75 / 302
第四話 ジョーの過去?
ついに昇格チャンス!
しおりを挟む~☆~☆~☆~☆~☆~
という訳でクエストを受けに、冒険者ギルドに来たナガレ。いつもの二人が軽く挨拶してくれた。
「こんにちはじゃナガレ君。もう昼食は食べたかの?」
「ようナガレ君! ピカピカの鎧だな」
「はよーっす。アルクルー、クエストなんかあるかい?」
ナガレはアルクルの方を見る。すると横にいたレンが、ナガレの手をぐいっと引っ張った。
「ナガレ君よ、クエストに行く前に報告がある。少し時間をくれぬかのう」
「へ? わ、分かりました」
と言う訳で建物に入ると、すぐにアルクルが一枚の紙を差し出した。どうやらクエスト受付用紙のようだ。
「ほらよナガレ君、よく見とけ」
「お、おう。マスター、これは一体?」
そう言いながら、ナガレはその内容に目を通す。内容は危険度B級のモンスター、ロックホーク討伐依頼だった。何でもエンペリオン地方の防具加工職人が新たな防具を開発したいらしく、様々なモンスターの素材がたくさん欲しいとのことだ。
「マスター……これ、B級ですよ? オレに受けて欲しいってことですか? なら色々準備しないと……」
ロックホークとはスラガン地方の岩場に巣を作る、数メートルサイズの巨大ハゲワシに似たモンスター。流石にガラガラマムシほど大きくは無いが、それでも人間の数倍くらいのサイズだ。死肉を喰らうということで、スラガン地方では不吉な存在として伝えられている。
「そう急ぐな、ナガレ君。このクエストを君に準備したのは……他ならぬ冒険者ランクについてじゃ」
「ええっ⁉︎ ホ、ホントですかっ⁉︎」
ナガレは驚いてレンに詰め寄った。
「うむ! このクエスト期限は六ヶ月。この長さならば、気にする必要はないじゃろう。この依頼に成功すれば、君をCランク冒険者として認めよう!」
「おおーっ! やるやる、やりまーす!」
飛び上がって喜ぶナガレ。彼の目的は冒険者ランクを上げて実力を証明すること。早速チャンスがやってきたようだ!
「まあまあ、あんまし焦んなよナガレ君。ロックホークはランクも上だし結構強いモンスターだ。俺ぁよく知らないけどよ、今のナガレ君はDランクだろ? タネツさんとヒズマさんが居たって、とてもじゃねえが勝てないと思うぜ」
アルクルがそう言ってたしなめる。確かに彼の言う通り、ロックホークはナガレよりもランクが上の相手だ。勢いのまま突っ込んで「負けました~」なんて羽目になれば実力を示すどころではない。ヒズマとタネツにも準備があるだろうし、そもそも協力してくれるだろうか……。
「まあ、ここの冒険者の仲間ならば、誰を連れて行っても構わぬぞ。報酬は山分けになるがのう。……あ、そうじゃ」
レンは人差し指を立てる。
「彼……ジョー・アックス殿じゃったか? 彼の力を借りるのはダメじゃ。ジョー殿は流石に実力が違いすぎるから、ナガレ君の実力テストにならんくなってしまう」
「その通りだ。こりゃナガレ君の実力を試したいって計らいだかんな。強いヤツにキャリーしてもらうなんてダメだぜ」
「えーーっ……」
少しガッカリしたナガレ。ジョーの助けがあれば楽勝だったのに……。
(いや、これはオレが乗り越えるべき試練だ。それにジョーも、帰っちゃうかも知れないしな……)
そう考えてから、一つ変なところに気づいた。
「あれ、マスターもアルクルも、なんか誤解してますよ。アイツは冒険者じゃ無いって自分で言ってました」
「……む? なんじゃ、彼のことを知らんのか?」
レンとアルクルは本気で驚いた様子だ。キョトンとした表情でナガレを見てくる。
「え、アイツってそんなに強いんですか?」
「もちろんじゃ! 何を隠そう、あの『紅蓮の閃光』とまで言われた……」
「ちょいちょいマスター」
そこまで言ったレンの肩を、アルクルがちょんちょんつついた。
「ジャック・ハルバード……じゃなくって、ジョーさんがその事を言ってないんなら、何か事情があるんかも知れませんぜ。ナガレ君には言ってない事を、第三者の俺らが言うのは……」
「む……そ、そうじゃのう。コホン、ナガレ君よ、今の話は忘れてたもれ。なーに、私たちの人違いじゃよ」
「で、でも……!」
追求しようとして、ナガレは口をつぐむ。レンとアルクルには言いづらいだろう。ならばジョーに直接聞くしか無さそうだ。
「わ、分かりました」
「うむ、ありがとう」
ナガレが渋々頷くと、レンはニコッと笑った。『~じゃ』とか大人びた言葉遣いなのに、笑顔は可愛い幼女のソレだ。美形のエルフが羨ましくなってくる……。
「ナガレ君、おめーは人間だ。どうやってもカッコよくて可愛いエルフにはなれない。そんなことよりホレ、クエスト見てけよ」
「な、なんで分かるんだよ!」
ニヤニヤした顔を向けてくるアルクル。こっちも黙ってればイケメンなのに、レンと態度が違いすぎる!
「顔にぜぇ~んぶ出てたぞ。何、心配すんなって! 女性の中にはナガレ君みたいな『カワイイ系男子』が好きな人も一定数いるもんだ! ……まぁ、それにしたってちょっと可愛すぎるとこあるけどな。ナガレ君……失礼かも知れねえが、キミ本当に男なんか?」
その一言がナガレの逆鱗にクリーンヒット!
「こ、こんの野郎っ……マスター! なんとか言ってやってくださいよ!」
「……すまぬ。それは正直私もつくづくそう思っておるのじゃ。自分を棚に上げてアルクルを叱るわけには……」
「ふんぐぐぐ……どいつもこいつも人のコンプレックスを……うがぁぁぁぁっ!」
ドタバタドタバタ!
「うわ、怒った⁉︎」
「ふぇぇぇ⁉︎ ゆゆゆ、許してくれ許しておくれぇ~……」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
天然ボケ巨乳委員長と処女ビッチ巨乳ダークエルフと厨二病の俺。
白濁壺
ファンタジー
廊下でぶつかったマサトとミチルは異世界に転移させられてしまった。マサトは製作(クリエイト):素材さえあれば何でも作れる能力を。ミチルは選別(ソート):あらゆる物を選別する能力を得た。異世界で仲間になる褐色のエルフと一緒に現代日本に帰る方法を探るうちに。いつの間にか魔王を倒すことになっていた二人だが。異世界、宿屋。若い二人に何も起きないはずがなく。ちょっぴりエッチな青春ファンタジー。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる