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第2章 少年期
48話 さらば王都、そして領地へ 謎のエルフ 視点 から アトリー 視点
しおりを挟むエルフ 視点
昨日に引き続き 私は大通りを散策しようと宿の部屋から食堂に降りて朝食を食べようと開いている席に適当に座り宿泊者専用の朝食が来るのを待った、
今朝は何故か昨日より周りがざわついている気がした、周りの会話に耳を澄ませて見ると。
「おい聞いたか?昨日の事件!」
「あぁ、聞いたよ、噂の公爵家の子供がナイフを持った男に襲われたってやつだろ?」
「あぁ、それだよ何でもあの悪い噂をばら撒いた貴族の1人が話が違うじゃねえかって何処かの貴族のパーティーで周りの貴族に文句言われて、恥かいたって 逆恨みして“公爵家の麗しの聖人様“を襲ったらしいぜ」
「逆恨みぃ?自分でばら撒いた噂のくせに なんでその子供を襲うんだよ!しかし ろくな貴族じゃねぇなそいつ!てかよ、その“公爵家の麗しの聖人様“って何だよ?」
「あぁ、それはな・・・・・・」
その話を全て聞く前に私は昨日諦めて宿に帰ってきた自分を責めた。
(っ!、あの時、早めに帰らなかったら例の子供を守ることができたかも知れないのに!)
と、唇を引き締め後悔した。
シル『大丈夫!あの子は怪我してないよ!』
急に出て来た シルに驚き言った言葉にさらに驚いた。
(!、例の子は大丈夫なのね⁉︎)
シル『うん、無傷だったって、周りの人が言ってるじゃん』
よく聞くとさっきの会話をしている人達の他にもこの話題をしていて子供は傷もなく無事だったと話していた。
(ほっ、良かった…しかし シル 今まで何していたの?)
シル『うっ、ちょっとそこら辺で遊んでいただけだもん!』
ここ数日姿を現さなかったシルを問いただすとその言葉だけを残してまた消えて行った。
(はぁ、また逃げられたわ)
風の精霊は自由気ままで“信頼契約“できたとしても他の属性の精霊とは違いいつもすぐに出てくるとは限らない、大抵は呼び掛ければすぐに姿を表すが気が向かない時は全く反応を返したりもしない。
私は今日のシルの態度は呼んでも姿を現してはくれないだろうと長年の契約関係からの勘で判断して無理に呼び出そうとはしなかった。
(まぁ、無事な事が分かったからいいか、でも流石に襲われた次の日にまた市民街に来てまで買い物をしようとはしないわよね)
そう結論付けて今日は冒険者ギルドに行って手頃な依頼がないか確認する事にした、その日は薬草採取の依頼をこなし宿に戻り明日はまた王都の散策をしようと決めて食事をとって早めに寝た。
翌朝・・・・
(ふぅ、今日も頑張って探してみましょうかっと)
腕を伸ばし体をほぐして朝食を食べた後宿を出て南門前から北に向かって大通りをゆっくり歩き始めた暫く歩いていると前方から数日前に目にした時と同じ豪奢な馬車がゆっくり来ており最初見た時と同じで様々な精霊達が馬車を取り巻いていた、
(あ!、あれは!この間の馬車!精霊達もいるわね)
あの馬車が例の公爵家の子供が乗った馬車で間違いないだろうと確信して馬車の窓を確認した今回はカーテンが閉まっておらずそこには窓から外を見ている白に近い銀髪の可愛い顔をした子供がいた。
(あの子かしら?男の子よね?それにしても珍しい瞳の色だわ…)
人族の子供にしては顔立ちが整っており一際目立つその瞳は左右の色が違い片方は濃い黄色に濃い紫色の線が入っていて、もう片方は濃い紫色に濃い黄色が上斜めに入っているようだった、先ほどから目が合っているのでまじまじと観察した。
(精霊達があの子供を見ようと馬車の窓に近づいている、あの子の何があそこまで精霊達を惹きつけるのかしら?“鑑定“してみれば分かるわよね?)
私は迷わず例の子供に“鑑定“を掛けた、人族の子供にかけるのは簡単だ、と、この時は思っていたが結果は・・・
バチンッ
(何⁉︎今の⁉︎私の“鑑定“が弾かれたわ‼︎どういうこと⁉︎)
驚きで目を見開き固まっていると。
シル『コラー!勝手にあの子を“鑑定“したらダメでしょーっ!僕が怒られるじゃないか!』
と、出てきていきなり怒りながら私の顔の周りを回り始めた。
(ちょっ、ちょっとシル!どいうこと⁉︎あの子!私の“鑑定“を弾いたわよ!)
シル『当たり前じゃないか、あの子の方が君より魔力の量も質も良いんだから』
「⁉︎」
その言葉に私はまた驚いた、私達エルフは魔法をうまく使え 精霊と契約することで自分に無い魔法属性を補う事ができ、その魔力量や魔力質はどの種族より長けていると自負してる。
(そ、そんな、私が人族の子供に魔力で劣るなんて…)
シル『それは君達エルフの驕りだよ、そんなふうだから僕達下位、中位精霊達から力を貸して貰えても、上位精霊様達から君達エルフの中から愛し子を選んで貰えないんだよ』
良好な関係を築けていると思っていたシルからに聞き捨てならない言葉を聞いた。
(え…、それはっ『じゃあねー!僕は暫く友達と遊んでくるよ!』あっ!待って!シル!)
そのままシルはまた姿を消し、呼んでも姿を現さなかった
最近エルフ内で上位精霊達と契約できた者がいない私達は寿命が長いからいつか契約できる日が来るとタカを括っていた節もある、上位精霊の契約者は精霊の愛し子とも呼ばれる事からかなり貴重な存在なのだから そう簡単に契約者は現れないと悠長に考えていた、先程のシルの言葉通りならこの先も上位精霊達と契約できるエルフはいないのだろう。
(そう言えば 近頃 上位精霊を見かけたと言う人もいない…、・・・これはかなり不味いのでは?)
もはや人族の子供を気にしている場合ではないと思い、私は本国に一旦帰ることにした。
(でも、あの子供は様々な属性の精霊達に好かれていた、何故?私も近くにいたのに1人も精霊が近寄って来なかった…)
理解できない、だがあの子供に何かがあるのは確かなはず、本国に報告をした後に戻って来てからあの子供を調べようと決めた、
子供を乗せた馬車はもういなくなっていたが進んで行った方向をいい知れない不安を心で感じながら見つめていた・・・
>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<
アトリー視点
エルフ女性と見つめ合った後 僕達を乗せた馬車は大通りを順調に進んで行って王都に来た時に通った南門に着いていた。
「わー、やっぱり近くで見ても大きいなぁ」
母様「そうね、近くで見るとより一層迫力があるわね」
大きな南門を見物していると馬車がゆっくり停まり城壁街に出る列に並んだのが分かった、南門周りの歩道のような所に出店が並び行き交う人達に旅の必需品の忘れ物はないか?と売り込んでいた。
「あ、あれ なんだろう?食べ物?あっちは外套?色んな物がいっぱい置いてある!あ!あれは冒険者さんかな⁉︎カッコイイ!」
(おぉ!背中に大きな剣を背負ってる!あれを振る事ができるなんて凄いな!僕には出来そうもないよ!)
色んな物に目移りしながら門をくぐる順番を待っていると。
父様「ふふっアトリーには珍しい物ばかりだろうね」
母様「ふふっ楽しそうですね」
父様と母様が微笑ましそうに見てくるがそんなの関係ねぇとばかりに僕は外の景色を見るのに夢中になった。
「ん?、あ、あれはこの間 僕に飛んで来た食べ物に似てる?、小さい女の子が持ってたから甘いのかな?」
(見た目は“クレープ“ぽいけど中に何が入ってるか分かんないや、色も独特だし)
父様「ふむ、リアあれを1つ買って来てくれないか?」
リアさん「畏まりました」
リアさんは手早く馬車を降り、僕が見ていた出店へと向かった。
「父様?」
父様「アトリーにコレから色んな事を経験してほしいからね」
と、ウインクしながら言った。
(イケメンかよ!いや、うちの父様イケメンだったわ‼︎WW)
リアさん「お持ちしました」
父様「あぁ、有り難う リア、ほら、アトリー食べて見なさい」
そう言ってリアさんが買って来てくれた“クレープ“みたいな食べ物を受け取り僕に手渡してくれた。
「わーっ、良いんですか?有り難う御座います♪」
食べ物を受け取りよく見ると“クレープ”見たいだと思っていた薄い生地はうっすら灰色っぽい色をしていた。
(?、小麦粉では無いみたい、色から判断すると蕎麦粉?そうすると これはガレットみたいな物かな?)
少し観察してみて予想を立ててみたが中身が何かによっては別物になると思い一口食べて見る事に。
「いただきます」と、言い一口かじって見ると。
「あ、あまーい♪何かの果物のジャム?かな?生地はモチモチしてて美味しです!」
(予想通り、蕎麦粉の香ばしい風味がして中の果物のジャムとよく合って美味しい♪ジャムも砂糖は使ってない果物本来の甘さだ♪)
母様「ふふっ、アトリー口の端にジャムが付いてますよ」
母様がハンカチで口元を優しく拭いてくれた。
「ん…、ふふっ、有り難う御座います 母様」
その後も残りのお菓子(“ガッレ“と言うらしい)を順番待ちの間にのんびりと聖獣達にも食べさせながら待っていると、ガッレを食べ終えた辺りで周りが騒がしくなっていた不意に外に目をやると歓声が上がった。
「「わっ!こっち見てくれた!」」
「「きゃー!可愛いっ!」」
(有名人でも来たのかね?)
コテンッ
「「首を傾げた表情も可愛いわ!」」
(ん?、・・・ぼ、僕?僕を見て言ってるの⁉︎うわっ恥ずかしっ!)
羞恥心で顔を両手で隠したら、
「「恥ずかしがってる姿も可愛いわ~」」
と、言われる始末。
(どうしろってのよ!こっち見ないでよー!)
困ってしまって母様の側に行き助けを求めた。
「か、母様ぁ、僕、恥ずかしいです…」
母様「あらあら、大人気ねアトリー恥ずかしいなら母様が隠してあげますよ」
「っ、・・・むー、・・えいっ」ぽふっ ギュッ
「ほら」っと、両手を軽く広げてくれた母様の胸の中に少し戸惑ったものの背に腹は変えられないと思い母様に抱きついた、母様の腕の中に入った僕をふわりと抱きしめ、手を背中と頭に添えて優しく撫でてくれた。
母様「ふふっ可愛いアトリー、大丈夫ですよ これで周りにはアトリーが見えませんからね」 キュッ
(はぁー、落ち着くー母様の胸 柔らかくて気持ちいいー)
母様に抱きしめられると周りの音が遮られ周りから見えなくなった事で先程までの羞恥心が嘘のように薄れて行って、母様の胸に頭が埋まっていった。
天華『アトリー様、発言がセクハラ発言でギリギリアウトですよ』
(おー、それはすまんかった、でも事実 気持ちよくて寝れそうだよ頭も撫でられると尚更に)
天華『仕方ないですね』と、呆れた様子で言った。
父様「いつの間にか周りに見られていたみたいだね、しかし よく気づいたな…」
(そうだね、僕もびっくりだよ)
僕達が乗る馬車の周りには護衛騎士50人が警備として取り囲んでいるので結構な距離が空いているはずなのだ、騒いでいる人達と馬車の間には 公爵家の騎士団の鎧を纏った屈強な騎士が馬に跨って3騎ほど横に並んでいる、騎士達がある程度 視界を遮っているから僕も遠慮なく周辺の人達を窓からガン見していたぐらいなのに、その中でよく僕に気づいたなと父様も思っているんだろう、そう言えばエルフの女性にも見られてたな、何でだろう?
夜月『ふむ、今日は有名俳優かアイドルみたいな扱いを受けているなアトリー』
(う、確かになんでだろうね?)
ジュール『うーん、いつも以上にアトリーちゃんが可愛いからだと思う!』
先程の騒ぎで起きていたのかジュールがそう言うと、
天華『ふふっそうかもしれませんね』
と、揶揄い混じりに言った。
(うー、否定できないのが悔しいよー)
そう会話をしていると馬車がゆっくり動き始めたので母様の胸から顔を上げ窓の外を見た、まだ沢山の人がこちらを見ているが動き出した馬車を追いかけるような事はしないみたいだ。
「ほっ」
と、して母様から離れようとすると、
母様「あら、もう良いの?」
と、聞かれ、
「はい、母様 有り難う御座いました」
母様「そう、またいつでも母様が隠してあげますからね」
少し残念そうに言った。
「また困った時はお願いできますか?母様」
と、甘えてみる。
母様「ふふっ任せなさい♪」
「よろしくお願いします♪」
と、素直に頼る事にした。
(うん、でもあんな恥ずかしい思いは一度で懲り懲りだけどね!)
(今度 街に出かける時は絶対着飾らないぞ!)と、決めた。
ゆっくり進む馬車は南門をくぐる 一歩手前で止まり係の騎士さんが僕達の馬車の中を一つ一つ確認して人数が合ったら門を通してくれた、
またゆっくりと馬車は動き出し大きな南門をくぐって行く。
「わ~、天井高い!」
気を取り直して窓の外を眺める事にした僕は門の内部の構造を観察する。
(意外と門 内部は広いね~)
門の両脇には城壁内部に繋がる入り口や入都審査所に馬車専用通路、貴族馬車専用出入り口などがあったりと一概に“門“と言ってもこの大門ぐらいになると大きな高速道路の料金所みたいな雰囲気と賑やかさがある。(まぁ、高速道路の料金所より通るのには時間が掛かるけどねぇ~)
馬車がゆっくり門を通り抜けると、そこには広い平原が見えてきた。
「おー、何もない平原だ!」
(へー、外はこんな感じになっていたんだねー、それにしても広いな、ギリギリここから森の木々が見えるってどんだけ広いんだろ?)
来た時はここから少し見えている森の中でカーテンを閉めたのでこんなに広い平原だとは思わなかったのだ。
父様「しばらく平原が続くけどまだ外を見ているかい?」
「はい!行き交う人達を見るのも楽しいので退屈しません!」
父様「ははっそうか、それなら好きなだけ景色を堪能しなさい、飽きても退屈凌ぎの本など持って来ているんだろう?」
「はい、一応“収納”にしまっています」
父様「それなら良いね、2時間後ぐらいに休憩場所に着くからそれまで好きしなさい」
「はい!」
返事をしたらすぐにまた窓の外を眺める事にした、外の景色を見ながら人間観察をしていると乗合馬車や商人のキャラバンの馬車にその護衛の冒険者など様々種族に色々な職業の人がいて見るのに飽きない、その中でも冒険者の人達は種族も装備している武器や防具が多種多様で戦闘職の人と魔法支援職の人との違いや種族でもこの種族は戦闘職が多いなとか色々ある、その中でも豪華な装備をした冒険者グループを護衛に雇っている商人の馬車があった。
(ほえー、あの人達の装備ゴテゴテしてて動きにくそうだけど防御力はあるのかな?)
夜月『見た目に反して脆い物もあるが基本使用している素材によるだろうな、素材が良ければデザインはどうにでもなる事が多いからな』
(そっかー、良い素材を持って行くとシンプルなのから豪華なのまでお好きにどうぞって事ね)
夜月『まぁ、そこに職人の腕も掛かってくるけどな』
(あ、やっぱりそこは外せないよね~今度 武具製作の本を屋敷内で探してみるか~)
じーっと、その護衛の冒険者を見ていると互いに目があった。
(あ、見過ぎたかな?、良いや笑っとけ、ニコッ ついでに手も振っとこう)
向こうもこんなに護衛でガチガチに固められた貴族の馬車の中から貴族の子供が笑いかけて手を振って来るのが初めての事だったんだろう、驚いてあたふた慌てていた。
「ふふっ、慌ててる ふふっ」
母様「あら、アトリー何か面白いものでもあったの?」
「あ、母様、今ですね外を見ていたら商人さんの馬車を護衛している冒険者さんと目が合ってしまったので笑いかけて手を振ったら冒険者さんが驚いて慌てていたのがおかしくてつい声に出てしまって、ふふっ」
母様「まぁ、そんなに面白い驚き方をしていたの?」
「ふふっ、はい、1番体が大きくて強そうな装備している冒険者さんがあたふたしながら ぎこちない笑顔で手を振りかえしてくれたんです」
母様「ふふっそれは少し見て見たかったわ、手を振り返してくれるなんて良い人なのね」
母様も図体のでかい男が苦笑いしながら手を振っている姿を思い浮かべたのだろう少し笑っていた。
そう話しているうちに王都の城壁から離れて行きとうとう見えなくなってしまった、見えなくなった王都の方を見て。
(バイバイ、またね王都)
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