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第2章 少年期
59話 父様のお仕事見学 食堂
しおりを挟む道中賑やかな雰囲気の中馬車は進んでいき今は次の目的地に向かっている、行き先は視察場所の近くにある一般向けのファミリーレストランらしい、食堂みたいに狭くはなく高級レストランほど高くは無い地元のご家庭がちょっと奮発して食べにくる地域密着型のレストランみたいだ。
色々楽しく会話をしながら馬車に揺られていると馬車のスピードが落ちてきた、どうやら目的地に着いたらしい、停まった馬車を降りるとそこは公共の馬車の駐車場みたいな所だった様々な形の馬車が綺麗に整列してあって見ていると とても楽しい。
「おぉー、凄い、沢山馬車がある!」
父様「ふふっ、ここからは道が狭くなって坂が急だから馬車はここに置いていて歩くんだよ」
「そうなんですね、じゃあ昼食はその坂の上で食べるんですか?」
父様「そうだね、少し歩くけど良いかい?」
「はい、大丈夫ですお店が沢山並んでて楽しそうですね♪」
父様「ふふっ、そうだね、アトリーでも迷子にならないように手を繋ごうか」
と、貴族の行事の場でも無いのにスルッと手を取られて迷子防止策を取られてしまった。
(む、そんな簡単に迷子にならないよ?父様)
夜月『それほどアトリーが浮かれているのに父君は気づいているんだろう、大人しく父君の手を持っていた方がいいぞアトリー』
と、夜月に言われてしまった。
(む~確かにテンションは高いけど~)
夜月と念話で会話している間にも握られた手を離さず父様に誘導されるがまま賑やかな通りに出て歩き出した、周りは護衛騎士が固めているので一般市民は近寄って来ない。(まぁ、いつも通りフリーズする人が続出しているけどね)
馬車置き場はメイン通りに面しており少し歩いた先から坂道になっていた坂道と言っても前世で言うところの傾斜道でかなり緩やかな坂道だった。
(うーん、これぐらいでも馬車にはキツイのか?まぁ、道が狭いのが馬車で行けない1番の原因かな?)
道が狭いので馬車が離合するのがやっと と言う道幅だった馬車が離合しようとすれば歩行者が通れなくなってしまう それぐらい狭い道、それに加え両サイドには沢山の店舗が立ち並び買い物客で溢れかえっていた。
(活気があって良いなぁ、大通り より庶民的なお店が多いからかな飲食店も多いし♪)
「わぁ、人が沢山いますね父様!あのお店は何のお店ですか?」
父様「アトリー、落ち着いて、まずは昼食を食べようね」
「あ、はい、父様♪」
危うく、お店巡りをしそうになった僕を優しく引き留め本来の目的地に向かい始めた、その間も周りのお店に興味が引かれる僕はキョロキョロと周りを見渡しながら進んでいた。
(ふぁー、なんか色々あるねー、飲食店が多いみたいだけど野菜屋さんとかお肉屋さん?みたいなものもあるね、それにしてもこんなに建物が密集してるのに臭い匂いがそんなにしないね、道も石畳の割には余り凸凹してないし)
僕の中では文明が遅れてる=排水施設がないので汚い、臭い、不衛生みたいな印象があったので この街を歩いていると全然と言って良いほど臭い匂いがしないから不思議に思っていた。
天華『そうですね、この国にはちゃんとした下水設備があるのでそんなに臭わないのではないですか?王都も全然匂いはしなかったですし』
(あぁ、そう言えば確かにあの時は初めてのお出かけだったからテンション高めで気づかなかった…、うーん下水設備だけでそんなに違うんだね、汚物浄化施設とかは無いのかな?それがあれば完璧な排水処理になって自然にも優しいんだけどね、てか、ここの下水の出口は湖なんじゃ?それって大丈夫なのかな?)
天華『アトリー、この国の下水管には特殊な加工がされていて湖に出るまでに綺麗な水になって出て来てますので大丈夫ですよ』
(へ?どゆこと?下水管にどんな加工が?・・・!まさか、魔道具化されてるの?下水管が⁉︎)
天華『そうですよ、出口に近い下水の数カ所に浄化作用のある魔道具化された下水管が設置されているのでそこを汚水が通っただけで浄化されて湖に流れていってるのです、だから自然にも影響が出ないどころか湖が濁らずに透明度を保っている事に一役かってますよ』
(おぉー、一石二鳥だね!)
意外な排水処理方法に驚きながら賑やかな街並みを堪能していると、
父様「さぁ、アトリー、着いたよ」
「わ~、広い公園?」
緩い坂道を登り終わった先は円形の広い広場を中心に色んな店舗が並んでいた中心部分には様々な形のベンチやテーブルが配置されて植物も生えていた。
立ち並ぶ店舗の中に一際は大きい飲食店が右側奥に立っており、そこを父様が指差した。
父様「歩いてお腹が空いたろう?早く入ってご飯を食べようか日差しも強いしね」
「はい、父様今日も天気が良くて良かったですね」
「そうだね」と会話しながら飲食店の前についた店の入り口の看板には《鉱山食堂コメドール》と書いてあった。
「鉱山食堂?」
父様「あぁ、ここは元々、街が運営していた鉱山夫達専用の食堂だったんだが、数年前から鉱山夫達だけではなく一般市民にも利用可能な食堂にして店舗も大きく立て替えたんだよ」
店舗の横には山に向かう道が伸びており、そこを降りてくる人達は皆 屈強な体格をしたゴリゴリマッチョマンな男性が多い、それに少し土や泥みたいなもので汚れているので鉱山夫なのだろう。
どうやらこの先に鉱山の採掘する入り口があるようだった、鉱山夫達は皆んなそこから降りてきて食堂に入って行ってる。
「皆さん凄い逞しいですね…」
父様「そうだね、力がないと鉱山夫はやっていけないからね、さ、中に入ろうか」
父様に促されて中に入ると丁度 昼時だったようで店内は人が沢山いてとても賑わっていた。
ザワザワッ ガヤガヤッ
「おーい注文いいかー」
「はいよーちょいとまっておくれー」
ガチャガチャッ ザワザワッ
「こっちに日替わり定食いっちょー!」
「あいよ!日替わり定食いっちょー!」
「「「うーい!日替わり定食いっちょー!」」」
カンカンッ トントントンッ ボッ!ジュッ! ジャッジャッ
「わぁー、賑やかですね」
父様「そうだろう?、皆んなが元気でいる良い証拠だね」
「はい!そうですね!」
(皆さんの活力の為には食事は大事!)
ジュール『良い匂いがする~』
(そうだね、お腹が空くに匂いだね~)
良い匂いを嗅ぎつつ ひとしきり見回した後は座れる席を探そうとしていると、
「おい、貴族様が入って来てるぞ」
「え!、本当か?・・・あ!本当だ!なんでこんな所に?」
と、近くにいた一般客達が騒ぎ始めていた、僕にも気づくと数秒フリーズして、
「え!・・・・、隣の子は本当に人間?凄く可愛いんだけど!それに周りにいる動物も凄く可愛いんだけど!」
「本当だ、可愛い!撫でさせてくれないかしら!」
と、女性客にも騒がれ出して(え~この雰囲気の中で食事とるの~?)と、思っていた時、
?「あらあら、領主様お久しぶりです、今日も視察ついでのお食事ですか?」
と、先ほど元気にお客さんの注文を叫んでいたクセのある赤茶色の髪にクリッとした焦茶の瞳をした可愛い系の顔した女性が声をかけてきた。
ザワッ!
「い、今、領主様って言わなかったか⁉︎」
「お、おう、俺も聞こえた!」
「えっ、じゃあ、あの子は領主様のお子さん?」
と、困惑のざわめきがたった。
(あちゃー、バレちゃったよ、・・まぁバレるかこんな高そうな服着た庶民いないもんね)
天華『ですね』
父様「やぁ、女将さん、久しぶりだね、今日は視察もあるが先日“洗礼と祝福“が終わった我が家の末っ子を連れて来たんだよ、さぁご挨拶しなさい」
「はい、父様、初めまして、僕はデューキス公爵家当主が三男アメトリン・ノブル・デューキスと申します、以後お見知り置きを…」
「「「「「ほぅ…」」」」」
一般市民に向けた軽い挨拶をするとあちらこちらから ため息が出てきた。
?「・・・・、また…一段と綺麗なお子さんですね領主様、初めまして、ご子息様、私は夫婦でここの食堂を任せて貰ってる女将のメアリー・ターヴォラって言います、旦那は今厨房にいますので後で紹介させてくださいね」
女将さんは少し慣れているのか、子供の僕にでもちゃんとした挨拶を返してくれた。
「はい、よろしくお願いします、女将さん」
女将さん「ふふっ、こちらこそ宜しくお願いします」
と、挨拶を交わすと店内の人が一斉に立ち上がり両膝をつき頭を下げた。
ガタガタッン! ザッ!
(わっ…、び、びっくりしたー)
夜月『まぁ、これが正しい反応なのだろうな』
(うーん、確かにそうなんだろうけど、今後も慣れないだろうなぁ)
僕が正式に領主の息子として貴族の挨拶をしたので店内の人が一斉に平伏してしまった、名乗らなければそのままでよかったんだが…、それに加えデューキス公爵家が王家の血を継いでいるのも原因のようだ・・・
*商人ギルドや職人ギルド、その他様々なギルドは世界中に存在するので貴族が来ても優遇はされるが平伏する必要は無いとされてる、平民も貴族も同じ利用者という事らしい。
夜月『追々慣れるしかないだろう』
(さいですか…)
父様「あぁ、皆、頭を上げて、我々に気にせず食事を続けてくれ」
少し困った顔した父様の声掛けに恐る恐る頭を上げ隣にいる人達と顔を見合わせる、でもまだ立ってくれないので、
父様「すまないね、食事中に我々も食事に来ただけだから、そう畏まらなくて良い」
と、言ってもまだ元に戻らない、痺れを切らした女将さんが後ろを向き、
パンッ!パンッ!
女将さん「ほらっ!、気にしなくて良いって仰ってるんだから、あんた達もサッサッと食べてしまいな!いつまでも座ってたら領主様達が気にするだろ!」
「サッサッと立ちなっ!」と近くにいた客を立たせていた。
(おぉ、肝っ玉系女将だ)
女将さん「全く もうっ、・・・すいませんね領主様、どうぞ何時もの奥の席が空いてますよ」
父様「いいや、気にしてないよ、有り難う女将さん、皆も気にせず食事を続けてくれ」
女将さんの案内で奥の衝立がある席に座り、その周りの空いた席について来ていた護衛騎士達の半数が座り、残りの半数が僕達の席の近くで立って護衛体制に入っていた。
(あぁ、交代で食事を取るのかな?)
その後はメニューを持ってきた女将さんにお礼を言いメニューを見ると、
「あ、これ」
僕が商業ギルドにレシピ登録した料理が多数メニューに載っていた。
父様「ふふっ、そうだよアトリーここのメニューの殆どはアトリーが考えたレシピを使っているんだよ、これが話題になって鉱山夫専用の食堂から一般向けにも開放する事になったんだよ」
(おぅ、マジか…)
「え、えっと、それは良かったんでしょうか?女将さん達の負担になってないか心配です」
(急激な客層の変化は飲食経営では資金確保に新しいメニューの追加の食材の確保その他諸々が負担になりやすいし、その間 通常通り以上の客が押し寄せてくる事になるのに対応する人のかなり負担になったはずだ、どれだけ備えても足りないくらいだよ)
この事で女将さん達が無理をしてないかとても心配になって聞いてみたら、周りの人達が驚いた顔をしていた、父様だけは少し困った顔をしていたのが印象的だ。
「どうかしましたか?」
首を傾げつつ聞いた。
父様「いいや、どうもしてないよアトリー、一般向けに開放する事が決まった後店舗を建て直ししている間にちゃんと準備期間を1ヶ月もうけてお店を再開させたから心配はないよ」
「そうですか、でも、人が多くなって大変だったでしょう?お体を壊したりなさらなかったですか?」
女将さん「・・・あぁ、そこは急遽人手を増やして対応したから大丈夫でしたよ、・・・それにしてもご子息様は自分のレシピがメニューになるのが嬉しくないのかい?」
「?、それは嬉しいですが…、それによって皺寄せが来て女将さん達の負担になってるのが分かってるのにそこで喜ぶのは何か違うと思います」
女将さん「ご心配頂き有り難うございます、ご子息様・・・・・、これは公爵様が今までお隠しになってた理由がよくわかりました」
父様「はははっ、隠してたつもりは無いんだけどね、アトリーは賢くて優しいからね人気があり過ぎるから出し惜しみはしてたかな?」
「??」
(出し惜しみってなんのこっちゃ?うーん、まぁ、僕の魔力の質のせいで人を寄せ付けていたみたいだからある意味人気者なのは確かかな?)
聖獣達『『『・・・・・』』』
*それだけじゃ無いだろう、それにそんなに他人を気遣う7歳児なんていないと聖獣 皆んなが思っている。
父様「まぁ、それは良いとして、最近の客足は落ち着いたかな?」
女将さん「あぁ、それは最初の頃に比べるとだいぶ落ち着いてはいますよ、でも昼どきの混み具合はあまり変わらないので稼がせて貰ってます」
(あぁ、こんな感じで現状を視察してるんだね、父様、大変そうだ)
父様「それは良かった、この街は色々な職人の工房は沢山あるけど飲食店が少なかったからね、ここを解放することで良い活性化に繋がったのなら領主としては嬉しい限りだよ、後は何か困ったことがあればすぐに“ファッブロ伯“に連絡すれば私の所にも連絡がくるようにしてあるからね、まぁ大抵の事はファッブロ伯が対処してくれると思うけどね、さて、注文は決まったかな?アトリー?」
(おっと、話を聞いてたらまだ決めてないよ、どうしよう?)
「えっと、あっ、あの日替わり定食をいただいて良いですか?」
これと言って決まってなかったので入って来た時に飛び交っていた注文の中にあった日替わり定食を頼んでみた、聖獣皆んなも同じ物を注文した。
女将さん「あいよ、日替わり定食ですね、領主様はどれにしますか?」
父様やカイルさん、ソルも料理を頼み終わった後女将さんは周りの護衛騎士達の注文を聞いた後 急いで厨房に注文を伝えに行った。
ソル「旦那様、僕まで一緒によろしいんですか?」
と、ソルが遠慮がちに聞いていた。
(まぁ、ソルの言いたい事は分かるよ?多分普通の貴族家では従者と主人が一緒に食事を取る事は無いだろうからね、まぁ家は普通の貴族家とは違うからそんな事気にしないんだろうし、僕も気にしない)
天華『貴族家の中では珍しいとは思いますよ?』
(良いんだよ、誰も文句は言わないし、言えないからね)
天華『それはそうでしょうけど…職権濫用ですね』
(職権濫用!どんとこい!WW)
父様「良いんだよ、ソル、いくら君がアトリーの従者と言ってもまだ君は子供だ、それに私の従者のカイルも一緒に食事を取るんだから君が遠慮することは無い」
(ほらね)
天華『ですね…』
ソル「は、はい、分かりました旦那様、有り難う御座います」
カイルさん「ソル君、旦那様は言い出したことは簡単に曲げないので言っても無駄ですよ、それに付き合わないと拗ねますからね」
父様「拗ねるは余計だ、カイル」
父様とカイルさんの言い合いに少し子供っぽいと思いつつ微笑ましげに見ていると。
カイルさん「それは良いとして、「よくない」アトリー様、アトリー様にお聞きしたいことがありまして」
「?はい、なんですかカイルさん?」
(何でっしゃろ?)
父様「?、どうしたカイル?」
カイルさん「いつも気になっていたんですがアトリー様はなぜ私の事を“さん“付けで呼ばれるのですか?先程の商業ギルド内では呼び捨てになさっていたのにまた今“さん“付けになさいましたよね?しかも敬語も」
(あぁ、その事か…)
「うーん、これと言って確証はないのですが、カイルさんが父様以外の人から呼び捨てにされるのが何となくお嫌なんでは無いかと思って、それに年長者の方を呼び捨てにするのは気が引けますからね、でも流石に対外的な公の場所では呼び捨てさせて頂いたんですが…、駄目でしたか?」
そう言うと、父様とカイルさんが目を点にしてこちらを見ていた、暫くするとカイルさんが笑い出し、近くにいた護衛騎士達が驚いていた。
カイルさん「アッハハハッ、フッフッフッ、クッ、クッ、クッ、グッ、・・・・はぁ、失礼しました」
(おぉぅ、急に笑いだすなよ、怖いやんけ、しかも急にスンってなるし)
父様「だ、大丈夫かカイル?」
父様もあまりの事に心配そうにカイルさんを見ている。
カイルさん「大丈夫です、アトリー様、お気遣い有り難う御座います、ですが私の事は私的な場でも呼び捨てになさって下さい、出ないと他の使用人達に示しがつきませんからね」
と、にっこり笑顔の圧で言われた。
「あ、はい、分かりまs、分かった、カイル」
「分かりました」って言おうとしたら笑顔の圧が上がったのでその場で修正した。
(今日は父様のお仕事見学のはずなんだけどなぁー)
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