187 / 394
第3章 少年期 学園編
101話 中間管理職は辛いよね
しおりを挟むバンッ
大きな音を立てながら入って来たのは、明らかにこの領地の衛兵隊ではない人物だった。
(おんや?衛兵さんじゃない???)
?「・・・・っ⁉︎、シバイ殿⁉︎ど、どうなされたんですか⁉︎いったい誰がこんなことを⁉︎「グイッグイッ」は、外れない!」
急に入って来た男性は静かに周りを見渡し、床に転がっていた勘違い男を見つけるやいなや、すぐに駆け寄り拘束されている勘違い男を助け出そうとした。
?「くっ、誰の仕業ですか!この拘束を外すのです!このお方にこのような事をしでかすとは!名乗り出なさい!」
(ん~ん?あの人西洋風の服装をしているけど、あの男の知り合い?顔がこの国の顔つきじゃないところを見ると、あの男と同じドンチョク朝廷国の人間かな?)
あの勘違い男にの有様見て憤るように声を上げた男性、だがその言葉に周りの人達は血の気が引くような感覚に陥った、なぜならその惨状を起こしたのがこの世界では敬うべき存在の聖獣だからだ、そんな周りの反応などいざ知らず、僕は正直にこう答えた。
「あ、それをしたのはこの子達です、まぁ、その状態になったのは自業自得です、人の話をちゃんと最後まで聞かないからこうなったんですよ」
ニッコリッ!
(貴方はちゃんと話聞くよね?)
笑顔に圧をかけて・・・
?「えっ!あ、はい・・・」
?(えっ、この迫力のある美しい子供はどこの貴族家の子だ⁉︎ ・・・いや、この子供の白銀の髪に珍しい左右色の異なる宝石のような瞳、3年前この国で主神の加護を得て、聖獣様まで授かった神の愛し子の人相の情報と一致する、と、言う事はこの子供はこの国の王家の血を引く“デューキス公爵家“の末子、アメトリン・ノブル・デューキス様!・・・そして、隣にいるのはこの国境に接する領地を治める“マルキシオス侯爵家“の先代当主、イエロモンド・ノブル・マルキシオス様、この領地では知らない者はいない剣豪で有名なお方だそんなお方のお孫様だったはず・・・、
これはまずい事になった、シバイ殿のお父君からご子息の面倒を見てくれと頼まれていたが、どう見ても今回の問題は私には荷が重い、シバイ殿をこの様な姿にしたのが、デューキス公爵家の末のご子息が授かった聖獣様方が直接なされたと言うことは、どう見てもシバイ殿に非がある、ここは穏便に話し合いで解決しないと、シバイ殿はこの国で処罰されてしまう!)
?「・・・お、お見苦しい所を見せしてしまい申し訳ございません、マルキシオス閣下には以前こちらへの赴任時に一度ご挨拶させていただきましたが、お隣に居られる公子様方には初めてお会い致しますのでご挨拶申し上げます、私はドンチョク朝廷国よりこの領都の大使館に派遣されております、“ドンチョク朝廷国大使館、駐在大使の事務補佐ジシギン・ゼヌン・ゼチル“と申します、聖獣様方並びに公子様にお会いできて光栄です」
「初めまして、もうお分かりかと思いますが、僕はデューキス公爵家当主が三男アメトリン・ノブル・デューキスと申します、僕もジシギン殿のような優秀な方にお会いできて嬉しいです」ニッコリ
ジシギン大使補佐「っ!」
(へぇー、ちゃんと僕の事を知ってる人が“ドンチョク“の人でいたんだねぇー、それに切り替えも早い、僕の隣にいるお祖父様に気づいてすぐさま姿勢も正したし、礼儀もわきまえてる、中々有能そうなお兄さんだね)
急にギルドに入って来たお兄さんは、この国に駐在する大使の事務補佐出そうで、状況把握能力が高く、この国の貴族の情報を正確に掴んでいる、常識人のようだ、黒に近い焦茶の髪に黄色い瞳をしてメガネをかけた、そこそこイケメンの服装も髪型もきっちりとした青年で、中々有能そうな人だった。
モンドお祖父様「ふむ、確かに見た覚えがあるな、して、ジシギン殿はそこの無礼者を知っているのかな?」
ジシギン事務補佐「は、はい、この方がこちらに来られる時、この方のお父君から気にかけておいて欲しいと頼まれたので、この街に滞在している間だけ少し面倒を見ているのです、何かあれば連絡するように共の者に言ってあったので、連絡を受け早急にこちらに駆けつけたのですが・・・、この方が何か粗相をしてしまったのでしょうか?宜しければお教え願えませんでしょうか?」
モンドお祖父様「ほう、良いだろう、ジシギン殿は一応その者の監督者のようだからな、それに大使殿にもこの事を話す手間がなくなりそうだ・・・ーーーー」
そう言ってお祖父様はギルマスに応接室を借りて、ジシギンさんと話し合う事にした、勘違い男の一行はその後すぐに駆けつけた衛兵隊の人達に拘束され、衛兵隊の詰め所まで連行されていった。
そして、勘違い男を見送った僕達はギルマスが用意してくれた応接室に移り、今日あった事を最初から説明した。(主にオーリーが・・・)
ジシギン事務補佐「そ、そんな事になっていたとは・・・・」
事情を全て聞き終えたジシギンさんはほとんど言葉を失い驚いていた。
モンドお祖父様「そう言う事だから、できればあの者の処罰はこちらで行いたいのだ、大使殿にあの者達の所業の報告をお願いできるかな?」
ジシギン事務補佐「は、はい・・・承知しました、“イェシン大使“には私から直接お話しいたします、なので今回の件の詳細を通常通り書面の申請はお願いできますでしょうか?」
あの男の身分剥奪ができるかはさておき、優しくお願い(命令)を聞いて顔が引き攣るジシギンさん。
モンドお祖父様「戻りしだい早急に書類を製作し提出する、今日中には届けよう」
ジシギン事務補佐「あ、ありがとうございます、本日は我が国の者達がご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした」
その場に立ち、深々頭を下げて謝罪した。(中間管理職は板挟みで大変そうだね・・・)
モンドお祖父様「ジシギン殿からの謝罪は受け取った、今後はこのような事が起こる事の無いように願うよ」
お祖父様は寛容に頷きつつも2度目は無いと釘を刺した。
ジシギン事務補佐「はい、2度とこのような事がないよう大使館から周知徹底いたします、そして、公子様にも多大なご迷惑をおかけした事、深く謝罪いたします」
再発の防止を約束して再び深く頭を下げた。
「お気になさらないで下さい、ジシギン殿が悪いわけでもないですし、それにこちらはもっと早く名前を明かしたかったのですが、あの方は人の話を最後まで聞かなかったので、自業自得ですし・・・、とにかく、ジシギン殿からの謝罪は受け取りましたので、もし今回の事で困った事になりそうでしたら、デューキス家に遠慮なく相談してください、お力になれると思いますので」ニッコリッ
(もし、職が無くなったりしたらこっちで確保しよう、このお兄さん中々有能そうだしね、ふふっ)
天華『また、犠牲者が・・・・』
ジシギン事務補佐「は、はい!お気遣い、あ、有り難う御座います!で、では私はすぐさま大使館に戻り大使にご報告をいたしますので失礼いたします!」
ダッ! ガチャ! バタンッ!
そう言い終わったら軽く頭を下げすぐに応接室を出ていったジシギンさん、天華になぜか『犠牲者が・・・』とか言われたが有能な人材の確保は大事なのでスルーした。
ギルマス「体も鍛えてそうだな、あの事務補佐・・・、出ていく速度が中々速かったしな・・・・、しかし、アメトリン君はなんでさっきの騒動で魔法を使って相手をのさなかったんだ?」
ジシギンさんの出ていった扉を見つめてギルマスが彼を評価したと思ったら、不意に思い出したように僕に問いかけてきた。
「あ、それは、護衛騎士達がいるときは彼らのお仕事をとらないように、と父様達から言われてまして、それに、もし攻撃魔法など相手が使ってきたら結界魔法で防ぐ準備はしてましたよ」
ギルマス「ほう、あくまで対処は護衛騎士達の仕事として、自分はもしもの安全確保の準備はしたのか、自分から反撃して相手を制圧する気はなかったのか?」
「今回はする気はなかったと言うより、できなかったと言うのが正しいですね、本当は軽く魔法で補佐してあげたかったんですが、今の僕にはちょっと難しくて・・・」
モンドお祖父様「どうした?アトリー?」
ギルマス「なんか問題があるのか?」
2人は不思議そうに聞いてくる。
「ええ、ちょっと最近、魔力量が急激に増えたので手加減が難しいんです、そんな状態で攻撃魔法を使うと周りに甚大な被害が出るんで、今の魔力量に慣れるまで建物や街中での攻撃魔法の使用を控えているんです・・・あ、でも冒険者活動しているときは護衛がいないので、その時はちゃんと自分で対処したりしてますよ♪」
(うっかり、魔法で攻撃したりすると周りが大惨事になるからね!ダンジョンでの反省をちゃんと活かさないと父様達に呆れられちゃうよ)
モンドお祖父様「あぁ、そう言えば、そんな事をラトが言っていたね・・・、初級魔法の“サンダーボール“であの威力だった・・・、うん、そうだね、使わなかったのは正しい判断だ、周りに配慮したアトリーは良い子だね」ナデナデッ
お祖父様は僕の攻撃魔法の威力を知っているので、先程の一件での僕の判断を頭を撫でながら褒めてくれた。
(最近、やたら大人達に頭を撫でられるんですけど・・・、なして?身長の位置的に撫でやすいのかな?)
頭を撫でてもらうのは別に嫌いではないので、拒否ったりはしないが最近の頭撫でられ率が高いのを不思議に思う僕だった・・・
ギルマス「ふむ、そんなに威力があったのか・・・俺は実際に見たわけじゃねぇから何とも言えないが、周りに配慮した結果あれだけで済んで良かったと言う事か?・・・いや、相手に取っちゃぁそんなに大差ないかもしれねぇが・・・」
(あははっ、確かにWWW(*゚▽゚*))
グゥ~~ッ
「「「「「ん?」」」」」
そんな、会話をしているうちに誰かのお腹がなったので、会話もそこそこにお祖父様とお昼ご飯を食べるためにギルドを出た、それをギルマスが笑顔で見送ってくれて、お祖父様が最近話題になっていると言うレストランに連れていってくれて、皆んなで一緒に食べた、紹介してくれたレストランの料理はどれも美味しくて、ジュール達も満足してくれて先程までご機嫌斜めだった気分が回復したのだった。
「ご馳走様でした、ふふっ、皆んなご飯美味しかったね、さて、この後はどうしようか?どこか行きたい所はある?」
と、聞いてみた、その質問に夢ちゃんと彩ちゃんが途中で見かけた、スイーツ店に寄りたいと言ったのでそこにより、お屋敷に残った人達にお土産を買って帰った。
そして帰宅・・・
「只今、戻りました、父様、母様、お土産もありますよ♪」
母様「お帰りなさい、アトリー」
父様「お帰り、アトリー、お出掛けは楽しかったかい?」
マルキシオス邸に帰りついて泊まっている部屋に戻ると、父様、母様が部屋で待っていた。
「はい、ちょっと変な人に会ったけど楽しかったです♪」
(女の子に間違われて、告白までされたなんて、恥ずかしい事言いたくないけど、すでに影から報告は入っているだろうから、下手に隠さないほうがいいんだよねぇ)
母様に手招きされ素直に従いながら答えていると、母様が自分と父様の間に僕を誘導し座らせた、慣れてきたとは言え両親の間に座って頭を撫でられながら自分の話をするのは、いまだに恥ずかしさが拭えない。
父様「そうか、その変な人はお祖父様が適切に処理してくれるから、アトリーは気にしなくていいからね」ナデナデッ
「はい、父様、あ、そうだ母様、お土産にケーキを選んできたので一緒に食べませんか?」
話を変えるために無限収納に入れていたケーキの箱を取り出し母様に渡した、ついでに言うと姉様達の分は帰ってきてすぐに、マルキシオス家の執事に頼んで配ってもらっている。(このお土産のケーキ、帰り道に寄ったスイーツ店で選んでいると、モンドお祖父様が自分がお金を払うから好きなだけ買いなさいって、僕達皆んなに言ってくれたんだ、太っ腹だよねお祖父様!( ^∀^))
母様「あら、有り難うアトリー、一緒にお茶しましょう、リア、お願いできるかしら?」ナデナデッ
リアさん「はい、奥様すぐにご用意いたします」
リアさんが僕が渡したケーキの入った箱を受け取り部屋を出て行き、部屋の中には両親と僕、父様の専属従者兼執事のカイルさんだけとなった、ソルはセラスさんにお土産を渡しにいっているのでここにはいない、なので、存分に両親に甘えていいとは思うのだが、前世含めると40歳後半の自分の精神がいまだに違和感と共に羞恥心を自覚させるのだった。
「そうだ母様、父様、選んだケーキの中に梨を使ったタルトがあったので一緒に食べましょう♪」
母様「まぁ、それは美味しそうね、ふふっ♪」
父様「ナシはすっかりアトリーの大好物になってしまったね」(今度からお義兄さんにナシを定期的に送って貰おう・・・)
その後は両親と楽しくお茶を楽しみ、夕食は珍しく家族だけでとり(あ、ソル一家は一緒だったよ!)、いつものように両親に挟まれて眠り、マルキシオス領に来て6日目の夜は更けていった・・・
248
お気に入りに追加
4,393
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?


【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる