上 下
338 / 785
第十四話 女王への叛逆

ノープロブレム

しおりを挟む
「フローレンスが落ち込んでいる理由はよく分かった。……ま、次から気をつけてね。ハイ許した、この話はもう終了っ!」
 そう言って手をパンパン叩くナガレ。

 ガタンッ!
 石が何かを踏んづけたのか、馬車が少しだけ大きく揺れた。

「……許してくれたのは嬉しいです。でも、ずいぶん軽いんですね。自分が危うく死にかけたっていうのに」
「まぁそうだけど。それでもオレを思って泣いてくれてたんだろ? そんなんだったらオレも怒れないよ」
「ってことは、やっぱり少なからず気にしてるじゃないですか……ごめんなさいホントごめんなさい……」
「はいはい、それ三十回くらい聞いたからもう言わないで大丈夫。それより、フローレンスがそれで成長できたなら言うことナシだ」
「えっ?」
 驚いて眼を見張るフローレンス。ナガレは「へへっ」と笑っただけだ。

「そんな驚くようなことじゃないさ。失敗があるからこそ、オレたちは成長できるんだ。今まで一度も失敗せずに何かを成し遂げたような奴はいない……多分ね」
 セリフの最後でナガレはスッと目を逸らした。……正直、この世界にはそんなご都合主義みたいな天才いくらでもいそうである。
 ……だが、自分はきっと間違っていない。そう思い直した。
「オレだって、何回も失敗して来てる。ガラガラマムシに突っ張って死にかけたし、実力差を考えずマッシバーに突っ込んでギルド壊したし……今思えば、父上に無断で家を飛び出したのは結構マズイなぁ……」
「父上……?」
「あ、いや、何でもない」
 首を傾げるフローレンスに、慌てて取り繕うナガレ。
(お父様のこと『父上』って呼ぶんですね。てっきり『父さん』呼びだと勝手に思ってました)
「まぁそんなことはどうでもいいさ。でも失敗なんていっぱいすれば良いよ。失敗するほど全力で取り組んだのなら、きっとどこかで身を結ぶ。苦労も苦悩も災難も、ぜ~んぶ未来に続いてるんだ。絶対にね」
「…………」
 フローレンスは考える。……ラストハーレムズではロクな目にあっていなかったが、それでも夢を信じて頑張った。辛くても苦しくても痛くても、歯を食いしばって我慢した。
 ……それが未来へとつながり、この男……ナガレ・ウエストに会えたのかもしれない。
 フローレンスはちょっと考えてから頷いた。

「……そうですね。私、決めました」
「ん、何を?」
 
「私……ラストハーレムズを辞めます」


「へぇ、いいね! ………………って、えぇ~~~~~~っ⁉︎ い、いきなり何を⁉︎」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

処理中です...