泉界のアリア

佐宗

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第四部 至高の奥園

28幾千の夜より甘く①※

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 王はやがて一歩膝をすすめ、ナシェルの背中にぴたりと寄り添い、万感の想いを込めて抱きしめた。
 ナシェルは温もった肌を全身に感じ、優しく包みこまれて、落着きを取り戻し息を吐く。

 王の片膝が、ナシェルの開いた下肢の間に割り入ってきた。

 王は淫具を嵌めたまま太腿でナシェルの尻を持ちあげると、そのまま太腿の動きを止めたり、揺すったりする。二人の間で鎖がしゃらしゃらと擦れあう。

「ん……あぅ…………っ」

 ナシェルの喘ぎが柔らかく冥王の鼓膜を打つ。



「そなたの躯の奥から光の司を感じる。
 とりわけ大きい司……これは誰のものであろうな。天王か?」

「……て……天王……?……知らない……天王なんて、会っても……いません」

「だが天王はそなたに会ったような口ぶりだったよ」
「………途中から記憶がないんです」

 ナシェルの表情は心許ない。

「……覚えておらぬと?」
「ずっと夢を……見ていました、そうしないと、心が壊れてしまいそうで。夢の中でずっと貴方を探していました。貴方が来てくれて……貴方に抱かれる夢を」

 群青の瞳が悄然と伏せられる。

「ずっと、貴方の夢を見ていた……」
「……そうだったのか」

 いじらしい言葉に冥王は胸打たれ、振り向けさせたナシェルの唇を己のそれでチュ、チュと吸い上げた。

「もう……思い出したくない……お願いです、もう、訊かないで……」

「分かったよ。辛いことを思い出させて済まぬ、」
「ん―――……」

 太腿を揺らしてやると、その上に跨るナシェルが小刻みに上下する。しゃなしゃなと鎖に弱く打たれて、胸のつぼみを赤く腫らし、後孔に含みこんだ淫具の齎す狂惑に打ちのめされて、細々と懇願する。

「ねえ、父上――も、限界です……逝かせて――ねえ……触って」

 幾分おさなげな嘆願に王は優しく目を細め、ようやく前に手を廻してナシェルの濡れそぼつ花芯を包み込む。

「ああ……ふ……ぅ……ッ」

 待ちかねた温もりに、ナシェルの四肢がびくびくと痙攣する。

「いいだろう、そろそろ吐かせてあげる。きっとまだ躯の奥に光の神司が溜まったままだろうから。精と一緒に、悪いものも体の外へ出してしまおう」
「ん、ん、」

 ナシェルは首輪をふって必死に頷く。王はナシェルの背に張り付く髪を横へ流し、首輪の下のうなじに唇を寄せる。
 ぴったりと身を寄せてナシェルの躯を抱え直し、淫具を含ませたまま、中心を扱き始める。

「んぅ……ぁあ――ん……あぁ……!」

 ナシェルは激しく身悶えし、天蓋の柱に額をこすりつけて身も世もなく喚く。王の指の中で蠢く花芯が、この世ならぬ喜悦を得て底無しの澱みに堕ちてゆく。

 王の腿から躯が浮く。下肢に力が入り、咥えた張型が抜けそうになる。
 冥王はそれが圧し出て来ぬようにと、鎖の横から中指を挿し入れる。

 ぐいと下から押しやられた張型が、行き場を探してナシェルの奥処へと再び旋回してゆく。

「やああ――ッ……あぁぁ――ぅう――!! っもう、それだめ、ダメぇ……」

 ナシェルは白い喉を首輪の上に晒し、さらに上へとのけ反る。

「っぁああん、……父上……はぁ……あぁっ……イくぅっ……いくぅ――!!」

 淫具で体内の快楽の壺を、金の輪に熟れた乳首を、そして王の手で中心を極限まで高められる。
 三点を同時に刺激され、壮絶な快楽に失神寸前で泣きわめく。

 ナシェルはやがて仰のいたまま金縛りのように躯を窄め、泣声も、呼吸すらも止め――

 灼けつく快楽の頂に、散華した。





 強張りを失った肉体は仕留められた若鹿のように、ぐったりと弛緩する。

 ナシェルは柱に額を預けたまま、しばしの間息をするのも忘れて、満ち足りた興奮に酔い痴れていた。

 気を鎮めようとしても極みの酔美は波濤の如く高みから、脳をとろかす熱とともに次々にこぼれかかる。

 ……やがて信じ難いくるめきは何処かへ去り、ナシェルの精神は心地よい残滓のなかをうつろう。

 瞼に重力を感ずる。

 王は脱力した彼を後ろから抱えたまま、耳や肩に、しつこく舌を這わせてくる。

 「……はぁっ、はあっ、父上、あ、ちょっと待って、待って……少し、休憩させて……」

 達したばかりのナシェルには、これはたまらない。逃げるように肩をすくめ、背後の王に向け切実な欲求を投げた。

「休憩って……余はまだ充足しておらぬのに?」
「お願いです……水、水飲みたい……」

 ひとり先に埒をあけたあとの照れ臭さからか、少々とり澄ました表情を見せつつも……頬の高い場所にあでやかな朱を刻んで、王に対する傾慕と甘えを暗示する。

「仕方ないな」

 王は試されていることを察して微苦笑しつつ、首輪と乳首のリングをはずし、尻から淫具を取り去ってやり、天蓋の外から水差しを取って王子に与えた。










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