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第3章 少年期 学園編
134話 悪質な詐欺
しおりを挟む僕が名前を呼ぶとカインが一瞬で男の手から借用書を奪い、僕の所まで持って来てくれた。
カイン「アトリー様、どうぞ・・・」
「ん、ありがとうカイン、・・「は?」・・・・ふむ、これは・・・やっぱり」
一瞬の事で状況が理解できなかった男達を置いて、受け取った借用書に目を通す僕。
そして、そこに書いてあった内容を読むと、今回の騒動の元となった借金の詳細が書いてあった、だがそれは法の定めた規定には全く当てはまらない酷い内容の契約書だった・・・・
(やっぱり、これは金利が高すぎ、何だよこの10日で2割って、“トイチ“以上じゃねぇか!ぼったくりすぎだろ⁉︎ん?・・・・・待てよ、こんな理不尽な契約内容の借用書にロシュ君のご家族がサインしたとは思えないな、この借用書、何か仕掛けがあるのか?・・・・・んん?・・・・何だろう?・・・微かに魔力を感じる・・・)
天華『魔力ですか?・・・・もしかしたらその借用書に幻覚魔法を使ったのかもしれません』
(えっ!そんなことできるの?)
天華『えぇ、多分ですけど、この借用書に使っている紙に、幻覚魔法を使用する術者の魔力の媒体なる血液や唾液などの体液、もしくは髪や皮膚などの体の一部をあらかじめ混ぜ込んで作っておけば、違和感なく文字の偽造ができると思います』
天華の話で僕が驚いたのは、ロシュ君の家のようにお店を経営しているお店がお金を借りたりする際は、幻術かけられてりして騙されたりしない為の装備型の幻術防止の魔道具を常備しているのが常識だからだ。
その魔道具さえも欺くことができる高度な幻術魔法の使い手がいるとは思えなかったのだが、今回は幻術を契約者にかけずに借用書の紙にかけると言う変則的な方法をとっていた事に驚いた。
そもそも借用書などの紙や道具、無機物に幻術を纏わすと言う行為はなかなか難易度が高い、その上、“物“に意志がないく幻術に堕ちると言った事がないので、幻術をかけている間ずっと魔力を使うのだ。なので幻術をかける術者の手からその“物“が離れ、しばらくすると幻術が解けるのが普通だ。
借用書のような重要な書類は手違いがないようにじっくり読み込むものだから、その間に幻術が解けてしまえば相手にすぐバレる。そのデメリットを借用書の紙自体に術者の体の一部を混ぜ込む事で、術者の手から紙が離れても幻術の効果が長持ちするようにしていると言う事だったから・・・
(それに、この方法は僕みたいに自分の魔力以外を敏感に感知する、もしくは直接見ることができる人じゃないとすぐにバレないもんね。一般人でスキルもなしに自分の魔力以外を感知して気づけって方が無理な話か・・・でも、ここまで用意周到に偽装してるのに、借用書の内容が法に触れているのに気づいてないのがどこか抜けてるんだよなぁ~)
天華『そうですね、まぁ、法律に詳しい人間に接触するなんて想定していなかったんでしょう。騙す標的が学のない一般市民だったようですし、契約を結びさえすれば脅しでどうにかなるとでも思ってたんでしょうね・・・・・もしくは後ろ盾がいるか・・・』
(あー、その可能性はありそう・・・・!・・・あったみたい・・・・分かりやすいなぁこの人達、筒抜けだ、魔力少なすぎ・・・(*´Д`*))
今現在も“情報開示スキル“で男達を観察しているのだが、男達のステータスの備考欄で本人達の表層心理で考えていることが丸分かりだった。こんな事ができるのは相手の魔力量が僕より少ないからで、相手との差が激しいほど有利だ。だが逆に魔力量が多い人の表層心理は読み取りずらい、なので“情報開示“のスキルが万能という訳では決してない。(まぁ、スキルレベルがマックスになれば別の話みたいだけど・・・)
それはともかく、どうやらこの男達には貴族の後ろ盾があるのが分かった。でも、この下っぱ達にはその貴族の名前までは知らないようだった、それとは別に今回の詐欺に遭う原因がマルっとわかってしまった。
?2「おい!ガキ!その借用書を返せっ!」
「「「「確保!」」」」
やっと、借用書が取られた現実が理解できた細身の男が僕を捕まえようとした瞬間、男達の後ろに来ていた公爵家の護衛騎士達がすぐさま男達を拘束。それと同時にオーリーが拘束していた男も護衛騎士に渡されて、全員が僕の前に座らせられた。
今までオーリーの後ろで怯えていたロシュ君家族は、あっという間の捕縛劇に唖然としていた。そこにオーリーが声をかけ僕の隣まで連れて来てくれたので、早速僕はロシュ君のご家族に挨拶をする。
「初めまして、僕の名前はアメトリン・ノブル・デューキスと申します。ロシュ君とは友人としていつも仲良くさせていただいてます。今日は少しお願いがあってお伺いしたのですが、急にお家の事情に口を出してしまってすみません」
ロシュ君家族「「「「へっ⁉︎」」」」男達「「「はぁ⁉︎」」」
ロシュ君家族「え、デュ、デューキス、こ、公爵家の方がロシュの友達・・・ほ、本当のことだったんだ」「あ、貴方、これ現実かしら?夢じゃないわよね?」「ロシュに貴族様の友人・・・・」「うちに貴族様がいるなんて・・・・」
ロシュ君「だ、だから、本当だって言ったじゃん!」
(あー、信じてもらえてなかったんだね。ロシュ君・・・(。-∀-))
男達「こ、公爵家⁉︎な、何でこんなところに⁉︎」「デューキス家って、あのデューキス家?・・・・」「俺達もう終わりだ・・・・」
両側で驚いたり絶望したり、現実逃避したりと騒がしくはあるが、僕は話を進める。
「口出しついでに少し良いでしょうか?この借用書に書かれた署名はどなたのものでしょうか?」
ロシュ君家族1「え、あ、はい、私のものですが・・・」
「あ、ロシュ君のお祖父様でよろしいですか?」
手をあげ出て来たのは白髪まじりの優しい印象のご老人。
ご老人「は、はい、私はロシュの祖父ですが・・・」
「えーっと、お名前はアポテーク・アーディさんで間違い無いでしょうか?」
ロシュ君祖父「は、はい、間違い無いです・・・あ、あの、その借用書は・・・」
僕が手に持った借用書を見ながら名前を確認していると、ロシュ君のお爺さんは不安そうに見てくる。
「あ、これは違法に作成された借用書なので、これを証拠にこの取り立て人の方々と、お金を貸した金貸本人を捕まえることができますよ。その前に少々お聞きしたい事があるのです。この借用書のお金を借りる理由の欄にある、“仕立て屋への支払いの為“との事ですが、ようは仕立て屋に何が衣服を依頼し、その代金としての借り入れと言うことですよね?」
ロシュ君祖父「は、はい」
僕の確認に戸惑いながらも頷くロシュ君のお爺さん。
「・・・では、その仕立て屋に仕立てて貰った衣服は今どこにありますか?」
ロシュ君祖父「へ?服ですか?」
「はい、服です。この借りたお金で、ロシュ君のパーティー用の正装をお仕立てになられたんですよね?その時完成した正装をお手数ですがここに持ってきてもらえませんか?」
ロシュ君「えっ?あの服を作るのに借金してたの?・・・お爺ちゃん!何でパーティー用の正装の為に借金なんかしてたの⁉︎父さんと母さんも、何でその事黙ってたの⁉︎借金するぐらいならパーティー用の服なんていらなかったのに!」
急に借金の話から服の話になって混乱するロシュ君ご家族、その横で借金のこと自体も知らなかった様子のロシュ君は驚き、家族を問い詰めた。
ロシュ君祖母?「ロシュ、貴方がそう言うと思って皆んな黙ってたんだよ、遠慮するからと・・・
でもね、ロシュ、うちの一族で初の学園特待生になった貴方は我が家の誇りなの、だから学園で必要な物には出し惜しみはしないと家族で決めたのよ。
歓迎パーティーでの正装だって、それ相応のものを用意してあげたかったの・・・まぁ結局こんな事になってしまったけどね・・・・」
ロシュ君のご家族は、ロシュ君のために何でもしてあげたかったのだと、そう悲しそうに言った。
(そっか、ロシュ君はこの家初の学園特待生になったのか・・・、それはご家族はさぞ嬉しかったんだろうね、ロシュ君がパーティーで恥をかかないようにって、そう思ってちゃんとした正装を作ってあげたかったんだ、なのに、アイツらはその思いを踏み躙った・・・)
ロシュ君「お婆ちゃん・・・」
「ロシュ君、君のご家族はとても家族思いの素敵な良い人達だね・・・、そんな良い人達を騙したコイツらを僕は決して許して置かないよ、だから、その出来上がった正装一式を僕に見せてもらえないかな?」
ロシュ君「アトリー様・・・、分かりました・・・母さん、あの服どこにしまってある?」
ロシュ君母「あ、え?・・・ちょ、ちょっと待って、すぐ持ってくるわ」バタバタバタッ ガチャッ、バタンッ!
僕がロシュ君のご家族の思いを踏み躙った男達を許しはしないと断言し、再度、仕立てた正装を見せて欲しいと言うと。ロシュ君は僕の方を見て僕が本当にその正装に用があると理解して深く頷き、母親にその正装のある場所を聞いた。ロシュ君のお母さんは僕の意図が分からず戸惑いながらも、店舗の奥にある住居部分の入口らしき扉に向かって走って行き扉の向こうに消えていった。
ソル「アトリー様、どうなさるおつもりですか?」
「うん、ちょっと、気になったことがあってね・・・」
ソルが僕の横に来て、ロシュ君のパーティー用の正装を見てどうするつもりなのかと聞いてきたが、僕は明確な返答を避け、先に物が来るのを待つことにした。その時ロシュ君がとても悲しそうな表情で謝ってきた。
ロシュ君「アトリー様、今日はせっかく来ていただいたのに、こんな騒動に巻き込んでしまってごめんなさい」
「ううん、ロシュ君が謝ることないよ、今日急に僕が来ちゃったから、逆にご迷惑になってしまったかもしれないし」
ロシュ君「そんなことないです!アトリー様ならいつでも来ていただいでもいいぐらいです!」
騒動に巻き込んだことを謝って来たロシュ君だが、むしろ僕がご家族にお伺いも立てずに来てしまった事を気にしていると言うと、ロシュ君が前のめり気味にいつでも来て欲しいと言ってくれた。
「ふふっ、ありがとうロシュ君、そう言って貰えると嬉しいよ。ロシュ君は学園での僕の初めてのお友達だからね、困ったときは力になりたかったんだ♪」
(むしろ、学園でできた唯一のお友達だからな!(*゚▽゚*))
「「「「っ!」」」」
ソル「アトリー様、ずっと立ちっぱなしなのも疲れますから、こちらにお座りになってください」
「ん、あ、ありがとうソル」
ロシュ君に歓迎されたことでうっかり満面の笑みで答えたら、ロシュ君ご家族全員が顔を真っ赤にして固まってしまった。そこでソルがすぐに気を利かせて自分の“収納“から椅子を出し僕の気を逸せてくれた。
(あ、やべ、嬉しくて気が緩んじゃった?)
天華『この騒動で緊張してアトリーの顔をよく見ていなかったんでしょう。今やっと落ち着いた所にアトリーの笑顔を見たことが衝撃だったんじゃないですか?』
(ねぇ、僕の笑顔は兵器か何かなの?(*´Д`*))
天華と少し不満げに念話していると、一緒に来ていた他の人達が僕を話題に楽しそうに会話していた、主に仁達が・・・
仁「うーん、いつもながら、あの笑顔は破壊力が大きいみたいだね」
彩ちゃん「あれが無意識なんでしょう?不意打ちもいいところよね?」
夢ちゃん「あれは防御不可能だよねぇ、でも可愛いから許しちゃうんだよなぁ」
ヘティ「そこがアトリー様の魅力ですから」
などなどと好き放題言われていた。
(そこ、聞こえてるよー、男の子なのに可愛いって言われると複雑な気分になるよー・・・)
わざと聞こえるように言って、揶揄っているのはわかっているのでジト目で見ると、ニヤニヤと笑い返されてしまった。そんな事をしているうちにロシュ君のお母さんが戻ってきた。*ついでに借金とりの男達は、僕の名前を聞いた時から絶望したような顔で俯いている。
ロシュ君母「お、お待たせしました、こ、こちらになります」
「ありがとうございます、少しお借りしますね・・・・・・・やっぱりそうだったか、これは酷い・・・」
「「「「「??」」」」」
周囲の人は、僕が手渡されたパーティー用の正装をじっくり見て、呟いた事の意味が分からず頭を捻った。
ソル「アトリー様、その衣服がどうなさったんですか?」
「ソル、これをよく見て」
そう言って服を渡すと・・・
ソル「・・・!・・・これは、正装用に作った服としては質が悪すぎますね、それに、こんな出来栄えに借金をするほどのお金を提示した仕立て屋は、すぐさま営業を止めるべきですね」
「でしょ?」
「「「「「えっ⁉︎」」」」」
ロシュ君「ど、どう言う事ですか⁉︎」
「ロシュ君、この服に使ってある布地はね、貴族がパーティーで使う衣装としては質が悪すぎるんだ。この布地で、しかもこの型、今の流行りではないし、正装としても格式が合ってないただ派手なだけの服。もし今回、学園内でパーティーが行われていたとしても、これを正装とは思われずに門前払いされる可能性だってあった。
はっきり言って、こんな出来栄えの服に金貨10枚も出す価値はない。この服を作った仕立て屋は、貴族の洋服に疎いロシュ君家族を意図的に騙して、お金を借りるように仕向け、違法な借金を背負わせた。だからこれは仕立て屋と金貸し屋が手を組んだお金を騙しとる詐欺、そうでしょ?そこのおじさん達?」
ロシュ君家族「「「「「⁉︎」」」」」 取り立て屋の男達「「「っ!」」」
「おじさん達これは立派な犯罪だよ、覚悟してね?あと、手を組んでいる仕立て屋を庇っても意味ないから、すでに公爵家に知らせがいってるからね。大人しく証言した方がいいよ?庇うと罪が重くなるだけだし、ね?」
と、少し威圧しながらニッコリ笑って教えてあげた。
取り立て屋の男達「「「ひぇっ!」」」
ジュール『笑顔が黒いなぁ~』
と、言われながらも、威圧は止めなかった僕だった・・・・
(黒くて結構さ!(*゚▽゚*)ハハッ!)
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