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第3章 少年期 学園編

136話 ご招待

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 どうも、僕です、今はロシュ君ご家族が公爵家の応接室で僕の家族とご対面中です。

 ガッチガチに緊張して意識の飛びそうなロシュ君家族に対して、うちの家族は常にニッコニコ。
 元々僕と仲良くなった時点でロシュ君家族は身元調査され、その報告を受けているうちの家族は、ロシュ君家族が善良で無害な人柄だと分かっているので、とてもにこやかな対応している。
 でもロシュ君家族にしてみたら、この国の王家の血を引いた公爵家の末子と対面しただけではなく、その公爵家の現当主とその家族全員と挨拶を交わすなど、恐れ多くて直視できていないのが現状だ。
 両者のギャップに気の毒そうに視線を送る仁とイネオス達、僕はなるべく緊張をほぐそうと話題を振っているのだが、どんな話題でも緊張で「は、はい、そ、そうです」って感じで全然会話になっていなかった、でもそのガッチガチの緊張をしているのは大人4人とロシュ君だけで、ロシュ君の下の兄弟達は初めて来た大きくて綺麗な公爵家のお屋敷に目をキラキラさせていた。

 あのご招待の伝言をした後に、ロシュ君のお家の店舗と住居部分を繋げている扉から、ロシュ君似の小さな女の子が恐る恐る顔を出し、お腹が空いたと訴えてきたのだった。
 よくよく話を聞くと、ロシュ君は6人兄弟の1番上のお兄ちゃん、お腹が空いたと言って出てきた女の子はすぐ下の7歳の妹さんだとか、その下に6歳の弟くんと、3歳の女の子2人に男の子1人の三つ子ちゃんと言う驚きの事実が判明したのだった。

(長男だとは聞いていたけど、三つ子ちゃんは予想外だったなぁ、お母さんは大変だねぇ( ´∀`))

 最初こそ取り立て屋の事があり、怯えながらも扉の影からこちらの様子を見ていた子供達だったが、取り立て屋が捕まりもう居ないと教えても貰って、やっと安心した後すぐこちらに来る事になったので、大人達が慌ただしくお泊まりの準備をしている間に自己紹介をお互いにしたら、何故か懐かれてしまった。

(まぁ、子供は好きだからね、遊び相手になるのは苦じゃないし、でもロシュ君のすぐ下の妹ちゃんには一目惚れされた感じがするんだが、どうしたらいいんだろうか?)

 とか、思っていると。

父様「ふふっ、いや、困ったね、そんなに緊張しなくていいんだよ、ここは公式の場ではないし、今は子供達の親として接したいんだが、・・・やはり無理そうだね?」

「まぁ、それは仕方ないかと思いますよ、父様、彼らの“安全のため“とは言え、ちょっと強引に連れてきてしまったのですから・・・」

ロシュ君家族「「「「「え⁉︎」」」」」

ロシュ君祖母「ど、どういう事でしょうか?」

ロシュ君父「わ、私達の“安全のため“とは?」

 僕の発言にすごく驚いた顔をしたロシュ君家族。でもまだ話が理解できていなさそうなロシュ君の家族達に父様が説明し出した。

父様「そうだね、簡単に説明すると、今回アーディさん方が被害にあった詐欺事件、この事件の犯人にはどうやら貴族の後ろ盾がある様だと判明してね。
 それに、相手が事件を解決したのが公爵家と知ったら、あのままあなた方を自宅に残していると、事が露見して自分にまで辿り着かれるかと焦った黒幕が、事件そのものを無かったことにしようと刺客を送り込んでくるかもしれなかったんだよ。だから“安全のため“にうちの屋敷に来てもらったんだ、あ、でもそれだけではなく、さっきも聞いたと思うけど王城でのパーティーの用意の為っていう理由もあるからね」

ロシュ君祖父「そ、そうでしたか・・・、私どものような平民にまでお気を使って頂きありがとうございます。
 ですが、何故このようにここまでお気を遣っていただけているのか・・・、私どもにお役に立てる事がありましたらなんでも仰ってください・・・・」

父様「ふふっ、そう気負わなくていいんだよ。うちの子がそちらのお子さんのロシュ君と仲が良い、って言うのが最大の理由であって。特に深い意味もないし、何かさせようって事でもない。うちのアトリーが気を許し、友人と接している時点で、お子さんやあなた方が何か裏があって近づいてきたとかも疑ってはない。まぁ一応、念のためにあなた方の身元調査もさせてもらったけど、我が家的に何も問題はなかったから、いつかは会ってみたいとは思っていたしね」

「ふふっ、なんだ、父様もロシュ君のご家族に会ってみたかったんですね?」

(ロシュ君の家族は貴族の企みに巻き込まれたって分かっても、一方的に助けて貰おうって考えずに、まず自分達にできる事を考えた、そう考えれるぐらい良い人なのは間違い無いよね♪)

 そう言われてポカンとした表情のロシュ君家族。今の状況なら公爵家の親切心に甘んじて自分と家族の安全を第一に考えてもいい所なのに、ロシュ君のお爺さんの発言は逆に自分にもできる事を探そうとし、他人を気遣える人の良さが滲み出た発言だった。
 その言葉を聞いた僕の家族はますます笑顔が溢れ、ロシュ君家族のカブがどんどん上がっていった。

カイル「旦那様、失礼します。皆様のお部屋の用意と御昼食の準備が整いました。皆様を一旦お部屋にご案内し終わりましたら食堂の方にお連れいたします」

父様「あぁ、ちょうど良い時間だね、子供達も皆んな着替えておいで、イネオス君達の衣服もヴィカウタ邸から届いているよ」

 と、あの後少し緊張の取れたロシュ君家族と話していると、ここに来たのがお昼ちょっと前だったので、まだ皆んなはお昼ご飯を食べていなかった。急な人数の増加に厨房はてんやわんやだっただろうけど、すぐに人数分の昼食を用意し、屋敷の使用人達は来客用の部屋を素早く整えていた。
 それが全て完了したと報告が来て、僕達もやっと制服からいつもの服装に着替えに部屋に戻った。

「いやー、ロシュ君家族は皆んな凄く緊張してたねぇー、でも想像通りとても良い人たちだったから良かった・・・」

ソル「そうですね、とても常識的な反応をなさっていて、とても安心しました」

「ふふっ、評価する所がそこ?・・・・あ、そう言えば、ロシュ君のパーティー用の正装選びはどこですることになったんだろう?」

ソル「あ、それは来客用の部屋を1つ使って用意してあるそうです」

「そうなの?部屋を丸々一つ使うなんて、そんなに服が集まったのか・・・」

(まぁ、男の子4人分のお古だから結構あるっちゃあるか?(*´Д`*))

 いつも通り手早く自分の着替えを済まし僕の部屋に来ていたソルと、そんな会話をしつつ着替えを済まし昼食を取るために食堂へと向かっていた、するとその途中でロシュ君とその他の兄弟とばったり会った。

「あ、ロシュ君、皆んなもお着替え済んだんだ」

ロシュ君「アトリー様、ありがとうございます、うちの兄弟全員にお洋服までいただいて・・・・」

「?ん?皆んなに?・・・・・あ、その服、ソルの着れなくなったって言ってたのかな?」

ソル「あ、その様ですね、僕の母が出してきたものでしょうか?」

 ロシュ君の弟くんが着ている服に見覚えがあったのでよく見てみると、以前ソルが着ていた普段着だった。

「あー、それで部屋を丸々1つ使ったのか・・・」

ロシュ君兄弟「「「「「「??」」」」」」

(こりゃ、皆んなの母親が僕達の洋服の活用先ができて急いで出してきたのかな?)

 貴族の普段着はサイズが合わなくなった物は下に同性の兄弟がいる場合、お下がりとして使われたりするのが基本的、でも公的な場所での服、“正装“はその時々の流行りを取り入れて新しく作る。そうすると作った時に着れていたけど、成長して着れなくなったものは、パーツごとにバラして使用人達に下げ渡したりする。でも、貴族によっては自分の子供の成長の記念として取っておいたりするので、子供が多い家ではその記念として取っておいた服がクローゼットを圧迫している事があるようだ。
 なので、子供の友人がパーティー用の正装を探してると聞いて。この際に思い切って整理整頓をして、記念として取っておくものを厳選したのだろう。それで譲ると判断した物をこちらに持ってきたみたいだ。
 バラバラにして下げ渡す前にもう一度誰かの役に立てるのならと、かなりの量の服を持ってきた。そう言う事だろう、と僕は判断した。

(今回は下にもたくさん子供がいるし、男の子だけじゃなくて女の子もたくさんいたから、貸すんじゃなくてむしろあげる気満々で、男物も女物の普段着も混じって出してきたんだろうなぁ・・・だから今こんな風に皆んな貴族服に着替えさせられたんだな・・・
 まぁ、僕達が1番歳下だからもうお下がりする相手もいないし、貰ってもらえるなら有り難いと思ってそうだ・・・( ´∀`))

夜月『まぁ、アトリーの服だけでも相当な量になりそうだしな・・・』

(それな!(*゚▽゚*))

 僕が生まれてからは両親はお下がりではなく全て新品で作らせていたので、僕専用の衣装室は常に満杯なのだ・・・
 理由としては僕が他の兄弟と違って“王族顔“ではなく、母親似だったのでこれまでの上の兄弟が着ていた服が顔に似合わないと言っていた、なので全て新調したと言う事らしい、後、髪や瞳の色に服の色が合わないとかどうとか言ってたこともある。

(まぁ、公爵家たるもの子供の服は常に新調するぐらいがちょうど良い、と言っていたなぁ、お祖父様が・・・経済をぶん回す為に・・・)

天華『セレブの思考ですね・・・』

(だねぇ~(*゚▽゚*)まぁ、今回で相当整理できたんじゃなかろうか?多分?)

ジュール『どうだろうねぇ~、アトリーの服、全部なんらかの“付与効果“付きだもん、そうそうあげれないと思うけどぉ~』

(あー、それは確かに分かんないねぇ、僕のお下がりは数が少ないかは後で直接みてみるか・・・)

ソル「アトリー様、戻ってきてください」

「あ、うん、ごめんね、皆んなその服似合ってるよ。服は・・・・他にもたくさんありそうだから、後でじっくり見てみようね」

 ロシュ君達との会話の最中に色々考えながらジュール達と話し始め、ついうっかり黙り込んでしまっていた僕をソルが引き戻してくれた。ロシュ君達に服の話を続けようと思ったが、用意された部屋の現状がどうなっているかが不明だったので、実際に見る方が早いと思ったので軽く流した。

ロシュ君「は、はい、ありがとうございます」

オーリー「アトリー様、食堂に急ぎませんと・・・」

「ん、そうだね、じゃあ皆んな、このまま食堂まで一緒に行こうか」

 オーリーに先を急がされたので会話はそこそこに全員で食堂に向かった。

 広い屋敷内を軽く説明しながら食堂に行くと、すでに他の人達は食堂に来ており僕達が最後だったようだ。

「お待たせしてすみません」

 と、言いながら入って席についた、ロシュ君達も使用人達に案内されて席につき食事が始まった。

 配膳されてくる料理にロシュ君の兄弟は目をキラキラさせて、料理を口に運んでさらに目を煌めかせていた。大人達は若干、着慣れない服とこの食卓の豪華さに気後れして挙動不審気味だった、でも料理を一度口にしたら子供達のように目をキラキラさせて美味しそうに食べていた。

(ふふっ、お口にあった様で何より、それにしても小さい子の食べてる姿がハムスターみたいで可愛いなぁ( ´∀`))

 楽しく賑やかな昼食が済むと、父様は大人達を連れて談話室に移動し、僕達同級生組はロシュ君の正装を決めるため、用意された客室に移動することに。
 その時、同級生組の僕達だけではなく、何故か僕の姉様や兄様達とロシュ君の他兄弟達まで一緒に客室に行く様に言われ、結局、子供達全員でお下がりがたくさん持ち込まれている客室に移動した。

(あー、これは男女問わず着せ替えショーの犠牲になる感じか?)

 辿り着いた客室内を見て1番に思った感想がこれだった・・・・。それもそのはず客室内には部屋の半分を埋め尽くす勢いで衣服が男性用、女性用で左右に分かれて並べられていたのだ。それに着替え用の衝立が両端に用意されていて、これで試着しなさいと言わんばかりだ。

(今回の犠牲者はロシュ君兄弟か・・・・南無(^人^))

ヘティ「では、私は妹さん達の服のお手伝いいたしますので、アトリー様達殿方はロシュ君と弟さん方のお手伝いをお願いしますね」

 と、そう言って始まったロシュ君の正装選びとロシュ君兄弟のファッションショー・・・・

「皆んな頑張れ・・・」ボソッ

 小声で応援しといた・・・

ロシュ君「?・・・アトリー様今何か言いましたか?」

「ん?何でもないよ?」

ロシュ君「そ、そですか?・・・・それにしても、皆さんの制服姿以外を見るのは初めてで新鮮です」

 と言って僕達の全身をまじまじみた。

「あぁ、そうか、ソルやイネオス達は休日でも会うことが多いから気づかなかったけど、ロシュ君は僕達の普段着姿は初めて見るんだったね」

ロシュ君「はい、妹のジュリなんてアトリー様を王子様見たいって言って騒いでましたし。皆さんもビシッと決まっててかっこいいです!」

「ふふっ、それは嬉しいね。でも実際の王子様はもっと堅苦しい格好してるよ。僕のこの格好は普段着の中で最も楽な方だからね、格式なんてないし」

 白のドレスシャツに紺色のロングベストを着て、下は白のスラックスに黒の革靴、貴族にしてはラフofラフの極み、みたいな普段着だ。

(ジャケットも着てないのにどこらへんが王子様ぽかったんだろうか?まぁ、ロングベストには綺麗な刺繍が入ってるけど・・・(・・?))

ソル「そうですね、アトリー様はいつもはこんな感じですが、明日のパーティー用正装をみた方がもっと王子様っぽいですよ」

ロシュ君「そうなんですか?」

ベイサン「うーん、王子様通り越して、どこか神々しくなってる時があったなぁ~」

イネオス「あぁ~、それは“洗礼と祝福の儀“の時のアトリー様だね。でも今回は“洗礼服“じゃなくて“パーティー用正装“だから、王子様味は強いんじゃないかな?」

「何?その神々しいとか王子様味とか、僕は普通に朝から磨かれて用意された服着ただけなんだけど・・・」

(あれはその時の雰囲気でそう見えてただけで、中身はいつも通り残念なオタクおばちゃんでしたよ?(*´Д`*))

ロシュ君「え~、神々しいアトリー様見てみたったです!」

 ベイサン達のやり取りに呆れた僕、自分自身はいつも普段通り用意された服を着ていただけなのにと思っていると、ロシュ君は目をキラキラした目で見てみたかったと悔しがった。

カイ兄様「“洗礼服“を着た時のアトリーを見て、母上がアトリーが神々に取られたりしないかって、心配してたぐらい可愛くて神々しかったよ」

ライ兄様「いっとき抱きついて離れなかったもんなぁ、母上」

仁「そんなに凄かったんですか・・・僕も見てみたかった」

「もう!兄様達まで!そんな大袈裟にしなくていいじゃないですか、それにあの時は結局何にもなかったですし・・・・あ、でも、あの時はジュール達を神々から授かりましたけどね、そこは素敵な思い出です、ねぇー皆んな?」

 そう言って近くにいたジュール達を撫でて視線を逸らした。

(あっ、女性陣まで興味津々でこっちをみてる!こ、これは、話を終わらせねば!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́))

 兄様達の話でロシュ君と仁だけじゃなくて隣の女性陣まで興味を持ち始めてしまったので、注目が集まったことで僕はそれ以上は恥ずかしくなりジュール達を撫でることで話から離脱したのだった。*もふもふに逃げたとも言う・・・

ライ兄様「いやいやいや、歴代最高のスキル獲得数と史上初の加護数を叩き出した上に、聖獣様方を授かったような大事を何もなかったでは済ませられないんだが?」

カイ兄様「ふふっ、アトリーは恥ずかしがっているだけだよライ」

ライ兄様「はははっ、分かってるよカイ兄上、少しからかっただけだ、ほら、アトリー、友達の服を選んでやるんだろ、戻ってこい」

「むー、ライ兄様の意地悪!」

 こうして皆んなでワイワイ騒ぎながら衣装決めをし出した僕らを、オーリー達専属使用人達は微笑ましそうに眺めていたのだった。
 その裏で大人達は今後の話し合いをして、最終的にはロシュ君家族は、家の修理と詐欺行為に加担している貴族の捕縛が済むまで、公爵家の用意した別邸で暮らすことになった。当分の間は僕やソルと一緒に登校することが決まり、僕は一緒に学校に行ける事を喜んだが、ロシュ君家族はいくら別邸とはいえ公爵家にお世話になることを最後まで恐縮しっぱなしだったのだ。(あ、僕の服のお下がりは普通に並んでたよ。付与されていた魔法は取られていたけど・・・)

















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