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第9章~再会と記憶~

第81話

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 まあ、今は木彫りをやってる場合じゃないけどな……と思いつつ、アクセルは鍋の準備をした。土鍋に適量の水を張り、それを火にかけて沸騰したところでイノシシ肉を投入する。イノシシ肉は硬めなので、丁寧に煮込まなければならない。

 柔らかく出汁が出てきたところで人参や白菜も一緒に煮込み、簡単なイノシシ鍋ができた。

「できたできた! さ、いただこうか」

 熱々の鍋を火から下ろし、二人で食卓を囲む。

 フレインの食欲は凄まじく、あれだけたくさんの肉を入れたのに途中から全然足りなくなってしまった。野菜も多少は食べていたが、八割以上は肉を食べていたのではないかと思う。タンパク質の摂取は大事だけど、あまりに肉食すぎて少々呆れてしまった。

「明日死合いが終わったら、食材の買い出しにも行かないといけませんね」
「ああ、そうだね。鍋をやると食材も一気になくなるからなぁ」

 あなたが肉を食い尽くしたんですけどね……と、心の中でツッコむ。

「でも、私はお前とつつく鍋が好きなんだ。ひとつの鍋を二人で共有するって、素敵なことだと思わない?」
「ええ、そうですね」
「鍋をつつける相手がいるのがどれだけありがたいか……こうしていると、身に沁みて感じるよ」
「……!」

 そう言ったフレインは、見るからに幸せそうな顔をしていた。本当に、心から幸せそうに笑っていた。

 この顔は辛酸を舐め尽くしたことがなければできない。孤独を味わい、地獄を見て、絶望を経験していなければ、「鍋をつつく」という行為にここまでの幸せを感じることはできない。
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