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第3章 少年期 学園編
121話 “モンスタートレイン“
しおりを挟むどうも、僕です。 今日は冒険者界隈の闇に触れた気分です。
(“わざと“魔物を連れてきて、他の冒険者に“なすり付け“ようとしたってこと?・・・・あぁ、“モンスタートレイン“のことか・・・・て、事は、事故じゃなく事件って事か・・・こりゃ、悪質だねぇ)
ようやくダンジョンに入り探索を楽しんでいた僕ら、地下2階層に降りて少しした時の事、時間もそこそこ経ってお昼時なったので、ダンジョンに入ってからずっと発動していた索敵や気配感知、魔力感知などの感知系スキルに近くにある人の集まりを感知した僕は、そこは安全地帯だろうと思いそこで休憩をしようと提案したら、その安全地帯に向かって不自然な人と魔物の群れが近づいていっているのに気づいたので、それを大人達に言うと、サブマスとジル叔父様が険しい表情をした。
そこで、もっと感知可能範囲を広げてみると、先に感知した人の集まりとは別にもっと大きな人の集まりを感知した、最初に安全地帯だと思った人の集まりは、どこかのグループの野営地だったことに気づいた、その間にサブマスは自分で状況を把握すると僕達に本当の安全地帯に行くように指示、その後すぐにその不自然な行動をしている人と魔物の群れに向かって走って行ったのだった。
僕達はサブマスの指示に従い安全地帯で昼食をとって待機していると、サブマスが縄でぐるぐる巻きになった冒険者3人を引きずり戻ってきたのだった。
そして、軽く話を聞くところによると、どうやら、そのぐるぐる巻きになった冒険者3人が、“わざと“魔物を刺激して自分達を追わせ、ついて来ている魔物を、野営地を築いて休憩していた冒険者グループに“なすり付け“ようとしたらしい。
僕の前世でオンラインゲームでやっていた、モンスターの“釣り“行為に似ているが、これは全く別物、ゲーム用語で言うところの“モンスタートレイン“、モンスターを“釣る“のは同じでも、仲間内でする1匹2匹の“釣り“とは違い、知らないプレイヤーが意図的に悪意を持って、大量のモンスターを連れて別のプレイヤーに押し付ける行為を仲間内では“モンスタートレイン“と言っていた。(意図的ではなくても“モンスタートレイン“になることもあるので、一概に悪意があるのが“モンスタートレイン“とは言わない場合もある)
要は嫌がらせ行為の一環としてされていたが、それはゲーム内では“嫌がらせ“として収められるけど、ここは現実、魔物と戦っている最中に大怪我をすれば死ぬ事があるし、連れてきた魔物を全て倒しきなかった場合は、他の冒険者達に被害が広がる可能性だってあった、そんな悪質な行為をこの3人は若い冒険者グループに向けていたようだ、しかもここは初心者向けのダンジョン、魔物をコントロールできなかった場合、相当な人数の初心者冒険者が被害に遭っていた可能性もある。
なので、してはいけない事をした彼らは今、安全地帯にいるすべての冒険者達から物凄く睨まれている・・・
春雷『割と昔からこの手口は使われているようですよ』
(わぁ~、そうなんだ、だからかな?サブマスとジル叔父様の視線もすごーい、・・・しかし、サブマスの後ろにいる人達が今回の被害者?標的?だったのかな?)
天華『そのようですね・・・』
(若いね?僕達と同じぐらいの子供3人、20歳超えてない感じの青年1人と30代って感じ3人の合計7人グループか、意外な組み合わせ、あれ?最初感知した人数と合わないね?)
ジュール『あー、本当だ、最初8人だったよねぇ?』天華『ですね?』夜月『ふむ、足りないな?』雪花『いないですね?』春雷『確かに…』
(だよねぇ?)
サブマスの後ろからついて来ていた冒険者達は顔色を悪くして、安全地帯にやってきていた、その冒険者達の人数に違和感を覚えると1人足りない事に気づいた僕とジュール達。
(おんやぁ?・・・・・あ、いた、あれかな?)
死人はいなかったはずだが?と、思いながら感知範囲を拡大して探っていると、こことは別の所、1階層に繋がる階段方面に移動している人の気配を1つ感知した、それがあの冒険者グループと一緒にいた1人と思われる。
(この階層のお昼時に、安全地帯以外を移動しているのがこれだけだから、間違いないはず・・・仲間は安全地帯にいるのに、なぜこっちに来ないのかな?・・・もしかして・・・)
「サブマス、もう1人はどうしました?」
サブマス「それがなぁ~、・・・逃げられた」
僕の質問にサブマスは悔しそうに答え、被害者の冒険者達は少しビクッと震えた、その中の同い年と思われる青年冒険者は泣きそうだ。
(やっぱり、逃げた奴はこの犯人達の仲間だったか・・・)
「やはり、そうですか・・・・“プリズン“・・・サブマス、1階層に繋がる階段付近にその逃亡者を結界で閉じ込めました、その結界は僕が解かない限り壊れたりしないので、帰り際にでも回収していきましょう、それか今すぐここまで連れてきますか?」
「「「「「・・・・・は?」」」」」「「「「「?・・・へ?」」」」」
サブマス「ん?・・・・・あぁ、あれか?・・・確かに動かなぇな・・・・・、ん?はぁ⁉︎」
最初の「は?」は魔法を主体の冒険者達が何言ってんのコイツみたいな顔して言ったやつで、「へ?」って言ったのはその他の冒険者達が何の事か分かんないって感じで言った言葉、サブマスは自分の感知スキルで確認した後に、現状がおかしい事に気づいたような感じの発言だった。
サブマス「ちょっ、ちょっと待て⁉︎ここから階段付近だと⁉︎どれだけ遠いと思ってんだ⁉︎」
ジル叔父様「サブマス、・・・・・落ち着け、今はそこじゃなくって逃亡者をどうするかを先に決めよう」
ジル叔父様はなるべく僕の能力を公にしたくないようで、サブマスの言及を止めて話を逸らした。
サブマス「っ・・・・・、はぁ~、分かったよ…、逃亡者はギルドに規定に反し、他の冒険者に悪意を持って意図的に魔物をけしかけたとして、ギルマスに報告して処罰を受けさせる事になる、なので今すぐにここに連れてくる必要はないが…、ジルはどうする?領主として先に処罰を言い渡すなら、今から連れてくるが?」
ジル叔父様「そうだな、私も今はいい、だが今からはどうする?この3人と、そこの被害にあった者達をこのまま置いては行けないだろう?」
サブマス「そうだなぁ…、どうする依頼人?」
そう言って、父様の方を見たサブマスとジル叔父様。
(あー、サブマスとジル叔父様、2人はこの犯人達の処罰の件でこの場を離れなきゃいけなくなったのかな?)
父様「ふむ、そうだね・・・」
父様はそう言って被害者の冒険者達をじっと見た後、口を開いた。
父様「サブマス、貴方は先に彼らとギルドに戻って彼らから事情聴取なさってもかまいません、ですがジルは残って子供達の護衛をしてください、まだ、この子達が受けた依頼は達成できてませんから」
サブマス「あぁ、分かった、では先に護衛依頼は終了する、俺の方の用事は大体終わってるが、子供達の方は最後まで付き合えなくて済まないな」
ジル叔父様「気にするなサブマス、俺がちゃんと面倒見とくから、サブマスは仕事頑張れよ、詳細な報告書を期待しとく」
サブマスは今日の指名依頼を最後までできなかったことに、申し訳なさそうにしていたけど、ジル叔父様はやけに嬉しそうにサブマスを応援した。
(あー、本来ならジル叔父様も一緒に事情聴取するなりして、今回の事件の詳細を把握しなければならないところを、サブマスに丸投げする形になっちゃったんだね・・・、そんなに書類仕事嫌いなんだジル叔父様・・・、そう言えばロブル大叔父様とサフィアス叔父様も書類仕事嫌いだったな・・・遺伝か?)
サブマス「詳細な報告書・・・ちっ、くそっ、自分だけ書類仕事から逃げる気か?・・・ふんっ、まぁいい、戻ってきたらお前もどのみち書類仕事に追われるんだ、今のうちに楽しんどくんだなぁ、ジル」
ニヤッと笑って、何か企んでそうな顔をしたサブマス。
ジル叔父様「げっ、何する気だ?俺を巻き込むなよ!」
父様「ジル…、その書類仕事から逃げる癖は治せと言っただろう?全く、子供達の前で情けない姿を見せるんじゃない」
心底嫌そうな顔をしてサブマスに文句を言っているジル叔父様、父様は呆れた顔でジル叔父様を嗜めた。
その様子を僕達はおやつを食べながらみていて、周りにいた他の冒険者達も苦笑い気味に見ていた。
(この周りの様子を見るにサブマスとジル叔父様のこの漫才?はいつものことなのかな?・・・)
何やらわちゃわちゃしたが、最終的にはサブマスが縄でぐるぐる巻きになった犯人達を再び引きずり、被害にあった人達も連れて地上に戻るために引き返し、僕はその気配を感じて1階層に通じる階段付近までくるのを確認したら、結界に閉じ込めていたもう1人の犯人を解放、その犯人をすぐにサブマスが再び捕まえて、地上に連れて戻って行ったのを見届けて、残った僕達はダンジョンの探索を再開させた・・・・ーーーー
ーーーー・・・・数十分後・・・
ベイサン「あっ!ここに下への入り口があります!」
ベイサンの元気な声が聞こえ、その声の方向に行くと下へと伸びる階段がある入り口が見えた。
「わぁ、ベイサンよく見つけたね!」
現在、僕達は昼食取り終わった後に再びダンジョン完全攻略を目指し、下層への道を探し始めて30分たったぐらいの時だ。
今どこにいるかと言うと昼食をとっていた2階層中央、そこには先端が尖った形の四面体の石柱、所謂大きなオベリスクを中心に大きく開けた広場があり、その広場の周りをストーンヘンジのような不揃いの太い石柱が円形に据えられていた、その石柱が境界線になっている安全地帯を、1階層に繋がる階段とは反対方向に出ていき、まっすぐ進むと、またエジプト風の小さな遺跡に突き当たった、
前回、1階層でも遺跡内で下層へ階段を発見したこともあり、その周辺に下層への入り口があると踏んだ僕達は遺跡内はもちろん、その周辺の建造物をしらみつぶしに探そうとした所で、通りがかった優しい冒険者が軽くヒントをくれた、そのヒントが遺跡の裏側を探せとのことだったので、僕とソルにイネオス達、子供勢みんなで遺跡裏を探索していて、ついさっきベイサンが下層への入り口を発見したのだった。
(こりゃ、分かりづらい場所に入り口を作ってあるね、でも一度場所が分かればそう難しいと言うほどでもないか・・・そうなると父様やジル叔父様は階段の入り口は知ってたんだろうけど、僕達が自力で探し出す楽しみをとっておいてくれたんだろうね、実際、宝探しみたいで楽しかったし、何なら本物の宝箱も見つけっちゃったし・・・( ´∀`)はは・・・)
天華『やっぱり、引きが強いですねぇ、普通はフロアに設置される宝箱を見つけるなんて事そうそうないんですけどね』
(ははは、・・・なんでだろうね?・・・)
雪花『凄いですね♪』
ジュール『やっぱりティーナ様の加護の“豪運“の影響だろうねぇ~』
(ドロップアイテムの確率だけじゃなかったのか・・・、てか、ダンジョンに野晒しの宝箱ってあったんだ?エリアボスとか倒してないのに・・・)
『初回限定プレゼント~♪』クスクスッ『でも次からはもっと良く探してみてねぇ~』クスクスッ
春雷『あ、今回はここの精霊達からのプレゼントの様ですね』
どこからか楽しそうな囁き声が聞こえてきて、周りを見渡すと複数の光の玉が通り過ぎていった。
(おう、精霊さん達からのプレゼントだったのか、そして、野晒しの宝箱はいつもは分かりづらいみたいだね)
夜月『まぁ、今回は初回限定のプレゼントだとしても、ダンジョンに隠された宝箱はアトリーならすぐに見つけられるさ』
(?そうかな?まぁ、宝探しするのは好きだから時間に余裕がある時でもしてみるのもいいよね?)
夜月『それぐらいの気持ちでいいじゃないか?今回はまずダンジョンの踏破するのが目的なんだろう?』
(うん!それができてから余った時間で皆んなと宝探ししよう♪)*さっき見つけた宝箱は今日の探索が終わって、ジル叔父様の城塞屋敷に戻ってから開ける約束を皆んなとしてるよ!
今後の予定も決まりウキウキした気分で下層への階段を歩いていく。
ジル叔父様「さて、子供達、そろそろダンジョンにも慣れてきたかな?ここからは君達がギルドで受けた依頼の品を落とす魔物が生息している階層だ、注意しながら進んで行くんだよ?」
「「「「「はーい♪」」」」」
(よっしゃ!張り切って“索敵“!・・・・・ほうほう、意外とたくさんいるね・・・)
「よし、じゃあ先に常設依頼の“染色スライム“探しからする?」
イネオス「そうですね、1パーティーずつ依頼を受けたので合計10個必要ですし」
ベイサン「確か、水辺の高い茂みの中に隠れてる事が多いってギルマスが言ってたから、右にある池の周りなんてどうですか?」
ソル「確かに、そこなら居そうですね」
ヘティ「あ、そう言えば水辺に貴重な薬草が生えている事があるとも仰ってましたから、慎重に探してみましょう」
「そうだね、薬草もあれば、採っていく方向で“染色スライム“を探そう」
「「「「はい♪」」」」
元気よく返事をして降りてきた階段近くにある池へと移動し、池の周りにある草むらを丁寧に掻き分けて“染色スライム“を探し始めた僕達。
「あ、1匹見つけたー!」「こっちもいましたー!」「ここに2匹いまーす!」「1匹見つけましたー」
「おー、皆んな凄い!僕も頑張って見つけなきゃ!」
探し始めて数分であちらこちらからスライム発見の報告があり、自分も続けとばかりに気合を入れると。
ガサッガサッ
「・・・・・・おう…、ここは“染色スライム“の溜まり場だったみたい・・・、!“ウィンドショット・ラッシュ“」
ドドドドドドドドドッ! ドシュッ!
掻き分けた草むらの中に色取り取りのスライムが10匹ほど固まっている所に遭遇、一斉にこちらを見た気がした僕は、向こうから襲い掛かられる前に先手を打って“ウィンドショット“を乱れ打ちしたのだった。
シュワワァ~~! ポトポトポトッ
「ふぅ、危なかった~、あれで一斉に飛びかかられてたら服が色んな色に染まる所だったよ・・・」
*“染色スライム“とは・・・
ダンジョン外では生息しておらず、ダンジョン特有のスライムの一種、通常のスライムとはあまり大差はない生態をしているが、色のバリエーションが豊富で、色が違うからと言って特別な魔法等を使ったりしない、そして“染色スライム“の色に関して、専門家が観察し研究したところ、スライム自身が好んで食べる食物の色が関わっているのではないかと言う論文が挙げられている、それが事実かは今のところ判明はしていない。
だが、色鮮やかな“染色スライム“が好む生息域は、水が豊富で色取り取りの草花が生えている場所が多いので一概に否定できないのは確かだった。
そして、“染色スライム“は比較的大人しい性格で、こちらから手を出さなければ襲ってくることはないが、びっくりすると驚かせてきたものに対して飛びかかって来て、体内で生成されている“染色液“を相手に吹き出す習性がある、その“染色液“に相手が驚いている隙に逃げるのが“染色スライム“の主な攻撃行動だが、“染色液“にこれといった害がないのですぐ討伐されてしまう、ただ、“染色液“で一度染まった服は洗ってもすぐに色は落ちず、その服は結局買い替えることになるといった出費が“染色スライム“の1番の被害だったりする・・・(地味に家計に響く被害なのは確かだな・・・(。-∀-))
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