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第2章 少年期

16話 “洗礼と祝福“の日 とある子爵家当主:ブラーブ・ノブル・ヴィカウタ子爵 視点

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  子爵家当主:ブラーブ・ノブル・ヴィカウタ子爵 視点

 今日は我が子達にとって1番大事な日だ、そう“洗礼と祝福“の日だ、

神々からスキルを与えて頂ける大事なこの日があんな事になると は参加する誰もが想像できなかっただろう・・・・


 朝早くから子供達と私達親の準備が済みしだい慌てて屋敷を出た、神殿には下位の爵位順に入場する習わしがあるからだ、
我が屋敷には祖父の時代から“洗礼と祝福“の日には同年代のダンロン男爵家とバロネッカ准男爵家の2家を屋敷に逗留させ一緒に行くのが通例と化していた、
なので1番爵位が低い バロネッカ准男爵家の為に朝早くから神殿前に行くのだ。

 順調に呼ばれて中に入っていく、その最中に貴族の中で なぜか1番爵位の高いはずの公爵家の馬車が2台来て 今 呼ばれている男爵家の時間帯に神殿の前で停まった。

 どうやら一緒に来たもう一つの馬車が子爵家の一家のようで その一家の馬車は偶然 我が家の馬車の後ろに停まった、見ていると、その一家の子供が降りて来ると周りのご令嬢達が少しざわめいたのを感じた。
 それもそのはずだ、子供にしては理性的で賢そうな雰囲気でかなり整った容姿に瞳の色も濃い緑色でとても透き通った色をしている男の子が降りて来たのだから、一目見ただけでこの子が強力な魔力と魔力量を持っているのがわかるからだ

 そして彼ら一家は直ぐ呼ばれたようで我が家の馬車の横を通り抜ける時 小さく息子に手を振って来た、息子のイネオスも振り返していた

「イネオス、今のご令息は昨日言っていた公爵家ご子息の幼馴染で間違いないのか?」

イネオス「はい、父上 間違いないです」

「そうか、かなりの魔力量を持っているようだな、だが表には何も感じなかったな・・・」

イネオス「父上、それは彼、ソルドア様はアメトリン様と同じで魔力封印の魔道具を常につけておられるからですよ」

「!、そうなのか魔力暴走を抑える制御の魔道具は知っていたが、封印の魔道具を使用する程とはかなり危険な魔力量なのだな・・・」

イネオス「そうなのですか?、アメトリン様達が仰るには簡単に魔力暴走する事はない程度にコントロールできる様にはなったと言ってらしたんですけど、それとは別に体内に留めるのが難しいから、普段からつけているそうですよ」

「?、どう言う事だ?それなら外したままにしておいてもいいのではないか?」

 そう疑問に思った私に隣に座っていた妻のクラジュールが、

クラジュール「貴方、それは貴族の平均の魔力量より少し上の子供達の場合でしょう?多分あのご令息はそれ以上の規格外なのでしょう、その規格外の魔力が常に表にある状態だと、大人の私達が敵対した魔物などに威圧のための魔力圧を出すのと同じような現象が起きるのではなくて?」

美しい赤い髪を耳にかけながら 明るい緑の瞳を私に向けながら予測を立てて言ってきた。

「ふむ、そうかも知れないな多すぎる魔力量は時に不便な事もあるのだな・・・」

 と色々と話している内に私達の入る番になり神殿内に入るために公爵家の馬車の前を通ったが馬車のカーテンは全て閉じていて中を伺い見ることはできなかった。

 中に入り案内された席に座ること数分・・・・・

イネオス「父上、あの方が昨日のご令嬢です」

 と、イネオスが声を抑えつつ言って来た。

「あのご令嬢か・・・」

クラジュール「まぁ、なんて派手なのかしら、ご両親もよくあの格好をお許しになったものですね 止めなかったのかしら?」

 と、私が思っていても言葉にしなかった事を声を落としつつもズバズバと言い放った、周りの貴族親子も少し頷きながら見ている。

「クラジュール」

 と、一応軽く嗜めるように声をかけておく。

クラジュール「あら、ごめんなさいね貴方」

 と、彼女も軽く返して来た、どうやら昨日の事であの侯爵家ご息女に思うところがあるようだ、
まぁ仕方ないと思いつつ見送って 最後に来る公爵家の登場を待っていると、どうやら周りの貴族家も少し後ろにある神殿入り口を気にしていた。
 前は向きつつ 意識は完全に後ろを気にしているようだ。

 その時 後ろで人の気配が増えた。

「え、あ!、は、はい、“デューキス公爵家様“ですね!、こちらになります」

 と、助祭の声が響き渡った。

 一斉に神殿内の貴族、神殿関係者、全員が後ろの神殿入り口に顔を向けた。

「「「「「ザワッ」」」」」

バッ!

 そして一斉にその方に目を奪われた・・・

(・・・・・アレは本当に人間なのか?)

 自分の目を疑った、
肌は白く透き通っており 髪は後ろに自然と流すようにして上半分は美しく編み込んであり 入り口から入ってくる光に照らされキラキラと白銀に輝いていた 、
容姿は隣にいる公爵夫人をさらに美しく神格化したような女性とも男性とも取れる容姿をしている、そして一際目を引く、長いまつ毛と二重に縁どられた二つの美しい瞳だ。
 イネオスが言っていた通り、片側の瞳はとても濃ゆい紫に黄色、いや金に近い色の模様が入り、反対の瞳は金に近い黄色が大半を占め ところ所に濃い紫の線が数本ある、どちらの瞳も透き通った宝石のような美しい瞳をしていた。
 この不思議な瞳の色と“洗礼と祝福“の為の白を基調としたお召し物が相待って神々しさに拍車を掛けていた。

「イ、イネオス、あ、あの方がアメトリン様で間違いないのか?」

 と、目を離さずに聞いた。

イネオス「は、はい、父上、あ、あの方がアメトリン様で間違いない、・・はずです、昨日と余りにも本日の雰囲気の変わりように確信が持てませんが、お顔は間違えなく、アメトリン様です・・・」

 会って話をした事のある息子でさえ 確信が持てない程に 今日のあの方の雰囲気は神々しいのだろう。

 助祭が周りを少し睨みながら見渡していることに気づき 私達は急いで姿勢を正し前を向いた、少しすると助祭が再び案内を始めると中央を歩く公爵家に周りの目が釘付けになっている、自分達も見ているが先程から後ろから波のように伝わってきた あの噂の話しを囁くようにしている者が増えていた。

 そして1番前に座った事でアメトリン様を見ることは無くなったが今だに噂の話をして「言い出したのはどこの貴族だ」とか犯人探しをしていた。
 そんな時、続いて王家の方々がお越しになった事で場が静まり返り、すぐさま臣下の礼を取ることに気を向ける事となる、
先王陛下の“祝福のお言葉“を頂きお辞儀をしたら前から順に座って一息つく。

 次に司教様が出て来られて“洗礼と祝福“の儀が始まった途中まで順調に進み、幼馴染の子供達の“祝福“の結果は中々良かったのでひとまず安心していたら、私達 子爵家の番に入った時 最初に呼ばれた子爵家は 神殿前で会ったアメトリン様の幼馴染のソルドア様だった 。
 この呼ばれる順番は陞爵してからの年月の浅い順なので1番最初と言うことは今いる子爵家の中で1番新しい貴族家だと言うことだ、
だが、その事は今はいい、今、目の前で信じられない“祝福“結果が映し出されている

====================

+魔法適性+ 生活・火・水・土・風・氷・雷・木・光・聖・回復 合計11個

+スキル数+ 合計29個

+加護+

+称号+   最高の従者・親友

====================

 と、破格の“祝福“結果が出ていた。

(魔法適性が11だと?そんな結果 見たことも聞いた事もない、しかもスキル数が29など、どのような生活をすればあの数字を出すことができるんだ?)

 自分の息子には厳しく色々な事をさせてきたと思っていたが思い上がりだったようだ。

 周りはこの破格の“祝福“結果に驚きの声をあげる者や 不正を疑う者まで出る始末 収集がつかなるかと思っていたところで、

先王陛下「し ず ま れ ぇ い っ‼︎‼︎」

と周りの空気がビリビリと震えるような、一括で周りは静まり返った。

先王陛下「この“祝福“結果は、この者が今まで自分自身で努力を重ねた結果である!その事に対し 憶測で不正を疑う者達は自分自身の“祝福“結果をも疑う行為だと言うことだ!そして、この様な神聖な儀式の場で不正を疑うなど、恥を知れ‼︎」

 この言葉に先程まで不正を叫んでいた者達は縮こまり 前王陛下の視界から隠れようとしていた、周りを一通り見渡した 先王陛下は祭壇の近くにいた司教様に声をかけ続きを促した。
 その後の“祝福“の儀は滞りなく進み、自分の息子の“祝福“結果にも満足のいく結果になったので一安心して、席に戻る時に公爵家ご子息と息子が楽しそうに小さく手を振り合っているのが見えた。
 本当に友人になったのだと分かり あの1日でここまで仲良くなるとは、と思いながら公爵様に軽く会釈をして席に戻った、その後は席につき上位貴族の貴族家の“祝福“結果をただ見つめるだけの退屈な時間が過ぎていった。

 最後に近づいてきて周りの貴族家がソワソワし出した、1番最後に行われるアメトリン様の“祝福“結果が皆 気になるようだ。

 いよいよ最後と言う時に例の侯爵家ご息女の結果を見た時 眉をひそめた者は多いだろう余りにもひどい結果に周りはどうやら昨日のパーティーであった事のご令嬢だと気づき始めている。

(称号に“傲岸不遜“と出るような子供は他にいないだろうからな)

 口々に「どう言う教育をすればあんなひどい結果が出るんだ」とか「衣装も派手ですしね」とか色々言われているが、当の本人と両親は別のことに気を取られている。
 侯爵家当主夫婦は左側の1番前に座っている公爵家御一家をチラチラと伺っていて周りの反応に今は気づいていないようだった

 その後直ぐに公爵家の番が来て呼ばれたことで 口々にご令嬢の“祝福“結果を話題にしていた貴族達が静かになり。


 祭壇前まで公爵家御一家は仲良く手を繋ぎ進まれて ご両親がご子息の背中を優しく叩かれそれに応えるようにご子息は美しい姿勢をなお美しく正され、真っ直ぐ前を見て凛とした表情で 祭壇の上にある水晶玉に両手を触れたその時、
目を開いてはいられないほどの今までに無い強く眩しい輝きが辺りを包み、何秒?何分?と分からないが光は周りを照らした。
 次第に光が収まって来たのを感じた私達は少しづつ目を開き祭壇の上を視界に入れた。

「っ!」

====================

+魔法適性+ 全属性

+スキル数+ 合計41個

+加護+   *異世界の神“月詠“の愛し子
       *異世界の神“天照“の愛し子
       主神リトスティーナの加護

+称号+   *転生者
       神々の寵児
       聖獣を授かりし者

       ※ 上記の*マークは日本語表記です。

====================

 映し出された“祝福“結果に息を呑みたいが、それも出来ないほどに神殿内に満ちる神聖な空気に息もままならない程に気圧されていた。

 その神聖な空気の中で1人何の影響も受けてないように動く方がいた、それはアメトリン様だった周りの状況に気づいてないのか、ご自分の“祝福“結果に驚いておられるようで上を見上げていた。
 その時 主神の彫像が光り出し 腹部あたりから虹色に輝く真球の物体が出てきたのを見ると、自ら手を差し出され それを手に取り持たれていると 球がひび割れ中から何かが出て来たようだ、それを危なげなく手で捕まえると顔に近づけている様だ。

 その後すぐ慌てた様子で持っていた何かを祭壇の左上に置くとまた主神像が光り次は白銀に輝く真球が出てきて、また手で受け取られると同じように球がひび割れて何かが出て来たようだ、次はうまく捕まえることができた様だ。
 その何かがアメトリン様の肩に登って来た 私にも辛うじて黒い猫のような生物だと分かったが アメトリン様はまた慌てた様子で主神像を見上げた。

(もしや、あれが聖獣様なのか、ここからではよく見えないな…)

 その視線を追い主神像を見るとまた光り出し次は白金に光り輝く真球が出てきた、それも受け取ると また割れて出てきたものと 視線を交わすような仕草の後に何かがパタパタと飛ぶ音が響き、それは何と小さいドラゴンだった。
 小さなドラゴンはアメトリン様の頬を少し舐めた後 先程の猫の様な生物とは反対の肩に着地した。

 その時小さな子犬の声が聞こえアメトリン様は祭壇に置いていた何かを手に取ると、くすぐったそうに笑い声を上げたその時見えたのは腕に小さな子犬のような生物を抱いておられた。
 その時、神聖な空気が薄れ、神殿内の全員が深呼吸をした後に、

「「「「「えぇぇぇぇ~~~⁉︎」」」」」

 と、驚愕したのだった

 そして今までの一部始終を見ていた人達が困惑と共に様々な会話をしていた。

「どうゆう事だ?全属性なんて表記見たこともない」

「いや!それもだが!スキル数が41なんてどうやったら習得できるんだ!7歳の子供だぞ!」

「そんな事より!加護だろう!主神様の加護なんて確認されてるだけで100年以上前だぞ!この目で見れるなんて思いもしなかったよ!」

「あそこにいる3匹全てが聖獣様なの?皆様可愛いですわね!」

「聖獣様を授かるなんて 前代未聞だ!」

「あの聖獣様達はどうなさるのかしら?」

「我が家にも来て頂けないだろうか?」

 などなど 色んな会話がされている中でアメトリン様のご両親は未だに放心してらしたが、アメトリン様が声を掛けたことでお気づきになったようでご両親がアメトリン様を隠すように囲み、何かを話している様だった、その様子を見ているとふと3人の視線が祭壇の上に向かった、自分も同じ様に上を見てみると、
そこには“祝福”と同じ表示が現れたが何も書かれていない、それに気づいた周りの者たちも黙って祭壇の上を見上げた、全員の視線が集まったと思った瞬間に表示の中に文字が浮かび上がった。


======================

       +警告+

 我らの加護を受けし者に聖獣を授けたのは

この者の自由に生きる権利を保障するものである

この者が望まない限り 国も 教会も あらゆる組織も

   必要以上に関わる事を禁ずる

またこの者によこしまな心持ちで近づく事も禁ずる

   “

ゆめゆめ忘れる事なかれ我らは全てを見守っている

======================

 と、表示された。

 これを見た全ての者達が息を呑んだ。

(こ、これは、あり得ないほどの神々の寵愛ぶりだな、今まで主神様の加護を受けてこのような警告文が出たことなど無いはずだ、
それに主神様だけでは無い、他に2柱の神の加護があったが私には読めなかったその事も関係しているかは分からないが …
あの方は神々の寵愛を受けるに相応しい お方なのだろう・・・)

 そう考察していると、

教会の“洗礼と祝福“の進行していた初老の司教様が急に祭壇前に膝をつき祈りの姿勢を取ってこう宣言した。

司教様「おぉ、主神様 我らリトス教の司教として この警告を全ての教会に伝え 厳守させる事をお誓い致します!」

「「「「「お誓い致します!」」」」」

 その場にいた全ての教会関係者が司教の宣言と共に膝をつき神に誓いの言葉を復唱した。

 司教様の宣言を聞き 先程まで黙っておられた先王陛下が立ち上がり、片膝を付くと同時に私も家族も神殿内にいた全ての王侯貴族が同じように片膝を突き頭を下げた 。
 それを確認したであろう先王陛下は主神像に向かい司教様と同様に宣言した。

先王陛下「私も前国王として、神のお言葉を国に伝え厳守させることをお誓い致します。」

「「「「「お誓い致します」」」」」

 先王陛下の宣言の最後の文言を私を含む王侯貴族が復唱した。

 そしたら警告文の最後の一文が強調されるように光り徐々に画面が消えていった。

 消えた文面を眺めていた司教様が我に返って振り返り神殿内の人達に向かいこう話した。

司教様「私はリトス教を代表して、神にお誓い致しました 通り アメトリン・ノブル・デューキス様の自由を妨げは致しません、
またこの事を教会本部のイエロザーパト聖教国に報告させていただき 各国にあるリトス教の神殿又は教会に伝達致します、
この国のリトス教の関係者には今日中にこの警告文を厳守する事を誓わせますのでご安心下さい」

 最後の方は公爵家御一家に向けて言っていた、それを聞き先王陛下も、

先王陛下「私もそうお誓いしたのだから其方達も厳守する様に!もし守れない様であれば我が国に関係ないものとし国外追放とする!場合によっては死刑に処す!これは決定だ‼︎良いな!」

と、妥当な罰が決まった、大半の者が頷き先王陛下のご決断に賛同した。

司教様「ではこれにて“洗礼と祝福の儀“を終了させて頂きます・・・チラッ、王家と公爵家の皆様は先にご退場となります どうぞ」

 どうやら司教様の計らいで公爵家御一家は王家の方々と退場されたが 退場なされる時に少し見えた聖獣様方とそれを抱えたアメトリン様に皆の視線が行ったのは言うまでもない、後に残された我々は先程 起こった奇跡に話を咲かせていた。

イネオス「やはりアメトリン様はただのお方では無かったんですね!」

 我が事のように嬉しそうに話す息子を私は誇らしく思った。

(あのパーティーの時この子はちゃんと気付いていたんだな、あの方の凄さにそれでもあの方と友好を真に望んで 今の友好関係があるのだから大したものだ)

「そうだな、明日のお茶会で粗相のないようにしなければ・・・」

「「ざわっ」」

 小さなざわめきが起こって話を中断して そのざわめきの起こった方向を見ると何やら上位貴族家達が誰かを囲んでいるようだ、よく見ると先程 退場されたアメトリン様の幼馴染のソルドア様一家が中心にいるのが見えた。
 その事に気づいた同じ子爵家の当主が自分の主人のために彼を勧誘して来ると 家族に言い離れて行った それを見た妻が、

クラジュール「勧誘しても無駄ですのにね」

「そうだな・・・」

イネオス「なぜですか?父上」

不思議そうに聞いてくるイネオス。

「イネオス、彼のソンブラ子爵令息のステータスの称号を覚えているか?」

 イネオスは少し考えて。

イネオス「はい、確か“最高の従者・親友“と書かれていました・・・、あ!、そう言うことですね!父上!」

「そう言うことだ、あの称号はアメトリン様の“最高の従者・親友“であると本人が強く思っていると同時に 周りの人達にもそう認められていると言うことだ、
なので彼はアメトリン様以外には仕える事も無いし従う事も無いだろうね」

 今だに彼にまとわり付く貴族達を無視しながら彼は下を向きつつ出口に急いで歩いていた。

イネオス「ご家族はちゃんとお断りしているのになんてしつこいんだ、それをどうする事もできない自分が情けない」

 と、小さな手を握りしめた我が息子は本当に良い子に育ってくれた、それに私と同じ気持ちを持ってくれた事も嬉しく思い。

「イネオス、お前のすべき事はその思いをちゃんと相手に伝わるぐらい強く心に持ち 他の人達みたいに彼らを色眼鏡で見る様な事がないようにごく普通の友好関係を築く事だ、お2人はそう言ってお前達と友誼を結んでくれたんだろう?」

イネオス「‼︎、はい!父上これからもずっと そのお言葉を胸にあの方達と友人でいられるように頑張ります!」

 と、イネオスは決心したように誓いを立てた。

 そして暫くすると 彼にまとわり付いて行った人達が顔を蒼白にしながら帰ってきた、主人の為に彼を勧誘に行った子爵家当主が家族のいる所まで戻ってきてこう呟いた。

?子爵家当主「彼はあのアメトリン・ノブル・デューキス様の幼なじみだった・・・、ご本人に直接 警告めいた事を言われてしまった・・・」

 それを聞いた夫人に何と言う無礼な事をしているのかと怒られていた。

(あぁ、ご夫人は神の天罰を恐れているのだろうな、だが天罰が降るならもう起きてるだろうから大丈夫なんじゃ無いかな?)

 と、その光景を横目に退場の順番を待った。

 その後は順調に退場していき 無事ダンロン男爵家とバロネッカ准男爵家の親子達と合流し屋敷に戻ることができた。
 帰り際 私達を探していたのか 外の馬車置き場のところで侯爵家の馬車が停まったままだった事で 少しヒヤヒヤしたが隠れて見ていると周りの視線に耐えきれなくなっていたのだろう 暫くしたら侯爵家の馬車が出ていくの見て 、周りをよく確認してから自分達の乗ってきた馬車に素早く乗り込んで屋敷に帰り着いた。

 帰り着いて、子供達は着替えをして昼食を取るようにと言い、大人達は 今日あった事を話すために着替えを済ませて執務室に集まった。

 みんなが集まってお茶で一息ついてからオストが口を開いた。

オスト「今日は凄かったな、噂のアメトリン様を初めて見て私は震えが来たぞ」

 と、自分の妻のプルスア夫人と頷き合いながら言った。

ツァル「私は“祝福“の時、あまりの神々しさに目が焼かれるかと思いましたよ」

ジャンティナ夫人「あの光は本当に神々しくて私も目が開けられない程でしたわぁ・・・、ふぅ」

 深い緑の髪にタレ目の青い瞳をしたおっとりとした雰囲気のジャンティナ夫人が夫と同じ様な感想を言いながらため息をついた。

プルスア夫人「それにしても、子供達が言っていた以上の美しさでしたわね、 アメトリン様は」

 茶髪に薄い黄色の瞳を宙に向けて、プルスア夫人は初めて見たアメトリン様を思い出しているようだ。

クラジュール「えぇ、確かに家のイネオスが確信が持てないほど雰囲気が昨日と違うようでしたね・・・」

 クラジュールが息子の表情を思い出しつつ、考えている。

ジャンティナ夫人「そう言えば、家のへティも似た様な事を言ってましたわ、“昨日とはまるで美しさと雰囲気が違う“、と」

プルスア夫人「へティちゃんもですか?、家もベイサンが“昨日はまだ人だって思えた“って、ちょっと意味が分からない事を言ってましたわ」

 子供達 全員が昨日会ったはずのアメトリン様との雰囲気の差に戸惑ってるのがわかる内容だった。

「それだけパーティーの時のアメトリン様が親しみが持てたと言う事なんだろう・・・、それより明日のお茶会の事なんだが明日は子供達にくれぐれも聖獣様と公爵家の皆様に失礼が無いようにと言い聞かせなければいけないな」

オスト「あぁ、それだけは絶対注意しておかないと・・・、神の天罰が落ちる様な事になったら・・・考えただけで、ブルッ・・・」

 オストは顔を青くして震えた、それを見たツァルは、

ツァル「まぁ、普通に考えたらそう思うでしょうが、子供達から聞くアメトリン様はそんなに心が狭い御人ではなさそうですけどね」

「そうだな、私は、アメトリン様は気心の知れた 友人が欲しいのだと思うよ、私達のようなね・・・」

オスト「そうだろうか?・・・」

私達の意見にご婦人方は同意見のようだ、頷きつつ明日の注意事項を言い合っていた。

クラジュール「明日はお披露目会も兼ねている様ですから 他の上位貴族の方達にも気をつけねばいけませんわね」

プルスア夫人「それも有りましたわね、私は公爵家のご家族全員がご出席なさるのでしたら、前公爵閣下がおいでになるのではなくて?それにご兄弟も」

オスト「あぁ、そうだった前公爵閣下は王族でいらっしゃったな、それも気をつけねばそれこそ首が飛ぶ…」

ツァル「オスト貴方は怯えすぎですよ・・・」

 少し 小心者な所があるオストをツァルが宥める、それを横目に、

ジャンティナ夫人「後は、服装をどうするかですわねぇ、他の上位貴族の方々とドレスの色が被るのは避けたいですわねぇ・・・」

と明日のドレスの心配をおっとりと言い出す。

クラジュール「そうでしたわ!それも早く用意しなければいけませんでしたね!子供達も今回持ってきた服で1番いいのは昨日のパーティーで着せてしまいましたから」

プルスア夫人「家のベイサンもですわ!どうしましょう・・・」

(おやおや、話題が服装の事になってしまったな、仕方ない・・・)

「ご婦人方、昼食を食べた後に 今ある洋服で新しく組み合わせを考えてみたらどうだい?」

 と、提案すると、「そうですわねぇ」「その方が良いですわね!」「じゃあ子供達を衣装部屋に呼んで着せて見ましょう!」
 早速 衣装部屋に移動して行ったご婦人方を見て、

オスト「なぜご婦人方はあんなに服装にこだわるのかねぇ、私には理解ができんよ」

とぼやいた。

ツァル「オスト、その事をご婦人方の前で絶対に言ってはなりませんよ」

 ツァルが真剣に注意をした、何か服装の事で何かあったのだろうか?

オスト「それぐらい分かっている!、しかしラーブ 今のは助かったよ、ありがとな」

「まぁ礼には及ばないよ、長くなるのは分かっているし、それに話して決めるより実際に見て決める方が早いからね」

ツァル「そうですね、その方が断然早いでしょうね、まぁ、子供達に多少犠牲になってもらってますが・・・」

 などと話しながら明日の手順を軽く確認して、自分達も昼食を食べに食堂に行った・・・・

 その後は子供達の(特に息子達の)恨みがましい視線を極力気にしない様にしながら昼食を食べ 男親達は明日の贈り物を何にするか話し合った、
贈り物が決まって夕食時に少しぐったりした様子の子供達に向け明日の注意事項を伝えた。

「明日は公爵家で開かれるお茶会はお前達も知っている公爵家のご三男 アメトリン様のお披露目会も兼ねている、そこでは他の上位貴族の方々も多く招かれているはずだ、くれぐれも失礼のないように気をつけなさい、

 そして聖獣様方には“絶対“に許可も無く触れるな、話題にする時もアメトリン様に必ず確認を取るのだいいな!

最後にアメトリン様に敬意を払いつつ気心の知れた友人になれるように努力しなさい、損得を考えるような関係では無く本当に真の友人になれる様にね」

「「「はい‼︎」」」

 そう締めくくり、子供達が真剣な表情でハッキリ返事をするのを聞いて、食事を始めた。

 夕食後は明日に備えて早く就寝した。




 この時、明日のお茶会に国王陛下が参加するなど誰が予想できただろうか・・・・・














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トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
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