45 / 699
第三話 誇りとプライドを胸に
受け流し完成(仮)
しおりを挟む
「くそっ、まだまだ!」
殴られ蹴られ転んでも、根性で立ち上がるナガレ。
「へっ、そうこなくっちゃな!」
「疲れてからが本番ってね~!」
タネツとヒズマもニヤリと笑って武器を構え直した。二人とも汗まみれだが、疲労を気にする様子もない。
「さあ行くぞっ!」
ナガレはマルチスタッフを縦にブンブン振り回す。相手に攻撃を分かりにくくして、力を溜める!
「来いや、ナガレぇっ!」
タネツはタワーシールドを地面にどかりと置いて、両手で攻撃に備える防御姿勢を取った。巨大なモンスターの攻撃をも受け止める強力な構えだ。
(あれを突破するには、効き目の無い攻撃を重ねたってダメだ。一発で決めるんだ!)
ナガレは考える。強い一撃で相手の防御を崩して弾き飛ばす。そんな石猿流の技を以前から特訓していたのだ。その名も……!
「これならどうだっ! 石猿流……秘技・牛魔壊ッ!」
長棒を振り回したまま体を反転させ、タネツに背を向ける。回転の勢いがさらに早まり、タワーシールドの右端を強く叩いた!
ガキィン!
「うおぉっ⁉︎」
シールドの真ん中なら攻撃をまっすぐ踏ん張れるが、端っこを叩かれると体が傾いてしまう。タネツは弾かれたシールドに体を持っていかれ体勢を崩した。
「ここだ……」
「はぁぁぁぁぁっ!」
しかし、攻撃の際ナガレに生まれたその隙を見逃すヒズマでは無い。ナガレの注意が逸れたと見るや否や、ロングソードを振りかざし素早く突撃。まっすぐ構えた刺突を放つ!
(いいやっ、もう隙を見せたりはしない! 受け流しのコツは……)
その時、ナガレが持った長棒が滑らかに動く。すぐさま棒を寝かして横に構え、サイドステップで刺突を回避した。それと同時に長棒を滑車のレーンのように押し付け、ヒズマの勢いをそのまま後ろに『受け流した』! 直後にナガレは長棒を傾け、隙だらけのヒズマを足払い!
「えっちょっ……きゃっ⁉︎」
ドサァッ!
ヒズマからすれば、目の前から急にナガレが消えて、勢いそのままにつんのめったという状況だ。避けられもせず足払いをくらいすっ転んだ。
「あ……」
ナガレが力無くマルチスタッフをだらりと下ろす。
「で……でき、た……?」
「すげぇ……すげえよ、ナガレーっ!」
ルックの歓声と共に、みんな一斉にナガレへ駆け寄った。ヒズマまでが素早く跳ね起きナガレの手をぎゅ~っと握ってくる。
「すごいわ、今の! ナガレ君にスタッフを押し付けられた時、全く体が動かなかったわ~!」
「それに見たかよ、俺のタワーシールドが跳ね飛ばされちまった!」
「すごいよナガレ君!」
「へ……へへっ、よーし!」
ナガレも嬉しくて、ニッと笑った。ようやく毎日の厳しい特訓の成果が出てきたようだ。
~☆~☆~☆~☆~☆~
その後しばらく特訓したが、受け流しを上手くできるかは五分五分だった。
「はーっ、はーっ……だ、ダメだ……もう腕が動かない……」
息を切らし、仰向けになって寝転がるナガレ。しばらく休まないと、フォークとスプーンも握れない……。やはり完璧にするにはまだ時間がかかるようだ。
「オレの技術はまだまだなんだ。だから受け流しをするには、ある程度には力がなきゃダメだ。そのためには、攻撃力も大切だな……」
自分のパワー不足を実感したナガレ。
「でも、毎日こーんな砂袋を引っ付けて練習してるのよ~? 筋肉はそのうち付いてくるわ~」
「うむ、筋肉は一朝一夕で身につくものでは無いんだぜ。……さて、もう日が沈んじまうし、そろそろ帰るとすっか」
夕日が今にも沈みそうになっている。きらきら輝くオレンジ色の光が、地平線を覆っていた。
「綺麗だな……この町の人たちは、こんな景色を知ってるのかな」
思わず足を止めて、じっと見入ってしまう。
殴られ蹴られ転んでも、根性で立ち上がるナガレ。
「へっ、そうこなくっちゃな!」
「疲れてからが本番ってね~!」
タネツとヒズマもニヤリと笑って武器を構え直した。二人とも汗まみれだが、疲労を気にする様子もない。
「さあ行くぞっ!」
ナガレはマルチスタッフを縦にブンブン振り回す。相手に攻撃を分かりにくくして、力を溜める!
「来いや、ナガレぇっ!」
タネツはタワーシールドを地面にどかりと置いて、両手で攻撃に備える防御姿勢を取った。巨大なモンスターの攻撃をも受け止める強力な構えだ。
(あれを突破するには、効き目の無い攻撃を重ねたってダメだ。一発で決めるんだ!)
ナガレは考える。強い一撃で相手の防御を崩して弾き飛ばす。そんな石猿流の技を以前から特訓していたのだ。その名も……!
「これならどうだっ! 石猿流……秘技・牛魔壊ッ!」
長棒を振り回したまま体を反転させ、タネツに背を向ける。回転の勢いがさらに早まり、タワーシールドの右端を強く叩いた!
ガキィン!
「うおぉっ⁉︎」
シールドの真ん中なら攻撃をまっすぐ踏ん張れるが、端っこを叩かれると体が傾いてしまう。タネツは弾かれたシールドに体を持っていかれ体勢を崩した。
「ここだ……」
「はぁぁぁぁぁっ!」
しかし、攻撃の際ナガレに生まれたその隙を見逃すヒズマでは無い。ナガレの注意が逸れたと見るや否や、ロングソードを振りかざし素早く突撃。まっすぐ構えた刺突を放つ!
(いいやっ、もう隙を見せたりはしない! 受け流しのコツは……)
その時、ナガレが持った長棒が滑らかに動く。すぐさま棒を寝かして横に構え、サイドステップで刺突を回避した。それと同時に長棒を滑車のレーンのように押し付け、ヒズマの勢いをそのまま後ろに『受け流した』! 直後にナガレは長棒を傾け、隙だらけのヒズマを足払い!
「えっちょっ……きゃっ⁉︎」
ドサァッ!
ヒズマからすれば、目の前から急にナガレが消えて、勢いそのままにつんのめったという状況だ。避けられもせず足払いをくらいすっ転んだ。
「あ……」
ナガレが力無くマルチスタッフをだらりと下ろす。
「で……でき、た……?」
「すげぇ……すげえよ、ナガレーっ!」
ルックの歓声と共に、みんな一斉にナガレへ駆け寄った。ヒズマまでが素早く跳ね起きナガレの手をぎゅ~っと握ってくる。
「すごいわ、今の! ナガレ君にスタッフを押し付けられた時、全く体が動かなかったわ~!」
「それに見たかよ、俺のタワーシールドが跳ね飛ばされちまった!」
「すごいよナガレ君!」
「へ……へへっ、よーし!」
ナガレも嬉しくて、ニッと笑った。ようやく毎日の厳しい特訓の成果が出てきたようだ。
~☆~☆~☆~☆~☆~
その後しばらく特訓したが、受け流しを上手くできるかは五分五分だった。
「はーっ、はーっ……だ、ダメだ……もう腕が動かない……」
息を切らし、仰向けになって寝転がるナガレ。しばらく休まないと、フォークとスプーンも握れない……。やはり完璧にするにはまだ時間がかかるようだ。
「オレの技術はまだまだなんだ。だから受け流しをするには、ある程度には力がなきゃダメだ。そのためには、攻撃力も大切だな……」
自分のパワー不足を実感したナガレ。
「でも、毎日こーんな砂袋を引っ付けて練習してるのよ~? 筋肉はそのうち付いてくるわ~」
「うむ、筋肉は一朝一夕で身につくものでは無いんだぜ。……さて、もう日が沈んじまうし、そろそろ帰るとすっか」
夕日が今にも沈みそうになっている。きらきら輝くオレンジ色の光が、地平線を覆っていた。
「綺麗だな……この町の人たちは、こんな景色を知ってるのかな」
思わず足を止めて、じっと見入ってしまう。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
アレキサンドライトの憂鬱。
雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。
アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。
どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい!
更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!?
これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。
★表紙イラスト……rin.rin様より。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ド底辺から始める下克上! 〜神に嫌われ無能力となった男。街を追放された末、理を外れた【超越】魔法に覚醒し、一大領主へ成り上がる。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
この世界では、18の歳になると、創造神・ミーネより皆に魔力が授けられる。
捨て子だったハイネは教会に拾われたこともあり、どれだけ辛いことがあっても、ミーネを信奉し日々拝んできたが………
魔力付与式当日。
なぜかハイネにだけ、魔力が与えられることはなかった。日々の努力や信仰は全く報われなかったのだ。
ハイネは、大人たちの都合により、身体に『悪魔』を封印された忌み子でもあった。
そのため、
「能力を与えられなかったのは、呪われているからだ」
と決めつけられ、領主であるマルテ伯爵に街を追放されてしまう。
その夜、山で魔物に襲われ死にかけるハイネ。
そのとき、『悪魔』を封印していた首輪が切れ、身体に眠る力が目覚めた。
実は、封印されていたのは悪魔ではなく、別世界を司る女神だったのだ。
今は、ハイネと完全に同化していると言う。
ハイネはその女神の力を使い、この世には本来存在しない魔法・『超越』魔法で窮地を切り抜ける。
さらに、この『超越』魔法の規格外っぷりは恐ろしく……
戦闘で並外れた魔法を発動できるのはもちろん、生産面でも、この世の常識を飛び越えたアイテムを量産できるのだ。
この力を使い、まずは小さな村を悪徳代官たちから救うハイネ。
本人は気づくよしもない。
それが、元底辺聖職者の一大両者は成り上がる第一歩だとは。
◇
一方、そんなハイネを追放した街では……。
領主であるマルテ伯爵が、窮地に追い込まれていた。
彼は、ハイネを『呪われた底辺聖職者』と厄介者扱いしていたが、実はそのハイネの作る護符により街は魔物の侵略を免れていたのだ。
また、マルテ伯爵の娘は、ハイネに密かな思いを寄せており……
父に愛想を尽かし、家を出奔し、ハイネを探す旅に出てしまう。
そうして、民や娘からの信頼を失い続けた伯爵は、人生崩壊の一途を辿るのであった。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
最強魔王の学園無双 ~世界を平定したチート魔王は学園で無双し花嫁を探す。側近・貴族・勇者? まとめて余のハーレムに加えてやろう~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ディノス・レアルノートは魔王だ。
その絶大なる力で人族を撃破し、世界を平定した。
そして、1年後……。
「クハハ! 愚民どもは、幸せを満喫しているようだな。大変結構!」
「ディノス陛下。陛下も、そろそろ跡継ぎをつくられてはいかがでしょうか? 平和を勝ち取った今こそ、その好機かと愚行致しますが」
「クハハ! それも悪くはないな。しかし、余はそういうことに疎くてな……。強さに重きを置いていたせいだろうが……」
「ああ、確かに……。ディノス陛下は、そういう話が一切ありませんもんね。俗に言う、陰キャぼっちというやつでしょうか……」
「な、なにぃ!? 陰キャぼっちだと! 余は断じて陰キャぼっちなどではない! リア充だ!」
そんなこんなで、身分を隠して学園に通うことになった魔王様。
抜群の戦闘能力を持つ最強魔王様だが、年齢は16歳。
学園に通うことがおかしいというほどではない。
はたして、彼は真実の愛を見つけて花嫁を得ることができるのか?
無自覚セクハラ三昧が、今始まる!!!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる