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第二十一話 髑髏の龍と禁忌の龍

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「品質的には問題ないヨー。でも、スナァーバのお金持ちはみんな目利きネー。これ、実はホントの製品よりちょっと色が薄いのヨ。だからお金持ち買ってくれない。機織り職人も色染め職人も、スナァーバじゃ大変ネー」
「あぁ、なるほど。それを庶民向けにお安く売っているのか」
 粗悪品にはちっとも見えないが、それでも目利きの金持ちには違いが分かるらしい。……だが、これならナガレたち庶民も買えそうだ。
「せっかくだし、一つ貰おうかな。お姉さん、緑のスカーフあります?」
「オー! シャチョさん、お目が高いネ! 緑のスカーフ、もちろんあるヨ」
 そう言って店主のお姉さんは、壁にかけてあるスカーフの中から濃い緑色のものを渡してくれた。ナガレのマフラーと見事に同色だ。
「触って見てネ。サラサラで気分良いシ、強い日差しでも色褪せたりしないヨ。それに大砂漠のお蚕サマの命を頂いて作ったスカーフは、魔法攻撃もちょっとだけ跳ね返せるヨ」
「え? お蚕サマ?」
 ナガレはキョトンとして静止する。それに答えたのはレンだった。
「ナガレ君。デクネク地方のシルクというのは『ダイサバクカイコ』という虫の繭から作られるんじゃ。チョウチョの仲間で一匹一匹は指先くらいの大きさしかなく弱い虫でのう。じゃが天敵が迫ると百匹くらいの成虫が集まって壁を作る。それは魔術師の魔法すら弾いてしまう強靭なものじゃ」
「へぇ~……」
「なお、幼虫がサナギになる時に繭を出すのじゃが、剥がされたカイコは当然死んでしまう。デクネク地方では昔からカイコは、恵みをくれる神様と同等なほど神聖な存在として崇められて、人々に感謝されておる」
 そんな豆知識を教えてもらったところで、ナガレは顔を上げた。
「よし! 店主さん、これちょうだい!」
「毎度あリー! それは二十五ダラーだけど……オネーサンカワイイから二十ダラーにまけてあげるヨ」
「だから男だっつーの! はい二十ダラー」
 文句は言いつつ、割引はちゃっかり頂くナガレであった。

 折り畳んだスカーフが入った紙袋を手に下げて、その後も色々なお土産を見て回るナガレとレン。
「お! このコートとか良くないかナガレ君!」
「良いじゃないですか! ……でもこれ、コートにしてはちょっと小さくない?」
「あー、お嬢ちゃん。それはコートじゃなくて、大人の人が着るベストでね……。お嬢ちゃんみたいなお子様のレディにはこっちを……」
「バカモン! 子供扱いするなっ! 私はすでに百歳超えとるわ! この耳が見えんのか!」
 困り顔の店主のお兄さんに、フリフリのゴスロリドレスを勧められてプンスカ怒るレン。周囲の視線を集めながら、ナガレが慌てて引っ張っていく。
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