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第十五話 リトル・ドラゴンスレイヤー
どこかで見た影
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「さ、さんぜんダラー……!?」
「マジか、給料一か月分くらいじゃん!」
アリッサとルックが唖然とする……が、ナガレは財布からさっと札束を出した。
「はい、三千ダラー。どうぞ」
「……」
無言で受け取ったギン爺は札を数える。
「ひーふーみー…………確かに三千ダラー。まったく、こんなにあっさり払いおって……」
「あはは、参ったなぁ……」
正直、何度も強いモンスターと戦っているおかげで金だけはたくさんある。ガラガラマムシを倒した時の、素材を売った金がまだ残っているくらいだ。多分ここ数年は遊んで暮らせるほどである。
「まあ、それはワシがとやかく言うことではないか。ようし分かった! ただ、作業には時間がかかるだろう。お前さんにはすまんが、他の依頼品もある。また明日来てくれ」
「おっけー、分かったよ。また明日な」
そう言ってナガレたちは、ひとまずギン爺と別れた。
「アリッサたち、まだついてくるの? 別にいいんだけど……お店の方はいいんかい?」
「いいんだよ、久しぶりなんだからもうちょっと付き合えって!」
「右に同じくぅ~♪」
「でも今回の用事は大方終わっちゃったなぁ。スキルウォッチャーは昼頃じゃないと開かないし、武器も防具も無いからクエストも行かないし……」
そんなことを話しながら、あてもなく散歩するナガレたち。
「そういえばジョーは? しばらく会ってないけど、アイツ元気か?」
「それがさー、ナガレ君がいない間、ジョー君ずーっと調べ物をしてたの。ルックが隣町まで仕入れに行くとこに一緒についていって、本をいっぱい買ってきたんだ」
「俺は頭悪いから分かんねえけど、なんか民族史とか宗教とかそんな感じの奴だったと思うぞ」
「へー、そうなんだ……」
何を調べているのかは、後で会えたら聞くとしよう。
ピュウ~~……。
ざっざっざっ……。
冷たい突風が吹き、ナガレたちの頬をひんやり撫でる。
「うへぇ、もう冬だなぁ。この前まであんなに暑苦しかったのによう」
「全くだよ。タイガスの近くには、ベイス谷っていうでっかい峡谷があるんだ。そこの風が町まで来るからもう寒くって……」
そんなことを話しながら歩く三人。どこへ向かっているのかはあまり考えていない。思えば道行く人の顔も、なんとなく覚えてきたような気がする。
……その分、よそ者が来ればすぐ分かるワケで。
「あれ? アイツ何もんだ」
最初に気づいたのはルック。いきなり立ち止まって前方へ目を凝らした。
見ればそこには鎧姿の女性がいた。こちらへ歩いてくる。
「あれって冒険者さんの鎧だよね。あれがフローレンスさん?」
会話の合間にフローレンスのことを紹介していた。しかしアレは全くの別人だ。
「いや、アイツは金髪糸目白肌で、二メートル級の長身なんだ。なによりアイツはあんなに胸が大きくない」
「そういうこと、絶対に女の子の前で言っちゃダメだよ。……でも、確かにあの人は違うみたい」
アリッサの言う通り、その女性はアホ毛付きの茶髪ショートヘアで、若干日焼けした色白の肌。ほっそりしたスレンダーな体形で、胸は小さいが絶壁ではない。鎖帷子のインナーに、毛皮の腰巻と胸当て腰当てを着ていた。
そして頭には白黒の垂れたモフモフ犬耳、足からのぞくモフモフの尻尾……。
「……あれ、あの人どっかで見たような……」
「マジか、給料一か月分くらいじゃん!」
アリッサとルックが唖然とする……が、ナガレは財布からさっと札束を出した。
「はい、三千ダラー。どうぞ」
「……」
無言で受け取ったギン爺は札を数える。
「ひーふーみー…………確かに三千ダラー。まったく、こんなにあっさり払いおって……」
「あはは、参ったなぁ……」
正直、何度も強いモンスターと戦っているおかげで金だけはたくさんある。ガラガラマムシを倒した時の、素材を売った金がまだ残っているくらいだ。多分ここ数年は遊んで暮らせるほどである。
「まあ、それはワシがとやかく言うことではないか。ようし分かった! ただ、作業には時間がかかるだろう。お前さんにはすまんが、他の依頼品もある。また明日来てくれ」
「おっけー、分かったよ。また明日な」
そう言ってナガレたちは、ひとまずギン爺と別れた。
「アリッサたち、まだついてくるの? 別にいいんだけど……お店の方はいいんかい?」
「いいんだよ、久しぶりなんだからもうちょっと付き合えって!」
「右に同じくぅ~♪」
「でも今回の用事は大方終わっちゃったなぁ。スキルウォッチャーは昼頃じゃないと開かないし、武器も防具も無いからクエストも行かないし……」
そんなことを話しながら、あてもなく散歩するナガレたち。
「そういえばジョーは? しばらく会ってないけど、アイツ元気か?」
「それがさー、ナガレ君がいない間、ジョー君ずーっと調べ物をしてたの。ルックが隣町まで仕入れに行くとこに一緒についていって、本をいっぱい買ってきたんだ」
「俺は頭悪いから分かんねえけど、なんか民族史とか宗教とかそんな感じの奴だったと思うぞ」
「へー、そうなんだ……」
何を調べているのかは、後で会えたら聞くとしよう。
ピュウ~~……。
ざっざっざっ……。
冷たい突風が吹き、ナガレたちの頬をひんやり撫でる。
「うへぇ、もう冬だなぁ。この前まであんなに暑苦しかったのによう」
「全くだよ。タイガスの近くには、ベイス谷っていうでっかい峡谷があるんだ。そこの風が町まで来るからもう寒くって……」
そんなことを話しながら歩く三人。どこへ向かっているのかはあまり考えていない。思えば道行く人の顔も、なんとなく覚えてきたような気がする。
……その分、よそ者が来ればすぐ分かるワケで。
「あれ? アイツ何もんだ」
最初に気づいたのはルック。いきなり立ち止まって前方へ目を凝らした。
見ればそこには鎧姿の女性がいた。こちらへ歩いてくる。
「あれって冒険者さんの鎧だよね。あれがフローレンスさん?」
会話の合間にフローレンスのことを紹介していた。しかしアレは全くの別人だ。
「いや、アイツは金髪糸目白肌で、二メートル級の長身なんだ。なによりアイツはあんなに胸が大きくない」
「そういうこと、絶対に女の子の前で言っちゃダメだよ。……でも、確かにあの人は違うみたい」
アリッサの言う通り、その女性はアホ毛付きの茶髪ショートヘアで、若干日焼けした色白の肌。ほっそりしたスレンダーな体形で、胸は小さいが絶壁ではない。鎖帷子のインナーに、毛皮の腰巻と胸当て腰当てを着ていた。
そして頭には白黒の垂れたモフモフ犬耳、足からのぞくモフモフの尻尾……。
「……あれ、あの人どっかで見たような……」
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