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第3章 少年期 学園編

212話 結界の破壊 第三者 視点

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?「緊急伝達、緊急伝達、通信具を持つものはすぐに周囲と情報を共有せよ。現在、アトリー様の救出についての新事実が判明、アトリー様の生存が確証に変わった、今、現在での優先順位がアトリー様の救出が最優先となったため、この通信を聴いたものはカシミール様のもとに集合せよ」

「「「「!?」」」」

カイル「旦那様・・・」

アイオラト「あぁ、聞こえた、行こう、カシミールが何か掴んだのかもしれない・・・」

 突然の通信に驚いたが、今やっと自分達が気づいたアメトリンの生存だが、魔法陣の近くにいるわけでもないカシミールが別のアプローチから気づいたと言うことは、自分達よりももっと詳しい情報を持っているだろうと判断し、アイオラト達はすぐさまカシミールとの合流するために動いた・・・

・・・そして、魔道具を全て剥ぎ取り気絶させた“セルパン“をこの国の騎士に預けて、数分後には礼拝堂入口から見て右側中央の2階部分を支える柱の物陰に、デューキス家一家が全員集合していた。全員が集合したのを確認して、カシミールから結界と魔法陣についての詳しい情報が共有された。

カシミール「・・・と、言う事であの結界は何らかの誤作動を起こし、スキル、もしくは加護の効果が現れたからではないかと・・・なので今アトリーは少しづつですが怪我を回復させていると思われます。私達全員は今の今までアトリーの魔力が消えたことで息絶えたものと思っていましたが、それはあの結界の効果で感じる事ができなかっただけで、あの時アトリーは気を失っていたのだと思います。あの出血量でしたから勘違いしたのは仕方ないですが、逆にあの出血の量が原因で貧血になり気を失ったとも考えられます」

アイオラト「・・・そうか、それで、聖獣様方も急にあの結界を攻撃し出したと、そして、向こうはアトリーの能力を詳しく知らないから、あの結界の効果を一切の魔法の使用をできなくすることに特化させて、スキルに関しては制限に留めていたんだな・・・それならやはりあれは私達だけの見間違いではなかったんだな・・・」(元々アトリーのあのスキル、“超回復“がわずかながら機能していて、その事に気づいていた聖獣様方は弱っているアトリーを助け出す機会を探していたところに、カミィの言う魔法陣の効果の消失がきっかけで、スキルが正常に動き始めたことでアトリーが再び起き上がり、危険に晒される前に聖獣様方が動き出したと言うところか・・・)

 “超回復“のスキルに関してはあえて言葉に出さずに説明したカシミール、話を聞いたアイオラトはあそこで自分が見た物が現実であり、結界の効果が事実であったからこそ、アトリーは今も生きていて不思議ではないと納得したのだった。

カイヤト「何かあったんですか?父上?」

アイオラト「あぁ、先程、魔法陣のそばまで行った時に結界内で倒れているアトリーの体が微かに動いていたのを見たんだよ」

「「「「「!!」」」」」

カイヤト「では、アトリーは着実に回復してきているんですね?」

シトリス「えぇ、この目で見たわ、あの子は、アトリーは、ちゃんと息をしていた・・・」

 カシミールの説明を聞いて自分の淡い願いが現実になったことで、シトリスは嬉しさで声が震え、今にも泣き出しそうに瞳を潤めていた。

アイオラト「シリー・・・・・、よし、そうなれば今は一刻も早くあの結界を消すことが最優先となるね、シリー、僕達の可愛い息子を取り戻そう、全力で・・・」

 今にも泣きそうなシトリスの肩を抱き、喜びを分かちあったアイオラトは、気持ちを切り替え次のやるべき事に前向きに目を向けたのだった。その気合の入った言葉にデューキス家一家全員が強く頷いた。そうして気合を入れて段取りを話し始めたところに、この国の国王であるサフィアス王が宰相と総騎士団長と軍部の高官を連れてこちらに来た。

サフィアス王「ラト、何かあったのか?報告してくれ、それに何か手伝える事があるなら手伝おう」

アイオラト「・・・それがですね、・・・・」

 デューキス家だけで固まって何か話し合いをしていることに気づいたサフィアス王は、自分達が行った反撃作戦が落ち着いたこともあり、今回の襲撃事件の関係者達は残すところ、あの結界の中にいる“フィズィ“だけとなった事で、デューキス家に一任していた“フィズィ“の捕獲に関しても、何かこちらでも手伝えることはないかと思って声をかけてきたのだった。
 その申し出にアイオラトはアトリーの特殊なスキルに関しては話さず、神の加護で治癒能力が高くなっているようだと誤魔化して簡潔に説明をし、今からデューキス家全員であの結界を破る作戦を練っていたことも明かした。

サフィアス王「そうか、よかった…アメトリンは生きていたのだな・・・よし!その結界を破る為の総力攻撃に我々も参加しよう!」

 と、作戦の参加を即決したサフィアス王に宰相と総騎士団長は頭を抱え、軍部の高官は任せろと言った感じで気合を入れていた・・・・

 そうして王国側からの申し出で、武術に秀でた騎士団員や軍人達が集められ、その他の人員も捕獲対象となる“フィズィ“を取り逃さないために、魔法陣をぐるっと囲む事になった。その指示は素早くなされ、包囲が完了すると結界を破る作戦が始まった。

サフィアス王「さて、後は其方達だけとなった、良い加減諦めて大人しく捕まるんだな」

 完全に魔法陣とその2人を包囲した際に、今まで一定間隔で結界に攻撃を加えていた聖獣達に、作戦の内容を口頭で伝えたことで、聖獣達もその事を了承し、今はデューキス家の公爵夫妻の横に移動している。周囲にはもうすでに邪魔をする侵入者達はいなくなり、静かになった礼拝堂内、そんな静かな空間の中、降伏を促したサフィアス王。

フィズィ「ふんっ!降伏?何故そんな事をせねばならん?お前達のような者達に我を捕まえようなど片腹痛いわ!それに我はコレの魂を刈り取る事ができれば、こんなところには要はない!他の者達の事などどうでもいいのだ!雑兵どもの悲願とやらは叶わなんだが、それももう我には関係はない!そうだ!丁度いい!今ここでお前達を無惨に殺したならコレはさぞ悲しみ絶望するであろうな!その為にはコレを起こさねばならんか?」

 ドカンッ!

ジュール「ガヴゥーッ!!」

フィズィ「ふっ、なんだ?愛しい主人を待ちきれないのか?それとも自分の命を先に差し出したかったのか?…もしやこの結界を壊す事ができるなどと思ってはないな?」

 ドガンッ!!ガインッ!!ガリガリッ!!

 自分以外の人間を見下し嘲笑う“フィズィ“、倒れて意識のないアメトリンを起こしてさらなる恐慌に出ようとした。その時の顔はアメトリンの顔が絶望に染まる瞬間を思えがいたのか愉悦に浸っていた。その表情を見た人達は嫌悪感で眉を顰めた。そんな時、聖獣である“ジュール“が再び結界に体当たりをした。その表情は怒りに満ち、今にも“フィズィ“を噛み殺さんとしていた。ジュールは“フィズィ“の言葉にさらに怒りが増したのか攻撃を続け出す。それを皮切りに残り2匹の聖獣達も攻撃に参加し出した。

フィズィ「あはははははっ!本気か!?無駄なことはやめることだ!」

サフィアス王「っ!総員!!攻撃開始!!」

「「「「「おお!!」」」」」

 計画通りとはいかなかったが、本気を出している聖獣達と力を合わせる事を優先し、人間達の総攻撃が始まった魔法陣の全方位から、剣や斧、メイスやハンマーなど、物理攻撃に特化した人員達が思いっきり結界に武器を叩きつけている。

 ガンッ!ドコッ!カキンッ!カインッ!ガキンッ!ドスッ!バンッ!!

サフィアス王「くっ、あの結界、思った以上に硬いな、それに、魔法が無効化されるのが痛いな・・・」

宰相「・・・そうですね、王城の方のシベラス殿に連絡を入れて増援を呼びますか?」

 今だにひび一つ入る気配もない結界を見上げながら悔しそうな声を出すサフィアス王に、宰相が王城で留守番をしているアメトリンの叔父のシベラスに増援頼むかと提案してきた。

サフィアス王「そうだな、このままではその内限界が来るだろうからな、増員を要請した方がいいか・・・だが、聖獣様方は何か焦っておられる、悠長に増援を待ってる時間が無いかもしれんな、しかし、何を焦っておられるかが理由がわからないな、こんな時、意思疎通が出来ればいいのだが・・・」(結界を壊せるとしても、壊せなかったとしても、今からの要請では色々と間に合わないかもしれんな・・・、特に結界が壊せなかった場合、アメトリンが犠牲になりあの“フィズィ“も取り逃す結果になったら、この国は神々から見放され滅びる可能性が高い・・・)

?「陛下、増援を連れてきました。この状況はどういうことですか?」

サフィアス王&宰相「「シベラス!?」殿!?」

 増援のタイミングと、聖獣達との意思疎通について頭を悩ませているサフィアス王の所に絶妙なタイミングで、救世主のようにシベラスが増援を引き連れ礼拝堂に入ってきた。

サフィアス王「ど、どうしてここに⁉︎しかも増援まで・・・」

シベラス「あぁ、それはですね、襲撃があった時点でここに配置していた影騎士からこちらに緊急連絡が入りまして。色々と聞いた結果、人員が足りなさそうだと思いまして、勝手ながら武術が得意な者達をかき集めて連れてきました。この件の処罰は後ほど、どの様にも罰してください」

 驚いた表情のサフィアス王が理由を聞くと、いつもとは違い、少し落ち着かない様子で軽い説明をし、今回のサフィアス王の許可も無しに人員を動かしたことの責任はちゃんと後で取ると申し出たシベラス。

サフィアス王「良い、今、ちょうど増援を要請しようとしていた所だ、聖獣様方の様子から見て、間に合わぬかもと思って諦めようとしていた所にシベラスが連れて来てくれたからな、今回の件は不問にする」

 だが今回の増援派遣は時間との勝負だと思われていたことから、無断の増援派遣の罪は問わないとサフィアス王は宣言した。

シベラス「有難う御座います、陛下。我が甥、アトリーの窮地と聞き、いてもたってもいられませんでしたので、急いできた次第です」

 緊急の連絡で聞いた報告にアメトリンの負傷、もしくは生命の危機をあったのだろう、可愛がっている甥の生死を心配し、最大限できる事をして、ここにやって来たシベラスはいつもの冷静さを保つのは難しかったようだ。

サフィアス王「そうか…、そうだな、それはさぞヤキモキしただろう」

シベラス「はい、それで、アトリーは・・・」

サフィアス王「大丈夫だ、今、生きていることは確認が取れている、だが、いまだあの結界の中に閉じ込められていてな、今は生きているが一緒に中に入っている者が問題でな・・・」

 シベラスの心情も無理はないと思ったサフィアス王は、現在の状況を詳しく説明し、シベラスが連れてきた増援にも結界の破壊に参加するようにと指示を出した。増援できた人員達は素早く指示に従い、結界の攻撃班に加わり、シベラスは聖獣達の焦りの原因を推測し始めた。

シベラス「・・・そう言うことですか。もしかしたら、聖獣様方はその“フィズィ“なるものがアトリーの傷が癒えて意識が戻った時に、ここにいる全員に攻撃する事が分かっているから、そんな光景を見せる前に早めにアトリーを救出した方がいいと思っているのでは?それに気絶しているアトリーに近づき再び害されるのを危惧して注意を引いたのではないかと・・・」

サフィアス王「あぁ、確かにな、我々を殺す瞬間をアメトリンに見せつけると言っていたからな、アトリーの心を守る事を優先しているのか・・・」

シベラス「聖獣様方はアトリーの事を1番に考えますからね」

宰相「そうですね、その観点から考えると聖獣様方の行動の意味も意外と簡単にわかりましたね・・・私達はまだまだ聖獣様方のお心の理解が足りなかったと言うことですね」

 シベラスの見解に納得の表情で話すサフィアス王と宰相は、心のうちで自分は聖獣達の心情へ理解度をもっと深めなければな、と心の中で反省していたとかいなかったとか・・・

シベラス「それと、あの結界ですが今、本当に魔法が全く効かない状態なんでしょうか?魔法陣の発動で何らかの影響が出て、加護もしくはスキルの発動ができるようになったとするならば、魔法攻撃への耐性も変質もしくは低下しているのでは?例えば、特定の魔法属性が攻撃が通るなど・・・現在は結界に込められた魔力量以上の物理的攻撃力を加える事での破壊を優先してますが、魔法で生成された物質、岩や氷などでの攻撃も無効化されるのでしょうか?」

サフィアス王&宰相「「!!」」

宰相「そ、それは盲点でした。最初にあの結界が展開された時に魔法での破壊を試みて全て通じなかったことが頭にあって、今の状態の結界を魔法攻撃することを失念していました」

サフィアス王「そうだな、他の魔道具でも魔法を封じられていたからな、すっかり固定概念に囚われていたようだ。よし、すぐに後方に下がらせた魔法部隊も呼び戻して、試しに魔法攻撃を加えさせてみよう!」

シベラス「陛下、その必要はないですよ、試すだけなら私達デューキス家の者達で事足ります。と言うかやらせてください」

 シベラスのちょっとした疑問から、自分達の中から魔法攻撃は聞かないと言った固定概念に気づき、状況が変わったのだから試す価値はあると早速、礼拝堂入り口付近に移動してもらっていた、各国の要人達の護衛に回った魔法が得意な人員達を呼び戻そうとしたサフィアス王に、シベラスは自分達デューキス家にその役割をさせて欲しいと前のめり気味に頼んだ。

サフィアス王「あ、あぁ、確かに、デューキス家ほど、魔力が強い者達は他にいないか・・・うむ、分かった、私が許可する一度やってみよ」

シベラス「有難うございます。陛下・・・では早速・・・」

 サフィアス王の許可が出ると、すぐさまそう言ってデューキス家が固まって攻撃をしている場所に向かってシベラスは歩き出した。その行動の速さに驚き、若干、呆れながらもその後ろをついていくサフィアス王と宰相達。

 こうして、シベラスがデューキス家の攻撃部隊に合流すると、先程の話の詳細を説明し、それぞれが得意とする属性魔法の最大火力の攻撃を、連携をとりながら結界に加えてみることになった。その際に聖獣達に当たらないようにする為に聖獣達に攻撃する前には声をかけて、避けてもらうことにした。

 そして、デューキス家一族全員が魔法陣の真正面に並び、魔法攻撃の体制に入った。すると何かを察したように聖獣達が攻撃をやめて、横に避けた。

フィズィ「ん?・・・・なんだお前達?何をするつもりだ?まぁ、何をしても意味はないだろうがな・・・・」

アイオラト「あまり私達を舐めないことだ!全員!撃て!」

 アイオラトの号令で全員が詠唱破棄で効率よく魔法を最大威力で放った。

シーライ「“フレイムキャノン“!」カイヤト「“ミシルトルネード“!」ボウッ!!ゴォーーッ!!

 シーライの打ち出した火魔法をカイヤトの風魔法が威力を増大させて結界を加熱する。

ヘリオラ「“ウォータークリフ“!」シベラス「“コールドエイジ“!」ザパァー!!ジューッ!シューッ!ピキピキピキッ!ピキッ!!

 室内の気温を一気に上げ、今にも発火しそうなほど熱せられた結界に、ヘリオラが水魔法の壁で結界全体を覆った、そしてすぐにシベラスがその水の壁を氷魔法で凍らせ急激に結界の温度を下げた。

カシミール「“ロックランス“!」
アイオラト「“サンダーボルト“!」
シトリス「“ソーンキャノン“!」
インディ「“シャドーブレット“!」
アメトリア「“アクセル“!」

 ドッ!カァンッ!!!

 カシミール、アイオラト、シトリス、インディのそれぞれが“土、雷、木、闇の属性魔法“の一点突破型の攻撃魔法を放った。その上からアメトリアの無属性の支援魔法で速度を早め、高速で凍りついた結界に突き刺さった。

 ピキッ!ピキピキッ!

 深く突き刺さったように見える攻撃魔法の数々、するとどこかから亀裂の入る音が聞こえてきた。

フィズィ「なっ!バカなっ!?そ、そう簡単にはこの結界が破れるはずがない!誰も、誰も、我の邪魔はさせん!!これの魂は我のものだ!!!誰にも渡してなるものか!邪魔されるのなら、いっその事ここで・・「ガオォーーンッ!!」「ドッガンッ!!!」なっ!」

 バッキンッ!!ビキビキビキッ!!

フィズィ「な、なんだとっ!!?」

 デューキス家一族の全力の魔法攻撃で、自慢の結界に亀裂が入り出したと思った“フィズィ“が焦り、恐慌に出ようとした時、今度こそ、トドメを刺すかのように、何かの力を纏い身体全体が光り輝かせながら、結界の一点を力一杯に攻撃を加えた聖獣達、そして、今、この瞬間、明確に壊す事ができないと思われた結界に大きな亀裂が入ったのだった・・・・













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