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第七話 剣を手にしたスナイパー
編み出せ必殺技
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「ど、どういう事?」
ヒズマはキョトンとしてナガレを見つめる。
「遠距離強化のスキルは、いろんな物に対応してるはずです! だから弓じゃなくたって、いろんな方法を試してみればいいじゃないですか!」
希望を見出した事で饒舌になるナガレ。
「ブーメランとか投げナイフなんてどうです? いいや、ハンマーをポイポイ投げる、なんていいかも……そうだヒズマさん、マチェーテって知ってます? 手斧をぶん投げて攻撃する、ポーツ地方の狩人が使う伝統的な武器なんですけど……」
「ちょ、ちょっと待って! 話進みすぎ! それに私、ロングソードしか使えないし……」
「じゃあギン爺に頼んで、ロングソードを改造してもらいましょう! ヒズマさんが得意な物、いっぱい見つければそれだけ選択肢が広がりますよ!」
「そんなこと言ったって……そんなの出来ないわよ。基本中の基本な弓すらロクに使えないのに、そんなブーメランだのマチェーテだの……」
消極的なヒズマだが、ナガレは全く気付いていない。
「でも、絶対不可能じゃないですよね。例えばオレが鉄腕の右腕で毎日百回くらいナイフ投げして、それが三ヶ月も続けばかなり精度は上がりますよね」
「さ、三ヶ月って……右腕だけムキムキになっちゃうわ。そりゃそんだけやったら、ナガレ君ならできるかもしれないけど……」
「じゃあヒズマさんにもできますね。オレに出来てヒズマさんにできないことなんて、何一つ無いですよ! いやまあ性別云々は置いといて……他の人ができて自分にできないことなんて、この世には一つもないんです!」
「ナガレ君……」
ヒズマは顔を上げる。ナガレはその目にニッと微笑みかけた。
「オレたちも手伝います。アリッサもルックも協力してくれるし、タネツさんは……今は厳しいかもだけど、絶対に手を貸してくれます。ジョーだって、色々教えてくれますよ!」
「そ、そんな。悪いわ、私なんかのために」
「仲間のピンチに黙っちゃいられませんよ! ヒズマさんだってそうじゃないですか? オレたちとは違うヒズマさんだけの得意技、一緒に作りましょー!」
当然のようにヒズマのことを『仲間』だと言い切ったナガレ。それを聞いてヒズマは言い返す言葉が無くなり、静かに目を閉じた。
「ふーっ…………分かったわ、私の負けよ」
「え?」
「ネガティブに徹しようにも、もう言い返す言葉も無いわ。根負けしちゃった」
しばらく考えたのち、そう言って再び目を開けたヒズマ。しかしその目や声色には、沈んだ空気を感じさせない。そうしてナガレの方に向き直った。
「ナガレ君……私、このスキルを活かしたい。だからなんとかして遠距離攻撃を身につけなきゃいけないのよ~。お願い、力を貸して~!」
「ヒズマさん……!」
ナガレの表情が、まるで日の出のようにパァッと明るくなる。
「任せてください! オレたちで必殺技を完成させましょう! じゃあ早速……」
「と行きたいんだけど……闇雲にやっても良くないわ~。今日は休ませてちょうだい~」
「そ、そっすね。……そうですか……」
ヒズマの冷静な言葉に、露骨なまでテンションが下がるナガレ。
「じゃあオレも、いっぱい話したので今日は帰ります。オレみんなにも伝えますね!」
「逃げられなくしないでよ~!」
「あははっ、それじゃあ!」
ヒズマのセリフを軽く受け流して、ナガレは走り去っていく。その後ろ姿を見つめて、ヒズマはふっと微笑んだ。
「……ありがとう、ナガレ君」
ヒズマはキョトンとしてナガレを見つめる。
「遠距離強化のスキルは、いろんな物に対応してるはずです! だから弓じゃなくたって、いろんな方法を試してみればいいじゃないですか!」
希望を見出した事で饒舌になるナガレ。
「ブーメランとか投げナイフなんてどうです? いいや、ハンマーをポイポイ投げる、なんていいかも……そうだヒズマさん、マチェーテって知ってます? 手斧をぶん投げて攻撃する、ポーツ地方の狩人が使う伝統的な武器なんですけど……」
「ちょ、ちょっと待って! 話進みすぎ! それに私、ロングソードしか使えないし……」
「じゃあギン爺に頼んで、ロングソードを改造してもらいましょう! ヒズマさんが得意な物、いっぱい見つければそれだけ選択肢が広がりますよ!」
「そんなこと言ったって……そんなの出来ないわよ。基本中の基本な弓すらロクに使えないのに、そんなブーメランだのマチェーテだの……」
消極的なヒズマだが、ナガレは全く気付いていない。
「でも、絶対不可能じゃないですよね。例えばオレが鉄腕の右腕で毎日百回くらいナイフ投げして、それが三ヶ月も続けばかなり精度は上がりますよね」
「さ、三ヶ月って……右腕だけムキムキになっちゃうわ。そりゃそんだけやったら、ナガレ君ならできるかもしれないけど……」
「じゃあヒズマさんにもできますね。オレに出来てヒズマさんにできないことなんて、何一つ無いですよ! いやまあ性別云々は置いといて……他の人ができて自分にできないことなんて、この世には一つもないんです!」
「ナガレ君……」
ヒズマは顔を上げる。ナガレはその目にニッと微笑みかけた。
「オレたちも手伝います。アリッサもルックも協力してくれるし、タネツさんは……今は厳しいかもだけど、絶対に手を貸してくれます。ジョーだって、色々教えてくれますよ!」
「そ、そんな。悪いわ、私なんかのために」
「仲間のピンチに黙っちゃいられませんよ! ヒズマさんだってそうじゃないですか? オレたちとは違うヒズマさんだけの得意技、一緒に作りましょー!」
当然のようにヒズマのことを『仲間』だと言い切ったナガレ。それを聞いてヒズマは言い返す言葉が無くなり、静かに目を閉じた。
「ふーっ…………分かったわ、私の負けよ」
「え?」
「ネガティブに徹しようにも、もう言い返す言葉も無いわ。根負けしちゃった」
しばらく考えたのち、そう言って再び目を開けたヒズマ。しかしその目や声色には、沈んだ空気を感じさせない。そうしてナガレの方に向き直った。
「ナガレ君……私、このスキルを活かしたい。だからなんとかして遠距離攻撃を身につけなきゃいけないのよ~。お願い、力を貸して~!」
「ヒズマさん……!」
ナガレの表情が、まるで日の出のようにパァッと明るくなる。
「任せてください! オレたちで必殺技を完成させましょう! じゃあ早速……」
「と行きたいんだけど……闇雲にやっても良くないわ~。今日は休ませてちょうだい~」
「そ、そっすね。……そうですか……」
ヒズマの冷静な言葉に、露骨なまでテンションが下がるナガレ。
「じゃあオレも、いっぱい話したので今日は帰ります。オレみんなにも伝えますね!」
「逃げられなくしないでよ~!」
「あははっ、それじゃあ!」
ヒズマのセリフを軽く受け流して、ナガレは走り去っていく。その後ろ姿を見つめて、ヒズマはふっと微笑んだ。
「……ありがとう、ナガレ君」
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