上 下
23 / 785
第二話 目指せスキルアップ!

ハートに眠る力?

しおりを挟む

~☆~☆~☆~☆~☆~

「おーい、ナガレよぅ!」
 町の通りを歩くナガレに声をかける者が一人。アルカナショップの看板息子、ルックが手を振っていた。
「この前はありがとな、ウチのねーちゃんを助けてくれてよ」
「よせやい、そのセリフ一日一回は聞いてるよ」
 あの後アリッサがルックの姉だということを知った。それ以降ずっと感謝されている。
「そうか、すまねぇ……それで今日はどうした? ヤケに機嫌が良さそうじゃねえか」
「へへっ、実はな……」
 ナガレはニヤリと笑う。楽しみで仕方がないと言う表情だ。
「今日はタネツ先輩とヒズマ先輩が、タイガスの街に連れて行ってくれるんだ。あの人らが武器を買いに行くから一緒に来ないかって。……あの人らは、多分賭場にいくんだろうけど」
「そりゃすげえな!」
 タイガスの街……ここから駅馬車で一時間ちょっとかかる、ここスラガン地方一の大都会。武器屋も防具屋もアイテムショップも酒場も飲食店も、バッファローの町よりいくつもレベルが上。カジノも風俗も大人の店だってある。何よりスラガン地方の冒険者ギルド支部は、荒野を生きる凄腕の冒険者が集まった全地方の中でも強豪だ。
「だがナガレのことだし、遊びに行くってんじゃねぇだろう? 最近ねーちゃんと特訓してるくらいだし」
「ああ……実はスキル鑑定をしてもらおうと思っててさ」
 スキル鑑定、それは人々の心身に宿る特殊能力を暴き教えてもらうこと。
 スキルの種類はさまざまだ。モンスターとの戦いでチャンスの時にいつもより強い攻撃が出せる『好機(大)』、薬を飲んだ時他の人より効き目が良かったりという『タフネス』など特殊なスキルが大半である。
 しかし、それ以外にも長剣をうまく扱える技術がある『長剣上手』や敵の気配を遠くからも感じ取れる『気配読み』といった、単に本人の特技を表示するだけのスキルもあるのだ。
 これらとは反対のマイナススキルもあった。弱いモンスターでも逃げずに襲いかかってくる『威圧(弱)』、自分の体力が十分なうちは無意識に攻撃の手を抜いてしまう『油断』といった能力が弱くなる悪い効果をもたらすのがある。
「そうかい、じゃあ行ってこい! おみやげは要らないぜ~」
「ははは、世話になってるアリッサには買ってくるから心配しないでよ!」
「そう言わず俺にも買ってきてくれよぉ~!」
 ルックがわざとらしくほっぺを膨らませると、ナガレは苦笑しながらギルドの方へ向かった。

 さて、店の中に戻ろうとしたルック。まだ品出しが終わっていない……すると店の奥からだっさい部屋着のアリッサが出てきた。
「ふぁあ……おはよ~ルック、誰と話してたの?」
「ナガレのやつだよ、今日はタイガスまで遊びに行くんだとさ。んなどデカい欠伸すんなよ、ねーちゃん……。昨日もナガレの特訓に付き合ってんだろー?」
 ナガレは夕方になるとあの高台広場まで走って登り、そこでトレーニングを始める。そして日が沈むと、毎日クタクタになって降りてくるのだ。ちようど店じまいするころなのだが、ルックもまさか毎日姿を見ようとは思わなかった。
「ナガレくんは現状を変えようって頑張ってるから。なんだか昔のあたしを見てるみたいで。あたしは失敗しちゃったからこそ、ナガレ君には成長してほしいの」
「あー……そういやそんな時もあったな」
 ルックは数年前のことを思い出す。アリッサがこの街から出て、王都エンペリオンで働こうととしていたことを……。
「ねーちゃんの思いはよく分かった。だけど……それは寝ぼけて良い理由にゃなんねーんだよっ! オラ、とっとと顔洗って品出し手伝えくっちゃね女! 腹の贅肉掻っ捌いてケバブにすんぞ! いい加減働け、この箱入り娘!」
「あ、姉に向かってそんな口を聞きます普通⁉︎ 後贅肉なんてありませんっ、全部筋肉ですぅ~!」
 そう言ってトレーナーを上げて腹を見せびらかすアリッサ。太ってはいない……だが痩せてもいない。なんとも中途半端なぷにぷに具合だ。
「……ナガレにチクるぞ、特訓の手伝いはダイエット目的でもあるって」
「なっ⁉︎ そ、それは本気の理由じゃないもん! ナガレくんの力になりたいってのは本当で、ま、まぁそうは思ったけど、あくまで『ついで』で……」
「………………(じとーっ)」
「ぐぬぬ……ああもう分かったよ! 意地悪な弟になっちまって、親はどんな教育したんだか!」
「育ての親はねーちゃんとおんなじだよ!」
「べーっ!」
 文句を言いつつアリッサは、素直に引っ込んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人間不信の異世界転移者

遊暮
ファンタジー
「俺には……友情も愛情も信じられないんだよ」  両親を殺害した少年は翌日、クラスメイト達と共に異世界へ召喚される。 一人抜け出した少年は、どこか壊れた少女達を仲間に加えながら世界を巡っていく。 異世界で一人の狂人は何を求め、何を成すのか。 それはたとえ、神であろうと分からない―― *感想、アドバイス等大歓迎! *12/26 プロローグを改稿しました 基本一人称 文字数一話あたり約2000~5000文字 ステータス、スキル制 現在は不定期更新です

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...