上 下
196 / 699
第十話 闇を抱える爆音波

特別な任務?

しおりを挟む
「ま、まあね~。私も結構スタミナついて来たのかしら~?」
「そうだな! 俺も何かしらの新スキルがついてほしいもんだ」
 何度もスキルを有効活用していると、ナガレの『闘魂』のようにスキルがパワーアップすることもある。二人はその特訓に重点を置いていた。

「くそ……あと、何、回、かなんだ……ぐへ!」
 そのすぐ近くで、ついにナガレがへたり込んでしまった。地面に突っ伏して「はぁはぁはぁ……」と荒い息をしている。
「ぐ……も、もうダメ……立てねえ……。アリッサぁ~、ちょっと手ぇ貸してくれ~……」
「んもう、しょうがないなぁ。だから無理しちゃダメって言ってたのに……」
 そう言ってアリッサはナガレの手を掴み引っ張ろうとするが……。
 グググ……。
「おっ、重ぉっ⁉︎」
 一般田舎娘アリッサの非力な腕力では、砂袋+マルチスタッフ込みで総重量百キロを超えるナガレを持ち上げられなかった。
「ちょちょちょ、ルック! 手伝ってよ!」
「バカだなねーちゃん、こういう時は砂袋を外せば良いんだ」
「あ、その手があったか」
 そんな事を話していた、その時。

 タッタッタッタッタッ……。
「ん? 誰か来るぞ」
 誰かが階段を上がってくる音がする。みんな休憩して静かだったので聞こえたようだ。
「はぁはぁ……ふうっ、やっとついた。俺様のスタミナを持ってしても時間がかかるとは」
「あ、ケンガじゃないか」
 上って来たのはケンガ。相変わらず派手なガラシャツ姿の普段着である。
「なんだケンガ、どうしたんだよ?」
「なんかギルドマスターが招集をかけてるぞ。冒険者たちに集まってほしいらしい。呼んできてくれと言われたから、俺様がわざわざ来てやったんだ」
「マスターが? なんだろう……」
 何か問題があったのだろうか? とにかく用事もないため一同はギルドに向かった。

~☆~☆~☆~☆~☆~

 と言う訳でやってくると、いつも通りレンとアルクルが出迎えてくれた。傍にはサニーの姿もある。
「おお、来てくれたか。いきなり呼び出して済まんのう」
「だが急ぎの用事でな。みんな、こいつを見てくれ」 
 そう言ってアルクルが一枚の紙を渡してくる。みんなで内容をのぞき込むと、そこにはこんなことが書いてあった。

『キンテツ村護衛依頼
 九月二日深夜、スラガン地方南エリアに位置する集落・キンテツ村がマガツゴーストに襲われる事案が発生しました。
 村民は避難し人的被害はありません。
 しかし村は多くの建物が破壊され、さらに襲撃に伴い発生した土砂崩れで、村の水源であるブレーブ川がせき止められてしまい、村の生活不可能な状況にあります。
 現在村民の皆様には、緊急で設立されたベースキャンプにて生活していただいております。 
 復興作業において、モンスターが接近する可能性があります。
 冒険者の皆様に護衛をお願いいたします。
 タイガス冒険者ギルド本部』

「なんだって!? 大事件じゃないか! すぐ助けに行かないと!」
 ナガレは驚いて目を見開いた。村がモンスターに襲われて壊滅したなど、そうそうある事態ではない。現にバッファローの町も半年くらい前にガラガラマムシに襲われる事態があったのだ。
「落ち着けよナガレ君。モンスターに襲われてるから助けに来てほしいって依頼じゃない。そんな事態だったら俺らじゃなくて、もっと強い冒険者パーティが行ってるはずだ」
 アルクルがそう言ってたしなめる。
「じゃあどうして私たちなんかを頼ったのかしら~……?」
「それは……おそらくじゃが……」
 ヒズマが素朴な疑問を口にすると、レンが言いにくそうに答える。
「その……多分『護衛くらいならこいつらでもできるだろ』と考えて回されたのじゃろう」
「……舐められてんな、オレたち」
「まあ弱いのは事実だしな」
「……言うなアルクル。オレたちはガラガラマムシとかサラマンダーをやっつけているんだぞ!」
「そりゃジョーがいたからだろ」
「ぐぬぬ……言い返せない」
 ぐうの音も出ずに悔しそうなナガレは一旦置いといて、レンが口を開いた。
「おそらくタイガスギルドのマスター、クリフが私たちのために回してくれたのじゃ。それでどうする、受けるかの? 一応断ることもできるが……」
 レンが一同を見渡す。

「オレは行きます! 困ってる人はほっとけない! オレはこんな人たちを助けるために冒険者になったんです」
 最初に声を上げたのはナガレだ。続いてタネツも頷いた。
「なら、俺も行くぜ。金も出るんだろう、マスター? それじゃあちょっとターショの世話を頼めるか?」
「もちろんじゃ、一日四百ダラーが出る。その分護衛だけでなく、いろいろ手伝ってもらうことになるじゃろうが……」
「ターショ君の世話は任せときな~。俺、子供の世話とか得意だからさ」
 アルクルがウィンクした。タネツは安心したようにほっと息を吐く。
「あ、なら私も行くわ~。やっぱり強くなるには、いろいろな経験をしないとね~」
「私も行きましょう。皆様のことを知るいい機会になるかもしれませんし、人は助けるものですから」
 ヒズマに続いてサニーも手を挙げた。残るケンガは……やっぱりニヒルに笑っている。
「フッ、ならこの俺様もついて行ってやろう。アタカン家の由緒正しき魔術使い……」
「あー、はいはい」
 そんなわけで、一同の出張が決定した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

精霊のジレンマ

さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。 そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。 自分の存在とは何なんだ? 主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。 小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ド底辺から始める下克上! 〜神に嫌われ無能力となった男。街を追放された末、理を外れた【超越】魔法に覚醒し、一大領主へ成り上がる。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
この世界では、18の歳になると、創造神・ミーネより皆に魔力が授けられる。 捨て子だったハイネは教会に拾われたこともあり、どれだけ辛いことがあっても、ミーネを信奉し日々拝んできたが………   魔力付与式当日。 なぜかハイネにだけ、魔力が与えられることはなかった。日々の努力や信仰は全く報われなかったのだ。 ハイネは、大人たちの都合により、身体に『悪魔』を封印された忌み子でもあった。 そのため、 「能力を与えられなかったのは、呪われているからだ」 と決めつけられ、領主であるマルテ伯爵に街を追放されてしまう。 その夜、山で魔物に襲われ死にかけるハイネ。 そのとき、『悪魔』を封印していた首輪が切れ、身体に眠る力が目覚めた。 実は、封印されていたのは悪魔ではなく、別世界を司る女神だったのだ。 今は、ハイネと完全に同化していると言う。 ハイネはその女神の力を使い、この世には本来存在しない魔法・『超越』魔法で窮地を切り抜ける。 さらに、この『超越』魔法の規格外っぷりは恐ろしく…… 戦闘で並外れた魔法を発動できるのはもちろん、生産面でも、この世の常識を飛び越えたアイテムを量産できるのだ。 この力を使い、まずは小さな村を悪徳代官たちから救うハイネ。 本人は気づくよしもない。 それが、元底辺聖職者の一大両者は成り上がる第一歩だとは。 ◇  一方、そんなハイネを追放した街では……。 領主であるマルテ伯爵が、窮地に追い込まれていた。 彼は、ハイネを『呪われた底辺聖職者』と厄介者扱いしていたが、実はそのハイネの作る護符により街は魔物の侵略を免れていたのだ。 また、マルテ伯爵の娘は、ハイネに密かな思いを寄せており…… 父に愛想を尽かし、家を出奔し、ハイネを探す旅に出てしまう。 そうして、民や娘からの信頼を失い続けた伯爵は、人生崩壊の一途を辿るのであった。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

僕っ娘、転生幼女は今日も元気に生きています!

ももがぶ
ファンタジー
十歳の誕生日を病室で迎えた男の子? が次に目を覚ますとそこは見たこともない世界だった。 「あれ? 僕は確か病室にいたはずなのに?」 気付けば異世界で優しい両親の元で元気いっぱいに掛け回る僕っ娘。 「僕は男の子だから。いつか、生えてくるって信じてるから!」 そんな僕っ娘を生温かく見守るお話です。

おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ
恋愛
子供のころチビでおデブちゃんだったあの子が、王子様みたいなイケメン俳優になって現れました。 ちょっと、聞いてないんですけど。 ※以前、エブリスタで別名義で書いていたお話です(現在非公開)。 ※不定期更新 ※カクヨム・ベリーズカフェでも掲載中

処理中です...