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第九話 月に泣く凶牙
名物姉弟、教会に立つ
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建物を出て上を向いたナガレ。夏真っ盛りの青空を見ながら、ふと考える。
「そうだ、タネツさんとヒズマさんいるかな? あの二人にも協力を頼んでみよっと」
~☆~☆~☆~☆~☆~
そうして町外れのポストに手紙を投函したのち、しばらく探し回ったのだが……なぜかどこにも姿が見当たらない。家に寄っても誰も出ない。
「あれ、おっかしーな……どこにいるんだろう」
考え事をしながら通路を歩いていると、町の教会近くで見慣れた人物を発見した。
「おっ、あれルックじゃん。教会へ入って行くぞ」
そこには黒いTシャツに青のオーバーオールと言ったカワイイ系ファッションのルックがいた。何やらカゴを持って教会に入って行く。
気になってナガレも後に続いた。
大きなアーチ状の入り口をくぐると、分厚い扉が開いている。そこには教会らしく長椅子がいっぱい並んでおり、その前方にはステンドグラスの窓、その下にはでっかいパイプオルガンが置いてあった。人気は少なく、なんだか静かで寂しいイメージを持ってしまう。
奥に進もうとしたところ……いきなり陰から人が飛び出した!
「だれだぁっ!」
「ぎょわあっ!?」
「……ってなんだ、ナガレかよう。つけられてると思ったから、とっ捕まえて身ぐるみ剥いでやろうとおもったのに」
そこから出てきたのはルック。長いフランスパンを剣のように構えている。
「急に大きな声だすなよ! 心臓が止まるかと思ったぞ」
「じゃあすぐに葬式ができるな、ここには牧師もシスターもいる」
「おいっ!」
「教会で大きな声を出すもんじゃないよ、お二人さん」
「あ、ねーちゃん」
騒ぎを聞きつけたのか、アリッサが傍までやって来た。鮮やかな緑色のフリルドレスを着ていて……なぜか黒縁の丸メガネをかけている。
「うわ! どっから出てきたんだよ!」
「そこのベンチで勉強してたの。ルックはどうして?」
「ねーちゃん、昼めし食ってねえだろ。迎えに来たんだよ」
「わー、ありがとう!」
呑気に喜んでいるアリッサだが、ナガレにはどうにも気になることがある。
「アリッサ、どうしてメガネなんかしてるんだ? そんな目が悪いってわけじゃなかったろうに」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました!」
アリッサはそう言って「ふふん!」と胸を張る。
「どうこのメガネ、頭が良く見えるでしょ? 勉強をするにはまず雰囲気づくりから! 雰囲気がモチベーションを高めて、結果学習の進みが良くなるよ!」
「……へー、ソウデスカー。ソウナンデスネー」
ナガレは適当にごまかした。……メガネをかければ頭が良さそうに見えるとか思いつく時点で、だいぶ頭が悪い気がするのだが……。
「ナガレ、何も言うな。俺もそう思う」
何も言っていないのに、ルックまで賛成してくれた。
「ところでナガレ君、今日は休みの日?」
「まぁそんなトコなんだけど……そういえばアリッサ、タネツさんとヒズマさん知らない?」
「あ、それなら俺が知ってるぜー!」
ナガレの問いに反応したのはルックだ。
「なんか今朝歩いてんのを見かけてよぉ、どこ行くのか聞いてみたら、ターショとかいう奴の手続きがどうのこうのって、遠くのエンペリオン地方まで行くんだとよ」
「あー、なるほどねぇ……首都まで行っちゃったなら、しばらく帰って来ないだろうな」
「そうだねー。確か値段が高めの高速馬車でも半日かかっちゃうもんね」
ナガレにはなんとなく理解できる。先日タネツと暮らすことを決めたターショの手続きをしに行ったのだろう。
「……あれ、ヒズマさんはなんでついてったんだ?」
「あ! もしかすると、タネツさんが心配だったのかも。最近あの二人、たくさんデートしてるみたいだよ」
「へぇ~、そうなのか……」
なんにせよ、今日相談することは出来なさそうだ。
「そうだ、タネツさんとヒズマさんいるかな? あの二人にも協力を頼んでみよっと」
~☆~☆~☆~☆~☆~
そうして町外れのポストに手紙を投函したのち、しばらく探し回ったのだが……なぜかどこにも姿が見当たらない。家に寄っても誰も出ない。
「あれ、おっかしーな……どこにいるんだろう」
考え事をしながら通路を歩いていると、町の教会近くで見慣れた人物を発見した。
「おっ、あれルックじゃん。教会へ入って行くぞ」
そこには黒いTシャツに青のオーバーオールと言ったカワイイ系ファッションのルックがいた。何やらカゴを持って教会に入って行く。
気になってナガレも後に続いた。
大きなアーチ状の入り口をくぐると、分厚い扉が開いている。そこには教会らしく長椅子がいっぱい並んでおり、その前方にはステンドグラスの窓、その下にはでっかいパイプオルガンが置いてあった。人気は少なく、なんだか静かで寂しいイメージを持ってしまう。
奥に進もうとしたところ……いきなり陰から人が飛び出した!
「だれだぁっ!」
「ぎょわあっ!?」
「……ってなんだ、ナガレかよう。つけられてると思ったから、とっ捕まえて身ぐるみ剥いでやろうとおもったのに」
そこから出てきたのはルック。長いフランスパンを剣のように構えている。
「急に大きな声だすなよ! 心臓が止まるかと思ったぞ」
「じゃあすぐに葬式ができるな、ここには牧師もシスターもいる」
「おいっ!」
「教会で大きな声を出すもんじゃないよ、お二人さん」
「あ、ねーちゃん」
騒ぎを聞きつけたのか、アリッサが傍までやって来た。鮮やかな緑色のフリルドレスを着ていて……なぜか黒縁の丸メガネをかけている。
「うわ! どっから出てきたんだよ!」
「そこのベンチで勉強してたの。ルックはどうして?」
「ねーちゃん、昼めし食ってねえだろ。迎えに来たんだよ」
「わー、ありがとう!」
呑気に喜んでいるアリッサだが、ナガレにはどうにも気になることがある。
「アリッサ、どうしてメガネなんかしてるんだ? そんな目が悪いってわけじゃなかったろうに」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました!」
アリッサはそう言って「ふふん!」と胸を張る。
「どうこのメガネ、頭が良く見えるでしょ? 勉強をするにはまず雰囲気づくりから! 雰囲気がモチベーションを高めて、結果学習の進みが良くなるよ!」
「……へー、ソウデスカー。ソウナンデスネー」
ナガレは適当にごまかした。……メガネをかければ頭が良さそうに見えるとか思いつく時点で、だいぶ頭が悪い気がするのだが……。
「ナガレ、何も言うな。俺もそう思う」
何も言っていないのに、ルックまで賛成してくれた。
「ところでナガレ君、今日は休みの日?」
「まぁそんなトコなんだけど……そういえばアリッサ、タネツさんとヒズマさん知らない?」
「あ、それなら俺が知ってるぜー!」
ナガレの問いに反応したのはルックだ。
「なんか今朝歩いてんのを見かけてよぉ、どこ行くのか聞いてみたら、ターショとかいう奴の手続きがどうのこうのって、遠くのエンペリオン地方まで行くんだとよ」
「あー、なるほどねぇ……首都まで行っちゃったなら、しばらく帰って来ないだろうな」
「そうだねー。確か値段が高めの高速馬車でも半日かかっちゃうもんね」
ナガレにはなんとなく理解できる。先日タネツと暮らすことを決めたターショの手続きをしに行ったのだろう。
「……あれ、ヒズマさんはなんでついてったんだ?」
「あ! もしかすると、タネツさんが心配だったのかも。最近あの二人、たくさんデートしてるみたいだよ」
「へぇ~、そうなのか……」
なんにせよ、今日相談することは出来なさそうだ。
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