上 下
1,124 / 2,669
第11章~強くなるために~

第69話

しおりを挟む
「ピピ、本当にいいのか? 家族と離れ離れになっても。俺はずっとここにいるけど、家族とは今度いつ会えるかわからないだろう?」
「ぴー」
「うちみたいな何もない庭で、うさぎ一匹で寂しくないのか? 俺はこんなだから、留守番することも多いぞ? 身体洗ってやるのも忘れるくらいだし……」
「ぴ……」
「本当に後悔しないか?」

 正面から真剣に問いかけたら、ピピも真っ直ぐにこちらを見つめてきた。そしてたどたどしい口調でこう言った。

「ピピ、アクセルすき。アクセルといっしょがいい」
「え……」
「ピピ、アクセルのごはんすき。おうちもすき。おいてかれたら、かなしい」
「ピピ……」
「ピピ、ずっとここにいる」

 甘えるようにふわふわの身体をすり寄せてくるピピに、思わず涙が出そうになった。

 修行にかまけて時々世話が疎かになるような飼い主を、ピピは好きだと言ってくれる。家族と一緒に暮らすより、ここでの暮らしの方がいいと言ってくれる。

 アクセルは白い毛並みに顔を埋め、やや割れた声で言った。

「ありがとう、ピピ……。今度とびっきり美味しい野菜スープ作ってあげるよ……。うさぎ小屋も、もっと丈夫で快適なものに作り直すし、いつでも水浴びできるような露天風呂も用意するからな……。あと、家族に会いたくなったらいつでも言ってくれよ……?」
「ぴー♪」
「あ……そう言えば、夕食はどうしたんだ? 何か食べたか?」

 まだ、とピピは首を横に振った。

 アクセルは顔を上げ、よしよしとピピを撫でてやった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

兄が媚薬を飲まされた弟に狙われる話

ْ
BL
弟×兄

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

アルファだけの世界に転生した僕、オメガは王子様の性欲処理のペットにされて

天災
BL
 アルファだけの世界に転生したオメガの僕。  王子様の性欲処理のペットに?

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

処理中です...