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第十三話 スライムパニック

最近のイヤな流れ

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「そうそう、クイーンスライムのジェルは、持ち主を離れるとカチコチに固まってまうんやって。だから金ピカの石ころってことでチョー高値で売れるらしいんや」
「そうなんですね。クイーンスライムを倒したら、一千万ダラーくらい稼げるんでしょうか」
「え、マジ?」
 確かにクイーンスライムが大きいのなら、それから手に入る黄金はすごいものになりそうだ。勝てるとは思っていないが、もし倒せたら大金持ちだ……。
「ま、そないなカネに目が眩む程度の冒険者が挑めば、ドロドロに溶かされて黄金の一部になってまうんやろうなぁ」
(…………やっぱヘンなこと考えんのはやめとこう)
 黄金に目が眩んだ愚か者は、その黄金の一部となってしまう。まるでおとぎ話のようなおっかなさだ。
 ……と、それを黙って聞いていたベアンが「あのよ……」と口を開く。
「あーしもウワサで終わって欲しいと思ってるけどさぁ。どーにもそのフシが濃厚みたいなんだよな。ギルドの上方役員サマもだいぶピリピリしてる。多分ギルドマスターのクリフ様が頑張ってるから、自分らもだいぶ無理してるんだろな」
「そっか……クリフ様が……」
 かつて『破壊の剛腕』と呼ばれたオーク族の、タフでパワフルでストロングなヒーロー。それが今や子持ちのギルドマスターとはなかなか夢のある人生(いや、オーク生か?)だ。その活躍はナガレもよーく知っているほどで、今でもクリフに憧れてタイガスギルドに所属する冒険者も多いらしい。
「ああ。他パーティの冒険者も、みんな怖がってる。黒ローブの集団も相変わらず見かけるしなぁ……」
「ううむ……分かります。何とかして欲しいですよねぇ、本当に心からそう思います」
「……レガーナちゃん、すごい感情篭ってないッスか? そんな深刻に考えてるんッスね」
 その異変を、せめて原因だけでも究明しなければバッファローギルドは一巻の終わりである。ぜひとも何とかしていただきたい。
「だよなぁレガーナちゃん……。あーしの友達結構いるんだけどさ、リスクを冒してでも他地方に移動しよって奴も多いんだ」
「そんな……心中お察しします。辛いですよね……」
「ありがと。でもなぁ、最近スラガン地方がおかしいぞ。あの黒ローブどもが出て来てから見たことないモンスターが出て来たり、色んなところで被害が出てる」
 ベアンは「ったく……」と頭をガシガシ掻いた。
「ほらなんだっけ。あそこ。そう、キンテツ村ってとこがマガツゴーストに襲われたんだろ? 危険度S級だよ、それ。加えてバッファローって町にゃ、ガラガラマムシとかサラマンダーとか出たらしいし……どうなってんだ」
「…………」
 バッファローという単語が出て来て、ナガレはスッと目を逸らす。
「ま、レガーナちゃんたちもクエスト行った時、近くに黄金が落ちてたらすぐ逃げろよ。あーし、なんだかイヤな予感がするんだ……」
「そうですね……」
「でも大丈夫だぜレガーナちゃん。あーしが絶対守るからな。クヒヒッ……」
「……そりゃどーも、先輩♡」
 適当に愛嬌振り撒いて、ナガレはしれっと部屋を出て行った。
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