1,011 / 2,712
第10章~日常の中で~
第30話
しおりを挟む
――やっぱり俺は、この人の弟なんだな……。
記憶はハッキリしない。具体的なエピソードも思い出せない。
だけど、こうして抱き締められた記憶は身体に刻み込まれている。懐かしさと共に、得も言われぬ安堵感が全身を満たしていく。
「フレインさん」
アクセルは抱き締められたまま、思い切って言った。
「今日からまた『兄上』って呼んでいいですか?」
「えっ? お前、私がお兄ちゃんだって思い出したの?」
驚いてフレインが顔を覗き込んできたので、慌てて苦笑いする。
「あ、すみません……具体的なことはまだ。でも、あなたが俺の兄なのはわかります。頭は忘れても、身体はちゃんと覚えているんです」
「身体が……」
「今日久々に死合いをしてみてわかりました。以前の経験は、確実に俺の身体に刻み込まれている。はっきりしたエピソードは覚えていなくても、その時学習したことは全部身体が覚えてくれているんです。だから、フレインさん……いえ、兄上がこうしてよく抱き締めてくれたことも覚えています」
「…………」
「このまま死合いを続けていれば、全部の記憶を取り戻せる。そんな気がするんです。死合いを行う度に昔の感覚が蘇っていくことが、俺には本当に嬉しくて」
「それはよかった」
フレインは少し身体を離すと、こちらの頭を優しく撫でてきた。これも以前、よくやられていたなと思う。事あるごとに「いい子いい子」と褒められていたような気がする。
「じゃあ、これからも死合い頑張ろうね。ついでにランクも上げていこう。私は、お前と公式に死合えるのをいつまでも楽しみに待ってるよ」
「はい、頑張ります」
記憶はハッキリしない。具体的なエピソードも思い出せない。
だけど、こうして抱き締められた記憶は身体に刻み込まれている。懐かしさと共に、得も言われぬ安堵感が全身を満たしていく。
「フレインさん」
アクセルは抱き締められたまま、思い切って言った。
「今日からまた『兄上』って呼んでいいですか?」
「えっ? お前、私がお兄ちゃんだって思い出したの?」
驚いてフレインが顔を覗き込んできたので、慌てて苦笑いする。
「あ、すみません……具体的なことはまだ。でも、あなたが俺の兄なのはわかります。頭は忘れても、身体はちゃんと覚えているんです」
「身体が……」
「今日久々に死合いをしてみてわかりました。以前の経験は、確実に俺の身体に刻み込まれている。はっきりしたエピソードは覚えていなくても、その時学習したことは全部身体が覚えてくれているんです。だから、フレインさん……いえ、兄上がこうしてよく抱き締めてくれたことも覚えています」
「…………」
「このまま死合いを続けていれば、全部の記憶を取り戻せる。そんな気がするんです。死合いを行う度に昔の感覚が蘇っていくことが、俺には本当に嬉しくて」
「それはよかった」
フレインは少し身体を離すと、こちらの頭を優しく撫でてきた。これも以前、よくやられていたなと思う。事あるごとに「いい子いい子」と褒められていたような気がする。
「じゃあ、これからも死合い頑張ろうね。ついでにランクも上げていこう。私は、お前と公式に死合えるのをいつまでも楽しみに待ってるよ」
「はい、頑張ります」
0
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ある日、人気俳優の弟になりました。2
ユヅノキ ユキ
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ある日、人気俳優の弟になりました。
ユヅノキ ユキ
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる