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第一話 最悪のギルド!?

秘伝書ゲット?

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~☆~☆~☆~☆~☆~

 もう見慣れたギルド支部にたどり着いたナガレ。
 ギィィィィッ……。
「や、ナガレ君。こんにちはじゃ」
「よう、ナガレ君! 昨日はあんまり飲まなかったのか? あのタネツとヒズマさんが寝込んだってのに元気そうだな」
 今回もレンとアルクルが出迎えてくれた。
「こんちは二人とも、クエスト入ってる?」
「もう行くのか? 昨日あんな目にあったばかりじゃというのに、根性あるのう」
 ため息を吐くレンだが、その言葉に嫌味は感じられない。本気で感心しているようだ。
「ええ、オレはもっと強くならなきゃ行けないっすからね!」
「……ふむ」
 ニッと笑うナガレ。それを見たレンはちっちゃな顎に手を当てて、少し考え込むそぶりを見せた。
「え、どうしました?」
「のうナガレ君……君は強くなって名をあげたいのは、冒険者ランクを上げるためじゃろう?」
「そ、そうですけど……」
「なら、これが役に立つかもしれぬ。受け取ってくれ」
 そう言ってレンはカバンをまさぐり、一冊の本を差し出した。年季の入ってそうなボロっちい古本だ。ところどころ擦り切れた表紙には『石猿流 棒術之巻』と書かれている。
「マスター、これは? 見たことない画風の字ですね」
「そいつはコウヨウ地方の字だな。『フデ』っつー変わったペンで書かれてるんだ」
「詳しいな、アルクル……」
 コウヨウ地方はこの大陸のずっと東にある、一風変わった東洋文化の残る地域。共和国とは一味違った建物や生活様式など魅力があり、観光地として人気がある。
「昨日掃除をしていたら、棚の奥から出てきたのじゃ。見てみると棒術の書だったのでな。ナガレ君の役に立つかもと思ったのじゃ」
「へぇ、ありがとうございます。どれどれ……」 
 パラパラと本をめくってみる。長棒の構え方、立ち回り、他武器との戦闘について詳しく書かれてあった。ナガレの知らない知識もたくさんある。まあ長棒を使っている理由は、教習所の先生が棒使いだったので教えてもらっただけだし当然なのだが。
「何でも昔の達人が書いたらしい本なのじゃが、ずっと昔のものだし覚えておらんのじゃ。棚の奥にあるくらいだしどうなろうと大丈夫なはず。良ければ受け取っておくれ」
「ありがたくいただきます!」
 本を貰って小躍りしたナガレ。格段にレベルアップが近づいたような気がした。
「とはいっても、ガセばかりの本かもしれん。役に立たなかったら、申し訳ないのう」
「いえいえ、ありがとうございます! 早速読み漁ってみます」
「ああ、そうした方がいいぜ」
 アルクルも横から顔を出した。
「正直、今日はクエストも無くて俺たちも待機中さ。てなわけでマスター、俺今から飲みに……」
「……給料無し……」
「う……はぁーい……。てなわけで飲みに……じゃなかった、読みに行って来いよ。今日はどのみちクエストは出ないだろうしな」
「分かった! それじゃ、またな!」

 ナガレは小躍りしながらギルドを出て行った。残されたアルクルはレンがいる傍の壁にもたれかかる。
「しっかし、いいんですかマスター。あれって結構有名な本でしたよね?」
「なんじゃ、知っとったのか。うむ……表紙はごまかしてあるが、あれは槍術において並ぶ者はいないとされた稀代の名手ダルク将軍が記したものじゃ。もう数百年前に販売されたもので、その技術を恐れた近代の王国政府により絶版となってしまったものぞ」
「昔、考古学者を目指してたんでね。今ではしがない街の飲んだくれですけど。……どうしてそこまでナガレ君に肩入れするのか、聞いてもいいですか?」
 アルクルの問いに、レンは「うーむ」と考え込んでしまう。
「どう説明したらよいか……。ここに来る前、私は歴代の王のそばで、たくさんの人間を見てきた。希望に満ち溢れたもの、緊張を隠せないもの、悪しき野心を持つもの……時には自らの希望を打ち砕かれ、希望を失ったものも見た。そのような存在はみな、目がどんよりと曇っていたよ」
 どこか遠い目をして、レンはそうつぶやいた。歴代の王のそばで、というのはどういう訳だろう?
「でも、ナガレ君は……」
「そうじゃ。彼の眼は、絶望に叩き落されてもなお光が宿っている。いや、光というよりも、逆境の風を受け勢いよく燃え上がる炎といったところかの。そういったものは今まで見た中でも、片手で数えるほどしかおらぬ。しかしそのものはみな、大陸で名だたる勇士となった。もしかしたらあ奴もそうかもしれぬ……」
 レンはそう言って、ふぅ……と息を吐いた。
「ま、私の思い過ごしかも知れぬがな。じゃがそれを抜きにしても、なんだか放っておけなくてのう。あのままだとすぐにのたれ死んでしまいそうで不安なんじゃ」
「あー……分かります、その気持ち。アイツしっかりしてそうに見えて、なーんか頼りないっすよね」
「おお、分かってくれるか! つい手を貸したくなるのも、あ奴の才能かも知れぬのう」
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