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第13章~獣化の秘密~

第50話

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「ピピ、アクセルすき」
「えっ……?」
「おちこんでも、ないても、さみしくなっても、ピピはアクセルすき。ピピ、アクセルのみかた」
「ピピ……」
「ピピ、ずっとアクセルといっしょ」

 何だか違う意味で涙が出てきた。どうしてそこまで自分を慕ってくれるのかわからないが、それでもピピの純粋な思いは伝わった。

 アクセルはピピのもふもふな身体に顔を埋め、声を震わせながら言った。

「ありがとう、ピピ……。きみがいてくれるだけで、俺は随分救われるよ」
「ぴー」
「明日には露天風呂も完成するだろうから、出来上がったら一緒に入ろうな。俺はこんなだから、それくらいしかお礼できないけど……」
「ぴー♪」
「あと、また山に遊びに行こうな。新鮮な木の実や山菜、いっぱい集めに行こう。美味しいスープができるぞ」
「ぴ♪」

 その後は他愛のない雑談をして、一緒に眠りについた。

 ピピの隣は温かくて、一人で眠るよりずっと心地よかった。

***

 それから一ヶ月ほど経過した。

「ピピ、朝ご飯だぞ」
「ぴー♪」

 お決まりの食事をベランダに持って行ったら、ピピが喜んで駆け寄ってきた。兄が治療を受けている間は、こうしてピピとベランダで食事をするのが当たり前になっていた。

「さて、いただくか」
「ぴー♪」

 お気に入りのヨーグルトをもぐもぐやっているピピを眺めつつ、アクセルも自分のトーストにかじりついた。
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