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その4
☆☆☆☆☆☆
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大沼が俺の手を引く。俺は麦茶のコップを半分以上空けてから、大沼に従った。絡みあう指が、緊張のせいか熱く汗ばんでいる。
大沼がベッドルームのドアを開ける。左奥の壁際にブルーのカバーで統一されたベッド。ベッドが目に入った途端、俺は興奮しすぎて頭がカーッとなっちまった。
「大沼、大沼、好きだよ」
ベッドにもつれこみ、大沼を押し倒す。
「清文って呼んで」
カーテンが閉めっぱなしで薄暗い部屋。押し倒した勢いで乱れた前髪。俺を見上げる瞳が、薄闇を吸いこんでしっとり輝く。色っぽいを通り越して、ヤバいくらいエロい微笑み。
「……き、清文、好きっ」
大沼を見れず、思いっきり目をつぶって力んだ言葉になっちまった。いざ名前で呼ぶとなると、むちゃくちゃ照れる。
「……かっ、かわいい……」
つぶやきに目を開けると、大沼は口に手を当てて、露骨にしまったという顔をしていた。
「俺かわいいって言われるの、やなんだよ」
興奮に冷水を浴びせられたような気になり、俺は身体を起こし、唇をとがらせた。
かわいいって言われる時は、だいたいからかうニュアンスで。俺はそれが嫌だった。ちっちゃくて悪かったな、好きでこんな身体に生まれたんじゃねえよ、って。
「知ってるよ。だから俺も遠慮して言わないようにしてたんだ」
大沼も身体を起こし、乱れた前髪を指で梳く。すねたような声と表情。
「でも、もう無理。俺はかわいい樹が好きなんだもん」
ぎゅっと右手を握られる。薄暗いせいもあってか、俺の顔をのぞきこむようにする大沼。
「がっかりした? でも俺は内定式の時、ちっちゃくて元気いっぱいって感じの樹に一目惚れだったんだ」
お互い内定式で一目惚れ? 大沼の方から話しかけてくれた記憶があるけど、そんなバカな。
「こんな俺に一目惚れとか、嘘だろ」
俺がつぶやくと、途端に大沼の表情が険しくなった。あんまり見たことのない表情。
「嘘じゃないよ。かわいいもんはかわいいんだよ。心からそう思ってるのに、言っちゃダメなの? 言わせてよ」
眉間にしわを寄せて、まっすぐに俺を見る。痛いほどの視線。
そんな真剣な顔でかわいいって言わせろとか言われてもな……。俺はむっつりと黙り込んだ。
「俺、樹のそういうとこは好きじゃない。人と比べても仕方ないよ。身体のことは、生まれつきだからどうにもならないじゃん。そんな自分じゃどうにもならないこと気にして、どうすんの? 俺は、ちっちゃい身体で元気にパワフルに頑張ってる樹が好きなんだよ」
大沼には珍しく、まくし立てるように言う。真剣に怒ってるようだ。確かに俺は、よく他人と比べちまうし、うらやんじまう。悪いクセだ。でも大沼は俺の悪いとこもしっかり見てて、それでも好きだって言ってくれるのか?
「樹が味わってきたつらさとは比べものにならないだろうけど、俺もルックスのことはいじられてきたし、好きで老舗の家に生まれたわけじゃない」
大沼がベッドルームのドアを開ける。左奥の壁際にブルーのカバーで統一されたベッド。ベッドが目に入った途端、俺は興奮しすぎて頭がカーッとなっちまった。
「大沼、大沼、好きだよ」
ベッドにもつれこみ、大沼を押し倒す。
「清文って呼んで」
カーテンが閉めっぱなしで薄暗い部屋。押し倒した勢いで乱れた前髪。俺を見上げる瞳が、薄闇を吸いこんでしっとり輝く。色っぽいを通り越して、ヤバいくらいエロい微笑み。
「……き、清文、好きっ」
大沼を見れず、思いっきり目をつぶって力んだ言葉になっちまった。いざ名前で呼ぶとなると、むちゃくちゃ照れる。
「……かっ、かわいい……」
つぶやきに目を開けると、大沼は口に手を当てて、露骨にしまったという顔をしていた。
「俺かわいいって言われるの、やなんだよ」
興奮に冷水を浴びせられたような気になり、俺は身体を起こし、唇をとがらせた。
かわいいって言われる時は、だいたいからかうニュアンスで。俺はそれが嫌だった。ちっちゃくて悪かったな、好きでこんな身体に生まれたんじゃねえよ、って。
「知ってるよ。だから俺も遠慮して言わないようにしてたんだ」
大沼も身体を起こし、乱れた前髪を指で梳く。すねたような声と表情。
「でも、もう無理。俺はかわいい樹が好きなんだもん」
ぎゅっと右手を握られる。薄暗いせいもあってか、俺の顔をのぞきこむようにする大沼。
「がっかりした? でも俺は内定式の時、ちっちゃくて元気いっぱいって感じの樹に一目惚れだったんだ」
お互い内定式で一目惚れ? 大沼の方から話しかけてくれた記憶があるけど、そんなバカな。
「こんな俺に一目惚れとか、嘘だろ」
俺がつぶやくと、途端に大沼の表情が険しくなった。あんまり見たことのない表情。
「嘘じゃないよ。かわいいもんはかわいいんだよ。心からそう思ってるのに、言っちゃダメなの? 言わせてよ」
眉間にしわを寄せて、まっすぐに俺を見る。痛いほどの視線。
そんな真剣な顔でかわいいって言わせろとか言われてもな……。俺はむっつりと黙り込んだ。
「俺、樹のそういうとこは好きじゃない。人と比べても仕方ないよ。身体のことは、生まれつきだからどうにもならないじゃん。そんな自分じゃどうにもならないこと気にして、どうすんの? 俺は、ちっちゃい身体で元気にパワフルに頑張ってる樹が好きなんだよ」
大沼には珍しく、まくし立てるように言う。真剣に怒ってるようだ。確かに俺は、よく他人と比べちまうし、うらやんじまう。悪いクセだ。でも大沼は俺の悪いとこもしっかり見てて、それでも好きだって言ってくれるのか?
「樹が味わってきたつらさとは比べものにならないだろうけど、俺もルックスのことはいじられてきたし、好きで老舗の家に生まれたわけじゃない」
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