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第3章 少年期 学園編
215話 ストレスは溜めるものじゃない
しおりを挟む焦った様子で静止してくる大人達の言葉をあえて無視して、軽快に歩いていた僕はすぐにトップスピードで消えるように走り、あっ、と言う間に、倒れている“アイツ“の真上まで飛び上がった。
(何を考えているかわからないけど!)
「動けないふりをしても無駄だよ!僕は今、凄く怒ってるんだ、お前を逃す気はないよ!!」ヒュッ!ドコンッ!!
バァーン!!カタカタカタッ!「「「「「うわっ!!」」」」」「「「「「きゃーっ!!」」」」」
そう言って、倒れ込んでいた“アイツ“の真上で一回転し、勢いを付けて踵落としを思いっ切り繰り出した。地面は凹みクレーターができるほどの衝撃が礼拝堂内に行き渡った。建物は震動し、あちらこちらで埃が舞い、悲鳴が上がった。
僕の反撃の、いや、ストレス発散の猛ラッシュはここから始まったのだった・・・・・
どうも、僕です。今、ストレスの原因である“アイツ“に思いっきり踵落としを喰らわせてやった僕です。
(チッ!あんまり手応えが無いな・・・)
“アイツ“に逃げるそぶりもなかったので踵落としを入れてやったのに、何やら向こうはそれを予期していたのか、防御されて攻撃に手応えがなかった。僕はすぐに飛び退き、向こうの様子を見る。
フィズィ「・・・何でだ、何で、我を拒否する?」
「いや、キモいからですよ?」
黒い霧を纏った剣を片手に持ち、虚な目をして起き上がってきた“アイツ“の言葉に思わず即答した僕。
フィズィ「キ、モい?・・・我が?」
「キモい」
キモいと言われてショックだったのか、プルプル震えながらこっちを見る“アイツ“に、僕は心底嫌悪感を含んだ表情でそう言った。
フィズィ「何故、何故そんな事を言うんだっ!!お前は我のモノなのに!!」ブワァ!
「っ!!」
僕の率直な返答に怒った“アイツ“は手に持っている不快感の塊のような、邪悪な気配のするような、何とも表現しずらい気味の悪い“邪気“を纏う剣を振り上げ、物凄い速さで僕に突進してきた。
「「「「「アトリー!!」」」」」「「「「「危ない!!」」」」」「避けるんだっ!!」「逃げろっ!!」「それには触れてはいけない!!」「逃げてっ!!」
家族や周囲の大人達が慌てて助けに入ろうとしたが間に合わない。そう思われた・・・・
「早いっ!…「ガスッ!!」なんてね・・・」
僕は再び刺されるっ!と、思わせて紙一重で剣を横に避け、“アイツ“の横っ腹を思いっきり蹴り飛ばした、つま先で抉るように・・・
ヒュッ!ドコッ!!
そして、再び吹っ飛んで言った“アイツ“は礼拝堂の祭壇横の石壁にぶつかった、石壁は亀裂が張り、凹むほどの衝撃で・・・
(うーん、今の出力でもダメージはそんなに入らなかったか・・・まぁ、でも少しは痛かったようだね・・・ふふっ)
ガコッ ゴロッ パラパラパラッ
横腹をさすりながら石壁の凹みから出てきた“アイツ“を見て、僕はニンマリと笑った。
フィズィ「お前っ、今、我に何をした!?」
「ふふっ、ちょっと蹴っただけじゃないか・・・ただ、ほんの少し、神々の力を借りてね」
フィズィ「やはり!また我の邪魔をしよって!あの“こっぱ神共“めっ!!」
ブゥワァッ!!
(“アイツ“またティーナちゃん達の事を・・・うん?待てよ、“アイツ“もしかして・・・)
忌々しそうに顔を歪め、またティーナちゃん達の事を罵った“アイツ“は、自分の切り札としていた“邪気“を纏った剣の効果であろう、黒い霧の防御壁が正しく効果を発揮してない事に気づいた。そして、それがティーナちゃん達から借りている“力“、“神力“だと言う事も察し、怒りを増しながら、さらに剣からドス黒い霧を吐き出してきた。そんな時、僕はふと、あることに気づいたのだが、それを深く考える前に“アイツ“が動き出した・・・
フィズィ「“お前“は先に我が目を掛けていたのだ!邪魔する事など許さんっ!!許してなるものかっ!!お前も、抵抗などして、我の手を煩わせるなぁっ!!」
ブゥンッ!
そう言って今度はその黒い霧をバスケットボール程の塊にして僕に向けて打ち出すように剣を振った。
「今度はもっと出力を上げていくよ・・・」ボソッ
バシンッ!
気づいたことは今は置いといて、僕は小さく呟いてさっきよりも“神力“を使って手足に光の膜を纏い、打ち出されてきた黒い霧の塊を手の甲で斜め上に弾き飛ばした。
フィズィ「っ!何!?」
ヒュッ!ガッ!ゴンッ!! ドコンッ!!
そして、相手がその事に驚いている隙に回し蹴りで勢いをつけながら顎を蹴り上げ、さらに勢いをつけ素早く回転し反対の足の踵を使って側頭部を穿つように蹴り落とした。見事な連続回し蹴りが決まり、“アイツ“は頭をほこりを立てながら床にめり込ませていた。
ボコッ パラパラパラッ
フィズィ「・・・・ありえない、ありえない、ありえないっ!前のお前はもっと大人しく従順だったのにっ!!こんな、事をするはずが無い!!」
口の中を切ったのか、口の端から血を流し、視界が定らないのか、頭を押さえながらフラフラと立ち上がる“アイツ“は、僕が“アイツ“の事を本気で拒否している事実を受け入れられ無いのか、意味の分からない事を言い出した。
「はぁ?僕は今も昔もこう言う性格ですよ」
フィズィ「うるさい!うるさいっ!!黙れっ!!お前は黙って我の言う事を大人しく効いていればいいんだっ!!そのような事を言うならさっさと“解放“しておけばよかったっ!・・・いや、今からでも遅くないな・・・ふっふっふっ、もっと、苦しませて絶望させてから“解放“してやろうと思っていたが、今回だけは簡単に“解放“してやろう・・・・」
「“解放“?」ボソッ
(何からの“解放“だ?・・・“アイツ“のしたい事が僕を殺して、その魂を得る事なら、魂の入れ物である肉体からの“解放“だとでも言いたいのか??“解放“してやるねぇ、ふんっ、どこまでも自己中心的で気持ちの悪い“ヤツ“だ・・・(-᷅_-᷄๑))
僕は率直に“現世(今も)“でも“前世(昔も)“でも、性格はたいして変わらないと言ったのだが、さらに意味不明な事を悦の入った表情で言い出した。
フィズィ「あぁ、今すぐに、その忌まわしい肉体から解き放ってやるっ!」
ブゥワッ!!
僕の呟きに答えるように剣から大量のドス黒い霧を溢れさせ、操り、自分の身体に纏った。霧状だったドス黒い何かは段々と形を成し、鎧のようになった。黒い霧を吐き出していた剣も真っ黒に染まり、今度こそ本気で僕を殺しに来ていると感じた。
(あれが、“アイツ“の切り札って感じか、“アイツ“も本気のようだね・・・しかし、真っ向から受けて立ちたいけど、流石に、ここで本気でやり合うのはヤバいか?(。-∀-)色々と壊しそうだし、あの剣に込められている呪詛での“思念体“のような負の感情の塊と、魔力が穢れた“瘴気“の塊を混ぜてさらに“不浄“な何かを織り交ぜた、物理的にも精神的にも不快感を感じさせる黒い霧、アレは“邪気“?と言っていいものか分からないけど、環境への影響的なものにも物凄く悪い気がするんだが・・・どうしようか、結界を・・・って、もうすでに張られてる!?いつの間に・・・)
いつの間にか自分達がいる魔法陣を含めた礼拝堂の奥半分にかなり頑丈そうな結界が構築されていた。このいつの間にか張られていた結界からする気配は、ジュール達の気配だった。
天華『この結界はあの剣から出ている黒い霧は外には出ないように改良しました。ついでに、ご家族に被害が出ないように人の行き来も止めてます。この結界内にいるのは私達だけです。なので存分になさってください』
(道理で、大人達が誰も僕を止めに来ないと思った・・・(*´Д`*))
どうやら、天華達が僕が“アイツ“をボコり始めたぐらいから気を利かせて結界を張ってくれていたようだ。
(ふふっ、ありがとう皆んな♪・・・じゃあ、もう、いいよね?意味の分からないことばかり言うから、このまま話も聞いても理解できなさそうだし、ストレスが溜まる一方だもん、ストレスは溜めるものじゃなくて発散するものだもんね!)
僕はお礼を言って、先程までとは様子が違う“アイツ“を今から“本気“でボコる事にした。今までみたいに手加減しながら、話を聞く事はもう諦めたのだった・・・そして、僕は神々から使い方を伝授してもらい借り受けた“神力“を最大出にして、全身に身に纏った。
互いに本気でやり合うことに決めた僕達は相反する力を纏い、結界内はその力の余波の衝突で風が吹き荒れていた。その風は“アイツ“が纏う力が呪詛の思念体、怨念と魔力の穢れの瘴気と不浄の力とが織り交ぜられ“邪気“となってドス黒いオーラを放ったものと、僕が纏う神々から借りている“邪気や不浄“を浄化することのできる“神力“の虹色のオーラが、互いの相反する力を相殺させていることでこの風が巻き起こっているので、限られた狭い結界内は物凄い風が吹き荒れているのだった・・・
夜月『アトリー、向こうも本気だ、油断するなよ・・・』
(うん、分かってるよ、でもさ、僕ね、さっき気づいちゃったんだけど、“アイツ“、僕の“スキル“だけじゃなくて、“身体的な能力や体質、神々の加護の詳しい内容“まで知らないんじゃ無いかと思うだよね。だから“アイツ“は僕の“情報開示“みたいな“鑑定系スキル“、てか、むしろこの世界の“スキルや属性魔法“は持ってないんだと思うんだけど、どう思う?)
天華『それは、ありえますね、“ヤツ“は高位な神だと言っても、他世界の神ですから、この世界の神の許可も正式な手順も踏まずにこの世界に入ってきていたので、この世界のシステムに適応できてない可能性は十分あります。それに、“ヤツ“は神としてやってはいけない事をしているので、その“神格“は地に落ちている事でしょう。“神力“もちゃんと使えているかも怪しいですね。あの様子ではもう自分で自分の見守るべき世界へ戻れなくなっているかもしれません・・・』
(・・・それって、神としての力が衰えてこの世界からも出れなくなった?て事?(´・Д・)」神様の力ってそう簡単に衰えるものなの?)
天華『えぇ、生まれながらの邪神は別として、数多ある世界の守り神達は神として最低限してはならない事が存在します。それは、どこの世界であっても非道な手段で、了承もなしに人の体を操ってはいけない、乗っ取ってはいけない、人の人生や魂を勝手に狂わしてはいけない、ましてや世界を壊すような力を行使してはいけない。他にも様々ありますがこのような感じのものが神々での間にある“法“で取り決められてます。
その“法“を犯すと神は“神格“、神としての“格“や“神力“がどんどん落ちていき、最終的には神としての資格を失い“邪神“として、他の神々に消滅させられます。“ヤツ“は今、この世界では“邪神“として扱われていますが、今はまだ正体を掴ませていないこともあり、どこの世界の守り神かが判明しない事で本当に“邪神“どうかも確認できてませんから、完全に消滅させる事は無理です。ですがこの世界から追い出すことは可能です・・・』
僕の気づいたことを話してみると、やはりその予想は当たっていて、天華の説明を聞き、さらに純粋な疑問が湧いた、神は神として永遠に存在し続けるにはそれなりの制約があるようだった。だが、それも詳細を聞いてみれば、いたって道徳的で常識的な法であった事は意外だったが、神の処罰にも明確な証拠ないとできない事に1番驚いた。
(へぇー、だから、ティーナちゃん達はこの力を僕に託してくれたんだよね。僕に“アイツ“をボコらせる機会をくれて追い出すために・・・)
天華『・・・ボ、ボコらせる、のはちょっと違うと思いますが・・・まぁ、まだ相手がどこの神かわからず、消滅の許可も得られないので、神々が直接手を出せない代わりにアトリーに“ヤツ“を追い出して欲しいってのは本当ですよ・・・』
(うん、じゃあ、僕は頑張って“アイツ“をこの世界から追い出すよ!それに、“アイツ“をボコって弱らせれば、もう2度とティーナちゃん達の世界に入ってくる事はできなくなるんじゃないかな?だからね、思いっきり“アイツ“をボコるよ!)
天華『・・・・う、うーん、弱らせるのはいい事なんですが・・・・まぁ、怪我をしない範囲でなさってください』
(はーい♫( ´∀`))
天華にちょっと呆れられてしまったがボコるのを止められなかった事は良かった。満面の笑みで返事を返し、僕は“アイツ“と向き合った。
(あ、そうだ、“アイツ“は僕達のステータスが見れてないのは分かったけど、僕が向こうのステータスを見る事はできるのかな?(´・Д・)」)
夜月『どうだろうな、“ヤツ“は自分の正体を隠したがっているからな、その辺の対策はしてあると思うが・・・』
(そうだねぇ、この世界のシステムに適応できてないと、やっぱり無理かな?でもさ、今、“アイツ“ってこの世界の住人に憑依してるんでしょう?それってこの世界のシステムの中に自分から入ってきたって事だから、意外と“アイツ“の正体がわかるかもしれないじゃん?それに、“アイツ“はさ僕のスキル構成を全て知ってるわけじゃなさそうだしね、ほら、僕にはティーナちゃんから貰った“情報開示“のスキルがあるから、対策されてても見破れると思うんだ、試してみる価値はあると思わない?)
夜月『ふむ、それは確かに・・・』
ジュール『おー、それいいかも!私は賛成!』
天華『そうですね、やってみて損はないでしょう、今なら神々のお力もお借り出来てますし・・・』
(よし!ではやってみましょうか!(*゚∀゚*))
ちょっとした思いつきだったのだが皆んなが賛成してくれたので、僕は“情報開示“のスキルを使用した、それが意外な結果を招く事になるとも知らずに・・・
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