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第3章 少年期 学園編
96話 見え隠れする悪意 父:アイオラト 視点
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少し時間は遡り・・・・・・
父:アイオラト 視点
昨日の夕方に子供達の件で謝罪と和解が出来た父親勢は、子供達が罰と称した訓練をしている間に、私達は今回できたダンジョンをどのように報告すべきか共に悩んでいた。
「新しくできたダンジョンの発見報告は貴族としての義務ですから、必ず報告するのは当たり前ですが、問題はこのダンジョンのできた経緯をどこまでギルドに報告するかですよね・・・」
ニモス義兄上「そうだな、国、いや、陛下には事実を話しても問題はないのだろうが、ギルドは国とは別の管理下にあるからな、もし事実を全て報告してアトリーの関与が他に漏れでもしたらことだからな・・・・」
「「「「「うーん」」」」」
ダンジョンの出来た経緯を知っている者達が同じように唸った。
「今回の旅行は“勇者候補達“を取り返そうとしてくる、ズューウス王国の間者の監視の目を撹乱するためのものでしたから、目立つのは構わないのですが、そこにアトリーの情報が出るのは避けたいですね・・・・、やはり、ダンジョンは自然に出来たものを偶然発見したと報告した方がいいでしょうか?」
ブラーブ殿「そうですね、ダンジョンの発生原因がアメトリン様へのプレゼントだったとは、にわかに信じ難いですし、それを他国に知られるのは危険だと思います」
子供達の一件の後、ブラーブ殿達と良く話し合い最終的には和解し、これからも今までの様に交流を続けて行きたいと言った私の要望に、申し訳なさそうな表情をしつつも承諾してくれた、少々ぎこちなくはあるが以前と変わらない態度で接していてくれている。
(我が子のした事を誠心誠意、謝罪してくれた彼らの誠実さに脱帽だよ)
そう思いながら、話を聞いていると。
オネスト殿「それにもし、情報が正しく伝わらずに、間違った噂が広まったりする恐れもあります、例えば、“アメトリン様が望めば神々や精霊達がダンジョンを作り出す“、とか・・・」
「「「「!」」」」
ダンジョンはどの国にも存在し個々の特性にもよるが、大半のダンジョンはその中で取れるドロップアイテムがその国の資源として扱われ、国の特産にもなっているところもある、そんなダンジョンをアトリーが望むだけで出来てしまうなんて広まったりすれば、間違いなくアトリーをめぐり無用な争いが始まるに違いない、今のオネスト殿の発言で、ここにいる人達の頭の中に同じ様な事を考え思い浮かんだのは間違い無いだろう。
お義父さん「うーむ、その可能性はあるかも知れないな…、以前もアトリーに関して間違った噂が広まっていた、以前とは違い今回は危険性も伴う、それにダンジョンの発生に精霊が関わっていると多くの人間が知るところだからな、今回の件で精霊達とアトリーの関係を他者に知られるのは得策では無いな・・・、ラト君の言う通りダンジョンの発見報告は自然発生の物を発見したと報告しよう、ダンジョンの出来た場所が我が家の私有地からほど近いから、発見時の状況の詳細などは明確に記入する必要はないだろう、説明を求められても“我が家に滞在中だった客人が見つけた“、とだけ言えばこの街の冒険者ギルドのギルドマスターは深くは追求して来ないはずだ」
「分かりました、お義父さんがそう仰るなら、そのようにお願いいたします、後、国の方にも同じようにご報告してください、陛下には私の方から直接詳細を報告しておきます」
ニモス義兄上「分かった、今回のダンジョンの発生原因の真実はこの場の者達だけの話として扱おう、ヴィカウタ子爵、ダンロン男爵、バロネッカ准男爵、あなた方にもこれを遵守して頂きたい、他言無用でお願いできるかな?」
「「「はい」」」
ニモス義兄上「協力感謝するよ、ふふっ」
ほぼ脅迫のようなお願いに怯む事なく返事を返した3人、その3人の返事に満足した様子のニモス義兄上、私も続いて礼を言い、次の話題に入った。
ニモス義兄上「さて、例の準備の件はどうなっているかな?それとズューウス王国の動きも気になるんだが」
「はい、“勇者候補達“の送還儀式の準備は着実に進んでいると連絡は来ています、ですがそれに伴いあちらの動きも活発化している様ですね」
前日の夕方にアトリーが開発した魔道通信装置を介して、シベラスから来た新たな情報を話す。
ニモス義兄上「勘づかれたか?」
「そうですね、活発化と言っても、向こうの“勇者召喚“を主導した高位貴族達が、我が国に対して“勇者候補達“と姫君の返還の要求を出す様にと王家に嘆願しているようで、それを王家が突っぱねているそうです、貴族達には他国からの圧力もかかり、私達の動きに気づいていても公には簡単に手出しはできないでしょう」
ツァルト殿「それもそうでしょう、無断で“勇者召喚“をした国に勇者候補達の身柄を返すなんて出来ませんからね、いくら高位貴族達が王太子を操りやらかした事でも、そんな厚かましい事を王家としてもできないでしょう…、そう言えば、あちらの王家の方々の“健康状態“は回復されたのでしょうか?」
以前の情報共有で知らせていた情報の中で、ズューウス王国王家の人達の健康状態が悪い事を思い出したツァルト殿が、現在の王家の現状を聞いてきた。
「あぁ、それは向こうにいる宮廷治療魔法師にこちらの手の者が接触して、適切な治療法を提示し施した結果、王太子の洗脳はだいぶ解けて王の病状は回復傾向にあります」
(王家の中で特に薬での洗脳の影響が酷かった王太子も、今は自分がしでかした事をちゃんと認識できるまでになっているし、以前から体調が思わしくなかった王はこちらから派遣した治療魔法師の診察で、薬物による中毒症状だったと判明し、現在は徐々に体調が戻ってきていると報告が来ていた、だが、どこでその薬物に触れて中毒症状を起こしたのか判明していないと言っていたな、しかし王城というもっとも警戒が強い場所で、王や王太子が手に取るものに毒や薬物を仕込むのは難しいはず、それなのに中毒症状の原因が不明なんて・・・、もしかしたら王を殺そうとして、王太子を操り人形にしようとしたのは高位貴族ではなく、案外、身近にいる身内の犯行の様な気がするな・・・)
ツァルト殿「そうですか、それなら国家間の争いは免れそうですね・・・」
「それが、問題はあちらの高位貴族達が頻繁にあらゆるギルドや、後ろ暗い連中を介して裏で何処かと手紙のやり取りをしていると、そのやり取りの相手が“例の邪教“では無いかと報告が来ています」
(あの国の貴族達の中で例の“イーヴィル・ドラック“が流行っていると聞いたし、やはりその線で“例の邪教“と繋がったのか?・・・そう言えば、あそこの王妃はやけに薬物の影響は少なかったと言っていたな…、もしかして・・・いや、確証は無いからな…、詳しい調査をしてみるか・・・)
お義父さん「相手を特定しきれなかったのか?」
色々考えていても、現状は調査の結果を待つしかないので、思考を止め、今は前日にきた情報の共有と伝言を伝えることに専念した。
「それが、こちらを欺くためなのか送り先が常にバラバラで、他国の商会関係者や冒険者個人など、さまざまな人種や職業の者に送られているようで、狙いが読めない上に、どうにかすると国を二つ跨ぐこともあり、人でも足りず特定が難しいと言ってました。かろうじて宛先の大半が他国の冒険者達だと言うことが分かり、陛下からはなるべくこれから入国手続きをしてくる冒険者には気をつけて欲しいとの事です。他にも怪しい所のある入国者は容赦無く門前払いせよと、期間は“勇者候補達“の送還が終了するまで…、この命令が国境に接する領地の貴族達出るそうです、陛下からマルキシオス家に先に伝えよと仰せなので先にお伝えしておきます、のちに勅令書も届くと思います」
ニモス義兄上「我が領地に先に指示が来たのか?ズューウス王国とは反対側だぞ?」
「そうなんですが、手紙のやり取り先の大部分がライヒスル帝国宛てで、その内の殆どが帝国内の冒険者達らしいのです、この手紙のやり取りがこちらの偵察を惑わすための囮なのか、それとも遺族達が個人個人で得た繋がりを頼ったのか、はたまたその冒険者達が“例の邪教“の信徒なのか、まだ判明していないので警戒を怠らない様にしてほしいそうです、ここは帝国との国境に面しているだけではなく、大きな港もありますから、他国からの人の流入は避けられないでしょうし・・・」
(無茶振りが過ぎるのは分かっているが、それでも陛下は、邪魔者を最大限排除せよと仰せだ、何としても“勇者候補達“を安全に送り返さなければ国の威信に傷がつくからな・・・)
ニモス義兄上「それで我が領地が最優先で知らせが来たと・・・分かった、今日中に国境の関所と港に入国審査の警戒基準を厳しくするように通達しておこう」
国の意図を読み取ったニモス義兄上はすぐに対策を取る手筈を始めた。
お義父さん「厄介なことになりそうだ、審査を厳しくするだけでは抜け穴があるだろう、これはもう入港条件の改正を早急に行う他ないか・・・、冒険者のことは冒険者ギルドに協力をして貰うか・・・ふむ、ダンジョンの件もある、私が直接冒険者ギルドに出向いてギルドマスターと話してこよう、ここの街の冒険者ギルドのギルマスとは古くからの知り合いだからな」
ニモス義兄上が皆で座って話していたソファーセットから立ち上がり、自分の執務机で国境の関所に送る手紙を書き始めている間に、お義父さんがもっと有効な対処法を思いつき自ら動く事にした様だ。
「そうなんですね、それではお願いしても良いですか?あぁそうだ、お義父さん、今、丁度アトリー達もこの街の冒険者ギルドを見学に行くと言ってましたから、もしかしたらあちらで会うかも知れません、見かけたら帰りはあまり遅くならないように言ってください」
(遅く帰ってくるのも心配なんだが1番心配なのは、また変なのに絡まれてないかどうかなんだけど、お義父さんがその場に居合わせればこの領地内ならなんとかなるはずだ、会えなくてもすぐに知らせが来る様にはなってはいるけどね)
お義父さん「あぁ、分かった、アトリーに会ったらそう言っておく、では私は先に席を外させて貰うよ」
お義父さんは皆んなに簡単に挨拶をして足早に執務室を出て行った。
ニモス義兄上「あれは、顔には出してないがアトリーに会いたくてさっさと出て行ったな・・・」
ブラーブ殿「えっ、そうなんですか⁉︎」
オネスト殿「全然そんな風には見えませんでしたが・・・」
ツァルト殿「私も全く分かりませんでした・・・」
「ふふっ、お義父さんは孫が大好きですから、アトリーは特に会う機会が少ないので今ここいる間に構っておきたいのでしょうね」
ニモス義兄上「ふふっ、そうだろうね」
そう皆んなで笑い合っていると、ヘリーがツァルト殿を呼びに来て連れ出した、理由は分からないが残された私達は昼食を先に摂るように言われ、昼食を済ませた後に、バロネッカ一家の話し合いが行われる事とその経緯をカミィから説明されたのだった。
(まぁ、その家庭によって愛情表現は様々だ、でもそれが相手に伝わってないのなら、それはそれで問題があると言う事なのだろうね、我が家も気をつけないと・・・・)
この騒動はどの家庭も少し考えさせられる事となった。
一方その頃アトリー達は・・・・
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アトリーがマルキシオス家の屋敷を出て、冒険者ギルドに向かっている最中・・・
アメトリン 視点
馬車に乗って街の風景を楽しんでいた僕。
「ふふっ、いつ見ても活気があっていい街だよね、このまま冒険者ギルドに直行するのが勿体無いね」
いい天気の中、馬車で通り過ぎるだけにするには勿体無い街並みだ。
ソル「そうですね、どこか寄り道しますか?あ、今思ったのですが、この時間に冒険者ギルドに行くのはやめた方が良いかも知れません」
「?・・・あぁ、そうか、まだ朝の依頼受付の時間帯か・・・それは面倒ごとがおきそうな予感だ・・・うん、どこか面白そうなとこに寄り道してから行こう!」
(朝の出勤ラッシュに巻き込まれるのは嫌だし、変なのに絡まれそうだし、よそで暇つぶししてから向かった方が得策だね!)
そうして、寄り道することが決定したのだった・・・
はい!どうも!僕です!今はめちゃんこ怒です!・・・・・・仁達が・・・・
何故こうなったかと言うと、1時間ほど前・・・・
僕達は冒険者ギルドに向かう前に、この街で1番規模が大きい商会の店舗に少し顔を出した所から話は始まる。
「わぁ、この建物、4階建なのかな?凄く大きいね、それに賑やか・・・、ん?あれ?あそこって一昨日来た市場?」
店舗の前で停車した馬車から降りて、目的の商会の店舗を見上げた、規模が大きいとは聞いていたが、ここの店舗は前世で言う所の“百貨店“みたいな場所だった。
(見た目の雰囲気は有名どころの老舗百貨店みたいだね、一般市民だけじゃなくて貴族階級の人も来てそうだね、市場が対面にあるのに結構人が入って行ってる・・・)
真正面に市場があるにも関わらず、この商会の店舗には人がひっきりなしに出入りしていた。
「中に入れば理由がわかるかな?」ボソッ
仁「ん?どうかした?アメトリン君?」
「あ、いいえ、何でもないです、それより、すいません急に予定を変更してしまって・・・」
仁「えっ、あぁ、別にいいよ、僕達は暇だったからアメトリン君について来ただけだし!」
夢ちゃん「そうそう、お出かけできるならどこでも良かったしね♪」
彩ちゃん「それに、アメトリン君が言っていた懸念はもっともだもの、ここは王都じゃないから、アメトリン君を知らない冒険者はいるだろうから、用心に越したことはないわ、それに、お出かけできるだけでも楽しいから気にしないで」
ホッ「・・・良かった・・・」「「「「「っ!!」」」」」
急な予定変更に怒る様子もなく、純粋に出かける事のほうが嬉しいようだ、3人の返事にホッとして小さく微笑むと、息を呑む音がそこかしこからしてきた。
「??ん?どうしたのかな?」コテンッ
ソル「アトリー様そろそろ中に入りませんと、他の方々のご迷惑になりますよ」
「ん、あぁ、そうだね、早く中に入ろうか」
入り口前でそれなりの人数で固まって居たから通行人達の邪魔になって、なおかつ凄く目立っていたので、ソルの言う通りいそいそと中に入っていった。
(何人か案の定フリーズしてたしね・・・気をつけよう、しかし、今日はこれと言っておめかししてる訳でも無いのにな・・・何がその人の琴線に触れたか分かんないや・・・)
*この時、アトリーの心の声に天華達は・・・
天華『(うーん、ご自分の容姿の威力は自覚してきましたが、そこに無自覚の表情の魅力はまだ、自覚してませんね・・・)』
夜月『(装いだけがアトリーの魅力を引き出しているわけではないんだがなぁ)』
ジュール『(無自覚だから、無防備な表情が更に可愛くて魅力アップだよねぇ~)』
天華&夜月『『((それな!))』』
などと3人の中だけで会話がなされていた・・・
いつどこででもアトリーの無自覚な魅了は止まらない、それが厄介ごとを招くのはいつもの事?だった・・・
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