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第3章 少年期 学園編
85話 ダンジョンをご案な〜い♪
しおりを挟む皆んなの祈りが終わり動き出した頃、やっと天華達も目を開けてコチラを見たので、何かあったのか聞いてみると。
天華『どうやら、私達は別の場所に呼ばれたみたいです、呼ばれた先には天照様と月詠様がおられましたので、そこで雑談していました』
(そうだったんだ、天照ちゃんと月詠様はお元気そうだったかな?)
夜月『あぁ、お変わり無かったぞ』
(良かった…、でも、なぜ2人が天華達だけ呼んだんだろう?)
天華『あぁ、こちらの神々との交流の邪魔にならないようにと、後、昨夜の事でアトリーの体調が気になっていたみたいです、それで私達だけを別の場所にお呼びになったそうですよ』
(そうか、気遣ってくれたのか、心配もかけちゃったし、今度は会えるといいな・・・)
夜月『そうだな、今度は会えるだろうさ・・・、それはそうと、こちらの神々との対話はどうだった?』
(うん?あ、そうだね、時間が足りなくて挨拶を交わすだけで精一杯って感じだったけど、皆様、良い神様で優しかった!用があったら名前を思い浮かべながらここで祈ると会えるよって、言ってたから今度またゆっくり会いにこようと思ってる♪)
夜月『そうか、良かったな、その時は私達も挨拶できるだろう』
(うん、その時は僕がちゃんと紹介するよ!)
天華『お願いしますね』夜月『頼んだ』ジュール『よろしく~♪』
(はい、任されました!ふふっ)
そう会話しているうちに全員のお祈りが済んだのか各々動き出した、そこで父様が席を立ち上がり声をかけた事で、皆んなも席を立ち神殿内の見学に戻ることにした。
礼拝堂を出て“転移結晶“の間に戻り、他の扉の説明をする、その時、僕専用休憩室の事はその場では秘密にした、何故なら父様達には休憩室の扉が見えてないようだったからだ、その事を不思議に思い春雷達に聞くと、どうやら僕が招待しない限り存在自体を認識できない仕様だそうだ。(セキュリティー抜群かよ!Σ੧(❛□❛))
そうして、最後にダンジョンに続く扉の説明を終えて、その扉を開きついに皆んなをダンジョン内に案内する。
「ここの廊下を抜けるとすぐにダンジョンの領域に入ります、なので油断しないで下さいね、まぁ、まだ最初のフロアですから大した魔物は出て来ませんけど…あ!そうだ!仁さん達はこのフロアのドロップアイテムを見たら物凄く喜ぶと思います、楽しみにしていてくださいね♪」
仁達「「「???」」」
ダンジョンに続く廊下を歩きながらそんな話をしていると、薄暗い場所に光がさしダンジョンのフィールドに出た。
「「「「わぁ!」」」」「「「「「おぉ!」」」」」「「「「「まぁ!」」」」」
皆んなが光に目が慣れた頃、周りの風景がはっきりして来て、目に映った南国の世界に驚いた声を上げた。
父様「凄いな…外より少し暑いようだ」
母様「こんな植物は初めて見ましたわ」
ネニュス叔母様「そうですね、でも、色鮮やかでとても綺麗ですわ」
モンドお祖父様「あれは、なんの実だろうか?」
ニモス叔父様「それは見たことはないですが、あちらの果実は以前“エッケ“の方からの交易品で見た覚えがあります」
モンドお祖父様「そうか、“エッケ“か、ダークエルフの住む地域は確か年間を通して暑い気温だったな、ここと同じような暑さなら、同じ物があると言うことか?」
仁「わぁ、南国の世界が建物内にあるとか不思議!」
夢ちゃん「あ!あれマンゴーじゃない?あっちにはバナナもある!」
彩ちゃん「生えている物が地球と遜色ないのはどうしてかしら?ダンジョンて話には聞いていたけど、本当常識をぶち壊しに来てるわよね・・・、あ、アボガドまである・・・」
(まぁ、地球世界が大好きな神様が、このダンジョンの創設に加わっているからなぁ、どうにかしたら地球世界の神様自身もアイディアを出してそうだし…)
なんて、会話しながら砂浜に続く道を歩いていると、案の定“フラワーモンキー“に遭遇した、でも、周りにいた護衛騎士が瞬殺していたので、僕達は気にせず先に進む、ひらけた砂浜に到着して周りを見渡した後、兄弟や従兄弟、それにイネオス達の兄弟達が周りを探索してきて良いかと、父様達に聞いて来ていたので、相談の末、子供組3~5人を1パーティーとして、そこに護衛騎士と保護者組を2、3人づつ付き添わせる事で、フロア1内の探索を許可する事に、年少組に入る僕やソル、イネオス達、プラス、仁達“勇者候補組“は父様と母様、それと公爵家の護衛騎士5人ほどを連れて探索を開始した。
あ、ついでに言うと戦闘の出来る使用人は5人でパーティーを組んで周辺を探索している、そして、戦闘が出来ない使用人達は1番幼いマディラと母親であるネニュス叔母様達と神殿内で待機になった、まぁ、公爵家の使用人の殆どが戦闘経験ありの人達なので、父様と母様の専属使用人のカイルさんとリアさんは、当然の如く僕達のグループについて来ている、オーリー達は他の使用人達と別の方向を探索中だ。
過剰戦力気味の僕達のグループは真っ直ぐ海の方に進み、砂浜で出会う魔物達を僕以外の子供達で協力しながら倒していく。
ザシュッ!! シュワ~ッ ポトッ
イネオス「あ!また、ドロップアイテムが出ましたよ!」
ベイサン「本当だ!次は何かな⁉︎」
ヘティ「3、4回に1回も出てくるなんて運が良いですね!」
ソル「ですね!」
ドンッ! シュワ~ッ ポトッ
夢ちゃん「あ!こっちも出てきたよ!」
仁「次は何かな?」
彩ちゃん「あ、本当ね、こっちは2、3回に1回のペースで出てくるわね、以前本で見た時は、大体平均して7、8回に1回出れば良い方って書いてあったけど、どう考えても平均より出る確率が高いわ、どうしてかしら?」
父様「本当だね?私も聞いていた確率より凄く高いよ…、ふむ、このダンジョン自体のドロップ確率が高いのか、個人の運の良さなのか、ちょっと分からないな、仁君達には主神様の加護が付いているから、2、3回に1回出てくるのかもしれないけど、イネオス君達は本当に運が良いのか、ダンジョンの確率の問題なのか・・・、うーん、分からないね・・・」
頭を捻っている人達の後ろで僕は苦笑いしか出ない。
天華『神の加護が原因なのは正解ですが、大幅な確率アップの原因は戦闘に参加していない、アトリーの主神様の加護の“豪運“のおかげですけどね・・・』
(ははは、仁達の方が確率が高いのは全員がティーナちゃんの加護を持っている影響で、イネオス達の確率が少し低いのは、神の加護を持っているのが、一緒に戦っているソル1人だからかな?)
夜月『まぁ、そんな所だろう、それでも他のグループのドロップ率よりかなり高いぞ?』
(僕1人でだけで、どんだけドロップ確率引き上げてんだよっ!て、話しだよね?( ・∇・))
もう乾いた笑いしか出ないが、皆んなのドロップ品を見ていると、僕が倒して手に入れたドロップ品とは大違いだった。
(あのカニ倒したらカニ(食用)のカニが丸ごと出てきたり、カニ出汁が出て来たりしてたのに、イネオス達には魔石やリトス硬貨しか出て来てないな…、やっぱり僕単体の方がドロップアイテムの運が良いのか…)
夜月『そこは精霊達の忖度だからだろうな』(そ、忖度・・・グフッ)
ドロップアイテムが出てくる確率はいいが、ドロップする物のグレードの差は明確に分かれているのが分かった。
(ま、まぁ、でも、食べ物に興味がない人には魔石やお金の方が良いのかもね?)
ジュール『私は食べ物の方が嬉しいけどねぇ~』
(それは僕もだけど・・・)
イネオス「わぁ!魔石が出てきた!やったね!」
ベイサン「本当だ!初めて出て来た!記念に取っとこう!」
天華『・・・まぁ、人それぞれって事で・・・』
(・・・だね・・・)
初めて魔石が出てきて喜んでいるイネオス達を見て、自分がどれだけ食い意地が張っているのか改めて実感していると、遠くでクスクスと笑っている精霊達の声が僕達だけに聞こえてきた。(無邪気で可愛いなぁ~)
順調に進んで行き、そこそこ価値のあるドロップアイテムをゲットし、ご機嫌な一行はやっと海に到着して、波打ち際にある砂浜に転々と空いている、貝の空気孔に興味を示した、そこで僕が説明しながら砂浜を掘ってみせる、掘って出てきた貝が淡い青色の“カラーシェル“だった事で、ソル以外の未成年の皆んなが自分も掘ってみたい!と言って、砂浜を掘り始めた。
彩ちゃん「あ、これはムール貝?」
仁「こっちはアサリ?」
夢ちゃん「あ、これはハマグリかな?」
出てくる貝は皆んなバラバラで、かろうじて共通するのは、全て食用可能のものだと言うことだけだった、まだ掘り足りないと言って、貝掘りに夢中になった皆んなを波打ち際で見守っていると、海中からたくさんの魚が飛び出して来て、僕にアタックを掛けてきた。
ソル「っ!!」
貝掘りに参加していなかったソルがいち早く反応し、僕を守るように構えた、するとソルの所まで届く前に。
ドドドドドドドドッン!! シュワ~ッ ボトンッ!
と、勝手に“守護結界“に突っ込んで来て、ドロップアイテムに変化した。
ソル「⁉︎⁉︎…ア、アトリー様?これは?」
「あぁ、僕の“守護結界“はね、どうやら、ダンジョンに入ると自動的に敵意ある生物が近寄ってくると、即死効果がある結界になっちゃうんだ、だから魔物が出てきても戦う前に、魔物は皆んな倒されちゃって、すぐにドロップアイテムに変化しちゃうんだよね・・・」
ソル「・・・あぁ、それで先程、面白くないと、・・・・・・確かにこれは面白くない・・・」
と、呟くソルの横で僕はひたすら遠い場所を見ていた。(また、勝手に設定が変わってる、出入りする度にこの設定になるのかぁ~)
母様「アトリー、大丈夫?」
「あ、はい、僕はなんともないです、あ、今、落ちたドロップアイテムは仁さん達が喜ぶ物ですよ」
母様「そう?」なでなで
母様が心配して近づいてきてくれたが、僕的にはなんともなかったのでそのままヘラっと笑って返し、今出てきたドロップアイテムを見て、仁達に声をかけた。
仁「え?この瓶が?」
「はい、その瓶の中身が仁さん達の故郷で使われている調味料の、“いりこ出汁“って書いてありましたよ」
仁達「「「えぇっ⁉︎い、“いりこ出汁“⁉︎」」」
仁「“いりこ出汁“って、あの“いりこ“の出汁?」
「どの“いりこ“かは分からないですが、鑑定で“いりこ出汁“ってちゃんと書いてありましたよ、他にも別の魚の魔物ですが“カツオ出汁“って書いてある物や、海藻の魔物からは“昆布出汁“って書いてあるのも見つけました、以前、僕が仁さん達の国の事を調べていた時に聞いた事のある物でしたので、間違いはないかと」
仁・彩ちゃん「「本物の“いりこ出汁“・・・」」
夢ちゃん「うわぁ~、嬉しい!これがあれば魚の料理や鍋料理とか色々日本食が再現できる!!教えてくれて有り難う!アメトリン君!!」
感極まった様子の仁と彩ちゃん、夢ちゃんは喜びが天元突破したのか、テンション高めに僕の手を握り振り回しながらお礼を言ってくる。
「ど、どういたしまして、あ、それに昨日、渡すのを忘れていた“醤油“も今日の夕食時に出しますね♪」
仁達「「「“醤油“!!!」」」前のめりで・・・
(近いっ近いっ!)
「・・・え、えっと、夕食時に、魚の“お刺身“?を用意してもらいますので、その時までお待ち頂けませんか?・・・」
物凄く素早い動きで前のめり気味に僕に詰め寄る3人に、僕は両手を前に突き出して、仁達と距離をとりつつ、そう提案すると。
仁「っ、はっ!ご、ごめんね、アメトリン君!久しぶりに“醤油“で何かを食べれると思ったら、つい、我を忘れちゃったよ…、ほら、2人もそろそろ正気に戻って!“醤油“は夕飯の時のお楽しみにとっておこうよ!アメトリン君も困っているし、それにココにはまだゲットしなきゃいけない物があるだろ!」
最初に我に帰った仁が他の2人を正気に戻す。
夢ちゃん「あっ!そ、そだね!ご、ごめんね、アメトリン君、詰め寄っちゃって…」
彩ちゃん「はっ!そ、そうだよね、ごめんね、せっかく“醤油“や“いりこ出汁“の他の物も色々教えてくれたのに、私ったらつい・・・」
「いえいえ、気にしてないですよ、でも仁さん達が喜んで貰えるもので良かったです、それで、このまま、まだ貝掘りしますか?それとも、波打ち際を歩いてて魚の魔物を探しますか?」
どうします?と、聞くと・・・
仁達「「「魚の魔物を探す!!」」」
と、即答してきた、イネオス達も仁達と一緒に魚の魔物を探すのに乗り気になったようで、また皆んなで波打ち際を警戒しながら歩く事になった。
ザッパァンッ!!
ゆっくり会話しつつ歩いていると、海の方から大きな魚のような影が飛び出してきた。
父様「ん?あれは“サハギン“かな?」
「あ、はい、“サハギン“ですね」
*サハギンとは
水中に生息する魚に似た魔物、前世ではRPGゲームなどでよく出てくるモンスターで、人間に似た体に魚のような顔、手足には水掻きがついて体表には鱗もあるなど、いわゆる“半魚人“の姿をしているのがメジャーだが、この世界の“サハギン“は大きな魚に人間のような手足が生えているのが、“サハギン“だ、水中に“サハギン“がいても普通の魚かどうか判別が難しい、何よりヒレの代わりに生えている人間の手足が、やけにリアルに筋肉がついているので、とても気持ち悪い。(生理的に無理・・・)
※ついでにゆうとこの世界では、先にあげた“半魚人“型の“サハギン“は“魚人族“の一種として存在し、海や大きな湖で暮らしている、人種として扱われているので、見つけた時に間違って“サハギン“と呼んだりすると、物凄く怒る、最悪、攻撃されるので注意。
仁「うわぁ~、これが“サハギン“?なんか、ちょっとアレだね・・・」
夢ちゃん「何アレ!物凄く、キモイっ!!」
彩ちゃん「ユメ!今、仁が濁した言葉を無駄にしないの!」
ヘティ「あ、気にしてませんよ、私もちょっと、気持ち悪いと思ってましたから」
夢ちゃん「だよね!」
「あ、来ますよ!」
なんて、話しているうちに“サハギン“がこちらに向かって突進してきた。
仁「ふっ!」ザシュッ!! シュワ~ッ ボトッ
会話をしていても警戒を解いていなかった仁の一撃で、“サハギン“を倒すと出てきたドロップアイテムが大きめの“アジ“だった。
仁「うん、何となく、予想はしてたけど・・・“アジ“かぁ~」
(まぁ、今出てきた“サハギン“がデカい“アジ“に手足が生えていたやつだったからね、僕の時は“クロマグロ“が出てきたもんね、ただでさえ大きい魚なのに、さらに大きくて、手足が太くてムキムキでキモかったし・・・、まぁ、手軽に“クロマグロ“が食べれると思えば、あのビジュアルには多少我慢できたよ・・・)
そう思っている間に、カツオの体をした“サハギン“の群れが次々飛び出てきた、それを連携でそつなく倒していくソルとイネオス達。
ドスッ!ドスッ!ザンッ!! シュワシュワ~ッ ボトボトッ! ポトッ
次々倒して行ったカツオ型の“サハギン“のドロップアイテムの中から、1つだけ陶器の小瓶が落ちていた。
「あ、“カツオサハギン“からもそれが出てくるんですね」
彩ちゃん「?珍しいの?先程の“いりこ出汁“の小瓶に似ているけど・・・も、もしかしてっ!」
「えぇ、その、もしかしてですね、あの小瓶には“カツオ出汁“が入ってます」
仁達「「「や、やったぁっ!!“カツオ出汁“発見!!」」」
夢ちゃん「今度“カツオサハギン“が出てきたら積極的に倒して手に入れよう!!」
彩ちゃん「そうね!そうしましょう!!」
ハイテンションでハイタッチする仁達の様子を微笑ましげに見つめる父様と母様、その他大人達、イネオス達はちょっと驚いていたものの仁達の喜びようを見て、イネオスは落ちていた“カツオ出汁“の小瓶を拾い、ソッと、夢ちゃんに手渡した。
夢ちゃん「え?くれるの?イネオス君・・・」
仁「本当にいいの?これはイネオス君達が倒した奴が落とした物じゃないか」
イネオス「はい、遠慮なさらないで下さい、また同じ物が出てくるとは保証ができない物ですし、仁さん達の方が使い道を知っているでしょうから、皆さんが持っていた方がいいと思います」
そう言って小瓶を渡したイネオスに同意するように、ベイサンとヘティ、ソルも笑顔で頷いた。
仁「・・・有り難う、皆んな・・・」
イネオス達、4人の気遣い溢れる優しさに感動して、涙目な仁達、この感動の雰囲気の中、僕は1人いたたまれない気持ちで見ていた。
(どうしよう、この雰囲気、この感動の雰囲気の中では言いにくいなぁ、“カツオ出汁“の小瓶の“在庫がたくさん“あるって・・・)
夜月『だな・・・』
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