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第23章~間幕・透ノ国へ~

第19話

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「行くって、どこに行くつもりなんだ? 何かあてがあるのか?」
「いや、ないけど。でも何かしら収穫はありそうだよ」

 兄が指差した方向を眺める。

 のどかな青空に、雲のような小島がいくつも浮かんでいるのが見えた。どれも同じような小島かと思いきや、そのうちのいくつかは、どこかで見覚えがあるような場所だった。

「あれ……俺たちが育った村に似てる……?」
「そんな気がするよね。もちろん私たちの故郷だけじゃなく、アロイスくんの故郷っぽい小島もあるみたいだよ」
「……!」
「透ノ国はどの世界にも繋がっていないけど、全ての世界が集合しているのかもしれないね。それこそ、世界の全てを記録しているみたいに」
「世界の全てを……」
「だから私たちの記憶も、あの小島のどこかに点在してるんじゃないかなって。とりあえず、できる限り回ってみようか」

 言われた通り、アクセルは兄の後ろから小島を散策し始めた。

 ただ闇雲に歩いているだけで何かが起こるとも思えなかったが、その場にじっとしているよりはずっといい。何かしらの発見があるかもしれない。

 ちなみに小島から小島への移動は、小島の端に足を踏み入れると自動的に行われるみたいだった。

 一度小島の端から行ったり来たりしてみたところ、別の小島から兄が手を振っているのが遠目に見えたので、こちらも手を振り返した。何度も移動を繰り返しているうちに移動の法則性も見えてきて、三つ前に立ち寄った小島等にも戻れるようになってきた。

「結構な数を見て回ってきたけど……お前、何か気付いたことあった?」

 途中の小島で小休止しながら、兄が尋ねてくる。
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