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第3章 少年期 学園編
63話 青春?
しおりを挟む只今、剣術道場見学中の最中だった筈ですが、何故か僕達も稽古に参加する事になってしまいました。
剣術道場で稽古の見学中に、上段クラスの門下生を見ていた、師範代の1人が目を輝かせながら稽古見学をしている、ライ兄様と仁を見つけて、一緒にするかとお誘いを受けました。
(僕は傍観するつもり満々だったのに・・・、何で一緒に稽古させられてんだろう???)
師範代は熱心に稽古を見学していた2人に声を掛けて来たのに、2人が僕とソルを巻き込んだ、特に最初はビクビクしながら見学していた仁が興味津々で誘ってきた、当然 僕は拒否したんだが、隣にいたソルがやたら乗り気で僕だけ何もしないって言うのは、とても気まずい雰囲気になってしまった。
まぁ、この修練場に入る前に何故か、見学するには汚れるといけないからとライ兄様達に言われ、学園の運動着に着替えさせられていたので、そのまま稽古に入れられた・・・絶対、確信犯だ!!・・・・
(くそ~!ソルがあんな期待した顔で僕を見るからっ!!逃げれなかったじゃないか~~~~!!それにライ兄様達元からやる気満々だったってことじゃん!嵌められた~~!!)
期待に満ちたキラキラした目で、僕をジッと見つめる可愛いソルに、絆されてしまい「わ、分かった、少しだけなら・・・」と、言ってしまった僕・・・
師範代「良いですよー!そのまま後20回!」
ライ兄様「はいっ!1、2、3、4、5、・・・・・」
最近、身体が大きくなって、だいぶ雰囲気も落ち着いて大人っぽくなって来ていると思っていた、ライ兄様がめっちゃ良い笑顔でキラキラした汗をかきながら、上段クラスの門下生達と一緒に素振りをしている。
「元気良いなぁ~」
その隣では仁がライ兄様と同じように、良い笑顔で素振りをしている、だが若干コチラはキツそうな表情が滲み出ていた。
「青春してるのかな?」
ソル「アトリー様、よそ見しないでちゃんと走りましょうっ」
「あ、うん、分かったよ・・・」
僕とソルは初段クラスの門下生達と体力作りの走り込みをさせられている、父様はそんな僕達を応援しつつ、ここの道場の最高師範と談笑していた、ジュール達は父様の近くで大人しく見学中・・・(ずるい・・・・)
「これは何周すれば良かったんだっけ?ソル?」
ソル「10周でしたが、もう既に終わってますね」
「え、そうなの?なら早く言ってよ~、じゃあこの後はどうするの?素振り?」
ソル「そうですね、その予定の様ですがまだ他の方々が終わってないので・・・」
「そう、じゃあ休憩して待ってようか」
ソル「そう致しましょう、今、お飲み物を用意致しますね」
「有り難う、ソル」
課題の走り込みは既に終了していると言われ、口を尖らせて走るのをやめた、次の課題はどうするのかと聞けばソルはまだ門下生が課題が終わってないと言うので、僕達は少し休憩することに、すると、まだ走っている門下生達が驚いた表情で見られている事に気づいた、最初に初段クラスの門下生達に挨拶を交わした時に怪訝な顔をされた僕、多分、急に飛び入りで名門の、この道場の稽古に入って来た僕をよく思っていなかったと思われる生徒達に睨まれていたが、先程の走り込みで1番最初に課題の10周を終了させたことに、とても驚いている様だった。
(うーん、これが初段クラスの稽古のメニューって事は、ほんと入門したての子供達しかいない見たいだねぇー、稽古も体力作りがメインって感じだし)
この道場の修練場はかなり広いので、塀沿いに一周回るだけでも息が上がっている門下生達が続出している、そんな最中に対して息も上がっておらず、軽く汗をかいただけの僕達に驚いているんだろう、急に来た貴族の子供を侮っていたようで、悔しそうにしている門下生達がちらほらいる。
(僕達の訓練じゃ、これくらい日常茶飯事だからなぁ~)
自分の“無限収納“からタオルを取り出し汗を拭き、ソルが入れてくれた冷たいお茶で水分補給する。
「ふぅ・・・冷たくて美味しい・・・」
「「「「「ほぅ・・・」」」」」
「ん?」
(なんか、溜息?が聞こえたような?)
周りから溜息らしき声?音?が聞こえたので周りを見渡す、だがこれと言った変化は見られない、不思議に思って首を傾げるが、ちょっと離れた場所で数人の門下生達が転けたり、相手の打ち込んできた木剣をモロに喰らっていた。
ソル「アトリー様、お茶のおかわりは如何ですか?」
「ん、うん、貰うよ」
ソルに声を掛けられたので溜息?のことは気にせず、もう一度冷たいお茶を貰いのんびり待っていると、父様達が近づいてきていた。
「父様、お話はもう終わったのですか?」
父様「あぁ、終わったよ、アトリーは稽古はどうだい?楽しいかな?」
「ん~~ん?」
(何とも言いづらい、走るのは苦じゃ無いけど、楽しいかと言われると楽しくは無い、稽古としてもこの程度では物足りなさすぎる)
父様「ふふっ、アトリーには物足りないか・・・」
「んっ・・・はい」
(分かってて聞いたね父様、てか、これがここの剣術の訓練内容なのか?ぬるすぎでは?)
父様「アトリー、今日ここに君達を連れて来たのはね、いつも君達がしている訓練が、“かなり“難易度が高い事を知って貰うために来たんだよ」
「「・・・・?」」
ソルと僕は2人してどゆこと?って顔をした、今日この見学の事は急に決まったのは、ライ兄様が行きたいと言い出したのが理由なのは確かなのだが、道場の見学が許可が入りるにしては、あまりにも急で早すぎたのだ、父様は元々ここに僕達を連れてくるつもりだったらしい、その事は理解したが・・・
父様「君達の訓練はね、その年でするには少し、いや、“かなり“、“厳しい“んだよ、だからそれを普通だと思っちゃだめだよ?」
「「あ、はい、分かりました」」
どうやら僕達に、一般的な訓練の基準を教えるために連れて来たらしい・・・
(常識を教えるために連れてこられたのか・・・いや、ちょっとは分かっていたよ?あれが普通では無いことは・・・でも、わざわざ道場まで連れてこられて教えられるとは・・・・うん、反省・・・)
僕が1人密かに反省していると、念話で天華達から『ここまでしないとちゃんと理解できない時点で、まだまだ常識が足りません』とか、『あれ以上の訓練はこの先控えるように』とか、『私は楽しかったけど、やり過ぎはいけないよね、う~ん、どんまい♪』とか、お叱りや教育指導、励ましをもらってしまった・・・
(う~~、はぁい、以後気をつけまぁす)
ソルと顔を見合い頷いて、
「「・・・・気をつけよう・・・・」」
と認識を改めた。
父様「どうする?まだ稽古に参加するかい?」
(う~ん、今ここで続けても物足りないしなぁ~、ライ兄様達の稽古にはいれるならまだやり甲斐があるかな?でも、時間的にまた最初からやる事はないだろうから、ここはもう稽古をやめて、ライ兄様達の稽古の見学をしてた方が良いかな?)
「いいえ、稽古はここまでで良いです、後はライ兄様の稽古の様子を見学したいと思います」
父様「そうか、ソルはどうする?」
ソル「僕もアトリー様と同じで良いです」
父様「分かった、私はライ達の稽古を見てるから、着替えて来なさい」
「「はい」」
この稽古の為に“わざわざ“学園の運動着に着替えてしていたので、道場の一室をまた借りて着替えることに、着替えはいつも通り誰にも見られないように、厳重に戸締りと目隠しを行い、カイン達に手早く着替えさせられた、その後すぐに修練場に戻った。
「「「「「ざわぁっ!」」」」」
「?」
(うん?何かあったのかな?)
修練場の入口をくぐり、屋根のある日陰の休憩スペースから屋根の無い屋外グラウンドに出て、父様の所に行こうとした時、近くにいた門下生達からどよめきが聞こえた、何があったのかと首を傾げると、「え、男の子だったのか⁉︎」「あの学園の運動着って男女同じような作りだから、てっきり女の子だって思ってた」とかコソコソ聞こえてきた。
(ぅぉい!さっきまで女の子と間違われてたんかいっ!∑(゚Д゚)/)
天華『まぁ、性別不明なのは今に始まった事ではないですからね、あきらめた方が良いかと・・・』
(いやっまぁ、そうだけど!こんな嫌な慣れ方したくない!!)
ちゃんとした男の子用の貴族服を着ていないと、高確率で女の子に間違われてしまうのが、日常化している事が最近の悩みだったりする。
春雷『まぁまぁ、アトリー様、そんなに落ち込まないでください、私達、精霊は性別なんてそんなに気にしませんから、主人である貴方がどのようになってもそばにいますよ』
雪花『そうそう、気にしない、気にしない♪』
(うぅ~、春雷、雪花・・・励ましてくれて有り難う~~)
以前はジュール達 聖獣に遠慮して、話しかけて来なかった精霊の春雷と雪花だったが、最近やっと僕やジュール達に慣れて来たのか、よく話の輪に入って来てくるようになった。
ソル「アトリー様・・・」
地味に僕がショックを受けているのに気づき、ソルも気遣わしげに話しかけてきた。
「あぁ、大丈夫、いつもの事さ・・・」
ソル「・・・そう、ですね・・・・」
何とも言えない空気感が漂ったが、そこはもう丸っと無視して、さっさと父様がいる場所に急いだ、すると父様はライ兄様達がよく見える場所で、テーブルと椅子をセッティングして優雅にお茶をしていた。
(あれ?いつの間にあんな快適空間を作り上げていたんだ?なんか、パラソルも出て来たんだけど・・・・)
どうやら道場の関係者の方が気を利かせて、見学スペースを用意してくれているようだ。
「父様、お待たせしました」
父様「あぁ、アトリー、ソル、こっちにおいで、道場の方がご厚意で椅子とテーブルを出してくれたよ、ここからならゆっくりライ達の稽古が見学できるよ」
と、手招いてくれた、僕は誘われた通り椅子に座り、父様の目線をたどりライ兄様達の稽古の様子を見た、ソルは僕の後ろで立ったまま見学するようだ、ジュールと夜月はいつもの大型犬サイズで僕の周りで座り、天華は僕の膝の上に小さいサイズで乗ってきた、その天華を撫でながら稽古を眺めていると、ある事に気がついた。
「あれ?仁さんだけ木剣で稽古していますね?」
父様「あぁ、ジン君には真剣が重かった様でね、すぐにバテてしまったから師範代が木剣を貸してくれたんだよ」
「そうなんですね、それでもかなりキツそうですね」
ライ兄様と仁は上段クラスの門下生達の稽古に混じっているので、かなりハードな基礎訓練をしているようだ。
(うーん、防具一式を着たままの基礎訓練はきつそうだね、あの防具借り物だから仁にあってなくて動きにくそうだ、ただでさえ体力無いのにあんな重い装備じゃすぐにバテるはずだよ)
ここの剣術道場は、一般的な衛兵や騎士などを目指す人達が通う道場のようで、基本の防具が金属でかなり重そうだった、フルプレートの甲冑とかではないが、肩当てや小手、胸当て、後は急所などを覆う部分は全部金属製の防具一式なので、それなりの重量がありそうだった、それをサイズが合わないものを着てする訓練はかなりキツイだろうと、見ていてすぐに分かった。
(こりゃ、明日は筋肉痛だな、仁、乙(^人^)チーンッ)
父様「まぁ、何事も体験だよ、ジン君が楽しければそれで良いんじゃないかな?」
「・・・、そうですね」
(まぁ、そう言うものか、夏の暑い太陽の日差しの下で汗水流して楽しそうに剣を振る、“青春“だねぇー・・・?ん?青春か?・・・まぁ、いいか、本人が楽しそうなら)
その後は、お昼前までライ兄様と仁の剣術の稽古の様子を、のんびり父様やソルと談笑しながら見学し、道場の方でもお昼休憩に入るタイミングで2人の稽古は終了し、ライ兄様達の着替えが済むと道場の人達に挨拶をして、僕達もお昼を取るために道場を後にした。
父様「お昼はアトリーの行きたがっていた、“アップルパイ“の美味しいお店に行くよ、そこでシリー、母様達と合流するよ」
「!!あのお店ですか⁉︎母様達も一緒ですか!やった♪」
ライ兄様「はははっ!アトリーは本当にその、“アップルパイ“?が好きだな、屋敷の料理人にもいつも作らせているだろう?よく飽きないな」
「“アップルパイ“は大好きだから飽きたりしません!それに、あのお店の“アップルパイ“は別格なんです!」
父様「そうだね、確かにあそこの店の“アップルパイ“は特別美味しいね、アトリーが気にいるのも納得できるよ、それに他の料理も中々美味しいからね」
仁「公爵様がそこまで言われるとは、凄いですね、食べるのが楽しみです」
「ライ兄様と仁さんもきっと気に入りますよ♪」
ライ兄様「そうか!アトリーのオススメの店だから期待できるな!」
馬車の中でこれから行くお店の話題で盛り上がり、楽しく会話をしているうちに目的のお店の前に到着したようだ、そこには既に母様達が乗っていた馬車が止まっており、お店の周りには護衛騎士達が巡回し、厳重に警備していた、そこに僕達も入っていくと、店内には母様達が座って待っていたが他にお客さんが全く見当たらなかった。
(え?お客さんがいない、もしかして貸し切っちゃったの?お、お店の迷惑になってなかな?お昼は稼ぎどきなはずなのに・・・、僕がここで“アップルパイ“また食べたいって、言っちゃったから貸切にしちゃったのかな・・・今度から気を付けないと、僕の我儘のせいで周りの人に迷惑が掛かっちゃうな・・・)
自分の考えなしの発言で、お店の人に迷惑が掛かってしまったと反省していると。
父様「アトリー、どうしたんだい?アトリーの大好きな“アップルパイ“が食べられるんだよ?」
「父様、こんな忙しい時間帯にお店を貸切にしちゃって、お店の人にご迷惑では無いでしょうか?・・・」
父様「!・・・・・アトリー、そこは気にしなくて良いんだよ、こうして私達 貴族がここのお店で食事をとることで、このお店に注目が集まって良い宣伝になるからね、私達がたった1日のお昼時を貸し切っただけで、お店にはそれ以降の継続的な利益が見込めるんだ、だから気にする事はないんだよ」
(“貴族御用達“みたいな宣伝効果狙いか、ふむ、なら気にしなくていいか・・・これも貴族の役目みたいなものか・・・)
「はい、分かりました・・・」
父様に優しく貴族としての振る舞い方を指導されていると、母様が僕達に気付き優しく笑って手招きをしてきた。
父様「ほら、アトリー、母様が呼んでいるよ、さぁ顔を上げて、母様の所に行こうか」
「はい!」
※この時アトリーの父親のアイオラトは、アトリーのこの、貴族らしからぬ気遣いは、いつも何処から出てくるのだろうかと不思議に思い、今後アトリーと行動するときは、貴族としての振る舞いも教えねばならないなと、心の留め置くのだった。
天華(アトリーのあの他人に迷惑をかけてはいけないと言う、思考はいまだに出て来ますね、アトリーの家族の話を聞いていた限り、あの様に過剰な気遣いをするような一族ではなさそうでしたが・・・、それに普段は公爵家の一員として相応しい、言動と振る舞いをするアトリーですが、たまにあのような自分に価値がないといった風の言動をするのは、やはり外部から仕掛けられた影響によるものなのでしょうか・・・、神々が私達にアトリーの言動に気にかけて欲しいと言ったのはこの事でしょうか?・・・今後も注意深く見守らねばなりませんね)
夜月(あれは、くせになっているのか?自分が一般市民だった時の過剰な気遣い方になっているな、遠慮しすぎている、今の自分の立場や身分がまだちゃんと理解できていないようだ、アトリーはこの世界で唯一、神々から自由に生きることを許された人間なのだから、もっと自分に自信を持って欲しい所だな・・・)
この気遣いが前世でアトリーに掛かっていた、変な呪いのような暗示の名残だとは思いもよらないだろうと、天華や夜月は思いながら注意深くアトリーの様子を伺うのだった。
その後のアトリーはいつものように楽しく食事をとり、午後は女性陣と一緒にお買い物に行く事になった男性陣、男性陣は女性陣の買い物の長さに辟易しながらも、その日は何とか全ての買い物が終わり、宿に戻ったのは夕食の時間ギリギリだったのは仕方のない事だった、ついでに言うとアトリーは女性陣に混ざってお買い物を楽しんでいた、自分が買うのではなく、母親や他の女性陣達の買い物の相談役として、ここぞとばかりに自分好みのアクセサリーや小物を勧めていただけだったりする・・・
(ちゃんと本人に似合うものをチョイスしたよ!可愛いは正義だからね!)えっへん!╰(*´︶`*)╯
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