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第11章~強くなるために~

第102話

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「お前、いつもより気合い入ってるね」

 スタジアムに向かっている時、兄がにこりと微笑みかけてきた。

「例のお友達と戦えるのが楽しみで仕方ないって顔してるよ」
「そ、そんなにわかりやすいだろうか……。いや、まあ楽しみなんだけどな」
「いいことだよ。どんな死合いになるのか、お兄ちゃんも楽しみにしてるね」
「ああ、最善を尽くすよ。……それでバルドル様の食事会に行けなくなったらごめんな」
「余計なこと考えなくていいから、ちゃんと戦ってきなさい」

 そう言って兄が背中を押してくれた。

「いってらっしゃい。応援してるからね」
「ああ、頑張るよ」

 戦士専用と観客入場用のゲートに別れ、アクセルは少しの間控え室で待機した。

 しばらくして死合いの時間になったので、盛り上がっている会場に出て行った。

 向こうの出入口からは、黒塗りの甲冑を着込んだアロイスが入場してきた。甲冑に覆われていても小柄だったが、手にした大剣は身長より大きい。振りはさほど早くないものの、あれに当たったら一発でアウトだ。油断は禁物である。

「よっ、アクセル! 木は上手く切れるようになったか? 今日はよろしくな!」

 アロイスが片手を挙げて挨拶してくる。甲冑の隙間から見えている目が、人のよさそうな笑みを浮かべていた。純粋に戦いを楽しみにしていたことがわかる。

「ああ、こちらこそ」

 アクセルも小さく微笑みかけた。
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