46 / 699
第三話 誇りとプライドを胸に
沈む夕日に照らされて
しおりを挟む
「うん、綺麗だよね」
アリッサが隣にやってきた。落下を防ぐための低いフェンスに手を置いて、ナガレと共に夕日を眺める。
「ジョーに出会ったら、この景色を見せてやりたいな」
「ジョー? 誰だそりゃあ?」
ルックがキョトンとする。タネツとヒズマもお互いに顔を見合わせた。
「そっか、何気にみんなに話してなかったな。アリッサはピンとくるかもだけど、ジョーは……」
そうしてナガレはジョーについてみんなに話した。ナガレとアリッサの窮地を助けてくれたこと、タイガスで再開したこと、そして近々バッファローの町へ来てくれること……。
「約束したんだ、アイツと。だからこの約束は、天地がひっくり返っても守らなきゃいけない。こんなところでへこたれるワケには行かないんだ」
夕陽を見ながら呟くナガレ。
「へぇ~、そんなすげえ奴がいるんだなぁ! ぜひぜひ俺にも合わせてくれよぉ!」
「え、なんでルックが?」
「このバカ姉貴、今までそんな話一度もしなかったんだぜ? 弟兼保護者としてぜひお礼を言いたいねぇ」
アリッサの頭をゲンコツでぐりぐりしながら、ルックがニヤニヤ笑っている。
「いだだだだ~い……」
「約束ってことか、良いねえ。ナガレ君を助けたのはどんなやつか、見てみたいトコだな」
タネツは腕を組み「がっはっは!」と豪快に笑った。褐色大柄スキンヘッド男のタネツは、カッコつけた笑い顔より豪快な笑いの方が似合っている。
「あははっ、期待してくれて大丈夫ですよ。スピード特化のナイスガイですから! 直接助けられたオレが保証します」
「そいつぁ楽しみだ!」
「ねぇナガレく~ん♡ その人って……彼女とかいたりするの~?」
「知るかそんなん」
「冷たい……」
ヒズマの色目使いは、ピシャリと突っぱねたナガレであった。
「そういやナガレ、そいつのフルネームはどんな名前だ? もしかしたらBランク以上の冒険者かも……苗字で丁寧に話すべきか?」
「ジョー・アックスです! なんだか名前の響きすらカッコよく思えてくるよー……って、なんでタネツさんまでこっちに引き込むつもりなんですかっ!」
「え、なぜ分かった⁉︎」
驚くタネツ。ナガレは「はぁ~……」とため息を吐いた。恩返しをしたいだけだと言うのに……。
「……でも、ジョーがウチに入ってくれたらなぁ」
不意打ちとはいえ、ジョーはスカルクリーチャーを一撃で倒すほどの実力者。そんな人がこのギルドに来てくれたら、ナガレの成り上がりはずっと早くなるだろう。……しかしナガレは考え直した。
「いいや、強い奴に引っ付いて成り上がっても意味がない。でっかい夢や目標ってのは、自分自身の力で勝ち取らなきゃな!」
ジョーの力でA級冒険者まで成り上がっても、ナガレ自身が強くなったとは言えない。誰かに叶えてもらった願いなどまっぴらゴメンだ。
「へっ、その意気だぜナガレ。俺も頑張んなきゃな」
「ううっ、今度こそ彼氏ができるの思ったのにぃ」
「んなこと言わないでください。実はオレ、ジョーの歳も生まれも知らないんですから。ひょっとしたら実はエルフで、すごい年上だったかも……」
「えっ! そ、そんな……いや、これはこれでアリかも……」
「いい加減諦めろーッ!」
「う、ん……とってもハンサムで素敵な人だったよ、ヒズマさん……」
そう言った後、アリッサの顔が突然紅潮する。わちゃわちゃしている冒険者三人は聞いていなかったが、そばにいたルックはギョッとした表情だ。
「……ねーちゃん? えっ……そ、そっち? ナガレの野郎じゃなくって? マジでそっちなの⁉︎」
「どっちって何よ! 変な勘ぐりしないで、もうっ!」
アリッサが隣にやってきた。落下を防ぐための低いフェンスに手を置いて、ナガレと共に夕日を眺める。
「ジョーに出会ったら、この景色を見せてやりたいな」
「ジョー? 誰だそりゃあ?」
ルックがキョトンとする。タネツとヒズマもお互いに顔を見合わせた。
「そっか、何気にみんなに話してなかったな。アリッサはピンとくるかもだけど、ジョーは……」
そうしてナガレはジョーについてみんなに話した。ナガレとアリッサの窮地を助けてくれたこと、タイガスで再開したこと、そして近々バッファローの町へ来てくれること……。
「約束したんだ、アイツと。だからこの約束は、天地がひっくり返っても守らなきゃいけない。こんなところでへこたれるワケには行かないんだ」
夕陽を見ながら呟くナガレ。
「へぇ~、そんなすげえ奴がいるんだなぁ! ぜひぜひ俺にも合わせてくれよぉ!」
「え、なんでルックが?」
「このバカ姉貴、今までそんな話一度もしなかったんだぜ? 弟兼保護者としてぜひお礼を言いたいねぇ」
アリッサの頭をゲンコツでぐりぐりしながら、ルックがニヤニヤ笑っている。
「いだだだだ~い……」
「約束ってことか、良いねえ。ナガレ君を助けたのはどんなやつか、見てみたいトコだな」
タネツは腕を組み「がっはっは!」と豪快に笑った。褐色大柄スキンヘッド男のタネツは、カッコつけた笑い顔より豪快な笑いの方が似合っている。
「あははっ、期待してくれて大丈夫ですよ。スピード特化のナイスガイですから! 直接助けられたオレが保証します」
「そいつぁ楽しみだ!」
「ねぇナガレく~ん♡ その人って……彼女とかいたりするの~?」
「知るかそんなん」
「冷たい……」
ヒズマの色目使いは、ピシャリと突っぱねたナガレであった。
「そういやナガレ、そいつのフルネームはどんな名前だ? もしかしたらBランク以上の冒険者かも……苗字で丁寧に話すべきか?」
「ジョー・アックスです! なんだか名前の響きすらカッコよく思えてくるよー……って、なんでタネツさんまでこっちに引き込むつもりなんですかっ!」
「え、なぜ分かった⁉︎」
驚くタネツ。ナガレは「はぁ~……」とため息を吐いた。恩返しをしたいだけだと言うのに……。
「……でも、ジョーがウチに入ってくれたらなぁ」
不意打ちとはいえ、ジョーはスカルクリーチャーを一撃で倒すほどの実力者。そんな人がこのギルドに来てくれたら、ナガレの成り上がりはずっと早くなるだろう。……しかしナガレは考え直した。
「いいや、強い奴に引っ付いて成り上がっても意味がない。でっかい夢や目標ってのは、自分自身の力で勝ち取らなきゃな!」
ジョーの力でA級冒険者まで成り上がっても、ナガレ自身が強くなったとは言えない。誰かに叶えてもらった願いなどまっぴらゴメンだ。
「へっ、その意気だぜナガレ。俺も頑張んなきゃな」
「ううっ、今度こそ彼氏ができるの思ったのにぃ」
「んなこと言わないでください。実はオレ、ジョーの歳も生まれも知らないんですから。ひょっとしたら実はエルフで、すごい年上だったかも……」
「えっ! そ、そんな……いや、これはこれでアリかも……」
「いい加減諦めろーッ!」
「う、ん……とってもハンサムで素敵な人だったよ、ヒズマさん……」
そう言った後、アリッサの顔が突然紅潮する。わちゃわちゃしている冒険者三人は聞いていなかったが、そばにいたルックはギョッとした表情だ。
「……ねーちゃん? えっ……そ、そっち? ナガレの野郎じゃなくって? マジでそっちなの⁉︎」
「どっちって何よ! 変な勘ぐりしないで、もうっ!」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ド底辺から始める下克上! 〜神に嫌われ無能力となった男。街を追放された末、理を外れた【超越】魔法に覚醒し、一大領主へ成り上がる。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
この世界では、18の歳になると、創造神・ミーネより皆に魔力が授けられる。
捨て子だったハイネは教会に拾われたこともあり、どれだけ辛いことがあっても、ミーネを信奉し日々拝んできたが………
魔力付与式当日。
なぜかハイネにだけ、魔力が与えられることはなかった。日々の努力や信仰は全く報われなかったのだ。
ハイネは、大人たちの都合により、身体に『悪魔』を封印された忌み子でもあった。
そのため、
「能力を与えられなかったのは、呪われているからだ」
と決めつけられ、領主であるマルテ伯爵に街を追放されてしまう。
その夜、山で魔物に襲われ死にかけるハイネ。
そのとき、『悪魔』を封印していた首輪が切れ、身体に眠る力が目覚めた。
実は、封印されていたのは悪魔ではなく、別世界を司る女神だったのだ。
今は、ハイネと完全に同化していると言う。
ハイネはその女神の力を使い、この世には本来存在しない魔法・『超越』魔法で窮地を切り抜ける。
さらに、この『超越』魔法の規格外っぷりは恐ろしく……
戦闘で並外れた魔法を発動できるのはもちろん、生産面でも、この世の常識を飛び越えたアイテムを量産できるのだ。
この力を使い、まずは小さな村を悪徳代官たちから救うハイネ。
本人は気づくよしもない。
それが、元底辺聖職者の一大両者は成り上がる第一歩だとは。
◇
一方、そんなハイネを追放した街では……。
領主であるマルテ伯爵が、窮地に追い込まれていた。
彼は、ハイネを『呪われた底辺聖職者』と厄介者扱いしていたが、実はそのハイネの作る護符により街は魔物の侵略を免れていたのだ。
また、マルテ伯爵の娘は、ハイネに密かな思いを寄せており……
父に愛想を尽かし、家を出奔し、ハイネを探す旅に出てしまう。
そうして、民や娘からの信頼を失い続けた伯爵は、人生崩壊の一途を辿るのであった。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる