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第12章~不穏な空気~

第143話

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「…………」

 出掛ける時、もう一度兄の様子を見てみた。起きる気配はなかった。せめて夕方までには起きてくれるといいのだが……。

 念のため、簡単な置手紙と飲み水を用意して枕元に置いておいた。

 そしてスープの入った大鍋を台車に乗せ、アロイスの家を目指した。

 兄に言われた通り、変な男に目をつけられないよう気をつけて歩いた。とりあえず、今のところは問題なさそうだ。

「おはよう。アロイス、いるか?」

 小屋の前で台車を止め、木製のドアをノックした。中からはドッタンバッタンと大きな音が聞こえてくるので、本人がいることは明らかである。

 ……が、作業音がうるさくてノックの音が聞こえていないらしい。

「おーい! アロイス、俺だよ! ちょっと作業中断して出て来てくれないか?」

 先程より声を張り、ドアも強めに叩いたら、ようやくアロイスが出て来てくれた。何故か頭にハチマキをして、汗だくになっている。

「おっ? アクセルじゃん。今日はどうしたんだ? 木材が足りなくなったのか?」
「いや、台車を返しに……。それと、お礼の豆のスープも持ってきたぞ」
「おっ、マジか。助かったぜー! 今日の朝メシ、どうしようかと思ってたんだ」

 ハチマキを解き、それで汗を拭うアロイス。一体室内で何をしていたんだか……。

「……まあいいや。ところで、昨日アロイスが渡してくれたボールチェーンみたいなやつ、とんでもなくいかがわしい道具だったぞ。兄上に使い方教わったらエラい目に遭った」
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