崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第十八話 悪夢の遠吠え

撤収準備

「え、ええ……夢で良かったです」
　愛想笑いを返すサニー。今のは本当に夢だったのか、それとも……。

「しかしカタブツのオメーがうなされるなんてホントに大丈夫か？　どんな夢だったんだ」
「えっと、その、ちょっと異形の怪物に追い掛け回される夢で……」
「あー、そういう感じか！　俺もよく見るぜ。包丁持ったバケモノとかドロドロしたスープみたいなバケモノとか」
（悪夢をよく見るんですか!?）
　口から出まかせを言ったサニーだが、タネツはあっさり信じてくれた。
「結局最後は殴り合いになるんだよなあ。何というか『あ、これ夢だな』って途中から気付いちまうんだよ」
（夢の中とはいえバケモノと殴り合うんですか!?）
「ま、最後にゃ絶対勝つんだけどな。時々ヒズマとかナガレ君が助けに来たりして」
（しかも勝ったんですかぁっ!?）
　壮絶な夢をよく見るらしい。
「タネツ～、入るわよ～。……あ、サニー起きた～？　それじゃあ、荷物纏めといてちょうだいね～」
　テントの入り口を開けてヒズマが入って来た。鎧姿ではないカジュアルな格好だ。
「ナガレ君とフローレンスちゃんが帰ってきたら、もうテントたたんじゃうから～。バッファローに帰るわよ～！」
「ヒズマさん。おはようございます。ナガレさんたちはいずこへ？」
「古風な喋り方ね～。ナガレ君はあのお屋敷に行ってるわ～。スラガンピジョンの一件で報酬金上乗せしてもらえるかもって喜んでたわよ～」
「は、はあ……」

～☆～☆～☆～☆～☆～

　村中では、少しずつ祭りの準備が進んでいる。
　石つくりの大きな冷蔵保存用倉庫には、切り分けられたスラガンピジョンの肉が並ベられていた。
　
　そんな中、ハーバードのお屋敷にて……。
「だぁかぁらぁ！　報酬の上乗せなど一ゼントもない！　ちゃんと報酬も支払うのだし文句ないだろう」
「えぇ～！」
　フローレンスとカナが同時に大声を出した。不満タラタラである。
　ここはハーバードの自室。バッファロー組、イーターズ、そしてドルーシバの面々は報酬を受け取りに来たのだが、フローレンスが増額について聞き出したらすぐこんな反応をされた。
「でもスラガンピジョンは二方向から来たんですよ！　ナガレさんがたまたま外してなかったらどうなっていたか……」
「結局数も多かったし、大変だったんですよ！　労力と報酬が釣り合ってませんっ」
　ガタイのいいフローレンスにガン詰めされても、ハーバードは腕を組んで気丈に睨み返す。
「フン、それは結局君らの落ち度じゃないか。君たちがもう少しちゃんとしていれば、こうはならなかった」