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第二十一話 髑髏の龍と禁忌の龍

戦いを終えて

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~☆~☆~☆~☆~☆~


 その後は喜びすぎて発狂した仲間達にもみくちゃにされながら、街へ戻っていった。
「ナガレくぅんー! 良かったぜぇ~! マジでマジでカッコよかったぜーっ!」
「サイコーにイケてたよオタク君!」
「誰がオタク君だ!」
「ナガレさん」
「フローレンス? どうしたの?」
「結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」
「今それ言う⁉︎ ちょっと落ち着けみんな!」
「バカタレ筋肉僧侶! オマエみたいなどこの馬の骨が分からん女にナガレはやらんぞ!」
「ケンガはオレの何なんだよ!」

 そんな会話をしながら、ようやくゲートを潜って街へ帰ってくる。

「あー! 帰ってきた!」
「英雄の帰還だ!」
「まるで御伽噺だな……」
「キャーキャー!」
 そこでは一緒に防衛していた冒険者たちが勢揃い。みんな歓声を上げてナガレへ賞賛を送っている。中には統一された鎧を着た警備兵の姿もあった。
「おお、ナガレ君! でかしたぞ、君があの謎めいた龍を倒し、街を救ったんだ!」
 クリフも笑顔で駆け寄ってきて、ナガレの肩を片手で抱いた。
「そ、そんな。照れくさいですよ」
「ナガレ。こう言う時は胸を張れ。お前はそれだけのことをしたんだ」
 ケンガのアドバイスも気にならないくらい顔が熱い。だが、同時に気分の高調も感じていた。
 避難していた街の人々も、歓声を聞いて少しずつ通路へ出てくる。そこから二つの影がナガレへ走り寄ってきた。
「ナガレ君ーーっ!」
「ナガレ! まったく無茶しやがってコノヤロウ!」
 それはレンとアルクルだ! 
「ははは、まぁ無事に来たんだしいいじゃないか……うぐ⁉︎」
 ドスッ!
「ナガレぇーー!」
 そう言って片手を上げたナガレだが……レンは脇目も降らず風のように走り、そのまま彼の胸へ飛び込んできた。
「ばかばかばか! なんであんなことしたの⁉︎」
「う、うぉえ……」
 レンの意図せぬ頭突きが鎧越しでも鳩尾にクリーンヒットしてえずくナガレ。だがレンは腰をがっちりホールドして離さない。
「死んじゃうかと思った! 本当に、本当にもう会えないかと思った! ナガレのバカ! 絶対絶対絶対許さない!」
 そう叫びながら、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を胸に押し付ける。彼女の首元には、緑色のマフラーがはためいていた。
「うおおー! ナガレぇ~! よくやった、よくやったよお前マジで!」
 アルクルも半泣きだったが、こちらは良識を持ってゆっくり横からナガレを抱きしめた。
「あの妙ちきりんなドラゴンに乗っていくお前を見たんだ。そんときゃもう終わったかと思ったぜ! ああもう、よくぞ帰ってきた!」
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