1,117 / 2,792
第11章~強くなるために~
第62話
しおりを挟む
「そういう時は、さっさと寝てしまうのが一番さ。ぐっすり寝て起きれば、『何であんなことで悩んでたのかな』って不思議になるから。……ほら、お前も早く寝なさい」
「…………」
仕方なく、アクセルはおとなしく自分のベッドに入った。暗い部屋で仰向けになっていると、すぐさま眠気が襲ってきて夢うつつになった。
それと同時に理性が薄れ、無意識に心の声を口にしてしまっていた。
「兄上……」
「うん、何だい?」
「もう、浮気……しないでくれよ、な……」
兄が小さく息を呑む音が聞こえた。夢うつつになっていても、耳は最後まで現実の音を拾っているようだ。
次いで兄はごそごそと自分のベッドを抜け出し、こちらにやってきて優しく囁いてきた。
「私はお前が生まれた時からお前一筋だよ。お前が側にいてくれるなら、他の誰かが入り込む余地はないさ」
「そう……なのか……」
「というか、そんなことで悩んでたのかい? そんなの心配するだけ損だよ。何も心配いらないから、早く寝て忘れなさい」
「…………」
その囁きが、何故か心に深く沁みた。理性が薄れているせいか、かえって素直に信じることができた。
「ん……そう、だな……」
何だか安心した。弟大好きな兄が、自ら進んで浮気なんてするはずがない。彼がそういうことをするのは、弟が側にいない時だけ。アクセルがヴァルハラにいなかった時期だけ。
でも、これからはずっと自分がいる……。
「おやすみ、アクセル。いい夢を見てね」
兄がそっと髪を撫でつけてくる。そう言えば子供の時も、こんな風に寝かしつけてくれたなぁ……などと、やや懐かしく思った。
そのままアクセルは穏やかな眠りについた。
「…………」
仕方なく、アクセルはおとなしく自分のベッドに入った。暗い部屋で仰向けになっていると、すぐさま眠気が襲ってきて夢うつつになった。
それと同時に理性が薄れ、無意識に心の声を口にしてしまっていた。
「兄上……」
「うん、何だい?」
「もう、浮気……しないでくれよ、な……」
兄が小さく息を呑む音が聞こえた。夢うつつになっていても、耳は最後まで現実の音を拾っているようだ。
次いで兄はごそごそと自分のベッドを抜け出し、こちらにやってきて優しく囁いてきた。
「私はお前が生まれた時からお前一筋だよ。お前が側にいてくれるなら、他の誰かが入り込む余地はないさ」
「そう……なのか……」
「というか、そんなことで悩んでたのかい? そんなの心配するだけ損だよ。何も心配いらないから、早く寝て忘れなさい」
「…………」
その囁きが、何故か心に深く沁みた。理性が薄れているせいか、かえって素直に信じることができた。
「ん……そう、だな……」
何だか安心した。弟大好きな兄が、自ら進んで浮気なんてするはずがない。彼がそういうことをするのは、弟が側にいない時だけ。アクセルがヴァルハラにいなかった時期だけ。
でも、これからはずっと自分がいる……。
「おやすみ、アクセル。いい夢を見てね」
兄がそっと髪を撫でつけてくる。そう言えば子供の時も、こんな風に寝かしつけてくれたなぁ……などと、やや懐かしく思った。
そのままアクセルは穏やかな眠りについた。
0
お気に入りに追加
844
あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。


【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる