・・
*この時、アトリーが礼拝堂に入るなり周囲はいつものように固まり、普段は見せない笑顔でイネオス達に挨拶したことから、かなりの騒ぎになっていたのだが、アトリーはそんな騒ぎは高くなりすぎたスルースキルで完全に無視していた。その中でも数人のお嬢さん達の心を鷲掴みにしていたのだが、その後も我関せずと言った感じで完璧スルーを貫くアトリーだった・・・
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