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第二十三話 希望と絶望の復活
対人のコツ
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「でも人殺すのはさすがにちょっと……いや、かなりイヤだな……」
ナガレも難色を示す。本当にイビル教団のアジトがあるのなら、おそらく対決は避けられない。
「……じゃあ『オレは殺したくない!』とか言いながら、剣で斬られ弓で射られ無抵抗のまま死んでいくのか?」
「や、そ、そういう訳じゃ」
「……何も考えるな。殺さなければ殺される。おそらくお前たちなら、ただの人間やその他種族相手なら負けはしない。……人間でなければ話は別だが」
そう言ってジョーは冷たく吐き捨てた。
「……やられる前に、やれ。俺からできるアドバイスはそれだけだ。サニーを必ず生きて連れ戻すぞ。……どんな手を使ってでも、聞き出したいことがたくさんある」
「……そうだな! ボコボコに叩きのめしてやるっ!」
そう、彼らの目的はサニーを助けること。イビル教団もギルド存続もオマケでしかない。仲間のためなら命をかける、それがバッファローの冒険者だ。
「ふん、こんな大事な時期に一人だけ逃げ出そうなんて俺様が許さんぞ!」
「力づくでも連れ戻しちゃいましょう!」
みんなも覚悟を決めて歩き出した。
と言う訳で、薄暗い谷に侵入したが……。
「……血の匂いだ」
「うわ! ひ、人が死んでる⁉︎」
黒いローブを纏った人物が、通路のそこら中に倒れていた。あちこちに飛び散った血痕が、戦いの後を示している。
「まさかこれ全部、サニーっちが……?」
タネツの後ろに隠れたセンチアが、おっかなびっくり呟いた。そのタネツも、タワーシールドを用心深く構えて進んでいる。
「考えたくはねぇが、そのようだな」
「サニーがこんなに強かったなんて~……」
「いやいや! オタクくんもおばさんもなんでこんなに落ち着いてんの!」
「お、おば……」
「誰がオタクくんだ! ……それに死体なんて珍しいもんでもねえだろ。そりゃ見たくは無いが、こんな世界じゃモンスターにやられる人もたくさんいるんだぞ」
タネツの言う通り、死体自体はそこまで珍しい存在ではない。ナガレだって、時々道端で倒れている事切れた死骸を何度だって見てきた。おっかない世界である。
「ええと、手紙によればどこかに隠された入り口があるんだよな」
「……ああ。とっとと見つけ出して血祭りにあげてやろう。何人首を狩ったか、後でお前たちに見せてやる」
「えっ?」
ナガレが振り向く間もなく、ジョーはスタスタ歩いていく。手には抜き身のダガーを握りしめていた。目つきもいつもより鋭く見える……普段がナイフだとしたら、今回は殺気溢れる大剣だ。
ナガレも難色を示す。本当にイビル教団のアジトがあるのなら、おそらく対決は避けられない。
「……じゃあ『オレは殺したくない!』とか言いながら、剣で斬られ弓で射られ無抵抗のまま死んでいくのか?」
「や、そ、そういう訳じゃ」
「……何も考えるな。殺さなければ殺される。おそらくお前たちなら、ただの人間やその他種族相手なら負けはしない。……人間でなければ話は別だが」
そう言ってジョーは冷たく吐き捨てた。
「……やられる前に、やれ。俺からできるアドバイスはそれだけだ。サニーを必ず生きて連れ戻すぞ。……どんな手を使ってでも、聞き出したいことがたくさんある」
「……そうだな! ボコボコに叩きのめしてやるっ!」
そう、彼らの目的はサニーを助けること。イビル教団もギルド存続もオマケでしかない。仲間のためなら命をかける、それがバッファローの冒険者だ。
「ふん、こんな大事な時期に一人だけ逃げ出そうなんて俺様が許さんぞ!」
「力づくでも連れ戻しちゃいましょう!」
みんなも覚悟を決めて歩き出した。
と言う訳で、薄暗い谷に侵入したが……。
「……血の匂いだ」
「うわ! ひ、人が死んでる⁉︎」
黒いローブを纏った人物が、通路のそこら中に倒れていた。あちこちに飛び散った血痕が、戦いの後を示している。
「まさかこれ全部、サニーっちが……?」
タネツの後ろに隠れたセンチアが、おっかなびっくり呟いた。そのタネツも、タワーシールドを用心深く構えて進んでいる。
「考えたくはねぇが、そのようだな」
「サニーがこんなに強かったなんて~……」
「いやいや! オタクくんもおばさんもなんでこんなに落ち着いてんの!」
「お、おば……」
「誰がオタクくんだ! ……それに死体なんて珍しいもんでもねえだろ。そりゃ見たくは無いが、こんな世界じゃモンスターにやられる人もたくさんいるんだぞ」
タネツの言う通り、死体自体はそこまで珍しい存在ではない。ナガレだって、時々道端で倒れている事切れた死骸を何度だって見てきた。おっかない世界である。
「ええと、手紙によればどこかに隠された入り口があるんだよな」
「……ああ。とっとと見つけ出して血祭りにあげてやろう。何人首を狩ったか、後でお前たちに見せてやる」
「えっ?」
ナガレが振り向く間もなく、ジョーはスタスタ歩いていく。手には抜き身のダガーを握りしめていた。目つきもいつもより鋭く見える……普段がナイフだとしたら、今回は殺気溢れる大剣だ。
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