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第1章 幼少期
13話 続 不穏な予感 父:アイオラト視点
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+・・・・・+・・・・・+・・・・・+
7月の23日
ジョルジュとサリーが屋敷の周辺警備に参加し始めて12日目 7月も終わりに近づこうかとしていたそんな時 事態が動いた。
当初は何事もなく平和な日常を過ごしていたのだが、今日は違った 、訓練された者の動きで連携を取りながら警備の隙を狙うように 屋敷のみんなが寝静まった深夜に侵入者が現れた。
この日は天候が荒れ 強い風と雨が降っていた その嵐の音にまぎれ 屋敷の1階応接室の窓を破壊して侵入してきた、すぐに音に気づいた 屋敷内の巡回警備をしていた者達が駆けつけると 、全身真っ黒の洋服を着て口元を隠した格好の5人の男達がいたその周りには窓のガラスが散乱し雨風が吹き込んできている、黒尽くめの男達は見つかるとすぐに四方に分かれて逃げ出した。
それを見た 駆けつけていた警備の責任者が 慌てずにその場にいる警備の者達に聞こえる声量ではっきり指示を出す。
警備隊責任者「逃がすな、捉えろ!」
四方に逃げた侵入者を素早く 2人ずつに分かれて追いかけた 日々の訓練の賜物だ、その後すぐに侵入者を捕らえたが コチラは揺動であった、1階の侵入者とは別に3階にも侵入者がいた、3階に来た侵入者は音をなるべく立てずに下の騒動の雑音にまぎれて目的の部屋へと進んで行く、目的の部屋に着いてその扉に手を掛けようとしたその時・・・
「何してるんだい?」
私は侵入者の後ろから声をかけた。
「そこの部屋には私の愛しい妻と可愛い息子が寝ているんだ遠慮してくれるかい?」
侵入者は距離を取るように飛び上がると同時に こちらを振り返り私を見た瞬間 廊下にある一番近い窓を躊躇なく突き破り逃走した。
ダッ ガシャーンッ
「あーぁ、窓をこんなにして…… じゃあ後は頼んだよ」
後ろにいるジョルジュ夫婦に振り向かずに追跡を頼んだ。
ジョルジュ「了解致しました」
2人は一礼して音も無く壊れた窓から出ていった。
カイル「部屋に防音結界を使用していて正解でしたね、旦那様」
今日の嵐の音が煩くて眠れないので防音結界の魔道具を使用していた。
「本当にね、音でアトリーが起きちゃう所だったよ、でもこの壊れた窓どうして誤魔化そうか」
カイル「そう ですね…嵐で枝が飛んで来たことにしてはいかがです?」
良い案を出してきた。
「それ採用するよ」
即採用だ。
カイル「お役に立てて何よりです」
(こうゆう言い訳を考えるのはいつも早くて助かる)
カイル「何か失礼なこと考えませんでしたか、旦那様?」
「何のことだい?」
(感は鋭すぎて困る)
カイル「そうゆことにしておきましょう」
「後は結果を楽しみに待つだけか」
カイル「そうですね、数日で判明するでしょう」頼もしい限りだ
+・・・・・+・・・・・+・・・・・+
7月の26日
その後、屋敷の修理の手配や、子供達に悟れないようにしたりと忙しくしているとサリーが帰ってきた。
サリー「ただいま戻りました旦那様、遅くなってしまい申し訳ありません」
と深くお辞儀をする。
執務室で報告を聞くために入ってきた直後の第一声がこれだ。
「サリー、そんなに長く待ってないから気にしなくて良いよ」
(私は1週間はかかると思っていたからね、まだ3日しかかかってない)
サリー「いえ、本当は昨日には報告をできるはずでしたので」
「そうか、そんなに早く黒幕の所在が判明したのか、では何か気になることがあったのかな?」
苦笑いになりつつ報告の続きを促す。
サリー「実は・・・・・・・・・と、ゆう事で私だけが先に戻ってきた次第です」
「うーん、そうか」
サリーの報告をまとめると、あの日、雨風の中、相手に気づかれることなく 順調に追跡していたら ある有名な犯罪組織のアジトに着いたと、偶然そのアジトに来ていたのか組織のトップに追跡していた侵入者の男が報告をしているのを聞いていると、どうやら依頼主に今回の襲撃の失敗の知らせと割に合わない仕事のため依頼の取り消しの打診に行く段取りをし出したと。
なのでそのまま依頼主の元まで追跡して着いた先が最近 羽振りがいいと噂のダーティ男爵家だったと。
ジョルジュ達はなぜ“男爵家“如きが“公爵家“の子息を誘拐を依頼するとゆう 喧嘩を売るような真似をしたのか 気になったので少し様子を見ることにしたらしい、すると組織のトップと交渉が決裂したのか 組織のトップが男爵家の屋敷を出た後すぐに 、男爵当主 本人が馬車に乗り 普通の宿屋に行きその中の一室に入って行ったと。
その中には 教会の神官服を黒く染めたようなローブを纏った男がいて 男爵当主は組織のトップに依頼を断られた事を話していたらしい、その会話でこの黒い神官服の男が アトリーを攫うように指示した元凶だと分かり、その男の素性を確認するためにジョルジュは そこに残り男の監視をしているそうだ。
「黒い神官服か、どこかの宗教組織の神官か?だが黒い神官服は どこの宗教組織にもなかったはずだが」
カイル「表立った宗教組織では無いかもしれないですね、それこそ邪神教の神官かもしれません」
「‼︎っ、それが本当なら何が目的か徹底して調べる必要があるな」
(少し嫌な予感がするなぜアトリーを狙うのだろうか)
サリー「はい、なのでジョルジュを残して先に旦那様にご報告とご指示を頂きたく戻ってきました」
「ジョルジュ達もそこに思い当たったのだね、だが何処の邪神教宗派の者か によるな本拠地が交流の無い他国だと手が出しづらい」
邪神教にも宗派のようなものがあり発祥の地が異なるので本拠地が交流の無い他国になる事もある、我が国にも一つあったが父上が影騎士の総括をしていた時に壊滅させたので今は無いはずだ。
確か宗派も残り3つか4つだったはず、現存していれば だが…
サリー「せめて、何処の邪神教宗派かわかる者がいると助かるのですが」
「ん?、1つだけなら確認が取れるかもしれないな」
カイル「あぁ、そうですね、それなら、後もう一つできますよ確認」
「もう一つ・・・・あぁ、そうだな、失念してたな じゃあ カイル2人を呼んで来てくれ」
カイル「畏まりました」
すぐに件の2人を呼びに行った
サリー「あの2人ですか、確かに知っていそうですね」
「まぁ、続きは2人が来てからでいいかい?サリー」
サリー「えぇ、その方が効率がいいようですし、それと先に神官の服の詳細を絵に起こして置きましょう それが一番説明が省けてよろしいかと」
「ありがとうサリー、そうだね、頼めるかい?」
サリーの提案に甘えてさえて貰おう。(サリーは絵も上手いからな)
・・・・・・・・・・数分後
サリーの絵が描き終わる頃にカイルが戻ってきた何故か父上達も連れて…
「父上、母上、どうしたんです?」
父上「いや何、経過が気になってだな、それにセルドスが屋敷内を歩いていたから何かあったのかと思ってな」
母上「私はサリーが帰ってきたと聞いたから 良ければ報告終わりにお茶を一緒にどうかと思ってお誘いに来たのよ」
「はぁ、分かりました、そんなに話が聞きたいのなら 今から2人にも説明するので一緒に聞いてください 二度手間にならなくていいので、…ふぅ」
父上「あぁ、分かった」
母上「ありがとう、ラト」
父上たちがいい笑顔で返事をした、もうしょうがない手間が省けたと思うようにしよう。
そのやり取りを何とも言えない表情で見ていた2人がセルドスとリアだが2人には共通点がある、まぁ、我が家にも言えることだが…
そしてサリーの報告をかいつまんで説明し、サリーの描いた黒い神官服の絵を見せるとセルドスが反応した。
セルドス「この神官服は‼︎マルモーヴェ教の神官服です!」
「マルモーヴェ教?あのシニストラ王国と一緒に滅んだのではなかったか?」
シニストラ王国は 我が国の北に2国挟んだ先にある海沿いに面した国で 確か十数年前に一度崩壊した国だ、その時このマルモーヴェ教が当時の王族に取り入って悪政を行なった事による 不況のせいで国民の不満が爆発し、領民思いの貴族を中心に国民の内乱によって そのマルモーヴェ教祖とシニストラ王家も討たれたはずだ。
今は選挙制度を取り入れて、国名もシニストラ共和国になっている。
セルドス「はい、一緒に壊滅したはずです、私も本拠地の襲撃に参加しましたから」
父上「ほー、それは初耳だ、シニストラ王国の暗部の一族のお前が 直接 襲撃に参加してたとはな」
セルドス「つっ⁉︎何故それを⁉︎」
ガタンッ
父上に掴み掛かりそうになった セルドスに隣にいたリアが隠し持っていた 長さ20センチほどの細長いナイフをセルドスの首筋に当てていた。
セルドス「‼︎・・・リア殿もそのような家系でしたか…」
リア「私は旦那様に隠し事はしていませんでしたから、まぁ雇われる時、隅々まで調べられますから意味ないんでしょうけど」
リアはセルドスが何もしないと分かってナイフをしまった。
セルドス「調べた上で私を雇ったのですか?何故?普通、元とは言え他国の暗部を担っていた者を知ってて影騎士として雇うなどと」
父上「何、元 だろ?、それに1から影騎士の技術を教える必要がないし この仕事の重要性がわかっているのだから 、適材適所だからだ」
セルドス「本当にあなたは・・・、傍若無人だ……はぁ」
「父上が傍若無人なのは今は置いといて、「おい!」セルドスは「こら」マルモーヴェ教の教祖が死んだのは確認したのだね?」
セルドス「はい、間違いありません」
返事を聞き、先ほどから騒いでいる父上を見て。
「父上、五月蝿いですよ、今、重要な話をしているのですから、静かにしてください」
私に注意されて ショックなのか 母上に慰められている。
(いや、あれはショックなふりをしているだけだな、ほっとこう)
「教祖が死んでいるのが確かとして、模倣犯か 復活したか、そうとしても規模は大きくないようだね、我が国に拠点ができたと言う情報は来ていないからね、それに男爵が会いに行ったのも普通の宿屋だった様だし」
セルドス「旦那様、マルモーヴェ教は模倣犯では無く復活したと思われます」
セルドスがさっきまで考え込んでいたと思ったら、急に顔を青くして確信に近い言い方で マルモーヴェ教の復活を示唆してきた。
「どうして、そう思う?」
(凄く嫌な予感がする…)
セルドス「アメトリン様を攫おうとしたからです……あのマルモーヴェ教は表向き国を崩壊させた事で 邪神教と認定されたのですが、事実は奴らの本拠地の神殿に踏み込んだ時、奴らは子供を祭壇に乗せ 見るのもおぞましい祭儀をしていたのです、
居合わせた私はすぐさま 祭儀を止め 子供を救出し 教祖の死亡を確認して 本拠地の神殿を出ました、その後、本拠地の神殿裏で無数の子供の遺体が発見されているのです、
遺体の全てが 見目麗しい魔力の多い子供達でした、それを見て 奴らは、マルモーヴェ教は本当に邪神を崇めた邪神教徒だと判明しましたがその時の国の代表は国を立て直すのを優先してこの事を秘密にしました……」
「では、なんだ、そいつらの目的はアトリーを邪神の贄にする為に誘拐しようとしていると?」
カタカタッカタカタッガガガガガガガガガッガッガッガッ……
私の可愛い息子 アメトリンを邪神の贄になんてさせてたまるか‼︎ 理性が吹き飛びそうだ。
ガガッン、ガガッンガタンッ、カシャンッ
茶器が割れてしまったな…
ガガガッガガッンガタンッ
・・・あぁ、怒りで魔力が制御できそうも無い。
ガガッガガガッドサッ、ドサッ
母上「アイオラト!鎮まりなさい!」
パンッ!
「うっ‼︎」
母上の魔力を込めた1回の拍手で制御が戻ってきた。
「ふぅ…有難うございます、母上 お手をわずらわせてしまいました」
母上に頭を下げて謝罪した。
母上「それは良いのです、息子なのですから、それより他の人の事を考えないといけませんよ、もう、こうゆう所まで似てしまわなくていいのに」
周りを見渡すとセルドスとリアが床に倒れて肩で息をしていた、サリーは何とか立っていたが辛そうだ カイル…は平気そうだな。
「あっ‼︎、2人とも!大丈夫かい⁉︎セルドス!、リア!意識はあるか⁉︎」
カイルと駆け寄ってそれぞれ抱き起こす。
リア「はぁ、はぁ、相変わらず、凄い魔力圧だよ、息ができなくて死ぬかと思った」
口調が崩れてるよ、苦笑いしながら「すまない」と謝ると自分で立って身なりを整え姿勢を正す。
リア「旦那様、今後、気をつけて頂けると約束して頂けるとありがたいのですが」
ピシャッと注意されてしまった。
「本当にすまなかった、次から気をつける」
と言うとリアは頷いてくれた、セルドスはカイルが支えながら立たせていた。
カイル「大丈夫ですか?すみません、家の旦那様が未熟なばかりに」
と、お前は私の母か!だが未熟なのは本当なので文句は言わない。
セルドス「はぁ、はい、もう大丈夫です、しかし旦那様のお怒りも 分かりますから お気になさらずに」
父上「しかし、アリー、ラトはまた魔力量が増えてないか?」
母上「そうですね、そろそろ あなたを抜かしそうですね?」
母上の言葉に今度こそショックを受けたようだ、うん、ほっとこう いつの間にか割れた茶器はサリーが片づけてくれたみたいだ。
「すまないね、・・・話を続けても大丈夫かな?」
みんなが、いや、父上以外が頷くのを見て 今後の解決策を話すことにした。
そして決まった方針が、まず国に今回の誘拐事件の顛末と 国内に邪教徒が入り込んで魔力の高い子供の誘拐をしている可能性を示唆し、公に捜査をさせて 相手が焦って逃げ込んだ所を 影騎士の部隊で一網打尽にしようと言う方針に決まった、その時取りこぼしがないようにジョルジュ達を監察官として派遣することにした。
「こんな感じでいいかな?一応 国内の邪教徒は排除されると思うが」
セルドス「そうですね、また態々この国に再度 神官達を送り込んで来る事はないと思います」
「これでもまた来るようならコチラにも考えがあるよ…」
ニッコリ
みんなが「うわぁー」とか引いてる ひどいな笑っただけなのに。
父上「誰に似たんだ?」
(父上、隣から怖いオーラが漂ってますよ)
父上「セルドス、今回のこと本当に感謝する、其方が何か困ってることがあればいつでも言ってくれ」
父上の言葉にセルドスは泣きそうな顔をしながら礼を述べた。
「父上がいない時は私でもいいなら力になるよ」
セルドス「御二方…その時はお願いします…では仕事に戻らせていただきます、失礼します」
セルドスが退出し父上がこう漏らした。
父上「頼ってくれると良いのだが難しいか」
リア「何かあるのですか?」
(リアに言ってなかったな)
父上「あぁ、あやつの孫のことでな、どうも障害があるようだ」
リア「それは、心配ですね、今後もアトリー様のお散歩の時 それと無く伺ってみます」
父上「そうだな、少し気遣ってやってくれ」
「私からも頼むよ」
リア「畏まりました、では私もシリー様の所へ戻ります、失礼致します」
リアも退出し両親とカイル親子だけになったら 父上が急に変な事を言い出した。
父上「そう言えば最近アトリーが私の顔を見て“じぃじめーよ“と言うんだが何のことだと思う?」
母上「私もさっぱり分からないのよね」
2人同時に首をかしげる。
「それは…私にも分かりませんねぇ?」
私も分からず頭をひねる、カイル達親子も首をかしげる。
その後アトリーの部屋に行くとアトリーに「とーためーよ」と言われた急に言われて何のことか分からず首を捻っていると横にいたシリーに「貴方 何か悪いことでもしたの?」と聞かれ、何もしていないと言うと。
シリー「そうなの?アトリーが“めーよ“って言うときは誰かが悪戯した時なのよ、多分“ダメよ“って言う意味なの」
シリー「それと今日 何かあったの?魔力が漏れてたみたいに感じたけれど」
「あぁ、ちょと不快なことが分かってね」
イラッ
(思い出しただけで苛立ちそうだ)
シリー「ラト、貴方、魔力がまた溢れそうよ?」
少し魔力圧が出たようだ。
「すまない、シリー」「とーた、めーよ!」
今度は強めに言われてしまった、びっくりして止まっていると
アトリー「とーた、こあい、めーよ」
と、また言われて気づいた この子は私の魔力の 怒りの圧に反応していたのだ 、しかも“怖い“と言っている怒りの感情だと理解しているのか、喧嘩していると思われたのかもしれない。
このアトリーの部屋は執務室とはかなり離れているのに魔力に乗った感情を察するとは…、敏感な子だ、父上も同じように言われてたのなら帰ってきた日の話し合った時に出したあの魔力圧のことで言われてたのかもしれないな、後で教えてあげよう。
そう考えていたらアトリーがほっぺを膨らまして。
アトリー「とーた!めーよっ!」
と、怒っていた。
「あぁアトリーごめんよ、もうしないから、許してくれるかい?」
そしたらアトリーは嬉しそうに「あい!」とお返事して満足そうに笑うのだ、優しいこの子に怖い思いをさせたくないな。
私はこの可愛い我が子を誰にも奪わせて成るものかと硬く決心した。
7月の23日
ジョルジュとサリーが屋敷の周辺警備に参加し始めて12日目 7月も終わりに近づこうかとしていたそんな時 事態が動いた。
当初は何事もなく平和な日常を過ごしていたのだが、今日は違った 、訓練された者の動きで連携を取りながら警備の隙を狙うように 屋敷のみんなが寝静まった深夜に侵入者が現れた。
この日は天候が荒れ 強い風と雨が降っていた その嵐の音にまぎれ 屋敷の1階応接室の窓を破壊して侵入してきた、すぐに音に気づいた 屋敷内の巡回警備をしていた者達が駆けつけると 、全身真っ黒の洋服を着て口元を隠した格好の5人の男達がいたその周りには窓のガラスが散乱し雨風が吹き込んできている、黒尽くめの男達は見つかるとすぐに四方に分かれて逃げ出した。
それを見た 駆けつけていた警備の責任者が 慌てずにその場にいる警備の者達に聞こえる声量ではっきり指示を出す。
警備隊責任者「逃がすな、捉えろ!」
四方に逃げた侵入者を素早く 2人ずつに分かれて追いかけた 日々の訓練の賜物だ、その後すぐに侵入者を捕らえたが コチラは揺動であった、1階の侵入者とは別に3階にも侵入者がいた、3階に来た侵入者は音をなるべく立てずに下の騒動の雑音にまぎれて目的の部屋へと進んで行く、目的の部屋に着いてその扉に手を掛けようとしたその時・・・
「何してるんだい?」
私は侵入者の後ろから声をかけた。
「そこの部屋には私の愛しい妻と可愛い息子が寝ているんだ遠慮してくれるかい?」
侵入者は距離を取るように飛び上がると同時に こちらを振り返り私を見た瞬間 廊下にある一番近い窓を躊躇なく突き破り逃走した。
ダッ ガシャーンッ
「あーぁ、窓をこんなにして…… じゃあ後は頼んだよ」
後ろにいるジョルジュ夫婦に振り向かずに追跡を頼んだ。
ジョルジュ「了解致しました」
2人は一礼して音も無く壊れた窓から出ていった。
カイル「部屋に防音結界を使用していて正解でしたね、旦那様」
今日の嵐の音が煩くて眠れないので防音結界の魔道具を使用していた。
「本当にね、音でアトリーが起きちゃう所だったよ、でもこの壊れた窓どうして誤魔化そうか」
カイル「そう ですね…嵐で枝が飛んで来たことにしてはいかがです?」
良い案を出してきた。
「それ採用するよ」
即採用だ。
カイル「お役に立てて何よりです」
(こうゆう言い訳を考えるのはいつも早くて助かる)
カイル「何か失礼なこと考えませんでしたか、旦那様?」
「何のことだい?」
(感は鋭すぎて困る)
カイル「そうゆことにしておきましょう」
「後は結果を楽しみに待つだけか」
カイル「そうですね、数日で判明するでしょう」頼もしい限りだ
+・・・・・+・・・・・+・・・・・+
7月の26日
その後、屋敷の修理の手配や、子供達に悟れないようにしたりと忙しくしているとサリーが帰ってきた。
サリー「ただいま戻りました旦那様、遅くなってしまい申し訳ありません」
と深くお辞儀をする。
執務室で報告を聞くために入ってきた直後の第一声がこれだ。
「サリー、そんなに長く待ってないから気にしなくて良いよ」
(私は1週間はかかると思っていたからね、まだ3日しかかかってない)
サリー「いえ、本当は昨日には報告をできるはずでしたので」
「そうか、そんなに早く黒幕の所在が判明したのか、では何か気になることがあったのかな?」
苦笑いになりつつ報告の続きを促す。
サリー「実は・・・・・・・・・と、ゆう事で私だけが先に戻ってきた次第です」
「うーん、そうか」
サリーの報告をまとめると、あの日、雨風の中、相手に気づかれることなく 順調に追跡していたら ある有名な犯罪組織のアジトに着いたと、偶然そのアジトに来ていたのか組織のトップに追跡していた侵入者の男が報告をしているのを聞いていると、どうやら依頼主に今回の襲撃の失敗の知らせと割に合わない仕事のため依頼の取り消しの打診に行く段取りをし出したと。
なのでそのまま依頼主の元まで追跡して着いた先が最近 羽振りがいいと噂のダーティ男爵家だったと。
ジョルジュ達はなぜ“男爵家“如きが“公爵家“の子息を誘拐を依頼するとゆう 喧嘩を売るような真似をしたのか 気になったので少し様子を見ることにしたらしい、すると組織のトップと交渉が決裂したのか 組織のトップが男爵家の屋敷を出た後すぐに 、男爵当主 本人が馬車に乗り 普通の宿屋に行きその中の一室に入って行ったと。
その中には 教会の神官服を黒く染めたようなローブを纏った男がいて 男爵当主は組織のトップに依頼を断られた事を話していたらしい、その会話でこの黒い神官服の男が アトリーを攫うように指示した元凶だと分かり、その男の素性を確認するためにジョルジュは そこに残り男の監視をしているそうだ。
「黒い神官服か、どこかの宗教組織の神官か?だが黒い神官服は どこの宗教組織にもなかったはずだが」
カイル「表立った宗教組織では無いかもしれないですね、それこそ邪神教の神官かもしれません」
「‼︎っ、それが本当なら何が目的か徹底して調べる必要があるな」
(少し嫌な予感がするなぜアトリーを狙うのだろうか)
サリー「はい、なのでジョルジュを残して先に旦那様にご報告とご指示を頂きたく戻ってきました」
「ジョルジュ達もそこに思い当たったのだね、だが何処の邪神教宗派の者か によるな本拠地が交流の無い他国だと手が出しづらい」
邪神教にも宗派のようなものがあり発祥の地が異なるので本拠地が交流の無い他国になる事もある、我が国にも一つあったが父上が影騎士の総括をしていた時に壊滅させたので今は無いはずだ。
確か宗派も残り3つか4つだったはず、現存していれば だが…
サリー「せめて、何処の邪神教宗派かわかる者がいると助かるのですが」
「ん?、1つだけなら確認が取れるかもしれないな」
カイル「あぁ、そうですね、それなら、後もう一つできますよ確認」
「もう一つ・・・・あぁ、そうだな、失念してたな じゃあ カイル2人を呼んで来てくれ」
カイル「畏まりました」
すぐに件の2人を呼びに行った
サリー「あの2人ですか、確かに知っていそうですね」
「まぁ、続きは2人が来てからでいいかい?サリー」
サリー「えぇ、その方が効率がいいようですし、それと先に神官の服の詳細を絵に起こして置きましょう それが一番説明が省けてよろしいかと」
「ありがとうサリー、そうだね、頼めるかい?」
サリーの提案に甘えてさえて貰おう。(サリーは絵も上手いからな)
・・・・・・・・・・数分後
サリーの絵が描き終わる頃にカイルが戻ってきた何故か父上達も連れて…
「父上、母上、どうしたんです?」
父上「いや何、経過が気になってだな、それにセルドスが屋敷内を歩いていたから何かあったのかと思ってな」
母上「私はサリーが帰ってきたと聞いたから 良ければ報告終わりにお茶を一緒にどうかと思ってお誘いに来たのよ」
「はぁ、分かりました、そんなに話が聞きたいのなら 今から2人にも説明するので一緒に聞いてください 二度手間にならなくていいので、…ふぅ」
父上「あぁ、分かった」
母上「ありがとう、ラト」
父上たちがいい笑顔で返事をした、もうしょうがない手間が省けたと思うようにしよう。
そのやり取りを何とも言えない表情で見ていた2人がセルドスとリアだが2人には共通点がある、まぁ、我が家にも言えることだが…
そしてサリーの報告をかいつまんで説明し、サリーの描いた黒い神官服の絵を見せるとセルドスが反応した。
セルドス「この神官服は‼︎マルモーヴェ教の神官服です!」
「マルモーヴェ教?あのシニストラ王国と一緒に滅んだのではなかったか?」
シニストラ王国は 我が国の北に2国挟んだ先にある海沿いに面した国で 確か十数年前に一度崩壊した国だ、その時このマルモーヴェ教が当時の王族に取り入って悪政を行なった事による 不況のせいで国民の不満が爆発し、領民思いの貴族を中心に国民の内乱によって そのマルモーヴェ教祖とシニストラ王家も討たれたはずだ。
今は選挙制度を取り入れて、国名もシニストラ共和国になっている。
セルドス「はい、一緒に壊滅したはずです、私も本拠地の襲撃に参加しましたから」
父上「ほー、それは初耳だ、シニストラ王国の暗部の一族のお前が 直接 襲撃に参加してたとはな」
セルドス「つっ⁉︎何故それを⁉︎」
ガタンッ
父上に掴み掛かりそうになった セルドスに隣にいたリアが隠し持っていた 長さ20センチほどの細長いナイフをセルドスの首筋に当てていた。
セルドス「‼︎・・・リア殿もそのような家系でしたか…」
リア「私は旦那様に隠し事はしていませんでしたから、まぁ雇われる時、隅々まで調べられますから意味ないんでしょうけど」
リアはセルドスが何もしないと分かってナイフをしまった。
セルドス「調べた上で私を雇ったのですか?何故?普通、元とは言え他国の暗部を担っていた者を知ってて影騎士として雇うなどと」
父上「何、元 だろ?、それに1から影騎士の技術を教える必要がないし この仕事の重要性がわかっているのだから 、適材適所だからだ」
セルドス「本当にあなたは・・・、傍若無人だ……はぁ」
「父上が傍若無人なのは今は置いといて、「おい!」セルドスは「こら」マルモーヴェ教の教祖が死んだのは確認したのだね?」
セルドス「はい、間違いありません」
返事を聞き、先ほどから騒いでいる父上を見て。
「父上、五月蝿いですよ、今、重要な話をしているのですから、静かにしてください」
私に注意されて ショックなのか 母上に慰められている。
(いや、あれはショックなふりをしているだけだな、ほっとこう)
「教祖が死んでいるのが確かとして、模倣犯か 復活したか、そうとしても規模は大きくないようだね、我が国に拠点ができたと言う情報は来ていないからね、それに男爵が会いに行ったのも普通の宿屋だった様だし」
セルドス「旦那様、マルモーヴェ教は模倣犯では無く復活したと思われます」
セルドスがさっきまで考え込んでいたと思ったら、急に顔を青くして確信に近い言い方で マルモーヴェ教の復活を示唆してきた。
「どうして、そう思う?」
(凄く嫌な予感がする…)
セルドス「アメトリン様を攫おうとしたからです……あのマルモーヴェ教は表向き国を崩壊させた事で 邪神教と認定されたのですが、事実は奴らの本拠地の神殿に踏み込んだ時、奴らは子供を祭壇に乗せ 見るのもおぞましい祭儀をしていたのです、
居合わせた私はすぐさま 祭儀を止め 子供を救出し 教祖の死亡を確認して 本拠地の神殿を出ました、その後、本拠地の神殿裏で無数の子供の遺体が発見されているのです、
遺体の全てが 見目麗しい魔力の多い子供達でした、それを見て 奴らは、マルモーヴェ教は本当に邪神を崇めた邪神教徒だと判明しましたがその時の国の代表は国を立て直すのを優先してこの事を秘密にしました……」
「では、なんだ、そいつらの目的はアトリーを邪神の贄にする為に誘拐しようとしていると?」
カタカタッカタカタッガガガガガガガガガッガッガッガッ……
私の可愛い息子 アメトリンを邪神の贄になんてさせてたまるか‼︎ 理性が吹き飛びそうだ。
ガガッン、ガガッンガタンッ、カシャンッ
茶器が割れてしまったな…
ガガガッガガッンガタンッ
・・・あぁ、怒りで魔力が制御できそうも無い。
ガガッガガガッドサッ、ドサッ
母上「アイオラト!鎮まりなさい!」
パンッ!
「うっ‼︎」
母上の魔力を込めた1回の拍手で制御が戻ってきた。
「ふぅ…有難うございます、母上 お手をわずらわせてしまいました」
母上に頭を下げて謝罪した。
母上「それは良いのです、息子なのですから、それより他の人の事を考えないといけませんよ、もう、こうゆう所まで似てしまわなくていいのに」
周りを見渡すとセルドスとリアが床に倒れて肩で息をしていた、サリーは何とか立っていたが辛そうだ カイル…は平気そうだな。
「あっ‼︎、2人とも!大丈夫かい⁉︎セルドス!、リア!意識はあるか⁉︎」
カイルと駆け寄ってそれぞれ抱き起こす。
リア「はぁ、はぁ、相変わらず、凄い魔力圧だよ、息ができなくて死ぬかと思った」
口調が崩れてるよ、苦笑いしながら「すまない」と謝ると自分で立って身なりを整え姿勢を正す。
リア「旦那様、今後、気をつけて頂けると約束して頂けるとありがたいのですが」
ピシャッと注意されてしまった。
「本当にすまなかった、次から気をつける」
と言うとリアは頷いてくれた、セルドスはカイルが支えながら立たせていた。
カイル「大丈夫ですか?すみません、家の旦那様が未熟なばかりに」
と、お前は私の母か!だが未熟なのは本当なので文句は言わない。
セルドス「はぁ、はい、もう大丈夫です、しかし旦那様のお怒りも 分かりますから お気になさらずに」
父上「しかし、アリー、ラトはまた魔力量が増えてないか?」
母上「そうですね、そろそろ あなたを抜かしそうですね?」
母上の言葉に今度こそショックを受けたようだ、うん、ほっとこう いつの間にか割れた茶器はサリーが片づけてくれたみたいだ。
「すまないね、・・・話を続けても大丈夫かな?」
みんなが、いや、父上以外が頷くのを見て 今後の解決策を話すことにした。
そして決まった方針が、まず国に今回の誘拐事件の顛末と 国内に邪教徒が入り込んで魔力の高い子供の誘拐をしている可能性を示唆し、公に捜査をさせて 相手が焦って逃げ込んだ所を 影騎士の部隊で一網打尽にしようと言う方針に決まった、その時取りこぼしがないようにジョルジュ達を監察官として派遣することにした。
「こんな感じでいいかな?一応 国内の邪教徒は排除されると思うが」
セルドス「そうですね、また態々この国に再度 神官達を送り込んで来る事はないと思います」
「これでもまた来るようならコチラにも考えがあるよ…」
ニッコリ
みんなが「うわぁー」とか引いてる ひどいな笑っただけなのに。
父上「誰に似たんだ?」
(父上、隣から怖いオーラが漂ってますよ)
父上「セルドス、今回のこと本当に感謝する、其方が何か困ってることがあればいつでも言ってくれ」
父上の言葉にセルドスは泣きそうな顔をしながら礼を述べた。
「父上がいない時は私でもいいなら力になるよ」
セルドス「御二方…その時はお願いします…では仕事に戻らせていただきます、失礼します」
セルドスが退出し父上がこう漏らした。
父上「頼ってくれると良いのだが難しいか」
リア「何かあるのですか?」
(リアに言ってなかったな)
父上「あぁ、あやつの孫のことでな、どうも障害があるようだ」
リア「それは、心配ですね、今後もアトリー様のお散歩の時 それと無く伺ってみます」
父上「そうだな、少し気遣ってやってくれ」
「私からも頼むよ」
リア「畏まりました、では私もシリー様の所へ戻ります、失礼致します」
リアも退出し両親とカイル親子だけになったら 父上が急に変な事を言い出した。
父上「そう言えば最近アトリーが私の顔を見て“じぃじめーよ“と言うんだが何のことだと思う?」
母上「私もさっぱり分からないのよね」
2人同時に首をかしげる。
「それは…私にも分かりませんねぇ?」
私も分からず頭をひねる、カイル達親子も首をかしげる。
その後アトリーの部屋に行くとアトリーに「とーためーよ」と言われた急に言われて何のことか分からず首を捻っていると横にいたシリーに「貴方 何か悪いことでもしたの?」と聞かれ、何もしていないと言うと。
シリー「そうなの?アトリーが“めーよ“って言うときは誰かが悪戯した時なのよ、多分“ダメよ“って言う意味なの」
シリー「それと今日 何かあったの?魔力が漏れてたみたいに感じたけれど」
「あぁ、ちょと不快なことが分かってね」
イラッ
(思い出しただけで苛立ちそうだ)
シリー「ラト、貴方、魔力がまた溢れそうよ?」
少し魔力圧が出たようだ。
「すまない、シリー」「とーた、めーよ!」
今度は強めに言われてしまった、びっくりして止まっていると
アトリー「とーた、こあい、めーよ」
と、また言われて気づいた この子は私の魔力の 怒りの圧に反応していたのだ 、しかも“怖い“と言っている怒りの感情だと理解しているのか、喧嘩していると思われたのかもしれない。
このアトリーの部屋は執務室とはかなり離れているのに魔力に乗った感情を察するとは…、敏感な子だ、父上も同じように言われてたのなら帰ってきた日の話し合った時に出したあの魔力圧のことで言われてたのかもしれないな、後で教えてあげよう。
そう考えていたらアトリーがほっぺを膨らまして。
アトリー「とーた!めーよっ!」
と、怒っていた。
「あぁアトリーごめんよ、もうしないから、許してくれるかい?」
そしたらアトリーは嬉しそうに「あい!」とお返事して満足そうに笑うのだ、優しいこの子に怖い思いをさせたくないな。
私はこの可愛い我が子を誰にも奪わせて成るものかと硬く決心した。
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