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第3章 少年期 学園編
140話 神職とは?
しおりを挟む(聞こえてんぞ!そこ!o(`ω´ )o言い寄られる僕も見になってみろ!あんなのに迫られたら、うざったいの何者でもないんだからな!)
と、僕がぷんぷんと怒るのは先日お出かけした先で起こったことが関係しているのであった・・・・ーーー
ーーーー・・・新学期が始まる2日前の平民街での出来事・・・・・
その日、僕達はマルキシオス領で交わした約束で“王都の教会・聖堂“の見学に来ていた。本当は貴族街の中にある“神殿“にも行こうとしていたのだが、何やら神殿内の改装中との事で、結局、平民街の南西地区にあるリトス教の“教会“に行くことになった。
*“神殿“と“教会・聖堂“の差の定義とは・・・・
まずこの世界の宗教組織のリトス教が定めた規定では、「“神殿“はある程度の“神聖さ“(聖域とまではいかない“パワースポット“みたいなもの)があり、大司教が駐在する場所である」とされている。だから国によってそれが1ヶ所だけじゃない時もあるし、全くない場合もある。なので“神殿“と定義されない場所にあるリトス教の建物は、すべて一纏めに“教会もしくは聖堂“と呼ばれている。(と、お出かけ前に父様から教えてもらったよ!)
まぁ、そんな感じで訪れる事になった教会。当日は僕とソル、行きたいと言った仁達はもちろん、そこにイネオス達が加わり、引率役の母様とセラスさんも含めて合計10名が参加。それとお供は公爵家の使用人のリアさんを筆頭にオーリーとカインがついて来て、他数名のお世話役と護衛騎士が合計15名とお出かけの総計人数は25名と大所帯になったものの、行きの道中は何の問題も起こらなかった。
「へぇ、ここら辺は大通りから離れているから、住宅の方が多いと思ったけど案外店舗も多いですね」
南門の大通りから少し離れた場所にある“教会“は、下町感がある街並みの商店街の1番奥にあった。遠目に教会が見えてきてよく見ると大きさは貴族街の“神殿“に比べると一回り小さかったが、どの貴族領の領都の“教会“よりは大きかった。(さすが王都の教会だけはあるな)
「あれ?教会の前に人だかりができてる・・・何してるんだろう・・・」
母様「あら?“炊き出し“を行ってるみたいね。でも今日は奉仕活動の日だったかしら?それにこんな所で“炊き出し“をするのは珍しいわね?」
と、母様はあの人だかりを見て不思議そうに頭を傾げていた。
「“炊き出し“ですか?」
母様「えぇ、そうだと思うのだけど。いつもなら貧民街、そうね生活がお金に困っている人達がいる場所で、通常なら行っているものなのよ。なのに今日は教会前でしているわ。何かあったのかしら?」
(ふむ、貧民街か。スラム街のことだよね、まぁどう見てもここら辺はスラムと言えない。それなのにこんな所で炊き出しする意味あんのかね?てか、この世界の宗教も慈善事業として食糧支援の炊き出しをしてるのか。しかし、いつもとは様子が違うようだけど、何かトラブルでもあったんかしら?)
何やらトラブルか?と注意深く見ていると護衛騎士の隊長が指示を出し、教会のだいぶ手前で馬車を停車させた。それと同時に護衛騎士の1人を教会に走らせ様子を見に行かせた。
暫くすると様子を見にった護衛騎士が戻って来て現状を隊長に報告。その報告を受け隊長は母様に詳細と共にこの後の行動の指示を仰いだ。
母様「・・・・まぁ、そうなのね、・・・・・アトリー、今日は教会の方にリトス教の高位な神官様がいらっしゃってるそうなの、それで急な奉仕活動をなさっているらしいわ。炊き出しは始まったばかりのようだから時間が掛かりそうよ。馬車を止める所もないそうなの、だから今日の訪問は諦めて日を改めましょうか?それとも少し歩くけど、ここで馬車を降りて炊き出しを避けて教会に行く?」
「どうする?」と、言った感じで聞いて来たので。
「ここで降りて歩きます、それと炊き出しの様子を少し見てみたいです」
(前世で住んでいた所では慈善事業の炊き出しなんて見たことなかったんだよね、新年のお祝いの“振る舞い酒“ならぬ“振る舞いぜんざい“なら並んだことがあるけどね( ・∇・))
ジュール『なあにそれ?』
(えーっとねぇ、日本ではね新年に前の年を無事に過ごせた事を感謝し、新しい一年も息災に暮らせるようにと、神仏に対してご挨拶する意味でお参り行くの。その時、神社では御神酒と言って神様にお供えされたお酒をいただいて、“無病息災“を願うんだけど。お寺は場所によるかな?厄除けで有名なお寺とかもあるし。お酒や甘酒だったり、ぜんざいだったりは神社もお寺もあるとこはあるからね。まぁ、どちらにしても無料で配る物を“振る舞い酒“や“お振舞い“とか言うんだよ・・・・多分・・・)
天華『多分なんですね・・・』
(うん!明確な定義はよく覚えてないのさ!(*゚▽゚*)それにこの“炊き出し“とは意味が全然違うから参考までにってことで・・・( ̄∇ ̄))
あまり言及されても真実はわからないのでやめてくれ。と、逃げた僕だが先程も言ったが前世ではこういった炊き出しの配布は直接見たことがなく、見たと言ってもテレビで見た映像などが大半なので、リトス教としての奉仕活動とはどう言ったものかが純粋に気になった。
母様は僕の答えを聞いて少し考えた後、僕の要望通りここで降りて歩くことに、炊き出しの見学は少し離れて見るなら様子を見学していいと許可をくれた。
母様「じゃあ、皆んなはぐれないように着いてきてね。炊き出しの列にはあまり近づいてはダメよ?」
「「「「「はい!」」」」」
母様「ふふっ、では行きましょうか・・・・」
リアさん「それにしても、急な奉仕活動ですね、今日は皆様がお越しになるとお知らせは行っていたはずなのですが・・・」
皆んなが馬車から降り、この後の注意事項を聞いて歩き出した頃に、母様の後ろを歩いていたリアさんがこう漏らした。
(そうだよねぇ、事前に伺うからと連絡を入れていたのにも関わらず、予定にない奉仕活動をわざわざ教会前で行うなんて。その高位神官って何考えてるんだ?もしこれで母様が有無を言わさず中止と言ったら、この夏休み中でこの教会には来れてなかっただろうな・・・母様が僕に意見をよく聞いてくれる人でよかった・・・)
そんなことを考えながら歩いているとどんどん教会に近づいて来ていて、炊き出しに並んでる人達の格好や様子などの詳細がよく分かり出した。
(うーん、服はボロボロとまでは行かないけどお古っぽい。健康状態は少し悪そう、“栄養失調“間近までは言ってないけど、痩せてはいるな。大人が多いけど子供もそこそこいるね。親子連れが大半かな?母子家庭の方が多いか・・・男性は独り身が多いね、それに怪我の痕がある人がほとんどだ、元冒険者かな?)
と、観察しながら炊き出しの横を歩いていると。
(うーん、炊き出しは配る人と待っている列を整理してる人がいるね、でもたまに待ってる人達の間をうろちょろしているシスターや侍祭は、何してるんだろ?・・・あ、魔法を使った、治療魔法か・・・ふむ、待ってる間に怪我人や病人の治療をしてるんだ、炊き出しだけではなく無料で治療も行っているのか・・・うーん、これって治療する人と炊き出しを貰う人は分けて並ばせたほうがいいんじゃないか?)
とか思っていると。治療が終わった人はそこから動かず炊き出しのご飯が配られるのを待っていた。
(あー、そのままご飯まで貰うのか、ならそのままの方がいいのか?治療と炊き出し、別々に並ぶのは手間だもんな。治療している間に炊き出しのご飯無くなったりしたら可哀想だしなぁ・・・( ´ ▽ ` )でも、治療で動き回る人は大変そうだ。それに重病人は分けて治療した方が感染病とかの場合は流行が抑えられると思うが、そこは整列係の見極めが肝心だな。あの副助祭は何も考えてなさそうだけど・・・)
炊き出しを配っているの人達の周囲には神殿騎士らしき人達も見受けられるが、治療をしている侍祭達には1人ずつ護衛として着いているだけだった。
(ふむ、炊き出しの所で1番偉そうな服着てる人優先で護衛が入ってるのか・・・じゃああれが高位神官?・・・・ふーん、なんかそんなに徳が高いそうな感じはしないね・・・)
天華『うーん、あの服装は多分“枢機卿“でしょう。神官としては“司教“クラスの人物でしょうが、聖教国の中で国やリトス教の運営に関わる地位だから高位の神官と言われてるのでしょうね。ですが、なぜこんな所で“枢機卿“が炊き出しなど行っているのでしょう?』
炊き出しをしている神官達の後方で、神殿騎士達に囲まれながら炊き出しの様子を眺めているメガネをした細身の男性。その格好は明らかに周りの神官達とは違った服装をしているので、とても目立っていた。
(確かに、本来なら聖教国内で机に齧り付いてそうな役職の人が、他国の現場まで来て大きな顔してるのは変だよね?この時期にこの国に来ているって事は、今度のパーティーの参加者かな?)
夜月『だがそれがここで炊き出ししている理由にはならない思うぞ?』
(まぁ、そうだね?何でだろう?あ、ここでも治療をしてるんだ、ここは治療メインかな?)
ジュール『分かんないねぇ?ん?あ、あのシスターさん?危ないかも!』
(えっ?)
そんな雑談をしながら歩いていると、炊き出しの脇で治療をしていたシスターさんと患者のやり取りが目に入った。そこで急にジュールが危険を告げた。
患者「なんで、治せねぇんだよっ!!」
ドンッ!
シスターさん「きゃっ!!」フラッ
トサッ
「おっと、大丈夫?」
急に暴れだした患者に突き飛ばされたシスターさん、その時ちょうどシスターの後ろを通っていた僕の方に倒れ込んできたので反射的に受け止めた。
(おや?このシスターさん、いや、シスターちゃん?僕達と同じ年頃じゃないか?)
シスターちゃん「あ、ありがとうございます・・・」ポッ
怪我の有無を確かめるために顔を覗き込んだ僕の顔を見るなり、頬を赤く染め硬直したシスターさん。だがよく見ると彼女はまだ幼いと言っていい程若かった。
患者「おい!早く治せよ!!なんでこれぐらいの傷が治せねぇんだ!」
シスターちゃん「む、無理なんです!貴方がお飲みになっている薬が原因で治療魔法の効果が薄れているんです!だから、今お飲みのお薬をやめてください!」
(んー?薬?ジュール、それって・・・)
ジュール『うん、例の薬だと思う・・・でも、治療魔法が効きにくいって言ってるから別の物かもしれないけど・・・』
(・・・・そうだね、・・・・改良でもされたのか?成分を微妙に変えてまた流通させるなんて、前世での違法ドラックと同じ、イタチごっこになってるみたいだね・・・)
患者「何でだ!あれがないと痛くて眠れもしねぇってのに!やめろとか!ふざけてんのか⁉︎お前の治療魔法が下手くそなのを誤魔化すために嘘言ってんじゃねぇのか!?」
シスターちゃん「っ!それは・・・」
そう苛立たしげに叫んだ患者の男は見た目からして冒険者のようで、左腕に包帯を巻いていた。
(見た感じ腕の怪我が原因であの薬を痛み止めとして服用したみたいだね。怪我して数日って所か?お金がなくて無料で治療してもらえる教会の奉仕活動日まで薬で痛みを抑えていた感じか・・・ふむ・・・しかし、治療魔法が効かないのは本当に薬のせいかは見て見ない事には分かんないな・・・)
男の暴言に対してシスターさんは悲しげに目を伏せたので自分の治療魔法が未熟だと思っているようだったので、僕はある提案を思いついた。
「ふむ、そこのおじさん、少し落ち着いたらどうです?」
患者の男「ああ”ぁ?なんだ?」
「そう叫んだって傷が治るわけではないでしょ?それにこの神官の女の子が下手かどうかは、貴方の怪我を他の神官さん達に見てもらってから言ったらどうかな?」ニッコリッ
自分の魔法では目安にならないのは分かっていたので、ここは他の治療魔法を使っていた神官にお願いしてみた。
患者の男「うっ、お、おぉ、おう、わ、分かったよ」
吃りながらも僕の提案を飲んだ患者の男。それとやっと動き出した他の神官や“枢機卿“達。
神官1「で、では私が・・・」
そう言って手を上げてくれたのは黒いストラを首からかけた“侍祭“の男性。
*神職の階級を表す目安のストラの色の違い・・・
まず、ストラとはこの世界の宗教であるリトス教の神官である事を示す物である。(ストラの詳細は“本編の139話の伝統の正装“の説明を読んでね♪)
このストラは神官の役職や階級によって色や刺繍が変わる。
*階級の高い順にに表記しています。
・教皇=イエロザーパト聖教国・聖王(国王と同じ意味)ー白地に金の刺繍。聖王のストラにはストラ全体に刺繍が入っている。
・大司教ーーーーー白地に銀の刺繍。ストラの半分ほどに刺繍が入っている。
・司教ーーーーーー白地にリトス教のシンボルマークの銀の刺繍がストラの表両端に入る。
*このリトス教のマークの刺繍が他の神職のストラの装飾の基本となります。
・司祭ーーーーーー青地にリトス教のシンボルマークの銀の刺繍がストラの表両端に入る。
・助祭ーーーーーー赤地にリトス教のシンボルマークの銀の刺繍がストラの表両端に入る。
・副助祭ーーーーー紫地にリトス教のシンボルマークの銀の刺繍がストラの表両端に入る。
・侍祭ーーーーーー黒地にリトス教のシンボルマークの銀の刺繍がストラの表両端に入る。
そして、聖王の子供に当たる王子や他の王族などの正装につけるストラには、王族を示すシンボルマークを金糸で刺繍する。ストラの色はその時の王族の神職として認めてもらえている階級がストラの色となる。なので、神職としての知識や敬虔さが足りなければ、黒地や紫地のストラに王族マークが入っていることもある。(生まれて間もない王子や王女は黒地に王族マークがついている)
次に国の運営を任されている、普通の国家で言う大臣などに任命されている枢機卿は神職の階級というより役職なので、神職の階級としては司教から助祭までの神職の人達のストラに枢機卿とわかる小さなシンボルマークが銀糸で刺繍されている。
同じ要領で神殿騎士は司教から侍祭までが就任ができる、ストラには神殿騎士のシンボルマークが銀糸で入る。
*地位や役職を示すマークの位置はリトス教のシンボルマークの下に入れることが規定となっている。
最後にリトス教が認めた聖女や聖人、またその候補のつけるストラは特別で候補でも色は同じで、聖女は薄桃色で聖人は薄い水色。その色のストラを首にかけてちょうど胸あたりにリトス教のシンボルマークが銀糸で刺繍入っている。
それとは別に神が直々に選んだ聖女や聖人は(神の間では神託を受け取ることができる人を巫女や御使と呼ぶ)、リトス教のシンボルマークの刺繍が金糸で刺繍されている。
*神職の階級の区分は男性・女性は全て一緒です。呼び方も全て同じですが人によって、“侍祭“には頭に“女“をつけて“女侍祭《ジョジサイ》“や“《オンナジサイ》などと呼びますが正しくないので、これを使うと軽蔑されます。アトリーの心の呼び方は女性神官の格好に引き摺られているので、口に出すときは階級がわかっていればちゃんと階級で呼んでいます。
「・・・・うん、やっぱりできなかったか・・・」
勇気を出して治療を買って出てくれた“侍祭“の男性でも、患者の男の傷は治せなかった。そしてその様子をじっくり“見た“僕はこう結論付けた。
(あれは治療しようとしてる魔法を毒性を持った汚れた気、まぁ、“瘴気《ショウキ》“とでも呼ぼうか、その“瘴気“が魔法の魔力を押し返している?阻んでいる?感じだね・・・)
春雷『確かに“不浄な澱み“を感じますね・・・』雪花『あまり近寄りたくないです・・・』
先程まで静かにしていた精霊達にも“瘴気“が見えているようで、近寄りたくないと嫌そうな声をあげた。
天華『ふむ、ならば、その“瘴気“を“穢れ“と認識して、聖魔法の“ピュリフィケーション“を使って“浄化“してしまえば、治療魔法が通るのでは?薬の中毒性も抜く事ができますし・・・』
(お、それなら教会の人でもできるかな?)
天華『どうでしょうね?“司教“程の人ならば、聖魔法を使える人がいるかもしれませんが・・・』
天華の提案を教会の人ができるか確認してみると、できる人は限られていると返事が返ってきた。
(あー、聖魔法は使える人が少ないんだっけ?うーん、どうしようか?)
いっその事、自分が治療した方が早いか?と思い始めている時・・・
患者の男「あ“あ“ぁ~~!!くそっ!なんで、治せねぇんだよっ!いてぇんだよ!早く治せって!!」
ドンッ!ガッシャーンッ!
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