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第十二話 猛き冠、森林の蹄

やり方の違い

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「そんなこと……ないですよ。私なんて」
「何言ってんの! フローレンスはすごいよ! これだってあのリーダーに無理難題言われたんでしょ? 今までだって、何度こんなことあったかも分からないのに、それでも続けるなんてすごいよ!」
「そ、そんなこと……」
「あるッ! あるあるある!」
 身バレのことも気にせず、ナガレはぐいっとフローレンスに顔を近づける。
「ちょっ、近いです!」
「そんなん関係ない! フローレンスならきっと、どんなところだって輝けるよ。本当にフローレンスがそんな厚かましくて嫌なヤツだったら、討伐組のみんなもとっくに見捨ててるはずだ」
「そりゃそうですけど……」
「フローレンスが頑張り屋ってことを……いや、その頑張りの難しさを、苦しさを知ってるからこそ、ナガレって人も助けてくれてるんだよ。それに仲間を助けるのは当たり前だし!」
「仲間……ですか。私、ナガレさんと知り合ったの数ヶ月前ですよ?」
「……で、だから? 仲間になるのに年月なんて関係ないよ。ワタシ、出会って一ヶ月しか立ってない旅人のこと仲間って呼んでたよ」
 これはジョーのことである。……正直ここでバレてもおかしくないが……そういえば、何気にフローレンスは一度もジョーと会っていなかった
「ええと、つまりさ……フローレンスがそれでもラストハーレムズで頑張るって言うなら、ワタシは止めない。先輩たちの圧力に挫けずトップを勝ち取るってのも素晴らしいことだと思う」
 急にナガレはフローレンスの手を取り、ぎゅっと握りしめた。
「だけど、ラストハーレムズっていう鳥カゴから飛び出してみてもいいんじゃないかな。この世界は広いんだ。いろんな場所、いろんな地方で大切な『仲間』を見つけても良いんじゃない?」
「仲間、ですか……」
 フローレンスはナガレとのクエストの日々を思い出す。あの人がずっと助けてくれたのも……フローレンスの事を『仲間』だと思ってくれたから。討伐組のみんなも、彼女のことを仲間だと思ってくれていたのだろうか。
 それは分からない。もしかしたらこちらの思いが一方通行だったのかもしれない。
 だが……『迷惑かけた』だとか『恨まれてる』とか、そんな思いが湧かなくなるくらい信じ合える存在が『仲間』なのだろう。
「……そう、ですね」
「フローレンス! 良かった、やっと笑ってくれた!」
 ナガレは手を繋いだままぴょんぴょん飛び跳ねる。まるで子供のような笑顔を見せてくれた。
「あの、ちょっと強く握りすぎです……そろそろツライです……」
「え! あ! ごめん、感極まっちゃって。それじゃ、帰ろっか!」
 意気揚々と歩き出すナガレ。その背中を見て、フローレンスはつぶやいた。
「……ふふっ、あんなに感情豊かなところも、やっぱり似てます。兄弟とかイトコとか、本当に違うんですかね?」
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