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第十一話 さらば、アタカンの子息
血まみれのフローレンス?
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それはさておき、夕暮れの中ナガレたちはタイガスへ帰って来た。フローレンスとクエスト完了の報告をするためだ。
わいわいがやがや……。
やっぱりタイガスの街は人通りも多く、いつもいつでも騒がしい。さすがは大都会、静かになる暇もないようだ。
「そういやサニーはタイガスに来たことあるの?」
「いえ、実は初めてです。それにしても大きな街ですね……」
並んで歩くナガレとサニー。……そこから数メートル前にフローレンスがいる。
「……あの、さっきから気になってるんですけど、どうしてそんなに離れて歩くんですか?」
「ばかやろ! そんな返り血まみれのヤツの近くなんか歩けるかぁっ!」
……ナガレの言う通り、フローレンスはデスパイダーの『緑色の』異質な返り血を浴びて白装束が真っ赤になっていた。巨体のフローレンスの威圧感もあって、道ゆく通行人たちは姿を見るなり次々と道を譲っていく。
「え? そりゃモンスターを倒したんだし、返り血くらい浴びるでしょうに」
ケロッと返すフローレンスに、ナガレは内心ドン引きだった。
(こんなこと言っちゃヒドイけど、こりゃラストハーレムズ向いてねえわ……)
(緑の返り血浴びながらキラキラオーラ振り撒くアイドルなんて都市伝説のソレですよ)
そんな事を小声でコソコソ話す二人だが、それでも本人には伝えなかった。無茶を承知で頑張ることの凄さは、ナガレ自身もよく知っている。
それを伝えることは、ナガレに「弱いお前が成り上がりなんか出来ないから諦めろ」とでも言うのと同等なのだ。
「フローレンスさぁ、ちょっと着替えて来たらどうだ? そんな姿で歩いてちゃ、みんなビックリしちゃうと思うぞ」
「え、私を見てみんなビックリするのはいつもの事ですよ」
「……あっそ。じゃあもう何も言わないよ……」
説得を諦め、返り血まみれのフローレンスと歩くナガレとサニー。そこから長ーーーーい橋を渡って、ようやくギルドに到着した。
「……初めて来た時はすごく綺麗だと思ったけど、何度
も歩いてるとツラいなぁ。馬車乗るのもなんだか勿体無いし」
「美しさの影には、かならず何かが隠れています。努力、才能、偶然……今回の場合は利用者の苦悩がね」
「さすがエルフ、詩人だな」
そうして砦みたいにご大層な門を潜ってギルドの建物内に入る。フローレンスは躊躇無く受付係の元へ行った。
「あ、お疲れ様です。本日は何を……」
ドガッ!
「ひ、ひえぇぇぇっ⁉︎」
「クエスト報告をお願いします!」
そう言いながらカウンター席に置いたのはクエスト用紙と……虫特有のグロい汁が滲んだ小袋!
可哀想な受付係の悲鳴を聞いて、ギルド中の視線が集まった。……が、緑の汁がこびりついたフローレンスを見てみんな一斉に目を逸らす。
(そりゃこんなヤツと関わりたくないよなぁ。だから着替えていけばよかったのに……)
ナガレがため息を吐いたその時……。
「フローレンスちゃん! お帰りなさ~いっ!」
「ん、なんだぁ?」
ガラスのように透き通る美しい声が、建物中に響き渡る。声のした方を見ると、そこには一人の女の子がいた。
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