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第22章~トーナメント・第五死合い~

第35話

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「……まあ、こういう過保護なところがお前は気に入らないんだろうけどね」

 と、兄がやや投げやりな口調で手を離す。

 胸倉は解放されたが、依然として胸は苦しいままだった。

「お前が脳内お花畑なのは今に始まったことじゃない。何回襲われても学習しないし、危険なところに自ら飛び込もうとするし、そのくせ自分は大丈夫だって思ってる。自分がいかにモテるかも、未だに気付いてないみたいだしね。そういうところを自覚してないから、私の心配を『迷惑だ』って思っちゃうわけだ。困ったものだよ」
「……すみません……」
「……でも別にいいんだ。もうお前にはそっち方面の危機感は期待していない。自由にやりたいなら好きにすればいい。その代わり、こっちはこっちで勝手にやらせてもらうから悪く思わないでね」
「え……? あ、あの……いや、それは……」
「それじゃ、次の死合い頑張りなさい」

 急に突き放すような言い方をされ、今度は違う意味で戸惑った。

 話は終わったとばかりに離れていく兄を見て、アクセルは慌てて追い縋った。

「待ってくれ兄上! 違うんだ! 俺はただ、兄上にこれ以上汚れて欲しくなくて……!」
「…………」
「兄上は『どんなに汚れてもいい』って言うけど、俺にとっては全然よくないんだ……! 俺なんかのために兄上がどんどん血に汚れていくのは、見ていて辛いというか、どうしようもなく苦しくて……」
「…………」
「勝手なこと言ってるのはわかってる。脳内お花畑って言われても否定できない。それでも、嫌なものは嫌なんだ……! 兄上が俺に『綺麗なままでいて欲しい』って言うように、俺も兄上には『綺麗なままでいて欲しい』んだよ」
「それは無理かな」
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