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第1章 幼少期
14話 襲撃と国際的立場 父:アイオラト視点
しおりを挟む父:アイオラト 視点
先月7月末にアトリーを絶対に守ると硬く誓った日の翌日から私達は邪神教徒の排除に力を入れた。
国の調査は順調に行き 例の男爵家はお取り潰しの上、犯罪組織の関係者達と一緒に奴隷堕ちになった。
その他の、調査の結果報告
邪神教に関わった貴族が3家、商会などの他多数、貴族は全て男爵家で没落寸前の家をそそのかしたようだ。
商会は我が家にも出入りしていたマリグノ大商会 初め複数の中小の商会が貴族家の家に入り込んでいた、どうやら貴族家に生まれる魔力の多い子供の情報を流していたみたいだ。
貴族家の次期当主候補以外の子供を攫おうと画策したらしい、その中で飛び抜けた存在のアトリーを最優先で攫おうとしたようだ。
こちらの関係者は全て捕縛済みで詳細を追求、調査して罪が確定次第 順次 法律に従い刑に処される。
その他、町民に数十人 邪神教の者に誘拐されたと思われる行方不明の子供がいるらしい、調べを進めると邪神教徒の集合場所がある事が判明、邪神教徒の集合場所に捕縛部隊を派遣し 蜘網打尽にした、だがすでに何処かに移動された後で 子供達の姿は見当たらなかったそうだ。
その後、尋問などで判明した邪神教の仮拠点で11人の子供達を保護、それでも4人ほどの子供の遺体を発見。
報告を聞いてすでに 最低でも4人の子供達が犠牲になってた事を知った 従兄弟に当たる同年代の 現 国王が心を痛めたみたいだ、犠牲になった子供達の親を調査して遺体の返還をするそうだ、保護された子供の中に親に売られたと言う子がいる様で、犯罪奴隷 以外の人身売買が法律で禁止されている王国内で 子供を売り払った親も 同時に調査したのち逮捕されて法律に則り刑に処される事となる。
この報告書が来たのがカミィや父上達が王都に出発する4日前だった、たった14日間で事件の首謀者達の捕縛がなされたとして 異例の速さの解決だそうだ。
(どうやら元影騎士の総括補佐の2人が監察官として来たのが原因みたいだ、ジョルジュ達が睨みを効かせたのだろう)
カイルが読み上げていた報告書を聞き終わって、一緒に聞いていた 父上、母上、ジョルジュ夫婦、リアに セルドス それに私とシリー、犠牲になった4人の子供達にしばらく黙祷を捧げた。
これで国内の邪神教徒は一掃されて仮ではあったが拠点も潰したので一安心した所だ、なのに今回の事件が明るみに出た事の発端になったアトリーに国王陛下が興味を持ってしまった。
アトリーに会ってみたいと手紙が来ているその事で、今 全員が頭を悩ませている。
「はぁ、どうしたら諦めてくれるか、しかも今アトリーを外に出すとアトリーを見たものが大勢 近寄って来てしまう、それにまた誘拐されそうになったら 屋敷の外では今度こそ誤魔化し切れない」
シリー「それと、アトリーが行った事のない土地で何が起こるか分かりませんものね」
セルドス「そうですな、神の加護の件がありましたね」
母上「あと、アトリーはどうやら魔力にと言うより 魔力に込められた感情に敏感なようですわ、強い悪感情を乗せた魔力を感じたりしたら心に傷ができるのが心配です」
リア「アトリー様はまだ幼くお優しいですから」
カイル「そういえば、旦那様、アトリー様の 魔力の制御の件で有用な情報が入ってました、今 ご報告しても?」
「ん?、あぁ、いいよ何だい?」
カイル「はい、“魔力の制御“、と言うより“封印“に近い、魔道具の製作をしている職人がいるそうです その者にアトリー様専用に魔道具の製作を頼めばアトリー様を見て、無意識に近寄ってくる者がいなくなるのでは?と思いまして 一応その職人に素性を誤魔化して 魔道具の製作を依頼してみました」
「カイル、それ 報告と言うか、事後報告だよね、まぁそれは良いとして、そんな“魔力制御の専門魔道具師“がいたんだな」
(初耳だな)
ジョルジュ「“魔力制御の専門“と言うより、元は犯罪奴隷につける“封魔の枷“を作る “魔力封印の専門家“でしたが その方に魔力暴走を起こしやすい 子供を持つ貴族が“魔力制御の魔道具“の製作を頼んだのが始まりだとか」
「そんな経緯で“魔力制御の魔道具“ができていたとは、だが今まで我が家でその話は聞いてないな?」
(“封魔の枷“の職人は知っていたが…)
サリー「旦那様、旦那様も含め公爵家の皆様は お小さい頃からちゃんと 魔力制御の訓練をなさっておられたのです 魔力暴走を起こすことは ほぼございませんでした、なのでそのような魔道具に縁が無かったのでございます」
「訓練の賜物と言うわけだね、でもアトリーはまだ幼いく訓練が難しいからその魔道具を着けては?と言うんだね?カイル?」
カイル「作用で御座います、旦那様」
「分かったよ、その魔法具、アトリーに着けて見て 効果がありそうなら 訓練が始まる5歳まで着けてもらおう」
カイル「はい、畏まりました、旦那様 魔道具は明後日に届く予定です」
「早いな⁉︎、まぁいい懸念が1つ無くなったが他をどうするかだ、一番いいのは陛下に会いに行かないのが良いんだが」
父上「・・・よし、そうしよう!、断ろう!呼び出しを断ろう‼︎」
今まで黙って考え込んでいた父上がいきなりとんでもない事を言い出した。
「父上⁉︎急にどうしたんですか?」
父上「最近、あやつは調子に乗ってる節がある、今回の事件も事前に情報を得てなければならなかった規模だ それを怠っておいて事件の発覚の起因になった被害者の我が孫を 興味本位で呼び出すなど、相手の心情を気遣おうとしないとは、調子に乗っている証だ 王都に戻り次第 私から直接呼び出しを断っておく、ついでに少し小言と影騎士を鍛え直しておく」
まぁ確かにそうだな、父上はかなりご立腹のようだし、強く生きろ 陛下に影騎士達、この場で冥福を祈っておくよ。
「父上がそうなさるのでしたら私達に異論はないです、ではそちらの方はよろしく頼みます父上」
シリー「有難う御座います、お義父様」
父上「あぁ任せておきなさい」
その流れのまま1つの事件と陛下の呼び出しの件が無くなり2日後届いた魔道具が上手く作動しアトリーの散歩の時間が増えた、アトリーは凄く喜んで兄妹達と楽しく過ごしていたよ、父上達は有言実行でずっと孫達と遊んでいた。
その2日後、カミィと父上達が王都に戻って行った、カミィは別れ際しっかりしたお姉さんになって 兄妹達に良い子にするように言い聞かせていた、この子もちゃんと成長している、嬉しい限りだ。
だが例の辺境伯爵家の子息の話はあまり聞けなかった ただ嫡男だと言う事と名前が“ハウイ•ノブル•ムーグラーフ“確か、我が領地の北の山を挟んで隣にある 大樹が観光名所になってる領地の辺境伯の子息と言う事だな。
ムーグラーフ辺境伯爵当主とは面識はあったがその子息に会ったことは無かった。(今度、ムーグラーフ領に探りを入れよう)
そんな事を考えながら執務室で仕事をしていると、夏の庭園の方から…
ホイッスルの様な笛の音
ピュルルルルゥゥ~!
が聞こえ 後にかなり上の方で炸裂音が
スパッーン
と、したその瞬間 一瞬 窓から強い光が差し込んだ
「「⁉︎」」
(信号弾‼︎、確か今の時間はアトリーの散歩の時間だったはず!)
急いで庭園に面した窓を開け放ち外を“魔力感知“で確認する、信号弾の上がった場所にアトリーとシリーの魔力を感じた、その側に知らない魔力を感じた。
「侵入者か⁉︎」
そのまま窓から“身体強化“を使い飛び出し庭園の芝生に着地しアトリー達の所に走り出した、後ろでカイルが何か言っているが構わずに走る。
庭の生垣を最短でアトリー達のいる場所へ走ってここを曲がればたどり着く!急いでその角を曲がったら視界がひらけた!
視界に入った景色にこの辺りでは見たことのないオオカミの魔物を見つけ驚愕した 何処から侵入したんだ⁉︎
よく見ると庭にあるガゼボに向かって魔物が唸っているのが見えた そのガゼボにアトリーとシリーがいた アトリー達の前にはリアがナイフを構えて魔物を警戒している 状況を見てすぐに 雷魔法のライトニングスピアーを放ち魔物に当てる 魔物が吹き飛んだのを見ながらアトリー達の元に駆け寄る、まだ魔物がいたがすぐ後ろに駆けつけていた 警備の騎士達に魔物を任せ、アトリーやシリーの無事を優先する。
「2人とも!無事か⁉︎」
アトリーを抱いているシリーの肩に手を置き傷の有無を確認した。
「怪我は なさそうだな、よかった無事で…」
私は安堵してシリーとアトリーを包み込むように抱きしめた、私が抱きしめた事によって間に挟まれたアトリーは 恐怖から来る緊張の糸が切れたのか、目に涙が溢れ出してきた。
「うっ、うぅ、うぅぅ、かぁーた、っ、とぅーたぁー!う゛ぇぇぇ~~~ぇ‼︎」
とうとう泣いてしまった。
シリー「アトリー 怖かったわよね、よしよし」
シリーに背中を軽く叩かれてもアトリーはシリーにしがみ付いて泣くのが止まらなかった。
「アトリー 怖いのはもういないよ、大丈夫、大丈夫」
と、アトリーの頭を優しく撫でると。
「う゛ぅぅ~、がぁ~だ、うぅ~、どぉ~だっ、うぅ、ごっかっだ~、う゛ぅぅ~~」
必死に怖かったと私達に伝えてくる たまらず 私はまた2人を抱きしめた、しばらく抱きしめていたら気持ちが落ち着いてきたアトリーは泣いたことで疲れて眠くなって来たようだ。
「うっく、ひっく、ひっく、、ひっく、、、」
目を擦り 涙を拭いていると、しゃっくりが付いて 頭もふらふら揺れていた。
シリー「さぁ、疲れたわね、寝ましょうね~」
また背中をゆっくり優しく叩き寝かせてあげるようだ。
「ひっく、うぅー、ひっく、ひっ、ひっふ、ひっふすー、ひっふすー」
次第に瞼が閉じ眠った。
「可哀想に 泣き疲れて寝てしまったね、シリー、君は大丈夫かい?」
シリー「私は大丈夫ですわ、でも ラトあの魔物 先ほどアトリーを見ながら“見つけた、神の贄“と喋ったのです」
「喋った⁉︎しかも“神の贄“と⁉︎」
反射的に魔物を睨んだ。
(チッよく“見て“おけばよかったな)
魔物は既に 駆けつけた警備の騎士達に倒されて死んでいたが 死体を回収して詳しく調べるように指示を出した。
(しかしどうやってこの屋敷の敷地内に入ってきた?)
考えを巡らそうとしていたら セルドスとリアが側に来て、膝をつき 頭を下げていた。
セルドス「申し訳ございません、旦那様、このたびこの様な事態になってしまい本当に申し訳ございません!」
リア「私も遅れを取って、旦那様のお手を患わせてしまいました、それにアトリー様に怖い思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」
さらに深く頭を下げた、他にも巡回警備の騎士達も揃って頭を下げていた、私はそれを見て 我が家に仕える物達はなんて忠義深いのだろうと嬉しく思った。
「皆、頭を上げてくれ、皆の謝罪は受け取った、今回の事 私にも落ち度がある この屋敷にいながらこの魔物の侵入に私も気が付かなかった…油断していた、本当にすまない」
私は頭をみんなに下げた、そしたらセルドスが慌てて、
セルドス「だ、旦那様、頭をお上げください!自分の警護に隙があったと思っても 旦那様が悪いとは、誰も思っておりません!」
「だがっ」
顔を上げたら、みんなが一様に頷いているのが見えた。
カイル「ほら、旦那様、貴方が引かないとみんなが困ってしまいますよ」
いつの間にか隣に来ていたカイルに言われ渋々頭を上げた。
「ならこれで みんな謝罪のし合うのは終わりにして、今から敷地内の壁などに侵入した形跡がないか確認してくれ、よろしく頼む」
「「「「「「「はっ!了解しました!」」」」」」」
警備の者達が一斉に動き始めた。
「リアとセルドスはこのまま先ほどの事を詳しく話してくれ、良いかな?」
リア&セルドス「「はっ、畏まりました」」
「シリー、君はどうする?」
シリー「私はこのままアトリーに付いているわ、うなされるかも知れないし、起きた時側にいてあげたいから、それにアトリーは何か感じていたみたい、詳細はリアに聞いてください リアお願いね」
リア「お任せください」
「分かった詳しくはリアに聞くとして、シリー、君も一緒にちゃんと休んで無理しないように、ね?」
シリー「ふふっ、ありがとう、無理しないわ じゃあ先に戻るわね」
「あぁ、また後で」
シリーはアトリーを抱いたまま 近くに来ていた使用人達と屋敷に戻っていった。
彼女が見えなくなるまで見送った、彼女が見えなくなたらリア達に詳細を現場で説明してもらう事に。
話によると、いつもの通りガゼボで本を読んでいた時 不意にアトリーが周りを見渡したと思ったら急に近くの生垣を見たらしい、そのすぐ後にその方向から魔物の気配がした事や、魔物が出てきてすぐに信号弾を発射し、魔物を警戒していると魔物が確認するようにわざわざアトリーが見える位置に移動してアトリーを確認する様に見ていた事、その後すぐに先程の言葉を喋り すぐ吠えた、すると急に生垣から他に2匹魔物が現れたと。
その新しく出てきた2匹の魔物がセルドス襲い その脇を最初に出てきた魔物がアトリーに向かってくると言う連携を見せた事と、アトリーに飛びかかろうとして その脇腹をリアにナイフで突かれても逃げ出さずに睨み合いになってた所で私が来た と。
「そうか、ではあの魔物 使役、または召喚されていたとして間違いなさそうだな、しかし あの言葉またあの邪神教の手のものか?、それにあの魔物ここら辺では見たことがない」
セルドス「そうですね、あのマルモーヴェ教で間違い無いでしょうな、あの魔物“ショートホーンウルフ“と言いまして ヴェステ王国とシニストラ共和国の国境付近が主な生息地域になります、特性として気配をほぼ消すことができたはずです」
「・・・・では、魔力探知にも引っかかる事が無かったのは何故だ?魔道具か?もしくは魔法の類か?」
セルドス「すみません、それは私では分かりません」
「いや、すまん、独り言だ」
カイル「では、また懲りずに ここに態々ちょっかいを出しに近隣諸国で活動していた 邪神教徒が国内に入り込んで来たと」
リア「確実に隣のライヒスル帝国から入って来たんでしょう」
「すぐに父上と陛下に知らせてあの件を勧めてもらおう、いいねセルドス?」
セルドス「はい、もう、そうなさって下さい、私にもう故郷の未練などありません、お気遣い有難うございます」
「すまないね、奴らは何もしなさ過ぎた」
その日すぐに父上と陛下に通信魔道具で手紙を出した 父上は今 王都に向けて移動している最中なので王都の屋敷に着いたら手紙を見るだろう、父上が王都に着くまで 後5日それまでに陛下は何処まで対応してくれるか心配だ、じゃないと手紙を見た父上が怒り狂って 王城に乗り込むだろうからな、強く生きろ陛下!
その夜すぐに手紙の返事が来た 陛下はすぐに近隣諸国の大使に連絡を取り 翌日からの話し合いを設けたそうだ。
意外と早い対応だ何か察したのかな?主に悪寒を…
それは良いとして私達が進めていた段取りは単純だ。
今回の子供の誘拐殺害の詳細を全て近隣諸国に報告して各国で邪神教の警戒 捜索をして貰うだけ、そしてその邪神教の本拠地のシニストラ共和国にも正式に抗議文を出し 本拠地の拠点の捜査と壊滅をお願いするのだ。
まぁ断れないだろう、当初あのマルモーヴェ教は国を廃退させたことで邪神教認定されていたが実際は魔力量の多い子供を攫い 生贄として殺害していた狂信的な 邪神信仰者の集まりだったのだから。
その事を公開もせず 尚且つその邪神教の復活にも気づかず 他国でその所業が暴露され 、しかも、狙われた被害者の子供の中に 王族の血筋を弾く公爵家子息がいたとなれば 国際問題になりかねない、そのことで抗議文も届いたとなれば邪神教撲滅に力を入れて当たらなければ近隣諸国から見限られてしまうからだ。
当初、私達もこれほど大事にする気はなかったのだ、前回の我が国での大捕物の前に対外的なこともあるので それとなくシニストラ共和国に事件の概要を知らせておいたのだが、今回の魔物襲撃事件の日まで あちらの国から何の返答も提案も来なかったのである。
先の知らせの時に自国から邪神教の事を公にし周辺諸国に謝罪と注意を促していればこんな大事にならなかったはずだ。
国としての対応を間違ったばかりに他国から厳しい目を向けられる事となるだろう・・・
その後、アトリーはそのままその日は夕食の時間までぐっすり寝ていたが起きた時少し顔色がよくない気がしたので 翌日早朝に医師に見せた 医師の診断によると 体に不調は見られないと、だが 精神的には疲労が溜まっている可能性があるのでしばらくは室内で安静に過ごさせた方がいいと言われた。
アトリーはその日の散歩の中止を聞くと室内で大人しく絵本を読んで過ごした。
しかしその日を境にアトリーが外に出たがらなくなってしまった、いつも室内で絵本を読んで大人しく静かに過ごすようになって庭の散歩に出ても早く部屋に帰ろうと言い出し すぐに部屋にある本を自分で読み始めてしまう。
いつもは庭で絵本を読んで貰うのが好きだったのに、今では室内で本に囲まれながら過ごしている。
シリーと私は今はそっとしておこうと決めた、その内また外で遊びたくなるだろうと、その時は思っていたそれが間違いだとも思わずに……
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