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第3章 少年期 学園編

118話 ダンジョン前に到着

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 ダンジョン!とうちゃーく!!・・・・・・と、言いたい所だが、ダンジョンに続く道の脇に屋台村が出来ていた・・・

ヘティ「わぁ、凄い数のお店ですね、東門前の広場も中々な規模でしたけど、こちらはなにか、その、…雑多な感じがしますね…」

「だね、東門前の広場はちゃんと列が整ってたものね、これはあれかな?東門前広場に入りきれなかった商人さん達がここで出店してるのかな?」

(あ~、屋台が多くて泉の“い“の字も見えないねぇ~( ´ ▽ ` ))

 屋台の数が多すぎて、ダンジョンの近くにあるって聞いてた泉が全く見えない・・・、領都出たすぐの所では遠目に少し見えてた泉の水面が、ここまでくると全然見えなくなっちゃって内心、少し楽しみにしてただけに残念に思った僕だった。

ベイサン「それにしては、生粋の商人がしてるとは言えない怪しいお店が多いですよ?」

イネオス「多分ですけど、ここの出店は管理がされてないのでは?」

ソル「あぁ、ここは街中じゃないですからね、街道での出店は安全が保証できないから、領主の出店許可は必要ないですし、ちゃんとした建物を立てない限り屋台の大きさに規定はないですから、この様に雑多な感じになっているのでしょうね」

「あ、そうか、城壁外の街道沿いでもちゃんとした店舗を作って出店したら、定住とみなされて土地に税金が掛かるけど、街中でない街道での普通の屋台なら場所代も税金もかからないもんね、でもその代わり安全性は皆無だろうけど・・・でもここなら常に冒険者達が行き来してるから安全性はむしろ高いのかな?」

 幸い、ダンジョンの入り口までの舗装された街道は妨げられていないので、人は多いがゆっくり馬車は進んでいる、道の両側はヘティが言った様に屋台の大きさが店によってバラバラで、横幅も出店者側の力関係を示すように、ボディーガードとして雇われているのか強面の男達がいる屋台は、街道沿いに面している横幅がとても広く、寄ってくる客も多い。

(ここの屋台村の場所取りは早い者勝ちか力技なんだろうねぇ~、もし、トーナメント制なら雇った実力者次第って感じ?それとも店主の交渉の力量?)

ドラーゴサブマス「・・・・・なぁ、ジル、お前んとこの親戚の子供達はまだ10歳だったよな?30代の商会長とかじゃないよな?」

(ぎくっ!)

ジル叔父様「何言ってんだよサブマス、10歳に決まってるだろ、後、親戚の子供はアトリーだけだぞ」

(言えない、前世が30代で小売店の店主してたなんて、さっきの会話の視点がケチくさい営業者の税金対策に向いてたなんて、絶対言えない・・・:(;゙゚'ω゚'):)ガクブルッ

 サブマスが的確に僕の前世を当てて来て内心焦る、話を聞いていた父様やイネオス達は苦笑い気味だ。

ドラーゴサブマス「いや、だってよ、さっきの話もそうだったけどもよ、言葉遣いとか話しの持って行き方とか、他にもいろんな知識とか本当に10歳の子供か?って思うんだが・・・」

ジル叔父様「あのな、サブマス、この子達はまだ幼くとも貴族で勉強ができる子達だからだ、まぁ、アトリーは規格外だが…、いや、ソル君もか?・・・・・、とにかく、この子達は貴族としての教育がしっかり施されているから、そこら辺の平民の同世代の子供達と一緒にしてはだめだ」

ドラーゴサブマス「ふーん、お貴族様の教育の賜物ってやつかぁ」

 ジル叔父様の言葉で一応、納得したサブマス、だが僕は釈然としないので、

(をい、途中で僕とソルだけ除外したな・・・、そして誤魔化したな・・・(¬_¬))ジトーッ

 と、恨みがましい目で見ていると、

ジル叔父様「・・・・・ゴホンッ」

 視線に気づいたジル叔父様は咳払いして自分の視線を馬車の外に逸らした。

ジル叔父様「・・・しかし、ここはいつもながら賑わっているな、皆んな、馬車を降りた後は迷子にならない様にするんだよ、特に一緒にダンジョンに入らないかって言う誘いには気をつけるんだ、新人冒険者を標的にした恐喝や詐欺、ダンジョンを使った犯罪を行う者達がいるからね、分かったかな?」

 あからさまに話を逸らしたジル叔父様、でもジル叔父様が言ったことは確かに気をつけなければいけない事なので、ちゃんと聞き入れ皆んな真剣に頷いた。

 そうして、楽しく雑談していると、馬車はロータリーを兼ね備えた広場に差し掛かっていた、ロータリーの奥には小山ほどの大きさの岩山があり、その手前にはそれなりに頑丈そうな建物が岩山に沿う様に建っており、そこに冒険者達が出入りしているのが見てとれた、それを見るにどうやら今回のダンジョンの入り口はそこのようだ。

「・・・あそこがギルドが管理しているダンジョンの入り口なのでしょうか?」

ドラーゴサブマス「あぁ、あそこがダンジョンの入り口だ、正確にはダンジョンの入り口を覆って、ダンジョンに入っていく奴らを管理いる建物だな、あそこを通らないとダンジョンには入れないように厳しく管理されているのは確かだが、本来の役目は“氾濫“が起こった時、魔物を閉じ込めて少しでも周りから人が避難する時間を稼ぐための檻の役目をしているぞ」

 事前に調べていた知識を実物を前に改めて冒険者ギルドのサブマスターから教えて貰うと、なんとも言えない高揚感が湧き立ち胸が熱くなるのであった。

「中はどんな風になってるんだろう♪楽しみ♫」

父様「存分に楽しみなさい」

「はい♬」

 外の景色を見ながらワクワクしている僕の頭を父様が優しく撫でてくる。

 ロータリーを周り、ダンジョンの入り口である建物の前で馬車は停車すると、周りにいた冒険者達の視線が一気に集まった。

「なんだ、なんだ?すげー、場違いな馬車が止まったぞ?」「あれ、どう見ても貴族の馬車じゃねぇ?」「乗って来たの誰だろ?」「おい、気をつけろよ、いちゃもん付けてくる貴族だったらどうすんだよ」「あの紋章どこかで見たことあるぞ?どこだっけかな?」「ねぇ、中に乗ってるの子供じゃない?」「え?子供?貴族の?」「いや、流石に子供だけでこねぇだろ」「周りにいるの、普通の冒険者じゃないだろ、アレ・・・」「護衛じゃね?」

 などなど、色々と言われているが中はいつも通り、外の護衛騎士が周りの安全確保のために動き出し、外にいる冒険者達をある程度牽制し遠ざける。
 安全だと確認して、そしてやっと御者台で馬車を動かしていたカイルさんが馬車の扉をたたき、目的地に着いたことを知らせ、中にいたオーリー(実はずっと一緒にいた)がそれに対応し扉の内鍵を開ける、カイルさんがオーリーに手を貸し馬車から降ろし、最初にサブマスが降りると・・・

「えぇ⁉︎中からサブマスが降りてきた⁉︎」「なんでサブマスが⁉︎」「サブマスって貴族だっけ?」「てか、サブマス、何のようでここに来たんだろ?」

 と、凄い賑わいを見せる、次にジル叔父様が馬車から降りて行くと・・・

「!、あれ!ジル様じゃん!!なんでサブマスと一緒の馬車から降りて来てんの⁉︎」「あぁ、ジル様と一緒に来たからサブマスが貴族の馬車に乗ってたんだ、しかし、ジル様かっけぇー!」
「でも、ジル様とサブマスがこんな初心者向けのダンジョンになんのようだろ?」「さぁ?分かんないけど、ジル様に会えるなんて今日は付いてる!」

 と、さらに注目を集めることになってしまった。

(なんだろ?サブマスの時は普通に疑問だけだったのに、ジル叔父様が降りると憧れのスターに会えた感を感じるな・・・( ・∇・))

「きゃあぁー♪、あの人誰だろ!凄い、いい男!!」「もの凄い美形だわ!絶対、お貴族様よ!!」「あんな、男なら付き合ってみたいわぁー、こっち向いてくれないかしら?」「ジル様に似てるから、親戚じゃないか?」「えっ!じゃあ、王族ってこと⁉︎」「王族⁉︎・・・誰かしら?王子さま?」

 父様が降りると主に女性からの黄色い声が飛び交った。(父様は、ザ・王子様って雰囲気だもんね、似た顔をしているジル叔父様とはまた違った魅力があるか、ジル叔父様はどちらかと言えばワイルド系だもんな)

 その後は僕達子供組を1人ずつ降ろしていく、その時もざわめき立ったが大人達が降りて行った時ほどでもなかった、そして、何故かいつも1番最後に降ろされる僕は、自分の順番が来るまで大きな姿になったジュールや夜月をモフって待つ、ジュール達も降りていくと順番が来て父様の手を借りて馬車を降りた・・・

「「「「「⁉︎・・・・・・・・・・」」」」」

 先程までの騒がしさが一瞬にして静まり返り、人が微動だにしなくなった・・・

(やっぱり、フリーズしちゃった・・・、ねぇ天華、なんか最近さ、以前より人が固まっている時間が長くなってない?・・・気のせいかなぁ?)

天華『そうですねぇ、アトリーの容姿の美しさに磨きがかかって来たのは当然として、多分ですけど、月の光の力“月光力“をふんだんに取り入れた事が一つの要因かと、アトリーの特殊な魔力と合わさった結果、アトリーの体から微かに出ている魔力に“神聖なオーラ“みたいなものが追加されたように、人々を惹きつけているようです・・・』

 まぁ、ここ最近の変化といえば、それぐらいしか思い至るものがないので深く納得する。

(そうかぁ、“月光力“がねぇ、月詠様の加護の力を強めるだけじゃなくて、魔力にも良かったのかぁー、“神聖なオーラ“ってなんだそりゃって感じだけど・・・はぁ、それじゃあこの状況は改善することは無理か?)

天華『まぁ元々、未知の力ですし、どんな効果をもたらすかは予想はつきません、今後も経過観察していきましょう』(街中より精霊達が集まって来て効果が割増になってるのは黙っておいた方がいいですかね・・・)

 そう言われて仕舞えばもう手の打ちどころはないので、いつも通りスルーする方向に思考を切り替えた。

(まぁ、放置するのが最善の策なのは楽でいいけど、後々面倒な事になりそうな予感がするよ・・・、今後もできるだけ、魔力を極力外に漏らさないように気を付けよう・・・)

天華『それが1番いい方法でしょうね、ですが、抑え過ぎてもいけませんので、循環だけは怠らないようにしましょう』

(分かった、これからの課題はどれだけ効率よく魔力を循環し使うかに焦点を置いた訓練が必要になってくるか・・・)

 天華と今後の訓練の方向性を決めている最中に、父様達は周りの様子を見てため息一つすると、この場の状況の収集は諦め、先に進む事にしたようだ。

 幸い、固まった人達は僕達が近づくと無意識に後ずさり、道を譲ってくれるので、心置きなくその道を進み、ダンジョンの入り口となっている建物に入っていく、そして建物に僕達が入って行った後、外から多くの人達の驚きと戸惑いのざわめきが聞こえてきた。

「なぁ!今の子供は何なんだ⁉︎」「あの子!本当に人間⁉︎それに一緒にいた使役獣?アレってただの魔物じゃないわよね?」「それより男の子?女の子?どっち⁉︎」「あの子だけ他の子と違った!よく分かんねぇけど違ったんだ!」「うんうん!分かる!なんか違うんだよね!」「ねぇ、あの子、凄い魔力持ってた、普通の子供じゃないよ」「それより、あの一行がこのダンジョンに何の用なのかな?見たところかなり高位の貴族達だったみたいだし・・・」「知らないの?あの方達、デューキス公爵家のご当主と、そのご子息よ、ジル様の後に降りて来られた人が公爵家のご当主で、1番最後に降りて来られた銀髪に左右違う色の瞳のお子様が公爵家の御三男様よ、ほら、一時期話題になったじゃない、主神様のご加護を頂いて聖獣様を授かったって」「え⁉︎アレって本当のことだったのか⁉︎てっきりリトス教のデマだって思ってた!」「!あんた!そんな事言ってると不敬罪で牢屋行きになるよ!」「ひぇっ!まじか⁉︎」「ねぇ!本当にあの子、男の子なの⁉︎」

(カオスだなぁー、・・・それにしても、やっぱり魔力が多い人には僕の特殊な魔力の効果は薄いみたいだね、冷静な判断がすぐにできている人もいたみたいだし・・・・ほっ、良かった・・・)

夜月『アトリー・・・』

 僕が安堵していると、夜月が気遣わしげに声をかけてきた。

(ん?・・・大丈夫だよ、皆んなが皆んな僕の魔力に当てられる訳じゃないって、ちゃんと分かってるから・・・)

 僕は一時期、自分の魔力のせいで人が自分の意思に反した行動をとることに罪悪感があった時があった、僕の魅了効果のある魔力のせいで何の罪もない人が屋敷に侵入して来た事があると聞いていたから。
 もしかしたら、両親や兄妹、家族皆んなが僕のことを可愛がるのはそのおかげなのかも知れないと思ったこともあった、だから祝福を受けた後は必死に魔力操作の鍛錬に力を入れて、魔力を外に放出しないように努力した、煩わしいと言われないように聞き分けの良い大人しい子供で居続けようともした、それでも人々は僕を見るなり固まり見惚れ、厄介なことに僕が笑っただけで自分に気があると勘違いした人まで現れる始末。
 正直、人間不信になりかけた、そんな僕を慰めて元気付けてくれたのは他でもない家族にソル、それにジュール達だった。
 ジュール達のおかげで魔力量が一定以上の人達には僕の魅了効果のある魔力は効かないと分かって、心底安心した、もしかしたら、この魅了効果のある魔力がなかったら、僕はまた前世でのように正常な友人関係を築けないじゃないかと、何かしらの見返りがなければ一緒に居られなくなるんじゃないかと・・・

 その事を知っている夜月達が僕の心情を読み取り寄り添って慰めてくれた、でもその事で悩まないと決めた僕は吹っ切れて、今は人々が固まっても変な後遺症とかが残らないと良いなって、心配できるまでになったからもう大丈夫!

(さて!ここはどんな構造のダンジョンなんだろう、楽しみだね♪ね、皆んな♫)

ジュール達『『『そうだね♪』ですね♫』だな』

 心配はいらないと判断した僕は今入った建物内に意識を向けた。

「・・・・・うーん、人がたくさんいるね・・・」

(なんか、テーマパークの入場口の風景に見えるのは僕だけだろうか?・・・・)












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