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第九話 月に泣く凶牙
夜川のギャング
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「へッ、早速行くぜ! たぁぁぁぁっ!」
ざぶざぶ水をかき分けてナガレが駆け出した。日頃の特訓で鍛えた足腰は、悪路でもスピードを落とさない!
ダッダッダッ……ダッダッ……ダッ……。
……だが、ケンガとフローレンスが見守る前で、ナガレのスピードが徐々に落ちていく。とんどん深みにハマって、動きが遅くなっているのだ。
「ナガレさん! 来ますよ!」
「ガァァーッ!」
それを逃さずココリョナカイマンが飛び出した! 綺麗な羽をはためかせ急降下、大口を開けてナガレに噛み付く。
「危ねえ!」
「うわーっ⁉︎」
ガキィン!
足場の悪い場所では受け流しが不可能で、咄嗟にマルチスタッフを構えてガードした。しかし牙があちこち掠って鎧に傷をつけてくる。
「馬鹿野郎っ! 水辺はココリョナカイマンのホームグラウンドだ! まずは陸地へ引き摺り出せ!」
「それ早く言ってくれても……どわぁっ!」
「ガァァァッ!」
ガキン! バチンッ!
ココリョナカイマンは水面スレスレを飛び、何度も歯を鳴らしながら接近して来た。完全に敵意剥き出しで、ナガレを食いちぎろうとしている……。尖った牙の殺人ハサミがナガレに迫る!
「ちょちょちょ、ムリムリムリムリ! ちょ、ちょっとタンマ! タンマだってぇ~!」
たまらず背中を向けて逃げ出したナガレ。すぐ後ろで何度もバチン! という、勢いよく口を閉じる音がする。あんなのに手を突っ込んだらそのまま骨まで砕かれてしまう……。
「く、ナガレ!」
慌ててケンガが杖を掲げて援護しようとするが……。
「ナガレさん、伏せて! はぁっ!」
その横を猛烈な勢いで、何かが瞬時に通り過ぎていった。黒い球体のようなモノ……あれば、鎖に繋がれた鉄球だ!
「うぇ⁉︎ ……とぁーっ!」
ザバーン!
フローレンスの声を聞き、ナガレはすぐさま地面に伏せた。冷たい川に飛び込んで、夏なのにとても寒い!
「グォォォォ!」
その無防備な背中へ、ココリョナカイマンが大口を開けてかぶりつく……その瞬間飛んできた鉄球が、ココリョナカイマンの鼻っ柱に激突!
ジャラジャラジャラ……バキィッ!
「グォォォォッ⁉︎」
(ごぼごぼ……ず、ずげぇ!)
ココリョナカイマンのあの巨体が、数メートルも吹っ飛び川のど真ん中に落っこちた。驚いたナガレが体を起こすと、ジャラジャラ音を立てて鉄球が戻っていく。
「大丈夫ですか⁉︎」
その鎖を握っているのは、なんとフローレンスだ! 左腕に鎖を何重か巻いて、右手で鉄球を操っている。
「すご……その武器、モーニングスターだったのか! フローレンスってだいぶパワー系だったんだな……」
モーニングスターとは、鎖で繋がれた鉄球を振り回して攻撃する鈍器だ。扱いが難しいものの、まともに食らえば石の壁も粉砕するパワー型の武器である。
フローレンスは不敵にニッと笑った。
「……褒め言葉として受け取りましょう! 今はあいつを倒すのが先決ですっ」
走って走ってようやく岸まで戻って来れたナガレだが、その直後ザッパーン! と大きな音が飛んでくる。振り向くと大きな水飛沫を上げて、再びココリョナカイマンが飛び上がったところだった。
「グルルル……」
牙が何本かへし折れている。しかし怒ったような様子は感じられないので、一応まだ余裕があるようだ。
「くっ、あんなにクリーンヒットしてたのに……」
「腐っても危険度B級、あれだけじゃ決定打にはなりませんよ。それよりナガレさん、遠距離攻撃の手段とか準備してますか?」
「もちろん!」
ざぶざぶ水をかき分けてナガレが駆け出した。日頃の特訓で鍛えた足腰は、悪路でもスピードを落とさない!
ダッダッダッ……ダッダッ……ダッ……。
……だが、ケンガとフローレンスが見守る前で、ナガレのスピードが徐々に落ちていく。とんどん深みにハマって、動きが遅くなっているのだ。
「ナガレさん! 来ますよ!」
「ガァァーッ!」
それを逃さずココリョナカイマンが飛び出した! 綺麗な羽をはためかせ急降下、大口を開けてナガレに噛み付く。
「危ねえ!」
「うわーっ⁉︎」
ガキィン!
足場の悪い場所では受け流しが不可能で、咄嗟にマルチスタッフを構えてガードした。しかし牙があちこち掠って鎧に傷をつけてくる。
「馬鹿野郎っ! 水辺はココリョナカイマンのホームグラウンドだ! まずは陸地へ引き摺り出せ!」
「それ早く言ってくれても……どわぁっ!」
「ガァァァッ!」
ガキン! バチンッ!
ココリョナカイマンは水面スレスレを飛び、何度も歯を鳴らしながら接近して来た。完全に敵意剥き出しで、ナガレを食いちぎろうとしている……。尖った牙の殺人ハサミがナガレに迫る!
「ちょちょちょ、ムリムリムリムリ! ちょ、ちょっとタンマ! タンマだってぇ~!」
たまらず背中を向けて逃げ出したナガレ。すぐ後ろで何度もバチン! という、勢いよく口を閉じる音がする。あんなのに手を突っ込んだらそのまま骨まで砕かれてしまう……。
「く、ナガレ!」
慌ててケンガが杖を掲げて援護しようとするが……。
「ナガレさん、伏せて! はぁっ!」
その横を猛烈な勢いで、何かが瞬時に通り過ぎていった。黒い球体のようなモノ……あれば、鎖に繋がれた鉄球だ!
「うぇ⁉︎ ……とぁーっ!」
ザバーン!
フローレンスの声を聞き、ナガレはすぐさま地面に伏せた。冷たい川に飛び込んで、夏なのにとても寒い!
「グォォォォ!」
その無防備な背中へ、ココリョナカイマンが大口を開けてかぶりつく……その瞬間飛んできた鉄球が、ココリョナカイマンの鼻っ柱に激突!
ジャラジャラジャラ……バキィッ!
「グォォォォッ⁉︎」
(ごぼごぼ……ず、ずげぇ!)
ココリョナカイマンのあの巨体が、数メートルも吹っ飛び川のど真ん中に落っこちた。驚いたナガレが体を起こすと、ジャラジャラ音を立てて鉄球が戻っていく。
「大丈夫ですか⁉︎」
その鎖を握っているのは、なんとフローレンスだ! 左腕に鎖を何重か巻いて、右手で鉄球を操っている。
「すご……その武器、モーニングスターだったのか! フローレンスってだいぶパワー系だったんだな……」
モーニングスターとは、鎖で繋がれた鉄球を振り回して攻撃する鈍器だ。扱いが難しいものの、まともに食らえば石の壁も粉砕するパワー型の武器である。
フローレンスは不敵にニッと笑った。
「……褒め言葉として受け取りましょう! 今はあいつを倒すのが先決ですっ」
走って走ってようやく岸まで戻って来れたナガレだが、その直後ザッパーン! と大きな音が飛んでくる。振り向くと大きな水飛沫を上げて、再びココリョナカイマンが飛び上がったところだった。
「グルルル……」
牙が何本かへし折れている。しかし怒ったような様子は感じられないので、一応まだ余裕があるようだ。
「くっ、あんなにクリーンヒットしてたのに……」
「腐っても危険度B級、あれだけじゃ決定打にはなりませんよ。それよりナガレさん、遠距離攻撃の手段とか準備してますか?」
「もちろん!」
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