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第11章~強くなるために~
第59話
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――まあ、今浮気してないなら大目に見るしかないけど……。
というか、昔のことだから今更どうすることもできない。自分がいなかった間のことだし、それはそれとして割り切るしかない。
とはいえ、モヤモヤすることには変わりないが……。
「あの、すみません……。俺は全快したみたいなのでこの辺で……」
足の感覚が戻ってきたので、ここぞとばかりにアクセルは泉から出た。これ以上二人の話を聞いていたら、精神衛生上よろしくない。
「ユーベル様、ジーク様、今夜はお世話になりました。いつか手合わせをする機会があったら、その時はよろしくお願いします」
そう言ってアクセルは泉から離れた。途中、泉に向かっていく遺体処理班とすれ違った。死体が積み上げられた台車を横目で見たら、何だかげっそりした。いくら死体でも、こんな風に扱われたくはないものだ。
早足で道を歩き、家に帰りつく。
「おかえり、アクセル。ちょうどお風呂沸いたところだよ。夜食も用意したから、上がったら一緒に食べようね」
兄がにこやかに迎えてくれた。リビングのテーブルを見たら、ちゃんとサンドイッチが置いてあった。なかなか気が利いている。
「兄上、あの……」
「うん? 何だい?」
「…………」
今は浮気してないよな、と聞こうとしてやめた。そんなこと聞いてどうするのか。過去に嫉妬しても時間の無駄だし、兄なら「してない」と答えるに決まっている。
というか、昔のことだから今更どうすることもできない。自分がいなかった間のことだし、それはそれとして割り切るしかない。
とはいえ、モヤモヤすることには変わりないが……。
「あの、すみません……。俺は全快したみたいなのでこの辺で……」
足の感覚が戻ってきたので、ここぞとばかりにアクセルは泉から出た。これ以上二人の話を聞いていたら、精神衛生上よろしくない。
「ユーベル様、ジーク様、今夜はお世話になりました。いつか手合わせをする機会があったら、その時はよろしくお願いします」
そう言ってアクセルは泉から離れた。途中、泉に向かっていく遺体処理班とすれ違った。死体が積み上げられた台車を横目で見たら、何だかげっそりした。いくら死体でも、こんな風に扱われたくはないものだ。
早足で道を歩き、家に帰りつく。
「おかえり、アクセル。ちょうどお風呂沸いたところだよ。夜食も用意したから、上がったら一緒に食べようね」
兄がにこやかに迎えてくれた。リビングのテーブルを見たら、ちゃんとサンドイッチが置いてあった。なかなか気が利いている。
「兄上、あの……」
「うん? 何だい?」
「…………」
今は浮気してないよな、と聞こうとしてやめた。そんなこと聞いてどうするのか。過去に嫉妬しても時間の無駄だし、兄なら「してない」と答えるに決まっている。
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