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第3章 少年期 学園編
161話 スキル三重奏
しおりを挟むヘリー姉様「分かったわ。最初あった時から、この方は気に食わない態度だったけど、夏の長期休暇の少し前から、こんな風に感情を露わにする事が増えてきていて、おかしいなとは思っていたの。でも今日は今まで以上に様子が変だったから、様子見をしていたのだけど。アトリー達の話で違和感の正体が分かってスッキリしたわ。・・・さぁ、アトリー、こっちは気にせず、この男を利用した人を炙り出してやりなさい!ライ、アトリーの守りは任せるわよ」
ライ兄様「あぁ、言われなくても分かっている、アトリー、邪魔させないから心置きなくやれ」
「はい!では始めます!」
ヘリー姉様の了承も得られ、ライ兄様に頭を撫でられた。上の兄弟2人や皆んなに見守られて、スキルの三重使用を開始した。
呪詛を受けた男を視界にいれ“精霊視スキル“を発動。
(うん、見事に呪われているね・・・)
蛇の形した“思念体“は相変わらず、男の全身にまとわりついていて、不気味な黒い霧状の“思念体“を吐き出している。
(なんか、状態がひどくなっている気がする・・・早めに“解呪“した方がいいか?)
天華『そうですね、常人には見えては無いとは言え、“思念体“に長く触れると体に悪いと思われます』
(そうか・・・それなら早急に“術者“を特定しないとね)
男に纏わり付く“思念体“がどんどん増えていっているのに気がつき、男の命に関わる可能性が出てきたので、仕事を早く済ませるために次の段階に進む。
(“思念体“の蛇に“情報開示“、“呪いの塊“って名称か、そのまんまだな・・・これをさらに魔力だけを意識して・・・!、“術者“の魔力らしきピンク色のオーラを確認、判別完了!)
“情報開示スキル“のおかげで“術者“の魔力の判別に成功した。それと元々僕は他人の魔力をその人が纏うオーラのように見えて、その色や印象で見分けている。
*この認識はアトリー個人の感じ方であって、“魔力を見る感覚“は個人の感性によるところが多い。
(なんて、ドロドロした粘着質の魔力なんだろう、気分が悪くなりそうな甘ったるい匂いまでしてきそうだ・・・(*´ー`*)・・・うへぇ~、長く見てらんない、さっさと“術者“を引き摺り出すか・・・)
纏わり付くようなドロっとしたピンク色のオーラに、気分を悪くしながら最終段階である“探索スキル“を発動させることに・・・
(この魔力の持ち主を“探索“・・・・・ん?あれは“探索の糸“?どんどん伸びていってる・・・・)
男にまとわりついている蛇の形をした“思念体“の塊から一筋、細い“ピンク色の糸のような魔力“が伸びてきているのが見え始めた。
*通常“探索“を使用すると探しているものが近くにある時に、半透明な糸が目的のものまで続いているのが使用者には見える。それを“探索の糸“と言う。
よくよく目を凝らすとその魔力の糸はどんどん伸びていき、僕達の周囲を囲んでいる学園の生徒達の群れの方へ進んでていっている。どこまで行くのかと視線で追っていると、野次馬をしている生徒達の間から黄色みの強い金髪が見え隠れしてきて。魔力が見える僕とソルがそちらを凝視すると、手前にいた女子生徒達が何か勘違いしたのか色めき出し、黄色い声で騒いだ。その騒ぎで人が大きく動き、隠れていた金髪の生徒の正体がはっきり認識できた。細く伸びたピンクの“魔力の糸“が、彼女の纏う同じ魔力のオーラに同化するようにくっ付いた。
*この時、この世界で他系統の高位スキルを含めた、スキルの三重使用を成功させたのはアメトリンが世界初だった。歴史に残ってもおかしくない、その偉業をヌルッと達成させるのが“アメトリン・クオリティ“・・・・
「居た・・・」
(あっ!やっぱり“アンジェリカ“センパイだ!)
夜月『大当たりだな』
向こうも自分の目の前にいた女子生徒が騒いでいるのに気づき、こちらを見ていて正面からバッチリ目があった。向こうの独特な“ショッキングピンク“の色の濃ゆい瞳には驚きと焦りの感情が見え、あれは確実に自分のした事を理解していて、それが僕にバレたことを恐れている瞳だった。
(あ、逃げるっ!)
咄嗟にそう直感した僕は・・・・
「“プリズン“」 「「「「「あっ」」」」」「⁉︎、“アースバインド“!」
と、唱え、後ろを向き逃げの体制に入っていた“アンジェリカ“センパイを、とっさに結界魔法で捕まえ、逃亡を阻止した。僕からワンテンポ遅れて、“アンジェリカ“センパイの存在に気づいた、ソル以外の皆んなの声を聞いた。それと同時に、ソルが逃亡を図ろうとしていた男とその取り巻き達に気づき、土魔法で拘束したのが見えた。何やら“アンジェリカ“センパイの逃げると言う行動と連動していたように見える男の動きに、取り巻き達も釣られるように逃げ出した様だ。
ヘリー姉様&ライ兄様「「っ!逃亡者を捕縛!」」
護衛騎士隊隊長「確保っ!」「「「「はっ!」」」」
「「「「「えっ!」」」」」
ソルが捕まえた男達を見て、瞬時に“捕縛“の命令を出したライ兄様達の指示に、今か、今か、と待ち構えていた護衛騎士達が素早く動く。そして、今まで事の成り行きを見守っていた周囲の人達(野次馬とも言う)は、急な展開について行けず、ただ呆気に囚われていた。
次々護衛騎士達に捕まって行く男達を横目に見ながら僕は“呪詛の媒体“を確保するため、自分が捕まえた“アンジェリカ“センパイを結界ごと自分の元に、重力魔法の“レビテーション“で浮かせて持ってきた。
(痛っ!・・・・・・・なんだ今の?疲れかな?魔法も使ったからかな?(-᷅_-᷄๑))
天華『大丈夫ですかアトリー?』夜月『無理をするな、アトリー』
(ん、大丈夫、多分、気のせい)
天華『ならいいのですが・・・・』夜月『違和感があるならすぐに言うんだぞ』
(うん、分かった、心配してくれてありがとう、でも平気・・・・・あ、やっぱり、2人は“魔力の糸“で繋がっている・・・・)
3つのスキルの上に結界魔法を使い、さらに重力魔法を発動したからか、頭に鈍い痛みが走った気がした、すぐに痛みは消えたので気のせいだと思う事にした。それより、“アンジェリカ“センパイと暴言男との間に繋がった、ピンク色の糸をシッカリ確認した。だが彼女の全身から出ている魔力のオーラで、彼女の所有していると思われる呪詛の媒体となるペンダントの所在がハッキリとしない。
(確実にこの魔力はこの“アンジェリカ“センパイの物だと判明したけど、この“呪詛“の大元、媒体のペンダントはどこにあるんだ?首に何か付けてる様な感じはしないし、手に持ってるのかな?アレを確保して確実に“解呪”しないとまた被害が出るよね?)
キョロキョロとセンパイの姿を見回したが、それらしい物が見当たらない。
天華『そうですね、姉君の証言からすると長期的に徐々に呪詛をかけているようです。なので今もあの男が錯乱している事から、肌に離さず持っていると思われます。それとさっきの話と状況から呪詛の効果に検討がつきました。多分ですが”思考認識の改変“が、この方の行った呪詛の効果だと思われます』
(“思考認識の改変“?・・・自身の意思決定の根幹になる思考、“考える能力の認識“を改変されているってこと?・・・あの男の言動を見た感じ、自身の立ち位置を考えない自分本位な行動が目立つ、“考えるべきものの優先順位の基準“が変わっていると言う感じか?・・・物事の重要性の基準を乱す“呪詛“?・・・それであんな支離滅裂で常識のない言動をくり返していたのも“呪詛“の影響か?・・・考える能力が変化すると同時に状況判断能力も低下していたようだ。それで、ほんの僅かずつ思考能力を低下させていたのか・・・表面上に違和感が出づらい効果・・・厄介だな・・・はっ!そんな事考えている場合じゃなかった!あの男の人の限界が近いんだった!)
“呪詛の効果“の内容に危険性が高いことに気づき、眉を顰めていたが彼女を移動させた本来の目的を思い出し、急いでペンダントを探す事をヘリー姉様に報告。
「ヘリー姉様、“呪詛“の媒体となるペンダントを早急に取り上げて“解呪“しないと、あの男性の命にかかわるかもしれません。なので今からペンダント捜索を優先しますので他の対応をお任せしていいですか?」
ヘリー姉様「えぇ、かまわないけど、大丈夫?疲れてない?無理はしないでね?手伝える事があったらなんでも言って?」
「はい、大丈夫です。でもまぁ、この作業もこの方が素直に“呪詛の媒体“を出してくれれば話は楽なんですけどね・・・・でも、見た感じ話を聞いてくださる雰囲気じゃないんです・・・」
苦笑い気味に見た先には僕の結界魔法に捉えられながらも、その中で何やら悪態をついて、暴れ叫んでいる様子の“アンジェリカ“センパイの姿が映っている。
ヘリー姉様「・・・そうね?・・・あら?声が聞こえないのだけど、これも結界の効果?」
「あ、はい、そ、その僕がこの方と喋るのが嫌だったのか、捉えると同時に無意識に音を遮断する結界を展開していたみたいです・・・」
(多分、無意識のこの人とは話しが成り立たないと思ったんだろうな・・・(-᷅_-᷄:))
ジュール『そうだよねぇ、あの人うるさそうだし』
春雷『どう見ても、会話は成り立たないと思いますし・・・』
雪花『ですね・・・』
天華『仕方ありませんよ、以前もそんなに会話は成り立ってませんでしたし・・・』
夜月『あの様子じゃ、また自分は関係ないとか、被害者ズラして言ってるんだろう。気にするな、アトリー』
(ふふっ、大丈夫だよ、気にしてない)
顎に手を置き顔を顰めていると、ヘリー姉様が無言で頭を撫でてくれて、夜月達が僕を慰めるように僕に体を寄せてくる。
彩ちゃん「それ、無意識にしてても正解かもね、絶対、人の話しを聞かなそうだもの・・・」
夢ちゃん「なんか言ってるんだけど、絶対、悪い言葉使ってるのが分かるぐらい凄い表情してるもんね・・・」
仁「な、なんか、顔怖いな・・・」
ロシュ君&イネオス達「「「「で、ですね・・・」」」」
と、皆んながドン引きしながら同意するほど、以前とは異なる人相の“アンジェリカ“センパイ。
(確かに、あの、以前のような、ゆるふわ夢見系女子の面影は一切無いな、・・・・今はどう見ても“鬼女“だろうこれ・・・((((;゚Д゚)))))))怖っ・・・)
ソル「・・・山に生息している、“クィーン・マウンテンエイプ“に似てますね」
*“クィーン・マウンテンエイプ“とは尻尾のない山猿の雌ボス猿の事・・・・
「「「「「ぶふっ!」」」」」
(ぶふふっ!ソルの表現が辛辣!Σ('◉⌓◉’))
ジュール『確かに似てるかも!』
結界内で暴れている“アンジェリカ“センパイを見て猿の魔物に例えたソル。どう考えても悪意しかない例えをするソルと、それに賛同するジュール。どうやら、ソルとジュールはあの一件以降、彼女の事が嫌いらしい・・・
「んん“っ!じゃあ今から呪詛媒体のペンダントを探しますね!」
ソルの発言で笑いのツボに入った人達、そこは放置して自分は作業に入る宣言をした。
(さ、さて、気持ちを切り替えて、作業に取り掛かりますか!ϵ( 'Θ' )϶まず、さっきと同じ要領でペンダントのある場所を確定するには魔力だけを辿るのではなく、魔力と“思念体”、どちらも同時に“情報開示”で“術者“の判別し、ペンダントの所在を“探索”で探り、辿る。それなら彼女自身の魔力のオーラに“探索の糸“を誤魔化される事はない、はず、てか最初からそれをしとけば良かった・・・・(。-∀-))
天華『しょうがないですよ、最初は個人の特定を優先しましたから、この様な状態は予測できませんでしたし』
(うん、まぁ、そうなんだけどね、じゃあ始めようか・・・・)
再び呪詛を受けた男を視界にいれ“精霊視スキル“を発動。
(!、また、“思念体“が濃くなってる・・・)
男の全身にまとわりついている蛇の形した“思念体“は、最初より濃ゆく不気味な黒い霧状の“思念体“を吐き出している。
(これは、思ったより呪詛の症状の加速が早いな、“呪詛の媒体“を特定できたらすぐに“解呪“をかけないと危ないね)
天華『この侵食された状態まで行くと“解呪“だけでは元に戻らないかもしれませんね』
(えっ、そうなの⁉︎手遅れ⁉︎)
天華『いいえ、手遅れではありませんよ。先日、平民街の教会で見かけた“瘴気“。あれと同じようにその黒い霧のような“思念体“を、心の健康を害する“不浄な穢れ“として、聖魔法の“ピュリフィケーション“で“浄化“すれば、“思念体“に侵食された精神と体が綺麗になりますよ。ですが“呪詛の媒体“は先に“解呪“しないといけませんよ、じゃないと“呪詛“が止まりませんから』
(そうなんだ、分かった!“呪詛の媒体“を見つけたらすぐに“解呪“して、次にあの男の人を“浄化“すればいいんだね!)
天華に聞いた解決方法を早く実行させるために僕は作業を進めた。
(“思念体“の蛇に“情報開示“・・・・・やっぱり、“呪いの塊“って出たね・・・)ズグッ(っ?)
夜月『どうした?アトリー』
(ん?何でもない・・・さっさと済まそう、授業も始まっちゃうし。)
夜月『・・・そうだな、いつもより早く来たとはいえ、そろそろ時間になるな』
“情報開示“を使った時に目の奥で何か違和感を感じたが、すぐにその違和感もなくなったので、時間も押していることもありあまり気にしないで、“思念体“の詳細に目を通した。
(だよね、しかし、相変わらず不快な魔力を纏った“思念体“なんだ・・・気持ち悪っ!(`_´)・・・うーん、この、“呪いの塊“って表示は呪詛の“思念体“を鑑定する時のデフォルメかな?でも集中して“見てみる“と表示が文字化けして別の表示が出てくるんだよね・・・これって“呪詛“の補助をしている“蛇の神“の隠蔽工作のせいかな?それにさっき“魔力だけを見る“って強く思いながら見ると、“思念体“の中から個人の魔力が出てきて、魔力の色がよく分かったんだけど・・・あの状態でさらに“深く見てみたら“個人名が判明したのかな?)
天華『どうでしょうね?その“蛇神“の正体はうまく隠されたようですが、“情報開示“の能力は基本、使用者の知りたい事を優先的に引き出すものですから、やればできるんではないでしょうか?先程の魔力の判別がいい例だと思いますよ?』
(あーね、じゃあできるね、“蛇神“の詳細は僕が人間だから勘破する事ができないのか?・・・まぁ、今はそれはいいか、今は“この思念体、呪いの塊“の出所を探らなきゃね。“探索“・・・・出てきた・・・)
今回は“思念体“の黒いモヤ自体が細く伸びて糸状になり、“アンジェリカ“センパイの方に伸びていく・・・
(うへぇ、“思念体“が伸びてあの魔力の色が見え隠れしてさらに気持ちわるい・・・)
伸びていく“思念体“の黒いモヤの間から、纏わり付くようなドロっとしたピンク色のオーラの魔力が見え隠れし始めた。どんどん伸びていく糸の先に彼女の手首がある・・・
(あれ?今回はネックレスじゃなかったのかな?)
伸びていった“思念体“の糸がピタッとくっ付いたのは、“アンジェリカ“センパイの手首だった。僕達が予想していた物とは違ったが、彼女の手首をよく見れば、制服の袖の端からわずかに銀色のチェーンのブレスレットらしきものが見えていた。
「ブレスレット・・・あれが今回の“呪詛の媒体“か、前回のネックレスに付いていたペンダントトップより小さいね、魔力補助の魔石もサイズに合わせて小さいから、呪詛の威力も小さくなったのかな?・・・・それにしても、あのブレスレット、禍々しいほど“嫌な気“を放ってる・・・」
“呪詛媒体“のブレスレット自体は、“呪詛“を実行している状態なので、あの気持ち悪い“思念体“を纏ってはいなかったが、見れば見るほど気分を悪くさせるような“嫌な気“を放っていた。自分でも表現できないような不快感に眉を顰めた。
ソル「ブレスレットですか。・・・回収しますか?アトリー様?」
「・・・いや、あれに素手で触れて平気とは断言出来ないから、この状態のまま、あのブレスレットを“解呪“する。・・・しかし、“あの人は何がしたくてタキトゥス子息を“呪詛“で呪ったんだろう?“・・・・・『ピロリンッ、スキルが新たな進化を遂げました』えっ⁉︎「ピキピキッ」ぐっ!「パキッン‼︎」あ“ぁっ!!」
「「「「「えっ⁉︎」」」」」
ふと思った“疑問“、その“疑問“が僕が使用していた“2つのスキル“に進化をもたらした。だがそれが僕自身に壮絶な痛みを伴うとは誰も予想は出来なかった。それがたとえ神であったとしても・・・
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