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第3章 少年期 学園編

90話 いざ、厨房へ!

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 はい、どうも、僕です!現在絶賛、海をカチ割中です!!

 数分前、天華達に再度励まされ、心の中で気合を入れた僕は、周りの反応なんて何のその、マルキシオス家にイネオス君達の家族、仁達、護衛騎士達や使用人達の帰りの準備、もとい微笑ましいものを見る視線が無くなるのを待って、僕は再度地上に戻るため、海を割る“結界魔法“を発動させる準備に入った。

「あの、父様、そろそろ、お屋敷戻りませんか?仁さん達とお料理するって約束しましたし・・・」

 少し感情が落ち着いてきて、さっきまでほぼ身内とは言え、たくさんの人の前でホームドラマを展開していた事に恥ずかしさが湧いてきた僕が、とりあえず仁達との約束を理由に、マルキシオス家のお屋敷に帰ろうと提案し、周りの視線から逃げようとした。

父様「ふふっ、照れてるね、アトリー、…そうだね、そろそろ後片付けも終わったようだし、戻ろうか」

ニモス叔父様「そうだ、屋敷に戻るのはいいが、どうやって戻るのだ?またアトリーがあの結界魔法を使って戻るのかな?でも、アトリーはさっき大きな魔法を使っただろう?魔力は大丈夫なのか?」

「あ、魔力の方は大丈夫です、あの結界はさっきの魔法より使う魔力量は少ないですから、それに魔力の回復速度はそこそこ早いので心配入りません」ニッコリッ

ニモス叔父様「そ、そうか、じゃ、じゃあまた道を作ってくれるかな?」

父様「無理はしないようにね?」

「はい!」

 僕が魔法を使うことで魔力の心配されたのは初めてだ、そもそも、僕自信が魔力切れを起こしたことがないので、失念していたが一般的に魔法を使うと使った分だけ体内に保有する魔力が減るのは当たり前、だが回復に関しては個人差が大きく出て、回復が早い人は王侯貴族の血筋の人に多い、なので僕の魔力回復速度が早いのは言うまでもない。
 それでもこの世界の人達は自分の最大魔力量を普通は数値で見たりできないから、自分の最大の魔力量を大まかにしか把握できていないので、まだ魔法を使い始めたばかりの子供の場合は、大人が子供の魔力量を心配するのが当たり前のようだ。
 それに魔力の減りの感じ方も王侯貴族の人達は、子供の時から付けられている家庭教師達から習ったりするが、通常はそんな事をしない一般市民達は、魔法を何度も使って感覚で自分の魔力の減りを感じるらしい。

(けど、僕は自分の魔力が減ったって感覚が薄いんだよね、さっき魔力の制限を半分解除して使ってみたけど、ごっそり魔力が減ったって感覚があまりこなかったんだよね~、・・・何でだろう?ステータスの魔力量の表示がおかしいのが原因かな?う~ん、・・・うん!分からん!!)

 いつも通り分からない事はそのまま放置し、帰還準備の整った人達が次々神殿から出ていくのと見て、自分も急いで後を追った。

 そして神殿の前庭の通路をソルや家族と共に歩き、神殿の敷地と海との境目にある結界の前に来た、他の人達はひとまず距離を空けて遠巻きに次に起こることを静かに見守っている。

「じゃあ、道を作りますね」

 と、言って、目の前にある結界に手を触れると、少し水の感触が手の平から伝わってくる、前に差し出した手の平に魔力を集中させて、結界魔法を発動させる。

(前方に向かい砂浜に出るぐらいまで地面に沿って真っ直ぐ伸ばし、上にも真っ直ぐ伸ばす、高さは海面から1、2m出るぐらいで、最後に結界を縦に2つに割り、少しずつ押すように横幅5、6mまで広げる、この時、海流に影響が出ないように海水があたる両外側面には、簡易的な空間魔法で両外側面の海を繋げるようにする事で、結界で遮った場所の海流を妨げないし、魚も通過させる、これで生態系にも大きな影響は出ないはず・・・・、よし、後はゆっくり広げて行くだけ!天華、次は修正いらなさそう?)

 ザザァァーーーーーッ!!

天華『はい、大丈夫ですよ、ちゃんと出来てます、ですが、今後もこの魔法は役に立ちそうですから、この魔法に“魔法名“をつけた方がもっと魔法の発動が楽になると思いますよ?』

「あぁー、“魔法名“か、この魔法に名前をつけるって、また難しいな~、どうしよう?」

(海割ってるから、海に関する名前がいいのか、結界魔法が主だから結界に関する名前がいいのか、悩むぅ~、あ、でも海なら“オーシャン“か“シー“ってつければいいかな?うーん、他には・・・・どうしよっか?ねぇ何かいいの思い付かない?皆んな?)

夜月『ふむ、それなら・・・ーーーーー』

「「「「「ッ!!・・・・・・」」」」」

 アトリー達が雑談しながら発動した魔法に人々は言葉を失い、そこから動く事はなく、ただ静かに海の道が出来上がる光景を見続けていた。

*この光景を見た人達の反応は、アトリーが練り上げた魔力の量にも驚いていたが、起こした現象の壮大さに言葉を失う程だった、全員この魔法を見たのは2回目だが陸から見た景色と、海中から海が割れていく景色は迫力が段違いだった。
 それこそ、神話にでも登場するかのような光景に、息を呑むのは仕方のないことだった。


 そして、この時、この光景を見て地球世界から来ている仁達はある神話を思い出していた。

仁「・・・“モーセ“だ・・・」

父様「ん?仁君、“モーセ“って何だい?」

 仁が呟きた言葉に興味を示した父様に仁は大まかにだが、かの有名な“モーセの十戒“に出てくる海を割る逸話を話した。

仁「僕もそこまで詳しい訳ではないんですが、僕達の世界、国?では大半の人は知ってるって感じの神話?ですね」

父様「へぇ、凄いね、国の圧政から逃れるために海を割るなんて、そんな神話があるんだね、それがアトリーの魔法に似ているのかな?」

(はははっ、まさにそれを思い出して、この魔法を創ったって言えないな、海割りの話が有名だけど、(映画“十戒“では見どころの一つだった)あれって実は“神からのお告げで民を救うって話“がメインの話なんだよねぇ)*気になる方は映画“十戒“を探して観てね!

仁「僕も人伝に話を聞いたことしかないので、何とも言えないのですが、現実に起こるとしたら、こんな感じの光景なんだろうなぁって思います」

 目の前でゆっくり割れていく海を見ながら、そんな感想を漏らす仁。

「“モーセ“かぁ、魔法名、思い付かないから、もう、それで良いかな?」ボソッ

仁「えぇ!!、そんな決め方でいいの⁉︎アメトリン君!!」

「ん?あ、言葉に出てました?そうですね、これと言ってしっくり来るのを思い付かなかったので、その“モーセ“の神話?に似てるならそれでも良いかなって・・・あ、一応、少し考えていたのは、安直ですけど海に関する名前で“オーシャンロード“って良いかなって、夜月達と相談してはいたんですよ、でも、ちょっと安直すぎるかなっとも思ってて、他にいい案もなかったし、それで、せっかくなら仁さん達の世界の神話にちなんでもいいかなって思っちゃって、駄目でしたか?」

仁「い、いや、だ、駄目ではないけど・・・」

「じゃあ、“モーセ“で!短くて簡単だし!」

仁「あぁ~、凄くあっさり決まっちゃった・・・」

 頭を抱えて唸っている仁に父様達は苦笑いしていたが、僕の魔法名の付け方がいっつも適当なのを知っているから、反対しない、苦笑いしつつも護衛騎士達に、開き切った海の道を確認させ問題ないと判断して、護衛騎士や使用人達全員を呼び、海の道を進む順番を決め整列させた。

父様「では、帰ろうか」

 父様の号令で整列した人達が進み出す、僕達はいつも通り護衛騎士達に囲まれて“モーセ”で作った道の真ん中を歩く、マルキシオス侯爵家の一団を先頭にデューキス公爵家、ソルドア子爵家と仁達の順で進み、後の方はイネオス達の家族、ヴィカウタ子爵家、ダンロン男爵家、バロネッカ准男爵家が並ぶ、最後尾はマルキシオス侯爵家の騎士達が警戒しながら無言で進んでいた。

(空気重っ!やっぱり、両側が海に囲まれてるのが怖く感じるのかな?まぁ、今、僕が結界を解いたら何万トンって言う重さの水が、両側から襲い掛かるんだから、怖くて当たり前か?)

 そう思いつつも自分はそんな事をするつもりも無いので、気楽に結界の向こう側の海を堪能しながら歩いた。

「わぁ、中を通るとこんな感じなんだ、凄く綺麗…、あ、イルカさん♪今日は神殿まで連れて行ってくれて有り難う!」

〔キュイ~♫〕

 ザパァッ!!     ザップーンッ!!

 右側の結界からお世話になったイルカが泳いできたので、手を振ってお礼を言うと、喜んだイルカは凄い速さで海面に向かって泳ぎ、海上に飛び上がったその勢いで左側の結界の水面に着水した。

「「「「「おぉ~~!!」」」」」「「「「「わぁ~~~♫」」」」」

「すご~い、大ジャンプ!!」

〔キュイキュイ♪〕

 頭上をイルカが迫力満点の大ジャンプをして周りの皆んなも大歓声を上げた、大ジャンプをしたイルカは満足そうに鳴くと、その場を凄い速さで去っていった。

「バイバーイ♫」

 緊張感のあった行進は少し緊張が緩み、軽い雑談もするぐらいの雰囲気で再び進み出した。

「ねぇ、ソル、お屋敷に戻ったら、厨房を借りてお料理するの楽しみだね♪」

ソル「はい♪久しぶりのアトリー様のお料理姿が見れるのは楽しみです!」

「ふふっ、でも今回は仁さん達のお手伝いだからね、あんまりやることはないかもだけどね」

 いつもの様に僕の後ろをついて来ているソルと、雑談しながら進んでいくと、ようやく乾いた砂浜が見えてきて、皆んな安堵した様子で海の道をでた。

ニモス叔父様「よし、全員でたか?」

護衛騎士「全員出ました!」

 僕も全員が出たのを確認し、海の道をゆっくりに戻す。

 ズズズズズッ ザッザァーーッン

「ふぅ、“モーセ“の解除完了です」

父様「これで当初の目的のダンジョンの探索は終わったね、お疲れ様、アトリー、気分はどうだい?」

「平気です、父様」

父様「キツかったらすぐに言うんだよ?」

「はい♪」

 こうして、今回の周りも巻き込んだダンジョンの探索は終了し、マルキシオス家の屋敷に帰還すると、すぐさま、お風呂とお着替えをさせられて、すっきりして寝室で髪を結ってもらってる所にベル姉様が厨房に案内してくれると言って、迎えに来てくれた。

カイン「アトリー様、オーロベル様お迎えが来られました、リビングでお待ちです、仁様達も一緒に来られてますのでこのまま厨房にご案内いただけるそうです」

 と声をかけれられた。

「うん、分かった、すぐに行くよ」

ソル「はい、出来ましたよ」

「有り難うソル」

 ソルに髪を綺麗に結んでもらって、寝室から出ると、リビングの方では父様達と談笑しているベル姉様達がいた。

「お待たせしました、ベル姉様方、早速、厨房に行きますか?」

ベル姉様「あら、アトリー、可愛い格好ね」

「??、そうですか?いつもお料理する時の格好なんですが・・・」

 可愛いと言われて、自分の姿を見下ろす、汚れていいように何時もの普段着にエプロンを付けただけの格好なのだが。

(普通の格好だよね?どこが可愛いのか分かりかねます、ベル姉様(・・?))

 隣にいるソルも同じ格好なので2人で見合って、互いに頭を傾げていると、ソファーに座っていた母様が立ち上がって来て、僕達の頭を撫でてくる。

母様「ふふっ、2人ともとっても似合ってるわ、ふふっ」ナデナデッ

ソル&アトリー「「有り難う御座います??」」

 ひとしきり母様に撫でられてから、ベル姉様の案内で厨房に行くことに、屋敷内を数分歩いて辿り着いた所は、料理人達の怒号が飛び交う戦場だった・・・・・





 と、言うのは嘘で、綺麗に掃除されて気持ちいい空気が流れている、広くて素敵なキッチンだった。

「「「「「んんっ?」」」」」

(あれ?料理人が誰もいない?「キョロキョロッ」・・・・て事は無いか、2人?だけ?人数が少な過ぎる、ここ本当にマルキシオス家の厨房?)

ベル姉様「ふふふっ、驚いた?ここはね第2厨房よ、昨日みたいに大勢の人を招いたパーティーをする時に、第1厨房が人でごった返したりして手狭になったりするから、ここが増設されたの、それに元々マルキシオス家の屋敷は増築されてできた所もあるから、場所によっては第1厨房からかなり遠い所が出てきてね、端から端までの移動する手間を考えたら、第1厨房を拡張するより中間地点に新しい厨房を作った方がいいじゃ無いかって、事でここに出来たらしいの」

「へぇー、そうなんですね」

(そう言えば、このお屋敷の玄関から観て右側と左側は微妙に構造が違うもんね、特に右側の室内の内装はクラシカルな装飾が多いのに対して、左側は結構モダンな内装してるもん、何と言っても左側にはあの大浴場がある!!増設した時にあそこも作ったんだろうなぁ)

 僕達が滞在しているのは右側にある部屋だが、イネオス達家族は左側にある部屋に滞在しているので、イネオス達を呼びに行ったりする時に、中を見たことがあったので1人心の中で納得した。

仁「しかし、それでも、普通に広くて綺麗な厨房ですね」

ベル姉様「そうね、ここはお客様が多く無い時は使わないから、基本的に汚れないからかしら?使用する時もデザートや前菜を作ったりする事の方が多いから」

彩ちゃん「へぇー、それでも設備はしっかりしてますね、冷蔵庫?も大きいですし」

夢ちゃん「本当だ~」

ベル姉様「ふふっ、気に入ってくれて嬉しいわ、そうだ、今日は何を作るかは聞いてなかったから、料理補助のためにうちの料理人達を2人呼んでおいたわ、厨房で分からない事があったら、こちらの2人に聞いて頂戴ね」

 と、紹介されたのはコックコートを着た若い男女が前に進み出て、自己紹介してくれた、男性は“コッヘン“さん、で女性は“クチーナ“さんだ、2人は礼儀正しく挨拶してくれて、第一印象は悪くなかった。

コッヘンさん&クチーナさん「「何でもお申し付け下さい」」

「宜しく」ニコリ

コッヘンさん&クチーナさん「「っ!」」

 普通に笑って人が固まるのはデフォルトなので、気にしてはいけない、相手が正気に戻るまで根気よく待つ、これがここ数年で僕が悟った解決法だ。

ベル姉様「ふふっ、じゃあアトリー、私は用事があるから残念だけど席を外すわね、他に用があれば執事に言ってね」

 そう言ってベル姉様は料理人達の反応に苦笑いしつつ、中年執事の“バトレル”さん紹介してくれた。

「はい、分かりましたベル姉様、案内していただき有り難う御座います」

ソル&仁達「「「「有り難う御座います」」」」

ベル姉様「どういたしまして、皆んなお料理頑張ってね♪」

 と、颯爽と扉から出ていった。

「じゃあ、まず何を作るか決めますか?」

















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